入学式・卒業式の著作権|歌詞・BGM・録画・オンライン配信を担当別に整理

【教員の担当役割別】儀式的行事(入学式・卒業式)の著作権 学校行事・広報・SNS
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入学式・卒業式の準備を進める中で著作権について迷う場面は少なくありません。式次第に歌詞を載せてもいいのか、BGM用にCDをコピーしてもいいのか、式の動画をホームページやYouTubeにアップしてもいいのか——。

この記事では、担当・役割別に著作権のポイントを整理します。

この記事は、2022年2月に公開した内容を、2026年10月時点の法令・運用指針に照らして見直したものです。著作権法や運用は変わることがあります。いつの情報かを確認し、運用にあたっては原文(法令・運用指針)をご確認ください。

 

 

まず、著作権の基本原則を確認しておきましょう。

著作物(作品)をコピーしたり、ネットで送ったり、作り変えたりするときは、原則として著作権者(多くの場合は作った人)の許諾が必要です。

 

著作権法の第30条から第50条には「著作権の制限(例外)」が定められています。私的使用のための複製(コピー)や学校の授業の過程での利用などがその例です。なお、保護期間が切れた著作物は、制限規定とは別に保護期間の満了によって利用できるものです。

例外規定にはそれぞれ条件があります。たとえば授業の過程での利用(第35条)では、必要と認められる限度であることや著作権者の利益を不当に害しないことが求められます。学校での利用であってもすべてが例外になるわけではないのです。

そのうえで押さえておきたいのが入学式・卒業式の位置づけです。入学式・卒業式は学習指導要領にもとづく教育課程の「特別活動」に位置づけられる学校行事で、著作権法上の「授業」に含まれると考えられています(改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版)特別活動追補版、2021年11月)。

著作権の基本については、まず「学校における著作権入門(学校でコピーが許される理由とは)」をご覧ください。

 

 

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【管理職・総務の先生へ】式次第に歌詞を載せていい?

列席者に配る式次第に歌詞を載せる場合は、「誰に、どれだけ配るか」と「どの曲か」の両方で考え方が変わります。

ポイントは、第35条が使えるかどうかが曲の種類ではなく配り方で決まるという点です。式次第に歌詞を載せて児童生徒と参列する保護者に配る場合は、第35条の範囲と考えられる余地があります。特別活動追補版では、授業で児童生徒に配ったものと同じ著作物を参観する保護者の人数以内で配ることは必要と認められる限度内と整理されているためです(卒業式に当てはめるのは、この記述からの類推です)。

一方で、来賓や地域の方にも広く配る場合や部数が多い場合は判断が分かれます。迷うときは、JASRACなどに確認しておくと安心です。

 

校歌

校歌は、作詞者・作曲者から学校に著作権が譲渡されていたり、作家の申し出により学校が使う場合はJASRACが使用料を徴収しない扱いになっていたりすることが多い曲です。こうした場合、学校が式次第に歌詞を載せることについてJASRACに使用料を支払う必要はないと考えられます。

ただし、扱いは校歌ごとに異なり、一律に許諾不要と決まっているわけではありません。迷ったときはJASRACに確認してみましょう。

 

「仰げば尊し」「蛍の光」など保護期間が満了した曲

「仰げば尊し」や「蛍の光」など、一般に作者の死後70年を経過し保護期間が満了していると考えられる曲については、歌詞を式次第に載せることができます。

ただし、現代的な編曲・訳詞・替え歌・楽譜の版面などには別の権利が残る場合があります。

 

「旅立ちの日に」「3月9日」など保護期間中の曲

卒業式の定番曲である「旅立ちの日に」や「3月9日」は、作者の死後70年を経過していない保護期間中の楽曲と考えられます。

式次第を上に書いた第35条の範囲を超えて配る場合(来賓や地域にも広く配る場合など)や卒業文集に掲載する場合は、原則として許諾が必要です。同じ卒業式の定番曲でも、保護期間が切れているかどうかは作者によって異なりますのでご注意ください。

保護者に配る行事パンフレットへの歌詞掲載については「保護者に配る合唱コンクールパンフレットに歌詞を掲載しても良い?」もあわせてご覧ください。

動画▶【先生からの質問に回答】保護者に配る合唱コンクールパンフレットに歌詞を掲載しても良い?

 

 

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【3年担任・国語科の先生へ】卒業文集に歌詞を載せていい?

