「自分で描いたキャラクターなら、SNSのアイコンにしていいですか」——著作権の出前授業で、子どもから実際に出た質問です。
この記事では、なぜこの問いに「どちらとも言えません」としか答えられないのかを、二次的著作物という考え方をもとに整理します。原則としてはっきりしていることと、判断が分かれることを分けて示しますので、学校でも家庭でも子どもに説明しやすくなるはずです。
二次的著作物とは、もとの著作物を翻訳・編曲・変形・翻案するなどして、新たに創作された著作物のことです(著作権法第2条第1項第11号)。既存のキャラクターを自分の手で描いた絵は、この二次的著作物にあたると考えられ、自分で描いていても、元のキャラクターの著作者との関係は残ります。学校著作権ナビゲーターとして出前授業でこの質問を受けるたび、私は「どちらとも言えません」とお答えしています。
自分で描いたキャラクターをSNSアイコンにしていい?
結論から書きます。「どちらとも言えません」というのが、正直な答えです。
出前授業では、著作物の考え方や法律の考え方、そして例外にあたる引用や学校での取り扱いについて話をしています。その中で「アイコンにキャラクターや有名人・芸能人、ブランドのロゴを使うのは、許諾をとっていないと使えませんよ」とお伝えしたときに出てきたのが、この質問でした。「自分が作った作品には自分に著作権がある」とも話していますから、「じゃあ、自分で描いたキャラクターならいいのかな」と考えるのは、いかにも子どもらしい素直な発想です。
ただし、何もかもが曖昧なわけではありません。場面ごとに整理すると、次のようになります。
| 場面 | 考え方 |
|---|---|
| 既存のキャラクターの画像を、そのままアイコンにする | 許諾がなければ使えないと考えられます |
| 自分がゼロから創作した作品を、アイコンにする | 自分に著作権があります |
| 既存のキャラクターを、自分だけで楽しむつもりで描いて手元に置く | 私的使用の範囲内と考えられます |
| 既存のキャラクターを自分で描いた絵を、アイコンにする | 原則として元の著作者の了解が必要と考えられますが、実際の判断は分かれます |
※有名人の写真には肖像権やパブリシティ権、ブランドのロゴには商標権など、著作権以外の権利が関わることもあります。
▶ 動画では1:04〜で詳しく解説しています
二次的著作物の原則は「元の著作者の了解が必要」
重要なのは、「自分で描いた」という事実だけでは問題が解決しない、という点です。
その前に、ひとつ前提を押さえておきます。著作権法で保護されるのは、キャラクターという人物像そのものではなく、具体的に描かれた絵だと考えられています。「このキャラクターに著作権がある」というより、「このキャラクターを描いた一枚一枚の絵に著作権がある」というイメージです。自分で描いた絵についても、どの絵をもとにしたのかという形で判断されることになります。
そのうえで、著作物を翻訳したり、編曲したり、変形したり、その他の方法で作り変えたりする権利は、著作者が持っています(著作権法第27条・翻訳権、翻案権等)。文化庁の資料でも、二次的著作物をつくるにあたっては原作の著作者の了解が必要とされています。つまり「描いてもいいかどうか」という段階で、すでに元の著作者の権利が関わっているのです。
さらに、できあがった二次的著作物を利用する場面でも、元の著作物の著作者は、二次的著作物の著作者と同じ種類の権利を持つと定められています(著作権法第28条)。実際に確認する先は、著作権を管理している会社などになることもあります。
「自分で描いた部分がある」ことと「自由に使える」ことは、そのままつながりません。制度としての原則は、この点でははっきりしています。
それでも判断が分かれる、二つの理由
では、原則がはっきりしているのに、なぜ「どちらとも言えない」のでしょうか。理由は大きく二つあります。
一つめは、どこからが「新たな創作」なのか、線引きに幅があることです。 元の絵をそっくりそのまま写して描いた場合は、新たな創作が加わっていないと見て、二次的著作物ではなく複製(コピー)にあたると整理される可能性もあります。逆に、大きく描き変えていけば、どこかで元の作品とは別のものになります。その境目は、絵を見比べて個別に判断するしかありません。
二つめは、権利者ごとに考え方が違うことです。 ファンが描いた絵をどこまで許容するかは、権利者によって方針が異なります。「良い」という場合もあれば「ダメ」という場合もあり、公式のガイドラインを示している権利者もいます。
大人が考えても、法律家が考えても「どちらとも言えない」というのは、この二つが重なっているからです。子どもには申し訳ないと思いますが、曖昧なまま「大丈夫」と伝えることのほうが、かえって問題になりかねません。
「描くこと」と「公開すること」は分けて考える
ポイントは、絵を描く行為と、それをSNSで公開する行為は、著作権法上は別の場面として整理される、という点です。
私的使用のための複製(著作権法第30条)は、個人的に、または家庭内などの限られた範囲で使うことを目的とする場合の例外で、この範囲内であれば、描き変えること(翻案)も認められています(著作権法第47条の6)。自分のノートに描いて自分だけで楽しむところまでと、不特定多数の人が見られる形でアイコンとして公開することは、同じには扱えないと考えられます。
ただしこの例外は、描いたときにどういう目的があったかで判断される点に注意が必要です。最初からアイコンにするつもりで描いた場合は、描く段階からこの範囲を外れると考えられます。「あとで公開するかどうか決めればいい」とはならない、ということです。
「自分だけで楽しむために描くのと、人に見せるために描くのとでは、はじめから話が違う」——子どもに説明するときは、この形で伝えると誤解が少なくなります。
答えが出ないからこそ考えたい、三つの問い
授業では、明確な答えを示す代わりに、次の三つを子どもたちに投げかけています。
- なぜ「どちらとも言えない」のでしょうか。 線引きの難しさと、権利者ごとの考え方の違いが重なっているためです。
- それによって、誰が得をして誰が損をしているのでしょうか。 たとえ善意で描いたとしても、元の著作者の権利に影響する可能性があります。
- あなたが著作者だったら、どう考えるでしょうか。 自分の作品が無断で使われていたら、どう感じるでしょうか。
「答えが出ない」こと自体を理解することが、著作権を学ぶ入口になります。なぜそうなのかを考え、誰の権利が関わっているかを想像する——そこから発展的な学習が始まります。
こうした著作権の問題を校内研修で体系的に扱いたい場合は、研修テーマの一覧もご覧ください。
ケース別:写真の場合・学校のしおりやTシャツの場合は?
「描いた」以外のケースについては、それぞれ別の記事で解説しています。
自分で撮った写真をアイコンにしたい

