知的財産権・著作権で取り扱いのある著作物につい関して、
2.各著作物を学ぶ方法
3.著作物に応じた教育
をシリーズで紹介しています。
今回は「写真」を取り上げます。
写真が学校で使われる場面は、教員が教材で作る場合に使うのはもちろんのこと、子どもが作るスライドやレポートにも写真が使われます。また、学校からの発信・学校・子ども個人のSNSにも写真が使われます。
いろいろな場面で使われる写真について考えてみましょう。
別のYouTube動画「【学校で著作権侵害をしないために】無料イラスト素材の利用規約を比較解説します」で話している「フリーイラストの著作権」の話に少し似ています。しかし、写真は撮った人だけではなく撮られた人にも配慮が必要な著作物であるという点が異なります。
「フリー」を謳うサイトの写真を使う場合や、自分で撮った写真、誰かを撮った写真を使用する場合の注意点について解説します。
まずは著作権の基礎から。
著作権は知的財産権の中の一つであり、著作物の1つとして写真があります。
著作権は、作った人が生み出した瞬間に発生します。子どもの作品も同様です。
使う時・増やす時・変える時には作った人に許諾が必要。学校は例外です。
写真を学校で使う場面とは?
著作権法は124条あり、その中に著作物と定められているものが第2章の中に記載されています。
「写真」は「八 写真の著作物」にあたります。
学校で使う場面を考えます。
教員が写真を使う場面
まず教員が使う場面です。
プリントやワークシートですね。
作成した授業プリントに、社会プリントなら山や川に関連する航空写真/理科なら実験装置の写真をつけることもあるかもしれません。
次に模造紙やパワーポイントといった「提示するもの」にも写真を使うことがあるでしょう。
黒板やホワイトボードに貼った資料・スクリーンに写した資料などに、授業に関連する歴史上の人物の写真、動植物の写真などをつけることもあるかもしれません。
教科以外では、学年・学級だより・行事の案内・学校の情報を発信するブログやSNSなどにも写真を使いますね。
生徒が写真を使う場面
次に子どもが使う場面です。
発表で使う模造紙には、自分で撮った写真や誰かが撮った写真をプリントアウトして貼ったりします。
端末を使ったスライドやレポート作成なら、もっと簡単に写真を貼ることができます。たとえば理科のレポートなら「恐竜 写真」を検索して、コピー・ペーストで簡単に出来てしまいます。
特に子どもの写真関連で気をつけなければならないのはSNSでの使用です。
当事者である児童生徒本人の知らないままに、変顔や隠し撮りの写真をLINEグループで共有したり集合写真をSNSに掲載したりして、トラブルに発展することもあります。
このように、学校では様々な場面で写真が使われます。
写真の著作権を知る
人物が写っている写真には、「撮った人」と「撮られた人」の両方の権利が存在していることを知っておきましょう。
学校の授業の範囲内でしたら著作権法第35条の定めにより著作者の許可を得ることなく使用できます。しかし、誰でも見られるウェブサイトに載せるという行為はは著作権法35条の範囲には入りません。
なお、35条には、「著作者の利益を不当に害する」(=作った人が損をする)使い方はできないと書いてあります。学校で使える範囲がどの程度なのかは、権利者本人が決めます。
「著作権フリー」の注意点
写真の「利用規約」は作品を作った人が決めるので、写真素材の利用規約の内容はサイトによって様々です。「著作権フリー」と書いてあっても、「フリーの範囲や条件」はサイトに寄って異なる点に注意しましょう。
学校の授業の範囲内であるか否かに関わらず、写真の「利用規約」(利用の仕方)についてを読みましょう。
著作権の原則「作品は作った人のもの。使う時には作った人に許諾が必要」ですから、使い方は作った人が決めることができるというのは当然のことです。
「フリー 写真」とGoogle検索した時に上位になったサイトをランダムに抜粋して、「利用規約」を見てみました。そして、学校に関連しそうな著作権の規定を抽出して要約・再編集します。今回調べてみて、サイトによってルールが様々だったことに驚きました。
▶写真AC:https://www.photo-ac.com/
▶京都フリー写真素材集:https://photo53.com/
▶ぱくたそ:https://www.pakutaso.com/
「著作権フリー」の写真素材サイトの利用規約を比較してみた
このように、利用規約はサイト・作った人によって様々です。
学校で使う際は、その使い方に応じて使い分けをしましょう。
「紙の場合」「ウェブサイトの場合」「授業の場合」など、見られる範囲・載せる媒体・公開対象などによって、それぞれのフリー写真サイトを使い分けましょう。
また、児童生徒への配布物に載せた写真を再利用する際(例えば、学校のウェブサイトに載せる・地域のウェブサイトに載せる・自治体の広報誌に載せる)場合は、利用規約を再確認しましょう。
教員がしてしまいがちな、「去年のおたよりの日付・文章は変えるけど写真はそのまま使う」といった場合も要注意です。
利用規約が変わっているかもしれません。もう一度利用規約を確認しましょう。
そして、同じことを子どもたちにも伝えてください。
写真を撮られる側の権利(プライバシー権・パブリシティ権)にも要配慮
撮った人は、写真の著作権を持っていますので、他の誰かが使う時・増やす時・変える時には許可を出す側です。
一方、撮られた側にもプライバシー権・パブリシティ権があります。プライバシー権は無断で撮影されない権利、勝手に公表されない権利です。
「1.写真を学校で使う場面とは?」で話した変顔・集合写真は、その写真を公表する前に写真に写っている人全員に公表していいか確認する必要があります。公表NGの場合は、顔をぼかしたり、スタンプなどで隠したり、アップするのをやめたりするなど配慮が必要です。
個人情報の観点からも、子どもの顔と学校の名前がひもづくことを嫌がる保護者もいますので、注意が必要です。
「面倒くさいしよく分からないから使わない」
「面倒くさいしよく分からないから子どもに伝えない」
するととどうなるか?
