先生から寄せられる質問で多いのが「YouTubeを授業で見せていいですか」というものです。
この記事では、その答えの根拠を整理したうえで、YouTube自身が著作権を守るために何をしているのかを、投稿する人・視聴する人・システムという3つの視点でご紹介します。ウェブフォーム、コピーライトマッチツール、コンテンツIDという3つのツールの違いも分かります。
記事の内容は最新の状況にあわせて更新していますので、授業でYouTubeを使うときの判断材料としてお読みください。
YouTubeの著作権対策とは、投稿する人に守ってもらうポリシー、視聴する人が使える報告の窓口、そして権利者を支える3つのツール(ウェブフォーム・コピーライトマッチツール・コンテンツID)を組み合わせた仕組みのことです。
2021年12月に初の「著作権透明性レポート」が公開されて以降、著作権に関する対応の大半が自動検出によるものだという状況は続いています。学校著作権ナビゲーターとしてよく聞かれる「YouTubeは危ないのでは」という不安は、この仕組みを知ることで整理しやすくなります。
授業でYouTubeを見せていいですか? 根拠は「投稿者が確認しているから」ではありません
授業で公開されているYouTube動画をその場で見せることは、一定の条件のもとで認められると考えられます。根拠は投稿者の確認ではなく、著作権法第35条第1項(学校などの教育機関で、授業の過程で著作物を利用できることを定めた規定)です。この規定は、公表された著作物であって公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達すること、つまりネット上で配信されているものを教室のモニターなどで見せることを認めています。
改正著作権法第35条運用指針でも、授業内容に関係するネット上の動画を授業中に受信し、教室に設置されたディスプレイ等で視聴させることが「公に伝達」の該当例として挙げられています。
満たす必要があるのは、次のような条件です。
- すでに公表されている著作物であること
- 営利を目的として設置されたものではない教育機関であること
- 教育を担任する者、または授業を受ける者による利用であること
- 授業の過程での利用であること
- 必要と認められる限度であること
- 著作権者の利益を不当に害することとならないこと
なお、補償金の支払いが関係するのは公衆送信を行う場合です(第35条第2項)。教室で受信して見せる「公の伝達」は、無許諾・無償でできるものとされています。
ここで扱っているのは、教室で受信してその場で見せる場合です。オンライン授業で配信する場合は別の整理が必要になりますので、あわせてご確認ください。
重要なのは、「YouTubeにあるものは全部大丈夫」という理解ではないということです。YouTubeは投稿前に権利関係を審査しているわけではありません。アップロード時に投稿者が確認する画面はありますが、すべての投稿者が著作権をきちんと学んで判断できているかというと、そこは疑問が残ります。
ですから、明らかに違法にアップロードされたと分かる動画を授業で使うことは、ただし書きの判断に影響する可能性があり、教育上の配慮という点からもおすすめしません。
授業での見せ方や、ダウンロードして使う場合の考え方は、別の記事で詳しく整理しています。


YouTubeの著作権対策は3つの視点で整理できます
ここからは、YouTubeが著作権のために行っている取り組みを見ていきましょう。3つの視点に分けると、全体像がつかみやすくなります。
| 視点 | 誰が関わるか | 主な内容 |
|---|---|---|
| ①投稿する人 | 動画をアップロードするクリエイター | ポリシーの理解、YouTubeスタジオでの著作権管理 |
| ②視聴する人 | すべてのユーザー | 権利の侵害を報告する機能 |
| ③システム | YouTube・著作権者 | ウェブフォーム/コピーライトマッチツール/コンテンツID |
▶ 動画では1:37〜で、この3つの視点を紹介しています
①投稿する人に求められていること
投稿する人には、アップロードの前に著作権の知識を身につけることが求められています。自分の動画に著作権のリクエストがついた場合の確認や、自分の動画が他の人のところでアップされている場合の削除リクエストは、YouTubeスタジオから行います。
ここで一点、動画との違いをお伝えしておきます。
動画では左側のメニューにある「著作権」を開く手順をご紹介していますが、現在このメニューは「コンテンツ検出」という名称に変わっています。「コンテンツ検出」の中に「著作権」と「類似性」のタブがあり、一致した動画は「一致する動画」タブで確認する形です。新しい機能は段階的に提供されるため、アカウントの状況によって表示が異なる場合があります。動画の画面は2022年1月時点のものとしてご覧ください。
▶ 動画では2:44〜で、当時のYouTubeスタジオの画面を見ながら説明しています
ポリシーとガイドラインに書かれていること
クリエイター向けのサイト「YouTubeクリエイターズ」には、コンテンツ制作のヒントとして「ポリシーとガイドライン」というページがあります。著作権の項目では、クリエイターは自作の動画または使用許諾を得た動画のみをアップロードできると説明されています。つまり、許諾を受けずに自作ではない動画をアップロードすることや、他者が著作権を所有しているコンテンツを自分の動画で使用することはできない、という内容です。
