「自分で撮ったぬいぐるみの写真なら、SNSのアイコンに使えるの?」――小中学校での著作権の出前授業で、子どもたちから実際に受けた質問です。
この記事では、ぬいぐるみの写真をSNSやLINEのアイコンにしてよいかを、所有権と著作権の違い、キャラクターぬいぐるみの注意点、写り込みのルールから整理します。先生や保護者の方が子どもに説明するときの判断軸として、お使いください。
ぬいぐるみの写真をSNSのアイコンにしてよいかは、「そのぬいぐるみを買ったかどうか」ではなく、主に「写っているぬいぐるみのデザインが著作物かどうか」で考えます。
ぬいぐるみを購入して手に入るのは物としての所有権で、デザインの著作権は購入しても移らないためです。キャラクターを立体化したぬいぐるみは、自分で撮影した写真であってもアイコンとして公開するには注意が必要と考えられます(権利者が公式に利用を認めている場合を除きます)。
子どもからの素朴な質問:「ぬいぐるみの写真ならアイコンにしていい?」
学校著作権ナビゲーターとして、対面・オンラインを問わず小学校・中学校で出前授業を行ってきました。校種や発達段階に合わせて、著作物の考え方、引用、授業での利用に関する例外(著作権法第35条)などを扱っています。

その中で必ずお伝えしているのが、「キャラクター・有名人・ブランドロゴなどは、著作権や肖像権などの権利があるため許可なくSNSのアイコンには使えない」ということです。同じ授業では、「著作権は作った人に作った瞬間に与えられる」「写真の著作権は撮った人にある」という話もしていました。そこで返ってきたのが、「じゃあ、ぬいぐるみの写真ならアイコンにしていいの?」という問いです。
とても素直で鋭い質問ですね。「写真は撮った人のもの」と聞けば、自分で撮ればよいと考えるのは自然なことです。しかし、ここには見落としやすい落とし穴があります。
なお、子どもたちが悪気なくやってしまいがちな著作権のトラブルとその防ぎ方は、別の記事でも解説しています。

結論:キャラクターかどうかで答えが変わります
Q. ぬいぐるみの写真をSNSのアイコンに使っていいですか?
A. キャラクター性のない一般的なぬいぐるみであれば問題になりにくいと考えられます。一方、キャラクターを立体化したぬいぐるみの場合は、自分で撮った写真でも注意が必要です。
| ぬいぐるみの種類 | 考え方 |
|---|---|
| キャラクター性のない一般的なぬいぐるみ(自分で購入・撮影) | 著作権上、大きな問題になりにくいと考えられます。ただし、デザインによっては著作物と判断された裁判例もあり、一律に「著作物ではない」とは言い切れません |
| アニメ・漫画・ゲームなどのキャラクターぬいぐるみ | キャラクターのデザインの著作権が問題になります。アイコンとして公開するには、権利者の許諾が必要となる可能性があります |
| ネット上で見つけた、他人が撮ったぬいぐるみの写真 | 撮影した人の著作権があるため、使わないようにしましょう |
キャラクターぬいぐるみの場合は、非営利の個人アイコンであっても、写真を公開すること自体が権利者の許諾を必要とする利用にあたる可能性があります。キャラクターによっては、権利者が個人での利用範囲を公式のガイドラインで示していることもあります。使いたい場合は、まず公式の案内を確認しましょう。
所有権と著作権は別の権利です
大量生産されたぬいぐるみを購入すると、そのぬいぐるみの「所有権」は購入した人に移ります。しかし、所有権と著作権は別の権利です。ここが、この問いを考えるうえでの核心なのです。
文化庁の「著作権テキスト」でも、絵画が売買されたときに買主へ移るのは物としての絵画の所有権だけで、著作権は譲渡の契約がなければ移らないと説明されています。ぬいぐるみも同じように考えることができます。「自分のものだから自由に使える」のではありません。「物を持っている権利」と「デザインを使う権利」は、別々に考える必要があるのです。
自分で買ったぬいぐるみを自分や家族で楽しむために撮影すること自体は、私的使用のための複製(著作権法第30条:個人や家庭内で使うためのコピーを認める規定)の範囲と考えられます。一方、SNSのアイコンは不特定多数の人に表示され得るため、家庭内で楽しむ場合と同じには考えられません。
写真の著作権と「写っているもの」の権利
写真を撮った場合、その写真の著作権は撮影した人にあります。ポイントは、写真に写っている被写体が著作物である場合、その被写体の権利も別に考える必要があるという点です。
キャラクターぬいぐるみを撮影した写真がまさにこのケースです。写真の著作権は自分にあっても、写っているキャラクターの絵柄やデザインの著作権は権利者に残っています。
著作権と所有権の違いは研修でも取り上げることの多い内容です。こうした著作権の問題を校内研修で体系的に扱いたい場合は研修テーマの一覧もご覧ください。
▼二次的著作物の著作権についてはこちらの記事で解説しています

「写り込み」には別のルールがあります
テーマパークで撮った写真や自宅での自撮りに、背景の一部としてキャラクターのポスターやぬいぐるみが小さく写ってしまうことがあります。こうしたケースは「写り込み」として扱われることがあります。
写り込みについては、著作権法第30条の2(付随対象著作物の利用:撮影などの際に付随して写り込んだ著作物の利用を認める規定)で、一定の条件のもとで許容されています。2020年の著作権法改正でこの規定の適用範囲が拡大され、従来より柔軟に認められる場面が広がりました。
ただし、写り込んだ著作物が写真の軽微な一部分とはいえない場合(中心的な被写体になっている場合など)は、この規定では認められない可能性があります。権利者の利益を不当に害するような使い方も同様です。ぬいぐるみをアップで撮ってアイコンにする場合は主な被写体にあたるため、写り込みとは別に考えましょう。テーマパークの規約や権利者の方針によっては、別途制限されている場合もあります。
詳しくは、文化庁のサイトで「写り込み」と検索すると確認できます。


