運動会・文化祭のネット配信と著作権|保護者へのオンデマンド配信3つの条件

【教員のための著作権解説】入学式・卒業式・運動会・文化祭をネットで配信する場合の注意点 学校行事・広報・SNS
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運動会や文化祭を保護者に配信したい。でも著作権的に何が許されて、何がダメなのか。

この記事では、2021年11月に発表された「改正著作権法第35条運用指針(令和3年度版)特別活動追補版」をもとに、学校行事のインターネット配信における著作権の扱いを解説します。リアルタイム配信とオンデマンド配信の違い、保護者への説明に必要な3条件、DVDへの複製の注意点まで順を追ってご確認ください。

著作権法第35条運用指針(特別活動追補版)とは、2021年11月9日に「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」が発表した、学校行事(特別活動)における著作物のインターネット配信について権利者と利用者の共通認識をまとめた文書です。著作権法第35条の本体となる運用指針(令和3年度版)の補足として公表されており、SARTRASのウェブサイトで原文をご確認いただけます。

著作権ナビゲーターとして学校研修に携わるなかで、「運動会の動画を保護者に送っていいですか」という質問は特によく寄せられます。この追補版は、まさにそのような現場の疑問に答えるために整理されたものです。

 

この記事は、YouTube動画アップロード時の情報に基づきます。必ず原文と最新の情報をご確認ください。

 

 

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著作権法第35条と学校行事の関係

重要なのは、特別活動(以下、特活)が「授業」に位置づけられているという点です。

入学式・卒業式・運動会・文化祭・合唱祭などの学校行事は、学習指導要領に基づく教育課程における特別活動として「授業」に該当すると考えられています。授業であれば、著作権法第35条の適用範囲に入ります。

 

著作権法35条

著作権法第35条(授業目的複製等)は、学校その他の教育機関において授業の過程で著作物を利用できることを定めた規定です。ただし、無条件に「何でもOK」ではありません。次の2つの要件が常に求められます。

  • 必要と認められる限度であること
  • 権利者の利益を不当に害さないこと

この2つを満たした場合に限り、複製や公衆送信が認められています。

▶ 動画では 3:05〜 で第35条と学校行事の関係を詳しく解説しています

また、「学校なら何でも許される」という誤解はよくある落とし穴です。教員の職員会議・保護者会・セミナーなど授業に含まれない活動は、学校内であっても原則として許諾が必要になります。

 

▼学校での著作権の基本の解説記事

学校における著作権入門(学校でコピーが許される理由とは)
【補足】学校で著作物を使用される場合は、最新のガイドライン等を確認・遵守の上でご利用ください。「改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版)」基本:著作権とは?まず、著作権とはどういうものかというと、大きく「知的財産権」という中...
著作権法第35条をわかりやすく解説|学校教育で許諾が不要になる条件とは
著作権法第35条は、授業の過程での著作物の複製・公衆送信を一定の条件のもとで認める規定です。条文の意味、2018年改正でSARTRASが生まれた背景、「授業」の定義まで、学校教員向けにわかりやすく解説します。
先生がやりがちな著作権違反(授業と部活・職員会議・研究会の違いとは)
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SARTRAS補償金の支払いを最初に確認する

学校行事の配信を検討する前に、まず確認したいのがSARTRASへの補償金支払いです。

SARTRASとは、授業目的公衆送信補償金等管理協会の略称で、授業目的公衆送信補償金制度を管理する団体です。授業の過程でインターネット等を通じて著作物を配信する場合、教育機関の設置者(自治体・学校法人等)がSARTRASへ補償金を支払うことで、許諾なく配信できる仕組みになっています。

補償金を支払っている場合、運動会・文化祭などのリアルタイム(ライブ)配信は可能です。

補償金が不要な例外もあります。不登校の児童生徒・保健室登校・病院内学級など、学校に来られない子どもたちへ文化祭等の映像をリアルタイム中継する場合は、著作権法第35条第3項の規定により補償金の支払いが不要です(▶ 動画 8:05〜)。

SARTRASについて詳しくは「SARTRAS(授業目的公衆送信補償金等管理協会)とは?」の記事をあわせてご覧ください。

 

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リアルタイム配信とオンデマンド配信の違い

ポイントは、リアルタイム配信とオンデマンド配信で扱いが異なる点です。

配信形態要件
リアルタイム(ライブ)配信SARTRAS補償金支払い済みであれば可能
オンデマンド(後から見られる)配信補償金支払いに加え、3つの追加条件を満たす必要あり

2021年の追補版公表以前は、オンデマンド配信についての明確な共通認識が示されていませんでした。今回の追補版で、条件付きで可能であることが明確にされたのです(▶ 動画 9:51〜)。

 

 

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オンデマンド配信に必要な3つの条件

SARTRAS補償金の支払いに加え、運動会・文化祭などのオンデマンド配信には次の3つの条件が求められます。

  1. 視聴期間をあらかじめ設定する
  2. 著作権と個人情報の保護について保護者に事前に説明する
  3. 視聴期間終了後、コンテンツ(映像等)を即時に抹消・破棄する

また、配信を受ける保護者が行ってはならない行為についても、事前に十分説明し、同意を得ておく必要があります。運用指針追補版では具体的に次の行為が挙げられています。

  • URLの他人への拡散
  • 映像のダウンロード保存・他人への転送
  • スクリーンショット等の画面キャプチャ
  • SNS等への転載

つまり、「保護者限定」「期間限定」で配信し、配信後は必ず消す、というのが基本的な枠組みです(▶ 動画 10:07〜)。

 

▼配信に当たり保護者に通知すべき事項とは?

