学校での授業や行事、SNS発信などさまざまなシーンで「写真」は欠かせません。
しかし、写真の利用には知的財産権や著作権の知識が必要です。特に、学校での写真利用は「撮る人」「撮られる人」両者の権利を守るため、慎重な配慮が必要です。
この記事では、学校における写真利用の著作権ルールを解説し、トラブルを避けるためのポイントをお伝えします。
知的財産権・著作権で取り扱いのある著作物について、
2.各著作物を学ぶ方法
3.著作物に応じた教育
を紹介しています。
今回は「写真」を取り上げます。
教員が教材で作る場合に写真を使うことがあるのはもちろんのこと、子どもが作るスライドやレポートにも写真が使われます。また、学校からの発信や学校・子ども個人のSNSにも写真が使われます。
いろいろな場面で使われる写真について考えてみましょう。
著作権の基礎
まずは著作権の基礎から。
著作権は知的財産権の中の一つです。
著作権は作った人に生み出した瞬間に発生します。子どもの作品も同様です。
使う時・増やす時・変える時には作った人に許諾が必要。
学校は例外です。
写真を学校で使う場面とは?
学校現場では、写真は教材やSNSで多用されます。特に、教師が作成する教材や生徒が発表用に作成するスライドやレポートで利用されています。また、学校のSNSやブログで学校の活動を発信する際にも活用されています。
教師が写真を使う場面
授業プリントやワークシート:社会科のプリントに山や川の写真を使ったり、理科のプリントに実験装置の写真を掲載したりすることがあります。
模造紙やパワーポイント:授業で使う資料や掲示物にも写真が使われることが多く、黒板やホワイトボードに貼る資料にも使われることがよくあります。
SNSや広報:学校ブログや学年だより、SNSで学校活動を発信する場面でも写真が利用されます。
生徒が写真を使う場面
スライドやレポート:レポートに「恐竜 写真」などを検索してコピー・ペーストして貼り付けることも容易にできるため、特にSNS利用時に注意が必要です。
SNSでの共有:SNS上で写真を共有する際には、許可を取らずに友人の写真や集合写真を共有するとトラブルに発展する可能性があります。
写真を撮られる側の権利
写真には、「撮った人」の著作権だけでなく、「撮られる人」のプライバシー権やパブリシティ権も含まれています。
プライバシー権とは、無断で撮影されない権利や、本人の許可なく公表されない権利を指します。
一方、パブリシティ権は、有名人や特定の人の写真が、その人物の承諾なしに商業的に利用されることを防ぐ権利です。これらの権利は、特に学校での集合写真や個人がSNSに投稿する写真に関わる際に、慎重な配慮が必要です。
学校での例として、行事や授業で撮影した集合写真をSNSやブログに掲載する際には、写真に写っている人全員に事前に許可を取ることが求められます。仮に許可が得られなかった場合、顔をぼかしたり、スタンプで隠すなどの配慮が必要です。また、保護者の中には、子どもの顔と学校名が紐づくことを懸念する方もいるため、特にSNSや公共の場で公開する場合には十分な注意が必要です。
さらに、児童や生徒がクラスメイトの変顔や隠し撮りをLINEグループなどで共有したり、SNSにアップロードしたりすることもトラブルの原因となり得ます。
これらの行為は、本人の意図とは無関係に相手の権利を侵害する可能性があり、重大な問題に発展することがあります。したがって、教師や保護者は、子どもたちに対してこうしたリスクについて指導し、他者の権利を尊重する意識を育むことが大切です。
学校では、「ただ撮るのではなく、相手の気持ちを考える」という姿勢を養うため、写真利用時の配慮が必要な点を具体的に教えることが求められています。
「著作権フリー」の写真利用の注意点
「著作権フリー」と表示された写真であっても、その利用にはいくつかの注意点があります。
写真素材の「利用規約」は、権利者が独自に定めているため、サイトごとに異なり、利用者はサイトごとの条件に従う必要があります。
特に「フリー」と書かれていても、そのフリーの範囲や条件がどのように定められているかを理解しておくことが大切です。以下は、具体的な確認ポイントです。
利用範囲の確認
「著作権フリー」として提供されている写真は、使用する用途や媒体に応じて利用範囲が異なることが一般的です。
たとえば、授業や校内でのプリントなどの教育用利用は許されていても、学校のウェブサイトやSNSなどの公共の場への掲載には制限が設けられている場合があります。また、商業目的の使用が許可されているかどうかも確認が必要です。
写真素材を利用する際は、あらかじめ利用規約をよく読み、目的に合った範囲で利用するようにしましょう。
