今日は「保護者がやってしまいがちな著作権違反」についてお話しします。
これまでこの「原口 直の学校著作権ナビ」チャンネルでは、「子どもがやってしまいがちな著作権違反」そして「教員がやってしまいがちな著作権違反」について紹介しました。
GIGAスクールにより小中学生1人1台端末が配布され、学校や自治体によっては予習復習や非常事態のための持ち帰りも進んでいます。
オンラインで学校の様子を見ることについては、保護者も著作権について知らなければいけない場面が増えてきました。
例えば、運動会や文化祭の行事オンライン配信について。
授業目的公衆送信補償金を学校設置者がSARTRAS(授業目的公衆送信補償金等管理協会)に支払をしていれば、リアルタイム配信(ライブ配信)が可能です。しかし、オンデマンド配信(後で見られる配信)については加えて、保護者の著作権理解が条件となっています。
保護者が児童生徒のころは学習指導要領には「知的財産権(著作権)」が載っておらず、学校で習う内容には入っていませんでした。ですので、保護者が著作権について知らないのは当たり前のことです。
現在は、約10年前の学習指導要領から中学高校で、そして2020年度の学習指導要領から小学校で、著作権について触れるようになりました。教科書にも掲載され、子どもたちは学校で知的財産権を習っています。
知的財産権や著作権について専門的なことや難しいことはわからなくても、子どもの目に触れることや学校に関すること、子どもの生活に関わることから知識を身につけていきましょう。
この動画の他には、
「先生がやりがちな著作権違反(授業と部活・職員会議・研究会の違いとは)」
もアップしています。
共通する点もありますし、子ども編は子どもに教えたり注意したりする時にも使えます。
ぜひ併せてごらんください。
SNSのアイコンでやりがちな著作権違反
子ども編と同じです。
Twitter・Facebook・LINEなどにあるアイコン。このアイコンで著作権違反をしてしまう子どもも保護者も多いです。
例えばキャラクターや有名人や芸能人・有名な企業などのロゴ。
こういったものはアイコンにしてはいけません。
「好きだというものを所有したい」「それをいろんな人に見てほしい」という気持ちはよくわかります。
例えば私が子どもの頃、90年代はアイドルやキャラクターの切り抜きをスクラップブック・透明な下じきに挟む、ブロマイド。それから今でも共通するのは、ライブや特典のグッズ・CDやDVD・キーホルダー・缶バッジなどです。
そういったものを持つ、持ちたい、いつもそばにいたい。そして、それが好きだということを周りに知らせたいというその気持ちはよく分かります。しかし、アイコンはNGです。
では、何が違うのでしょうか?
アイコンの場合は、そのアイコンを家族友人だけでなく誰でも見ることができてしまいます。
アナログ(物)として画像を入手するキーホルダーやスクラップブックは、自分の知っている人・限られた人の中だけで見ることができますし、キーホルダーもスクラップブックにするための雑誌も購入をします。
しかし、アイコンの場合は不特定多数の人が見ることができる上に、デジタルで画像を入手しようとした場合はスクリーンショットや画像検索などでお金を払わずに手に入ってしまいます。
解決策としてはフリー画像があります。
著作権フリー、かつ、そういったアイコンに使っていいという注意書きがきちんとあるもの。それを選んでアイコンにしてもいいでしょう。
自分で絵を描いたりするといった、自分で作るというのも良いでしょう。
また保護者の方のアイコンやSNS投稿に多い子どもの顔。
プライバシー保護の観点から、子どもの顔を見えないように後ろ向きにしたり、顔にイラストやスタンプを重ねたり、ぼかしを入れたりという配慮をする保護者が増えました。
むしろ親世代よりも、祖父母や親せきにも注意が必要です。
プライバシー保護はもちろん、写真は撮った人に著作権があるということや肖像権、自分の子どもの周りに写っている他の子どものプライバシー、子どもが作った音楽や図工の作品には子どもに著作権があることなども、折を見て、お互いの気持ちに配慮しながら伝える事も大切です。
学校行事のオンライン配信のための条件にご理解を!
