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【教員のための著作権解説】入学式・卒業式・運動会・文化祭をネットで配信する場合の注意点

【教員のための著作権解説】入学式・卒業式・運動会・文化祭をネットで配信する場合の注意点 学校著作権ナビ 動画
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今日は2021年11月9日に発表された著作権法第35条の運用指針の追補版。特活に関する内容について紹介します。

今回使う資料はSARTRASからご覧いただけます。
SARTRASのサイト>NEWS>お知らせ>「教育著作権フォーラムに関する記事」をご覧下さい。添付されている資料もこちらにPDFの準備があります。

 

 

今回、資料解説動画は2本用意しています。
大まかな内容や具体的な行動を知りたいという場合は『原口 直の一歩先行く音楽教育』のチャンネルの動画「学校行事(運動会・文化祭)をオンライン配信する時の著作権の扱いはどうなる?」をご覧ください。

 

こちらの『原口 直の学校著作権ナビ』ではやや詳しい内容、理由や根拠を元にお話しします。

この動画の情報はアップロード時のものです。運用にあたっては必ず原文と最新の情報をご確認ください。

 

 

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学校での著作権の扱い【基本と例外】

まずは著作権の原則から。

「作品は作った人のもの」作った人のものだから、作品を使うとき・増やすとき・変えるときには作った人に許諾が必要。

これが著作権の大原則です。

 

著作権を1から理解したい方には「学校における著作権入門(学校でコピーが許される理由とは)」の動画をおすすめします。

 

知的財産権とは?

著作権とは知的財産権の中にあります。学習指導要領に載っている「知的財産権」という言葉はここにあります。

著作権には言語や音楽から映画・写真・プログラミングまで、様々なものに著作権があります。
また、それは特許などのように申請が必要なのではなく、生み出したその瞬間に著作権は発生します。先生方が作っているものはもちろん、子どものワークシートや作品にも著作権はあります。

著作権法は全部で124条からなります。
「こういう時に作品を作った人に許可を取ってくださいね」という内容の中には、「例外」「許可を取らなくていいですよ」と書いてある文章もあります。それが許諾不要の例外。

 

こちらはその一部です。
「私的利用」や「著作権フリー」また死後70年の保護期間が切れている「保護期間切れ」は許諾が不要。そしてこの中に「学校」があります。「学校は例外」許諾を取らずに済むということなのです。

この学校について書いてある条文は第35条です。
第30条から50条までの中に「著作権の制限」=例外について書いてありますが、35条が学校についてよく書いてあるものです。今回の資料の第35条というのは、このことなのです。

 

著作権法35条

著作権法第35条の全文はこのようになっています。

「学校は例外」と言いましたが、学校のすべてが例外になるわけではありません。例外は「授業だけ」です。
学校の活動には様々な内容がありますけれども、その中で「授業」つまり許諾が不要=許可を取る必要がないとなっているのは教科や今回の特別活動・学活・生徒会・行事・クラブ活動があります。

一方で授業ではないので、原則(許諾が必要)となるものも学校の活動の中にはあいります。
模擬授業や教職員会議や保護者会・セミナーや情報提供は授業ではないので、学校の中ではありますが許諾が必要になります。
学校だから何でもいいというわけではありませんので、お気をつけください。

 

教員が間違えやすい学校での著作権の取り扱いについては「先生が陥りがちな著作権トラブル(授業と部活・職員会議・研究会の違いとは)」で詳しく解説しています。

 

図に表すとこのようになります。

作った人には許諾を得るということが原則で、学校の授業は例外です。
しかし、原則の中には教員の職員会議やオンライン授業・行事配信・オンライン公開研究会などがあります。例外=引用などを用いたり、補償金を支払うことで、オンライン授業・行事配信ができるということです。

 

【教員のための著作権解説】著作権法 第35条って何?」の動画において、著作権法35条について噛み砕いて解説しています。あわせてご覧ください。

 

「補償金」=SARTRASという団体が管理している授業目的公衆送信の補償金についてです。それについて知りたい場合は「【教員のための著作権解説】SARTRAS(授業目的公衆送信補償金等管理協会)とは?」という動画をご覧ください。
小学生だと1人あたり1年120円を支払う必要があります。支払うことでオレンジで書いたオンライン授業・行事配信は許諾不要になります。

 

 

原則は「作品は作った人のもの」作った人に許諾が要るということ、そして学校の授業は例外。
これを踏まえた上で、今回の資料を読み解いていきましょう。

 

 

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改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版)特別活動追補版とは?