卒業文集に歌詞を掲載したい場合、保護期間中(作者の死後70年を経過していない)の歌詞については原則として許諾が必要です。

ただし、「引用」という形であれば、許諾なしで文集に歌詞を記載できる場合があります。引用が認められるためには次のような条件を満たす必要があります。

  • 本文が主、引用部分が従という主従関係が明確であること
  • 引用した部分とそうでない部分が、はっきり区別されていること
  • 引用する必然性があること
  • 引用部分が必要最小限であること
  • 出所が明示されていること
  • 公表された著作物であること

歌詞を引用の形で掲載する場合にはこれらの条件を一つひとつ確認してください。

卒業生に渡す思い出DVDへの音楽利用については「卒業生に渡す思い出DVDに音楽を使っていい?」もあわせてご覧ください。

動画▶【先生からの質問に回答】卒業生に渡す思い出DVDに音楽を使っていい?

 

入学式・卒業式の著作権は、学校研修でも毎年関心の高いテーマです。式次第・文集・配信それぞれの場面での判断ポイントについては、研修テーマ一覧ページもあわせてご覧ください。

 

 

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【放送担当・音楽科の先生へ】BGM用にCDをコピーしていい?

入学式・卒業式のBGMのために式典で使う目的に限って市販のCDをコピー・編集する場合は、著作権法第35条により手続き不要と整理されています。新1年生の呼名・卒業証書授与・入退場のBGMとして市販CDを使う場合も同様です。

市販CDには、作詞者・作曲者の著作権のほか、レコード会社や歌手・演奏家の権利(著作隣接権)もあります。第35条は、第102条第1項によって、これらの権利にも同じように適用されます。式の中で上映する学校紹介動画や思い出スライドショーで市販CDを使うことも可能と考えられます。

ただし、式典後に配布するDVD・動画に入れる場合や学校ホームページ・動画投稿サイトに公開する場合は別に考える必要があります。式のために作ったコピーをこうした用途に使うことは、授業の範囲を超えた利用(第49条の目的外の使用)になるためです。あくまでも「授業の一環であること」「学校の行事の中の範囲であること」を守って活用してください。

 

 

【音楽科・吹奏楽部顧問の先生へ】式の中での演奏・合唱は可能?

入場や退場時の楽器演奏、卒業生・在校生による合唱など、式の中で楽器の演奏や合唱をすることについて見ていきます。公表された曲を、入場料を取らず、演奏者に報酬を支払わず、営利を目的としないで演奏する場合には、著作権法第38条第1項により手続き不要で行えると整理されています。

 

 

【管理職・記録担当の先生へ】録画・動画投稿・オンライン配信の著作権

保護者による録画

保護者が家庭内で子どもの成長記録として楽しむために録画する場合は、著作権上は手続き不要と整理されています。ただし、学校の撮影ルール・個人情報・プライバシー・他の児童生徒の映り込みには注意が必要です。録画した映像を公開することは私的利用の範囲を超えます。

▼保護者が式典の様子をSNSにアップしたいと言ってきたら?

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学校ホームページへの掲載

入学式・卒業式の動画を学校ホームページにアップする場合について考えます。式で歌った曲や流したBGMなどが映像に含まれているなら、著作権者等の許諾が必要になるのが原則です。学校ホームページは誰でもアクセスでき、公開期間が無制限になる場合もあります。

背景音楽に市販CDなどを使っている場合は、作詞者・作曲者だけでなくレコード会社や実演家などの権利にも注意が必要です。

 

動画投稿サイトへの掲載

YouTubeなどの動画投稿サイトに上げる場合も、学校ホームページと同じく、映像をネットで公開すること(公衆送信)にあたります。

違うのは、JASRACなどが管理する曲の作詞・作曲についての扱いです。JASRACなどと包括契約を結んでいる動画投稿サイトでは、自分たちで演奏・合唱した動画であれば、投稿者が個別に手続きをしなくてよい場合があります。

ただし、包括契約の対象は管理されている曲の作詞・作曲の権利に限られます。次のような動画は別に許諾が必要です。

  • 市販CDの音源をそのまま使った動画(JASRACの管理曲であっても、レコード会社や実演家の許諾が必要です)
  • DVD・放送番組・ゲーム音楽などの映像や音源を含む動画
  • JASRACなどが管理していない曲を含む動画

式のBGM用に第35条で作ったCDのコピーを投稿動画に使うことも、授業の範囲を超えることになります。

また、個人情報の観点から「限定公開」にすることや、保護者に事前に了承を得ることなども、著作権とは別に気をつける必要があります。

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オンライン配信(リアルタイム・オンデマンド)

入学式・卒業式をオンラインで配信する場合、「リアルタイム(生中継)」と「オンデマンド(後から視聴)」の2つの方法があります。

SARTRASへの補償金支払いについて

式の様子を、当日その場に参加できない児童生徒(別室や自宅などにいる児童生徒)に授業として同時中継する場合を考えます。この場合は著作権法第35条第3項により補償金の支払いは不要と考えられます。