正式かつ有効な削除通知によって、著作権者からコンテンツが無許可で使用されていると通知があった場合には、YouTubeが著作権法に従ってその動画を削除するとも書かれています。ほかにも、不正使用を防ぐために権利者が使えるツールの案内や、著作権侵害についての説明が並んでいます。
▶ 動画では3:48〜で、ポリシーの中身を読みながら解説しています
「フェアユース」はアメリカの考え方です
ポリシーの中には「フェアユース」という説明も出てきます。一定の条件を満たしていれば著作権者から許可を得なくても著作物を再利用できる、とする法原理です。
ここで注意したいのは、これがアメリカの著作権法の考え方だということです。日本の著作権法には、アメリカのような包括的・一般的なフェアユースの規定がありません。日本では、引用(第32条)や授業での利用(第35条)といった個別の規定にあてはまるかどうかで判断します。YouTubeのポリシーページを読むときは、日本の学校にそのまま当てはまるわけではない点を意識しておくと安心です。
▶ 動画では5:08〜で、ポリシー内のフェアユースの記述を紹介しています
②視聴する人ができること
視聴する人にも、できることがあります。すべての動画に「報告」の機能が付いているのです。
- 画面の右上のメニューを開く
- 上から4番目の「報告」を押す
- 表示された理由の中から、下から3番目の「権利の侵害」を選ぶ
この手順で、著作権について問題があるということをYouTube側に報告できます。特別な権限は必要ありません。すべての人が、すべての動画に対して報告できる仕組みになっています。
ここで区別しておきたいのが、報告と削除依頼の違いです。報告は誰でもできますが、著作権侵害による削除依頼を出せるのは、その著作物の権利者本人または代理人に限られます。他人の作品について第三者が削除を求めることはできません。
▶ 動画では6:35〜で、実際の画面を見ながら手順を説明しています
③YouTubeのシステム—著作権を守る3つのツール
YouTubeは、著作権侵害を防ぐために主に3つのツールを用意しています。誰が使うツールなのかが、それぞれ違います。
| ツール | 主な利用者 | 特徴 |
|---|---|---|
| ウェブフォーム | 著作権者であれば誰でも | 削除依頼を送る機会が多くない権利者が使う窓口として案内されている |
| コピーライトマッチツール | 再投稿されることが多いクリエイター | 一致する動画を自動的に検出。200万を超えるチャンネルが利用 |
| コンテンツID(Content ID) | 映画や音楽など複雑な権利管理環境にある著作権者 | 提出されたファイルのデータベースと照合してスキャンする |
※数値はいずれも2021年上半期時点のものです。
※このほか、企業向けに「エンタープライズ コピーライト マッチ ツール」があります。2025年初頭に、それまでのコンテンツ検証ツールに代わるものとしてリリースされました。
ウェブフォーム
ウェブフォームは、著作権者であれば誰でも使える窓口です。著作権で保護されている自分の作品が無断でYouTubeに掲載された場合に、著作権侵害による削除依頼を提出できます。YouTubeのヘルプセンターでは、削除依頼を提出すると法的手続きが開始されると案内されています。
自分の作品を無断で投稿されたときに、削除を求められる入り口がここにある、と考えていただくと分かりやすいでしょう。
▶ 動画では8:31〜で、ヘルプセンターの記載を紹介しています
コピーライトマッチツール
コピーライトマッチツールは、自分の動画を第三者に再投稿されるなど、削除依頼を送る場面が繰り返し生じるクリエイター向けのツールとして案内されています。
YouTube上の他の動画と一致する動画、また一致する可能性がある動画を自動的に検出します。一致が検出された動画はYouTubeスタジオで確認し、どのように対応するかを選べます。利用しているチャンネルは200万を超えるとされています(2021年上半期時点)。
▶ 動画では9:24〜で、機能の詳細を解説しています
コンテンツID
コンテンツIDは、映画や音楽のように著作物の再投稿が頻繁に行われる、最も複雑な権利管理環境にある著作権者を支える仕組みです。
YouTubeにアップロードされた動画は、コンテンツ所有者が提出したファイルのデータベースと照合され、スキャンされます。ヘルプセンターには説明の動画も用意されています。英語ですが日本語の字幕が付いていますので、仕組みを知りたい方はご覧ください。
▶ 動画では10:20〜で、コンテンツIDを紹介しています
レポートが示す数字(2021年上半期)
2021年12月、YouTubeの日本版公式ブログで初の「著作権透明性レポート」の公開が発表されました。2021年上半期の結果は、次のように示されています。
- コンテンツIDを通じた申し立ては7億2200万件以上で、YouTubeのすべての著作権アクションの99%以上にあたります
- コピーライトマッチツールによる削除依頼の数は160万件以上に達しています
- 削除依頼を受けたアップロード者が異議申し立てをした件数も計測されています
ここで補足しておきたいのが、「99%」の意味です。これは照合の精度が99%という意味ではなく、著作権に関する対応全体に占めるコンテンツIDの割合を指しています。動画内(11:36〜)ではこの点が伝わりにくい表現になっていましたので、あわせて訂正します。
その後、数字はどうなったか
透明性レポートはその後も更新されています。直近の状況は次のとおりです。
- コンテンツIDを通じた申し立ては、2025年に約25億件でした。2021年上半期の7億2200万件と比べると、規模が大きく変わっています
