いろいろな著作物で学校教育シリーズ。
今回は「写真」です。
別の動画「【学校で著作権侵害をしないために】無料イラスト素材の利用規約を比較解説します」で話している「イラスト」に似ていますが、写真は撮った人だけではなく撮られた人にも配慮が必要な著作物です。
フリーサイトの写真を使う場合や、自分で撮った写真、誰かを撮った写真について話します。
知的財産権・著作権に出てくる著作物について、
2.各著作物を学ぶ方法
3.著作物に応じた教育
をシリーズで紹介します。
今回は「写真」を取り上げます。写真が学校で使われる場面は、教員が教材で作るものに使うのはもちろん、子どもが作るスライドやレポートにも使われます。また、学校の発信や学校・子ども個人のSNSにも使われます。
いろいろな場面で使われる写真について考えてみましょう。
まずは著作権の基礎から。
著作権は知的財産権の中の一つです。著作権がある著作物の1つに写真があります。
著作権は作った人に生み出した瞬間に発生します。子どもの作品も同様です。
使う時・増やす時・変える時には作った人に許諾が必要。学校は例外です。
写真を学校で使う場面とは?
著作権法は124条あり、その中に著作物と定められているものが第2章の中にあります。
「写真」は「八 写真の著作物」にあたります。
学校で使う場面を考えます。
教員が写真を使う場面
まず教員が使う場面です。
プリントやワークシート。
作成した授業プリントに、社会プリントなら山や川に関連する航空写真や、理科なら実験装置の写真をつけることもあるかもしれません。
次に模造紙やパワーポイントといった提示するものにも使うことがあるでしょう。
黒板やホワイトボードに貼ったり、スクリーンに写したりして、全員が見られるようにする資料や板書などに、関連する歴史上の人物の写真、動植物の写真などをつけることもあるかもしれません。
教科以外では、学年・学級だより、行事の案内、学校の情報を発信するブログやSNSなどにも使います。
生徒が写真を使う場面
次に子どもが使う場面です。
発表で使う模造紙の場合は、自分で撮った写真や誰かが撮った写真をプリントアウトして貼ったりします。端末を使ったスライドやレポート作成ならもっと簡単にできてしまいます。理科のレポートなら「恐竜 写真」を検索して、コピー・ペーストで出来てしまいます。
また、子どもの写真関連で気をつけなければならないのはSNSです。個人のSNSで変顔や隠し撮りの写真をLINEグループで共有したり集合写真をSNSに掲載したりして、トラブルに発展することもあります。
このように、学校では様々な著作物に写真が使われます。
写真の著作権を知る
人物が写っている写真には、撮った人と撮られた人の両方の権利があるということを知っておきましょう。
学校の授業でしたら著作権法第35条の範囲で使用できますが、誰でも見られるウェブサイトは35条の範囲ではありません。
また、35条には、「著作者の利益を不当に害する」=作った人が損をする使い方はできないと書いてあります。学校で使える範囲がどの程度なのかも作った人が決めます。
「著作権フリー」の注意点
写真の「利用規約」は作品を作った人が決めるので、写真素材の利用規約の内容は人によって様々です。「著作権フリー」と書いてあっても、「フリーの範囲や条件」は作った人が決めます。
学校の授業であるないに関わらず、写真の「利用規約」(利用の仕方)について説明した文章を読みましょう。
著作権の原則「作品は作った人のもの。使う時には作った人に許諾が必要」ですから、使い方を作った人が決められるのは当然のことです。
「フリー 写真」でGoogle検索した時に上位になったサイトをランダムに抜粋して、「利用規約」を見てみました。そして、学校に関する部分を抽出して要約・再編集しています。今回調べてみて、サイトによって様々だったので驚きました。
▶写真AC:https://www.photo-ac.com/
▶京都フリー写真素材集:https://photo53.com/
▶ぱくたそ:https://www.pakutaso.com/
「著作権フリー」の写真素材サイトの利用規約を比較してみた
このように、利用規約は作った人によって様々です。
学校で使う際は使い方に応じて、使い分けをしましょう。
紙の場合・閉じたウェブサイトの場合・開かれたウェブサイトの場合・授業の場合など、見られる範囲や対象などによって、それぞれのフリー写真サイトを使い分けましょう。
また、校内で児童生徒に配布する物につけた写真を再利用する際…例えば学校のウェブサイトに載せる・地域のウェブサイトに載せる・自治体の広報誌に載せる場合は利用規約を再確認しましょう。
教員がしてしまいがちな、去年のおたよりの日付や文章は変えるけど写真はそのまま使う際は要注意です。
規約が変わっているかもしれません。もう一度利用規約を確認しましょう。
そして、同じことを子どもたちにも伝えてください。
写真を撮られる側の権利(プライバシー権・パブリシティ権)にも要配慮
撮った人は写真の著作権を持っていますので、他の誰かが使う時・増やす時・変える時には許可を出す側です。
一方、撮られた側にはプライバシー権・パブリシティ権があります。プライバシー権は無断で撮影されない権利、勝手に公表されない権利です。
「1.写真を学校で使う場面とは?」で話した変顔・集合写真は、公表する際に写っている人全員に公表していいか確認する必要があり、NGの場合は顔をぼかしたり、スタンプなどで隠したり、アップするのをやめたりするなど配慮が必要です。
個人情報の観点からも、子どもの顔と学校の名前がひもづくことを嫌がる保護者もいますので、注意が必要です。
「面倒くさいしよく分からないから使わない」
「面倒くさいしよく分からないから子どもに伝えない」
するととどうなるか?