一方、保護者や来賓など児童生徒以外の人に向けてインターネット配信する場合は扱いが変わります。リアルタイム・オンデマンドのどちらでも、学校設置者がSARTRAS(授業目的公衆送信補償金等管理協会)に補償金を支払っていることが前提になります。

この補償金制度は2020年4月に始まり、2020年度の特例による無償期間を経て、2021年度から有償となりました。補償金は、包括方式の場合、小学生120円・中学生180円・高校生420円(1人あたり年額)です。一人ひとりが支払う必要はなく、学校設置者(主に自治体や学校法人)が支払います。金額は改定されることがあるため最新の情報はSARTRASの公式サイトでご確認ください。

自校・自治体が申請済みかどうかはSARTRASのホームページの名称検索で確認できます。確認方法については「SARTRAS名称検索の使い方」をご覧ください。

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オンデマンド配信の追加条件

後から視聴できるようにするオンデマンド配信では、さらに、視聴期間をあらかじめ設定し、期間終了後は映像をすぐに消去・破棄することが条件になります。

保護者が陥りがちな著作権トラブルについては、「保護者がやりがちな著作権違反(オンライン授業・行事配信・子どもの作品)」もあわせてご覧ください。

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まとめ:担当別チェックリスト

担当主な確認ポイント
管理職・総務式次第への歌詞掲載(配る相手と部数、曲の保護期間、校歌の権利の扱いを確認)
3年担任・国語科卒業文集への歌詞掲載(保護期間と引用の条件を確認)
放送担当・音楽科BGM用CDのコピー(式典の範囲内であること。式後の配布や公開には使わない)
音楽科・吹奏楽部顧問式中の演奏・合唱(著作権法第38条第1項の条件)
管理職・記録担当録画・ホームページ・動画投稿(市販CD音源の有無)・オンライン配信(補償金、配信先の限定、保護者の同意)

「今までこうしてきたから」という慣例を一度リセットして、著作権法に反していないかを確認することが大切です。特にオンライン配信は比較的新しいルールであり、学校内での利用ルールとは異なる点があります。条件を確認した上で、入学・卒業をみんなでお祝いする儀式的行事にしましょう。

 

 

よくある質問(FAQ)

Q. 「旅立ちの日に」の歌詞を式次第に載せるには許諾が必要ですか?
A. 児童生徒と参列する保護者に配る範囲であれば、第35条の範囲と考えられる余地があります。来賓や地域にも広く配る場合や部数が多い場合は判断が分かれるため、JASRACなどに確認すると安心です。「旅立ちの日に」は保護期間中の楽曲と考えられるため、第35条の範囲を超える場合は原則として許諾が必要です。

Q. 校歌なら式次第に歌詞を自由に載せられますか?
A. 校歌は、学校に権利が譲渡されていたり、学校が使う場合はJASRACが使用料を徴収しない扱いになっていたりすることが多い曲です。ただし扱いは校歌ごとに異なるため、迷ったときはJASRACに確認してみましょう。

Q. 式のBGMとして市販CDをコピーして使っていいですか?
A. 入学式・卒業式の式典内で使う目的に限ったコピーであれば、著作権法第35条により手続き不要と整理されています。ただし、そのコピーを、式典後に配布する動画や、学校ホームページ・動画投稿サイトでの公開に、許諾なく使うことはできません。

Q. 卒業式の動画をYouTubeにアップしていいですか?
A. 自分たちで演奏・合唱した、JASRACなどの管理曲であれば、YouTubeの包括契約により、作詞・作曲について個別の手続きが要らない場合があります。ただし、市販CDの音源を使った動画や、管理外の曲を含む動画は、別に許諾が必要です。あわせて、個人情報の観点から「限定公開」の設定や保護者への事前の了承も検討しましょう。

Q. 卒業式を保護者にオンライン配信するときの条件は何ですか?
A. 配信方法ごとの条件は次のとおりです。

  • 共通(リアルタイム・オンデマンドとも):学校設置者によるSARTRASへの補償金の支払いが前提です。配信先は学校の取り決めに同意した保護者・協力者等に限り、URLの拡散や映像の保存などをしないよう事前に説明して同意を得ておく必要があります。
  • オンデマンド配信のみ:視聴期間の設定と期間終了後の消去も必要です。

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この記事を書いた人
原口直

学校著作権ナビゲーター

東京学芸大学卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭に。東京都公立中学校および東京学芸大学附属世田谷中学校で勤務。元・東京学芸大学こども未来研究所 教育支援フェロー。

2020年より、学校現場での経験を活かし、机上の法律と教育現場をつなぐ「学校著作権ナビゲーター」として活動を開始。教員・教育実習生・子どもたちに向けて、著作権への理解を深める講演・情報発信・執筆活動を行っている。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)/東京学芸大学 附属学校図書館運営専門委員会 著作権アドバイザー(2025年〜)

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