利用制限の確認
「著作権フリー」の写真でも、利用制限が設けられている場合があります。
たとえば、1日にダウンロードできる枚数が限られている場合や、商業利用には追加料金がかかることもあります。また、無料で利用する場合でも、利用前に会員登録が必要なサイトもあります。
ダウンロード数や利用制限があるかどうかを事前に確認するようにしましょう。
リンクやクレジットの表示
サイトによっては、写真を利用する際に出典元のリンクを必ず表示することや、クレジットを記載することが求められる場合もあります。これは、紙媒体での使用やウェブ上での使用であっても変わらないことがあり、条件を守らないと著作権侵害となるリスクもあります。
利用する前に、表示が必要かどうかを必ず確認してください。
加工や編集に関する条件
一部の「著作権フリー」の写真サイトでは、写真の加工や編集が自由にできるものもありますが、編集が厳しく制限されている場合もあります。
人が写っている写真や有名な観光地を撮影した写真には、編集制限が設定されていることがあるため、許可されている加工の範囲を理解しておくことが重要です。
人物が写っている場合の肖像権やパブリシティ権
「京都フリー写真素材集」のように、文化財が写っている写真には「意匠権」が関わる場合があり、特に商用利用時には別途の許可が必要なケースがあります。
また、「ぱくたそ」のように、人物が写っている写真やAI生成の画像には特別な規約が設けられている場合もあり、利用者はこれらの条件をよく確認して使用する必要があります。
写真素材を利用する際は、必ず最新の利用規約を確認し、それぞれのサイトや提供元によって異なるルールに従って利用することが大切です。
▶写真AC:https://www.photo-ac.com/
▶京都フリー写真素材集:https://photo53.com/
▶ぱくたそ:https://www.pakutaso.com/
学校での写真利用を通じて著作権教育を行う方法
写真の使用を通じて、児童・生徒に著作権の基本を教える良い機会を設けましょう。特に、日常的にスマートフォンやSNSを利用する児童・生徒が増える中で、著作権について学ぶ機会を実践的に提供することは重要です。授業の中で、写真の利用規約や著作権に関するルールを説明し、児童・生徒が自分で著作物を作り、他者の作品を使う際の心構えを身につけさせることが目指せます。
授業例:「写真を撮影して利用規約を作ろう」
子どもたちに写真を撮らせ、それを学校内の「学級だより」や「学校だより」に使用する際のルールを考えさせる授業を行うのも有効です。
例えば、写真を使用する条件(利用規約)を子どもたち自身に考えさせることで、著作権の基本的な考え方を身をもって学ばせることができます。具体的なポイントとして、次のような条件を検討させると良いでしょう。
使用許可の範囲:写真を使ってよい場所(例:学内限定、学年内配布限定)や使用期間など。
加工の可否:写真を編集・加工することが許可されるかどうか。
クレジットの表示:写真の著作者として子ども自身の名前を記載する方法や場所。
対価についての理解:実際の金銭のやり取りは難しい場合も、使用者へのリスペクトとして代替的な対価を考える機会とする。
これらの条件について話し合いながら、写真の著作権を他者に譲渡せずに保持する方法や、自分の作品が使用される際の許諾の重要性を学ばせることができます。
「前向きな使い方」を教える
写真の著作権を教える際は、「ダメ」と教えるのではなく、「こうすれば使える」という前向きな方法を伝えることが重要です。
子どもたちが実際に利用規約を調べ、自分の作品を守るためのルールを設定することで、著作権に対する理解が深まり、他者の権利を尊重する意識も育ちます。
たとえば、利用規約を子どもの発達段階に合わせて翻訳・簡略化して教えることで、分かりやすく著作権の意義を理解させることが可能です。
写り込みや肖像権についての意識づけ
さらに、授業の中で「写り込み」や「肖像権」に関する意識を育てることも可能です。
例えば、キャラクターのぬいぐるみや有名な建造物を背景にして写真を撮る際の注意点を教えることで、無意識に他人の権利を侵害しないような配慮を身につけさせることができます。
これらのテーマを話し合うことで、著作物を使用するだけでなく、作り手や写り込む人々の気持ちにも配慮する姿勢が養われます。
この記事の内容は動画と同じです。
動画「学校での写真利用で知っておきたい著作権の基本ポイント|安心して使うためのコツ」も是非ご覧ください。
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