作った人も使う人も、双方にとって良くない結果になります。
作った人も自分の作品を広めたいはずです。使う人も作品を使いたいはずです。
使い方を知って、正しく使うことで作った人・使う人の両方がウィンウィンになります。使わない・子どもに伝えないことは、問題を先延ばしにしてしまいます。子どもはいつか、もしくはもう既に著作権について知らなければならない状況かもしれません。
「フリーの写真素材」を通して著作権を子供に教えよう
では「子どもたちにどう伝えるか?」を考えました。
一番は実践の場で伝えることです。
レポートやスライドを作らせる授業や行事の過程で、写真の使い方について説明しましょう。
その時に「ダメ」を教えるのではなく、「こうすれば使える」という前向きな話にしましょう。
利用規約を探して、文章が難しければ発達段階に応じて翻訳をして示します。
時間が取れれば、「なぜこのような利用規約にしたのか」「AサイトとBサイトの違いは何か。どうして違いがあるか」と、作った人の気持ちに切り込みましょう。小学生だって著作者になりうる時代です。
著作権教育の授業例「写真を撮影して利用規約を作ろう」
また、今回調べてみて考えたのは、「子どもに写真を撮らせて、校長先生の学校だよりや担任の先生の学級だよりで使ってもらう」という授業はいかがでしょうか。
「上手に撮れたから、さっそく『学校だより』で使います」としてしまいそうですが、それは落とし穴。
小学校低中学年まではいいかもしれません。しかし、子ども自身の自覚なく著作権を子どもに放棄させて、タダで使うのは大人にとって都合が良すぎます。作った人へのリスペクトが育ちません。
小学校高学年以上なら「利用規約も考えさせる」のもおもしろいです。使っていい条件=利用規約を著作者である子どもに考えさせましょう。たとえば、
・金銭のやり取りは難しいでしょうからそれに代わる対価
・クレジットをどう入れてもらう
・学校を卒業したらどうする?
これらを子どもに決めさせます。
写真の内容や規約によっては、校長先生から「いらない」と言われるかもしれませんね。
・他の人と差別化する工夫は?
・学校だより特有の写真の選ばれ方は?
・もしくは、規約を見直す?
・とにかく使って欲しいから著作権を放棄する?
予想される発言として、「キャラクターのぬいぐるみを持って写真を撮っていいですか?」「有名な建造物や看板をバックに写真を撮っていいですか?」というのもありそうな話です。これはチャンス!写りこみの話へとふくらみそうです。写りこみの条件を話してみましょう。
このように使う人だけでなく、作った人の気持ちを考えられる授業になると良いと思います。
まとめ:【学校で著作権侵害をしないために】無料写真素材の利用規約を比較解説します
時間をかけて作るイラストや音楽に比べて写真は気軽に撮れてしまうため、著作者や著作物としての認識が軽くなってしまいがちです。
教員はもちろん、子どもも一緒に著作権の話をしませんか。表面上の法律やダメではなく、作り手と使い手の心を育てる教育をしましょう。
このウェブサイトの記事の内容は動画と同じです。
動画「【学校で著作権侵害をしないために】無料写真素材の利用規約を比較解説します」も是非ご覧ください。
コメント