- コンテンツIDが著作権に関する対応の99%以上を占めるという構図は、現在も続いています
- 一方で、コンテンツIDを実際に使っている権利者は4,500者ほどで、やや減る傾向にあります
- 申し立てを受けた側が異議を申し立て、それが認められる例も一定数あります
注目したいのは、権利者の選択が「削除」より「収益化」に傾いていることです。2024年には、コンテンツIDの申し立てのうち9割以上で、削除ではなく収益化が選ばれています。
無断で使われた場合に必ず動画が消えるわけではなく、広告収入が権利者に渡る形で決着することも多い、ということです。もっとも、これは権利者が選んだ対応であって、無断で使ってよいということではありません。
数値は更新されますので、最新のものはGoogle透明性レポート(YouTube著作権)でご確認ください。
2022年以降に加わった仕組み
動画の公開後に登場した機能のうち、学校の先生に関係しそうなものを2つご紹介します。
曲だけをミュートする機能 動画のBGMにコンテンツIDの申し立てがあった場合、その楽曲部分だけを消し、会話や効果音は残せる機能が2024年に追加されました。YouTubeスタジオの編集オプションから選べます。学校行事の記録動画を公開したところ、会場で流れていた音楽が拾われてしまった、というような場面で使えます。
ただし、前提を一つ確認しておきましょう。学校行事の記録動画をインターネットで公開することは、授業の過程での利用にあたらないため、第35条の範囲外です。複製と公衆送信にあたり、原則として権利者の許諾が必要になります。この機能はあくまで申し立てを受けたあとの対処であって、公開してよいかどうかの判断とは別の話です。事前の確認では、自分たちの演奏を録画したのか、市販の音源を使ったのかによって必要な手続きが変わる点にご注意ください。
▼公衆送信と補償金についての解説記事


類似性検出 自分の顔がAIによって無断で使われた動画を検出し、削除を求められる機能が2025年から段階的に提供されています。コンテンツIDと同じ仕組みを人物に応用したもので、利用には身分証明書などによる本人確認が必要です。こちらは著作権ではなく肖像やプライバシーの話ですが、生成AIの普及にともなって、プラットフォーム側の保護対象が「作品」から「人物」へ広がってきたことを示しています。
こうした著作権の問題を校内研修で体系的に扱いたい場合は、研修テーマの一覧もご覧ください。
まとめ:仕組みを知ると、いたずらに恐れずにすみます
YouTubeは、投稿する人に知識を求め、視聴する人に報告の窓口を用意し、権利者には3つのツールを提供しています。著作権を守るための方策が、いくつもの層で用意されているのです。この枠組みは2021年から変わっていませんが、扱う件数や画面の名称、AIへの対応は年々更新されています。仕組みそのものを知っておけば、細かな変更があっても慌てずにすみます。
そのうえで、授業で見せられる根拠は著作権法第35条第1項にあり、明らかに違法にアップロードされたと分かる動画は避ける、という判断軸を持っておくと迷いが減ります。いたずらに恐れるのではなく、原則に則って考える。身近なYouTubeは、そのための良い教材にもなってくれるはずです。
よくある質問(FAQ)
Q. YouTubeを授業で見せてもいいのですか?
A. 教室で受信してその場で見せる場合は、できると考えられます。公表された著作物であること、授業の過程での利用であること、必要と認められる限度であること、著作権者の利益を不当に害しないことなどの条件のもとで、著作権法第35条第1項が、公表された著作物であって公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することを認めているためです。この「公の伝達」に補償金は関係しません。ただし、明らかに違法にアップロードされたと分かる動画の利用はおすすめしません。
Q. YouTubeは著作権を守るためにどんなツールを使っていますか?
A. 3つあります。著作権者であれば誰でも使えるウェブフォーム、再投稿されることが多いクリエイターが使うコピーライトマッチツール、そして映画や音楽など複雑な権利管理が必要な著作権者を支えるコンテンツIDです。
Q. 著作権を侵害していると思う動画を見つけたら、どうすればいいですか?
A. 動画の右上のメニューから「報告」を選び、「権利の侵害」を選ぶことで、YouTubeに報告できます。この機能はすべての動画に付いており、誰でも利用できます。
Q. 自分の作品が無断で投稿されていたら?
A. 著作権侵害による削除依頼を提出できます。YouTubeのヘルプでは、削除依頼を提出すると法的な手続きが始まると案内されています。頻繁に依頼を送る必要がある場合は、コピーライトマッチツールが用意されています。
Q. 動画と記事で説明が違う部分があるのはなぜですか?
A. 本動画は2022年1月に公開したもので、当時のYouTubeスタジオの画面と2021年上半期の数値をもとにお話ししています。その後にメニュー名や数値が変わった部分、および授業で見せられる根拠の説明は、この記事で更新しています。記事の内容を正としてお読みください。更新内容をまとめた新しい動画も準備しています。
著作権研修・出前授業のご依頼を承っています。研修の内容・形式・費用の考え方、よくある質問は研修のご案内にまとめています。
この記事は、動画「YouTubeはどう著作権を守っている?コンテンツIDなど3つの対策」をもとに作成しました。