著作物を作った人も著作物を使う人も、双方にとって良くない結果になります。
作った人も自分の作品を広めたいはずです。使う人も作品を使いたいはずです。
使い方を知って正しく使うことで、作った人・使う人の両方がウィンウィンになります。
使わない・子どもに伝えないことは、問題を先延ばしにしてしまいます。子どもはいつか、もしくはもう既に著作権について知らなければならない状況かもしれません。
「フリーの写真素材」を通して著作権を子供に教えよう
では「子どもたちにどう伝えるか?」を考えました。
一番は、実践の場で伝えることです。
レポートやスライドを作らせる授業や行事の過程で、写真の使い方について説明しましょう。
その時に「ダメ」を教えるのではなく、「こうすれば使える」という前向きな話にしましょう。
利用規約を探して、文章が難しければ発達段階に応じて翻訳をして示します。
時間が取れれば、「なぜこのような利用規約にしたのか?」「AサイトとBサイトの違いは何か。どうして違いがあるか?」と、作った人の気持ちに切り込みましょう。小学生だって著作者になりうる時代です。
著作権教育の授業例「写真を撮影して利用規約を作ろう」
今回調べてみて考えたのは、「子どもに写真を撮らせて、校長先生の学校だよりや担任の先生の学級だよりで使ってもらう」という授業はいかがでしょうか。
「上手に撮れたから、さっそく『学校だより』で使います」としてしまいそうですが、それは落とし穴。
小学校低中学年まではいいかもしれません。しかし、子ども自身の自覚なく著作権を子どもに放棄させて、タダで使うのは大人にとって都合が良すぎます。作った人へのリスペクトが育ちません。
小学校高学年以上なら「利用規約も考えさせる」のもおもしろいです。使っていい条件(=利用規約)を著作者である子どもに考えさせましょう。たとえば、
・金銭のやり取りは難しいでしょうからそれに代わる対価
・クレジットをどう入れてもらう
・学校を卒業したらどうする?
これらを子どもに決めさせます。
写真の内容や規約によっては、校長先生から「いらない」と言われるかもしれませんね。
・他の人と差別化する工夫は?
・学校だより特有の写真の選ばれ方は?
・もしくは、利用規約を見直す?
・とにかく使って欲しいから著作権を放棄する?
予想される発言として、「キャラクターのぬいぐるみを持って写真を撮っていいですか?」「有名な建造物や看板をバックに写真を撮っていいですか?」というのもありそうな話です。
これはチャンス!「写りこみ」の話へとふくらみそうです。写りこみの条件を話してみましょう。
このように、使う人だけでなく作った人の気持ちを考えられる授業になると良いと思います。
まとめ:【学校で著作権侵害をしないために】無料写真素材の利用規約を比較解説します
時間をかけて作るイラストや音楽に比べて、写真は気軽に撮れてしまうため著作者や著作物としての認識が軽くなってしまいがちです。
教員はもちろん、子どもも一緒に著作権の話をしませんか。表面上の法律やダメではなく、作り手と使い手の心を育てる教育をしましょう。
このウェブサイトの記事の内容は動画と同じです。
動画「【学校で著作権侵害をしないために】無料写真素材の利用規約を比較解説します」も是非ご覧ください。
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