運動会の看板・文化祭のクラスTシャツ・行事のしおりにキャラクターを描きたい

ポケモン・ディズニーなど、公式のルールを確認したい

子どものSNS利用全般で気をつけたいこと

安心して使えるイラスト素材を探したい

まとめ:原則は明確、分かれるのは「分かれ目」のほう
「自分で描いたのだから著作権は自分にある」——そう考えたくなる気持ちは、よくわかります。しかし元となる絵がある場合、作り変える段階でも、できたものを使う段階でも、元の著作者の権利が関わってきます。
「どちらとも言えない」という答えは、法律が何も決めていないという意味ではありません。原則ははっきりしていて、分かれるのは線引きと権利者の考え方のほうなのです。ここを分けて説明できると、子どもへの伝え方がぐっと楽になります。
いたずらに恐れるのではなく、原則に則って一緒に考えていく。そうすれば、子どもたちは安心して創作を楽しめるようになります。この問いは、そのための良い入口になってくれるはずです。
FAQ(よくある質問)
Q1 キャラクターを自分でアレンジして描いた場合、著作権は誰にありますか?
A 元の絵の著作権は原著作者に、新たに加えた創作部分の著作権は描いた本人に生じると考えられます。ただし二次的著作物の利用については、元の著作物の著作者も同じ種類の権利を持つと定められています(著作権法第28条)。「自分で描いた部分がある=自由に使える」とはなりません。
Q2 学校の授業でキャラクターを手描きした作品を、教室に掲示するのはOKですか?
A 授業の中で描くことについては、著作権法第35条(学校その他の教育機関での複製・公衆送信・公の伝達に関する規定)の範囲で認められる余地があります。ただし、営利を目的としない教育機関であること、教員または児童生徒自身が行うこと、すでに公表された著作物であること、必要と認められる限度であること、著作権者の利益を不当に害しないこと、慣行があるときは出所を明示することなど、複数の条件があります。
なお、掲示そのものは第35条が挙げる3つの行為には含まれません。著作権法上、展示について権利が働くのは美術の著作物の「原作品」などに限られており(著作権法第25条)、掲示の可否は状況によって整理が分かれます。廊下への掲示や学校外への持ち出しなど、授業の過程を超える場面については、個別に判断することをおすすめします。
Q3 二次的著作物と引用の違いは何ですか?
A 引用(著作権法第32条)には、公表された著作物であること、自分の文章が「主」・引用部分が「従」という主従関係、引用の必然性、引用部分が明瞭に区別されていること、出所の明示、原文を改変しないことなどの要件があります。ここで重要なのは、引用では翻訳しての利用は認められている一方、作り変える(翻案する)ことは認められていない点です。元の著作物をもとに新たな創作を行う二次的著作物とは、根拠となる条文も、認められる行為も異なります。
Q4 LINEやXのプロフィール画像でも、考え方は同じですか?
A サービスの名前によって考え方が変わるわけではありません。不特定多数の人が見られる形で公開するという点は共通していますので、この記事の整理がそのまま当てはまると考えられます。
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この記事は「キャラクターの絵をSNSアイコンにするのは著作権違反?二次的著作物を解説」をもとに作成しました。