学校の運動会や文化祭の配信について、後から見られるオンデマンド配信の条件が2021年11月に提示されました。
学校は、
・著作権と個人情報保護を保護者に事前説明
・期間終了後に消す
という条件で配信をすることができます。
保護者の皆さんには、これらの条件への理解をお願いします。
3つの条件は学校が独自で定めた事ではありません。著作権法や学校著作物の有識者が集まった団体が示した条件です。
ですので、学校や教員に意見をしても教員はどうしようもありません。
学校が出した条件についてご理解をお願いします。
行事のネット配信で保護者がやってはいけない行動の例
条件の中には保護者のNG行動についても具体的に示されています。
運動会や文化祭の配信の際に保護者がしてはならない行動の例として、
があり、学校から保護者に事前に説明して理解と協力をしてもらうよう書かれています。
違反が見つかれば学校も見過ごすわけにはいきませんので、次の運営にも支障が出てくるでしょう。
次の行事から条件が厳しくなったり、配信自体ができなくなったりしてしまう場合もあるかもしれません。
また、
これらも著作権法により禁じられているため、学校や教員の一任では決められません。
「色々な人が、長く、いつでも、何度でも見られるようにすればいいのに…」という気持ちはよくわかりますが、著作物を利用している場合、そう簡単にはいかないのです。
オンデマンド配信だけでなく行事のCDやDVDの作成についても同じです。学校は著作権法に配慮しています。
「前はやっていたのに」「コピーできるのだから、してくれればいいのに」という意見もわかりますが、教員が法をやぶるわけにはいきません。
保護者の理解と協力なくしてはオンデマンド配信はできません。
そしてこれは法律で決められていますので、学校や教員はどうしようもできません。どうぞご理解とご協力をお願いします。
子どもの作品に関する著作権の話
「子どもが作品を作る手伝いをする場合」、「子どもが作った作品を利用する場合」に分けてお話しします。
子どもが作品を作る手伝いをする場合の注意点
学校では図画工作・美術、技術や家庭科などで作品などを作ります。現在は他の教科でもパワーポイントや掲示物を作ることもあるでしょう。
作品を作る時、長期休みなどで持ち帰ったりオンライン授業など家で考えたり作ったりする場面で、保護者がアイディアを出すなど手伝いをすることがあるかもしれません。
その時に注意するのがキャラクターや既存の作品の利用です。
まずはキャラクターを描く。既存のキャラクターを絵に描いたりキャラクターをデザインに入れたりということは、授業の中では行っていいのです。しかし、授業外では許可が必要であり許可がない場合は使ってはいけません。
例えば図工で作った作品について。
学校の中・授業の中では良いですが、外部のコンクールに出す場合・外に出す場合には、このキャラクターは載せることはできないのです。
このように、作った後のことを考えるとキャラクターを使うのは避けておいたほうが良いのではないかなと思います。
授業の中では使っていいです。しかし、それがどのように外に出ていくかということをぜひ考えてみてください。
それからアイディアも同じです。
図工でポスターを描く宿題が出ている場合、子どもが困っている時に保護者が「交通安全 ポスター」と検索して、「これどう?」と言ってしまいそうになります。
盗作は当然NGです。作文やポスター・音楽など、最近ではAIを使って盗作を検索するシステムがあったり、盗作とわかると賞を取り消すと条件に書いてあるコンクールもあります。
作品を作る上で、子どもが自分の作品を作るためのアイディアとして複数の作品を見てみることは良いですが、そのまま書き写すといったことを保護者がすすめないように気をつけましょう。
子どもが作った作品の著作権
できた作品の著作権は子どもにあります。著作権は申請や登録は必要なく、作った瞬間に作った人に著作権があります。子どもの作品は保護者はもちろん、教員も勝手に使ったり変えたり複製したりできないのです。
作品は音楽や美術、技術家庭はもちろんのこと、プリントやワークシートにも著作権はあります。子どもは著作物を使う側だけではなく生み出す側でもあることを、保護者が認識することが大切です。
まとめ:保護者がやりがちな著作権違反(オンライン授業・行事配信・子どもの作品)
今日は「保護者がしてしまいがちな著作権違反」について話しました。
保護者は著作権について習っていないので知らなくて当然です。
しかし、大人はもちろん、子どもの周りにも著作物があり、著作物には著作権があります。また、子どもの代わりに子どもの著作物の許諾をすることもあると思います。
その時に子どもや学校に関わることだけでも著作権の知識があると安心です。
学校での著作権を子どもの教育活動に活用するために、保護者の皆さんも理解と協力をお願いします。
このウェブサイトの記事の内容は動画と同じです。
動画「保護者がやりがちな著作権違反(オンライン授業・行事配信・子どもの作品)」も是非ご覧ください。
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