今回の資料は令和3年11月に「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」が発表したものです。こちらは「改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版)特別活動追補版となります。「追補版」ということは、元があるということです。
SARTRASのサイトには「改正著作権法第35条運用指針」の元が上がっていますので、そちらも必ずご確認ください。

 

 

今回の発表は「【初等中等教育】著作物を利用した特別活動における音楽・映像等のインターネット等での配信について」という追加の情報です。(ここからは特別活動を学校用語「特活」と呼んでいきます。)

この資料では大きく2つ解説されています。

1.特別活動で使う著作物
2.特別活動の保護者への配信

 

 

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学校の特別活動で使う著作物の著作権の扱い

特別活動は授業です

当たり前と思うかもしれませんが、授業だから先ほどの「例外」にあたるということを先に再認識させています。特活は先生方には言うまでもなく、儀式的行事や文化的行事・体育的行事などがあります。

(1)著作権法35条の基本

基本を確認しています。

学校の授業の中では許諾が不要で著作物を使うことができる。
しかしながら、必要と認められる限度であることや、権利者の利益を不当に害さないということは守らなければいけない。まずこれをおさえています。

 

(2)権利者の利益を不当に害する例

楽譜のコピー。出演する子どもや保護者に配布をしたりインターネットで配信すること、こちらは不当に害する例…つまりしてはいけないことです。

これをクリアするためには、人数分購入したり、権利者に許諾を取ったりする必要がありますよと書いてあります。

 

(3)支払が必要な場合の対応

授業で著作物を教員と子どもが配信でやり取りする場合にはSARTRASへの支払が必要です。
SARTRASについてはぜひ他の動画を併せてご覧ください。支払をしていることを確認します。

 

(4)支払が不要な例

しかしながら、必要でない場合のことも書いてあります。

文化祭の映像などを不登校や保健室登校・病院内にある学級の子どもにリアルタイム中継する場合には、SARTRASへの支払は不要ですよということが書いてあります。

 

(5)教員/子ども以外の教育支援者が配信する場合

教員/子どもは複製や公衆送信などができますが、事務職員さん(教員支援者・補助者)も依頼があった場合には同じ扱いということが書かれています。

 

(6)授業参観

授業参観で保護者にも配布する場合、配信する場合には子どもと同じもの、そして限度を超えない範囲の中でしたら複製・送信することができると書いてあります。

 

 

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特別活動の保護者への配信の考え方

まずはSARTRASへの支払。必ずこれを行っているかどうかの確認が必要です。

SARTRAS=授業目的公衆送信補償金制度を管理しているのがSARTRASです。SARTRASへの支払をしている場合にはリアルタイム配信は可能です。運動会や文化祭などをリアルタイムで配信することが認められています。

しかし、これまでオンデマンドについては特に書かれていませんでした。今回の資料でそれが明確にされています。オンデマンド(後で見る配信)も可能ですが、条件がありますよということが書かれています。

 

オンデマンド型で後から動画配信をするための条件

SARTRASへの支払の他にどのような条件があるのでしょうか。

 

特活(文化祭や運動会など)のオンデマンド配信の条件としては3つ
・視聴期間を設定すること
・著作権と個人情報保護を保護者に事前に説明をすること
・期間終了後に消すということ

 

条件の中には保護者のNG行動も具体的に書いてあります。

・URLの他人への拡散
・映像の保存や転送
・スクリーンショットなど画面キャプチャー
・SNS等への転載

 

こういったことをしないように、保護者に必ず念を押す必要があります。
つまり「保護者以外が見ないでください」ということ、そしていつでも見られるようにしないでくださいということです。

これを事前に教員から保護者へ十分に説明をしてください。
そして、著作権保護に理解・協力を仰いでください。
そして、保護者から同意を得ておいてください。

ということが書いてあります。これがオンデマンド配信の条件です。

併せて、行事の映像をDVDなどにして配布することについても書かれています。

その場合には作った人の許諾が必要であること。演奏した人の許諾が必要と書いてあります。
合唱祭など完全に子どもが演奏していれば演奏している人の許諾は不要ですが、運動会など誰かが演奏したものを使う場合には許諾が必要になります。

DVD1枚の場合も…1枚を回覧・回収して廃棄しても、許諾が必要です。
気をつけましょう。

 

 

「必要と認められる限度」とはどのくらいか?

そして35条の基本2つめの「必要と認められる限度」この言葉にも解説されています。

「必要と認められる限度」とは、「利用が必要である」そして「配信が必要である」こと。
つまり、特活(運動会や文化祭)で著作物を利用しなければいけないという状態である。またそれをインターネット配信しなければならない状態であるということを、合理的・客観的に説明できなければいけません

また、この利用や配信の必要性について、保護者にも理解や協力を仰ぐ必要があるとあります。

また、著作物の出典を記録とあります。
使用した著作物について、「誰が作ったのか」「どんなところで出版されているのか」、そういった記録をつけましょうかということが書いてあります。

例えば、
「中学校において音楽著作物を含む運動会のダンス競技の映像をオンデマンド型で保護者に配信する」場合の注意書きが例示されています。参考になさってください。

 

「権利者の利益を不当に害する/害さない」とはどういうことか?

