2023年6月に、WIPOの会合において「Building Copyright Literacy to Start with Younger Generation: Strategies, Tools and Best Practices」のテーマで発表しました。
WIPOとはWorld Intellectual Property Organization(世界知的所有権機関)のことで、全世界的な知的財産権の保護を促進することを目的とする国際連合の専門機関です。
今回はアジア太平洋地域10か国の著作局責任者を東京が集まって、各国の著作権制度の現状や課題について意見交換を行い、今後の政府間の協力関係やWIPOによる支援の在り方を議論する会合が開催されました。
その会合において、日本の学校での著作権の現状や小中学生に対する授業実践をお話しする機会を頂きました。
2年連続での登壇となりました。
昨年はオンライン発表であまり登壇の実感がわきませんでしたが、今回は対面での実施となりました。
昨年の発表の様子はこちらから。
歌いました!
冒頭、いきなり歌いました!
主体のWIPO本部はスイス。そして、アジア各国の皆さんは遠路はるばる東京にいらっしゃるのですから、「対面でしかできないことをしたい」と考えました。そして、一緒に登壇した法律家や文化庁著作権課の方に、私の知識は到底およびません。
できることは歌しかない。と導入に『赤とんぼ』を歌いました。
『赤とんぼ』は学習指導要領にある中学生の共通教材の1つです。
三木露風・山田耕筰という偉大な著作者によって作られた曲を、中学時代に学び、そして今は中学生に教えています。そういったことから選曲しました。
講演時間は45分間、対面でPowerPointを共有しながらお話ししました。
事前に資料は英訳していただき、参加者は英語の同時通訳をイヤホンで聞いている状態です。
内容は「オンライン授業」「学校での著作権」「小中学校での著作権授業の実践」「著作権を教える際の注意点」です。
対象者はアジア太平洋地域10か国の著作局責任者です。
それぞれの国によって様々な背景に応じて、「著作権制度をどう普及していくか」「すでに取り組んでいることは何か」ということを他の人の発表から知りました。共通して言えるのは「教育に力を入れたい」という気持ちです。
講演でお話したこと
「オンライン授業」では、「GIGAスクール構想」「著作権法第35条」「SARTRASの制度や学校現場の反応」などを話しました。
「学校での著作権」では、学習指導要領のどの校種・教科に知的財産権の考えが入っているかを話しました。その上で音楽科にしぼり、学習指導要領にどう書かれているか、教科書に載っていること、教員採用試験での出題例を話しました。
「小中学校での著作権授業の実践」では、小学校でのオンライン出前授業の様子を順を追って話しました。
「『ワンピース』はだれのもの?」という導入部分の説明で、会場の皆さんに「『ワンピース』はご存知ですか?」と聞いたところ皆さん深くうなずき、中には「イェーイ」と声を上げて、好きなことをアピールしてくださった国もありました。
続いて、中学校での音楽科での実践では、教材で使ったAKB48や『SPY×FAMILY』の話から始めました。AKB48グループがあるアジア諸国があり、知名度の高さを感じました。
「著作権を教える際の注意点」では、各国に帰ったあとにどのように教えるかを[子ども][教員]2つの視点で話しました。
子どもに著作権を伝える時には、「ダメを教えない」ということが最も大切です。また、作り手・使い手両方の立場で話す必要があることや、法律はわかったけどタダで読みたい・聴きたいという心の葛藤にどう向き合うかまで落としこむ等の話をしました。
教員に著作権を伝える時には、「今日から・自分から・できることから」を伝えること。学校には様々な背景や事情があることを寄り添って理解することを話しました。
まとめ
今回は歌・英語と緊張しっぱなしの講演でしたが、「自分の専門性」と「現場目線」を再認識するとても良い機会になりました。
他の国の参加者から「日本に著作権使用料をたくさん払っているよ。自国で人気のあるキャラクターを作りたい」と聞いたり、フィリピンで取り組んでいる著作権教育を知ったり、教員採用試験の問題に関心が高かったりと新たな学びになりました。
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