知的財産権・著作権で出てくる「著作物」について、
2.各著作物を学ぶ方法
3.著作物に応じた教育
をシリーズで紹介します。
今回は「漫画」を取り上げます。
「海賊版」という言葉を聞いたことはありますか?
言葉は知らなくても、映画が上映される前に出てくるカメラダンサーを見たり、テレビ番組に「番組を許諾なくアップロードすることは違法です」という言葉を見かけたりしたことはあるかもしれません。
音楽や映画で耳にする言葉ですが、すべての著作物に「海賊版」はあります。
特によく使われる音楽・映画の他にビデオ・書籍・ソフトウェア。そして、今回取り上げる「漫画」があります。
「漫画」は言うまでもなく、子どもにはとても身近な著作物であり、著作権教育をするにはもってこいの教材です。
私が「週刊少年ジャンプ」を毎号読んでた1994年は売上部数最高記録の635万部を記録した年だったようです。『SLAM DUNK』『幽遊白書』『ドラゴンボール』といった名作ぞろい。『るろうに剣心』が始まった年でもあります。
著作権のルールは「作品は作った人のもの」「学校は例外」です。
」の動画をご覧ください。
「漫画」という著作物の深刻な被害現状
著作物の中に「漫画」というカテゴリーはありません。
法律上の文言には、「四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物」とあります。
海賊版の被害はどの著作物も大きいですが、漫画の被害は著しく拡大していく一方です。
「日本国内からのアクセス 海賊版上位10サイト合計の月別変化」(ABJ提供/similarweb調べ)によると、2021年10月たった1ヶ月でアクセスは約4億回をこえ、2020年年間の被害額は約2100億円/2021年年間は約1兆19億円でした。少なく見積もってこの金額です。
この金額が本来、著作者である漫画家さんや出版社に入っていると考えたら…ものすごい被害だということがわかります。
インターネット上の海賊版対策のための著作権法改正がされ、令和3年1月1日より開始となりました。
音楽や映像に加え、雑誌や書籍ほか著作物全ての海賊版のダウンロードが違法となりました。
また、自分が公開する側になるのはもちろん違法。使う側として違法と知りつつダウンロードするのも違法となりました。
正規版が有償で提供されている著作物の海賊版を反復・継続してダウンロードした場合、権利者が告訴すれば、2年以下の懲役・200万円以下の罰金に問われる可能性があるのです。
「漫画」を教材として著作権を学ぶ方法
「漫画」の著作権を学ぶための、3つのサイトを紹介します。
総務省のサイト「上手にネットと付き合おう!~安心・安全なインターネット利用ガイド~」
「上手にネットと付き合おう!~安心・安全なインターネット利用ガイド~」の特集ページには、「インターネット上の海賊版対策」のページがあります。
「海賊版を利用するとこういう良くないことがある。著作権法が改正されて、良いことにつながる。」というわかりやすい図式が始めにあります。
『僕のヒーローアカデミア』の海賊版対策のYouTube動画にリンクしていて、著作権法改正の内容についてもわかりやすく書かれています。
小学校高学年以上ですと、少し解説を加えれば理解できる内容です。
一般社団法人ABJ「STOP!海賊版」
ABJとは「Authorized Books of Japan=公認された日本の本」という意味です。つまり「正規のサービスである=海賊版でない」という証明です。
ここでは『STOP!海賊版』として、様々な取組がされています。
人気漫画家16名による書き下ろしの海賊版対策の漫画が、ウェブ上で静止画と動画で見られます。日本語の他に英語・中国語で読むことができます。
他にメッセージバナー広告では、「海賊版」と検索した人に人気漫画24作品のキャラクターが閲覧をやめさせるメッセージが表示される仕組みです。江戸川コナンや桜木花道たちがそれぞれの言葉で海賊版の利用をやめさせようとします。
また、海賊版の見極めをするための「ABJマーク」について。正規のサービスであることを示すABJマークを策定・掲示・普及啓発をしています。
正しい情報を選び取る情報モラル教育に適しているサイトです。
一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)
こちらは広く「漫画」を含めたコンテンツについての情報を得られます。
最近の話題で言うと、海賊版だけでなくファスト映画や海外の知的財産権の交流が上がっています。前述の『STOP!海賊版』の情報や著作権を管理する文化庁の情報も、手に入ります。
中学生や高校生の資料集めに適したサイトと言えます。
「漫画」を使った著作権教育の方法
「漫画」を学校で使う場合を考えてみましょう。
図工美術や技術・家庭の作品を作る時に漫画のキャラクターを描く。
運動会や文化祭の看板やTシャツ、行事のしおりの表紙などで、漫画のキャラクターを描く。
日常的に目にする「学校内の漫画」です。
これらは「授業」なので著作権法35条の範囲内であり問題はありません。
しかし、行事の看板やTシャツ・しおりが学校のウェブサイトや広報誌などの誰もが目にできる物に掲載されると、「授業」の範囲ではなくなり許諾が必要になります。
授業で作った作品もウェブサイトや広報誌に加えて、外部のコンクールや作品展に出品する場合は「授業」ではないので注意が必要です。
「漫画」を著作権教育に結び付ける場合は、こうした授業や行事の一環の制作の過程で話すのが自然でしょう。
また、別の方法として子どもたち自身に新しいキャラクターを考えさせたり、既存のキャラクターの魅力をプレゼンさせたりして、著作者の気持ちを体験させるのも有効です。
漫画やキャラクターのすばららしさは、誰よりも子どもたちがよくよく知っています。また、美術の部活動や趣味で詳しい子どもや好きな子どももいます。
子どもの気持ちをくすぐる授業を展開しましょう。その際に、著作物の使い手としてだけでなく、必ず作り手としての視点を持たせましょう。
まとめ:漫画を使って学校で著作権教育をしてみよう!【図工・美術・技術・家庭・学校行事】
中学校音楽科で著作権の授業をした時、海賊版や違法アップロードの話を一通りした後に正直な生徒が「でも、ここで見られますよ!」と見せてくれました。
誰でも探せてしまう上、中学生はサイトを知っていることがヒーローになってしまうのです。
著作権教育と同時に、著作者や著作物・文化を守る心を育てる教育も同じくらい重要です。ぜひ考えてみてください。
ウェブサイトの記事の内容は動画と同じです。
動画「漫画を使って学校で著作権教育をしてみよう!【図工・美術・技術・家庭・学校行事】」も是非ご覧ください。
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