次に、先に出てきた35条の基本の3つ目「権利者の利益を不当に害さない」これについても解説されています。
この「不当に害する例」はこのような状態です。

・保護者以外に視聴させる
・必要な期間も超える
・いつでも見られる

こういったことは「利益を不当に害する状態」ですので、してはいけないということです。

とはいえ学校での著作物の扱いは、学校によって様々。また特活の行事の内容によっても様々。学校によってカラーが出るところです。

そういったことに使える「著作物の利用について学校現場で判断するためのヒント」というチェックシートも添付されています。
チェックシートは1から9まであって、著作物の利用が教育機関の授業であるかといったチェック内容から、インターネットでどのような配信をするか、許諾が必要であるか不要であるか、そういったことについて書かれています。

こちらを例に取りながら、学校での利用について考えたりチェックしたりしてみてください。

 

そして、資料の最後には補足として2点書かれています。

学校以外のコンクールでの著作権の扱い

音楽の場合は合唱や吹奏楽などのコンクールを外部でおこなっていますが、演奏や歌唱を収録した録音・録画物の複製については学校か主催団体が著作権処理をしてください、とあります。

 

 

また、この映像を保護者に配布する際にも著作権の処理が必要です。
原則で話した通り、著作権の例外が認められるのは学校の中の授業だけです。学校外は例外には入りませんので、原則「許諾が必要」になります。注意してください。

 

授業での人格権等の注意事項

著作者人格権・実演家人格権といったものもありますが、それについて今回は触れていないですが、授業で使用する際には著作者・実演家・作品に敬意をはらいましょうということが書いてあります。

敬意をはらうとはどういうことか?ということ、「勝手に改変しない」また「著作者名や作品名を明記する」、こういったことが書かれています。

また、特別活動での次のような行為は、人格権等の保護の観点から「その実施を控えるか権利者の同意をとって判断しましょう」という内容もあります。

・未公表の作品を複製、上演、演奏等する場合
・名誉を害したり、創作意図に反する編集などの改変や編曲、歌詞の変更
・イラスト・絵画・写真のトリミングや拡大縮小、部分改変
・見せ方で本来の主旨やイメージを著しく変える場合

運動会や文化祭などでは、ある人の作品をこのように改変することがあると思います。
こういった場合は実施を控える、または権利者の同意を取って判断といった慎重な行動が必要です。
そして、氏名や名称、作品名の表示もしましょうとあります。

今回の資料はSARTRASの中に詳しくあります。
今回は追補版ですので、元があります。「改正著作権法第35条運用指針」こちらもSARTRASのサイトにありますので、ご覧ください。

 

 

まとめ:【教員のための著作権解説】入学式・卒業式・運動会・文化祭をネットで配信する場合の注意点

この中で出てきたように、学校の先生や保護者の方にも著作権の知識は必要です。

学校の先生向けの著作権に関する情報はこのチャンネルでも発信していますし、学校の研修・講習などでもお話をしています。それぞれの学校の実情やお悩みに沿って研修内容を考えますので、ぜひお問い合わせください。

また、今回紹介したように「保護者に対する説明」もこれから求められてきます。
「保護者にどのような話し方をすれば伝わるだろう?」
「保護者との関係を崩したくないので第三者に研修をしてほしい」
「そもそも教員に著作権の知識がない」という方。

国公立中学校での実践の中で得てきた現場目線。こちらを活かした講演・研修をおこなっています。ぜひお問い合わせフォームからご連絡ください。

 

このウェブサイトの記事の内容は動画と同じです。
動画「【教員のための著作権解説】入学式・卒業式・運動会・文化祭をネットで配信する場合の注意点」も是非ご覧ください。

学校での著作権については研修・講習・授業などでお話をしています。(事例→先生向け研修生徒向け授業司書向け研修)国公立中学校での実践経験の中で培った現場目線を大切にしながら、各学校の実情やお悩みに沿って研修内容を考えます。ぜひお問い合わせください。

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この記事を書いた人
原口直

学校著作権ナビゲーター

東京学芸大学卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭。東京都公立中・東京学芸大学附属世田谷中に勤務。

2020年より学校勤務経験を活かして机上の法律と学校現場をつなぐ「学校著作権ナビゲーター」としての活動を開始。公立中学校の音楽科教員として教鞭をとる傍ら、教員・教育実習生・子どもに著作権への理解を深めてもらうための講演活動・情報発信・執筆活動を行っている。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)/東京学芸大こども未来研究所教育支援フェロー

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