学校行事のオンライン配信時に保護者へ通知すべき事項とは?(そのまま使える文例つき)
運動会や文化祭など、学校での行事を配信するという学校が増える中で、どのような内容を保護者に通知すればよいかという実務的な話をします。この情報は2022年9月時点のものです。著作権法や運用指針は変更されたり追加されたりします。必ず最新の情報を...

 

 

「必要と認められる限度」の説明責任

この要件で求められるのは、著作物の利用やインターネット配信が教育上の必要から行われていることを、合理的・客観的に説明できることです。

たとえば「当日来校できない保護者にも生徒の学びの成果を届けることで、学校と家庭の連携を図るために配信が必要」という説明が成り立つかどうかが判断の軸になります。

追補版には、「中学校において音楽著作物を含む運動会のダンス競技の映像をオンデマンド型で保護者に配信する」場合の説明文例と、利用した著作物の出典記録の様式が掲載されています。参考にしてみてください。

また、利用した著作物の出典(作品名・著作者名・出版社等)を記録しておくことも求められます。これは補償金が権利者に適切に分配されるためにも重要な手続きです。

 

 

「権利者の利益を不当に害する」例

次のような配信・利用は「権利者の利益を不当に害する」とみなされ、許諾が必要になる可能性があります。

  • 保護者・協力者以外の者に配信・視聴させること
  • 視聴期限を超えて見られる状態にすること(いつでも視聴可能な状態)

「視聴期間を設けている」と説明していても、それが実質的に機能していない状態では要件を満たさないと考えられます。

また、特活で使う著作物の扱いとして、楽譜等をコピーして出演する子どもや保護者に配布・配信することも「不当に害する例」として明示されています。これをクリアするには、人数分の楽譜を購入するか、権利者に許諾を取る対応が必要です(▶ 動画 7:17〜)。

 

 

DVDに保存して配布する場合の注意点

行事の映像をDVD等の記録メディアに複製して配布する場合は、著作権法第35条の適用外となります。

この場合は、楽曲の著作権者および演奏者(著作隣接権者)の許諾が個別に必要です。運用指針追補版では次の点が明記されています。

  • 子どもだけで演奏している場合 → 楽曲の著作権者の許諾が必要(演奏者の著作隣接権の許諾は不要)
  • 市販CD音源を映像のBGMに使っている場合 → 楽曲の著作権者に加え、レコード会社等の著作隣接権者の許諾も必要
  • DVD1枚だけの制作であっても、また回覧後に回収・廃棄したとしても、許諾が必要

「1枚だから大丈夫」「後で回収するから問題ない」という判断は通用しませんので、注意が必要です(▶ 動画 11:25〜)。

 

 

学校外コンクールの映像・音源の扱い

合唱コンクール・吹奏楽コンクールなど学校外で行われる行事の演奏・歌唱を収録した映像・録音は、著作権法第35条の「授業の過程」に当たりません。

学校外のコンクールでの録音・録画物の複製については、学校または主催団体が著作権処理を行う必要があります。保護者への配布においても同様です。著作権の例外が認められるのは「学校の中の授業」だけという原則を、ここでも意識しておきましょう(▶ 動画 14:42〜)。

 

 

著作者人格権・実演家人格権への配慮

著作権の話とは別に、著作者人格権や実演家人格権への配慮も求められます。

追補版では、特別活動での使用において次のような行為は「その実施を控えるか、権利者の同意を得て判断する」ことが求められると示されています。

  • 未公表の作品を複製・上演・演奏等する場合
  • 名誉を傷つけたり、創作意図に反する改変・編曲・歌詞変更を行う場合
  • イラスト・絵画・写真のトリミング・拡大縮小・部分改変
  • 見せ方によって作品本来の趣旨やイメージを著しく変える場合

また、著作者・実演家の氏名や作品名は、できる限り表示することが望ましいとされています。

 

 

よくある質問

Q. 保護者向けのリアルタイム配信は事前の説明なしでも問題ありませんか?

A. SARTRASへの補償金支払いがある場合、リアルタイム配信は可能ですが、個人情報・プライバシーに関する学校の取り決めへの同意を得た保護者等に限定することが前提です。視聴者の限定とその同意については、あらかじめ保護者への説明と同意取得を行っておくことが望ましいでしょう。

Q. 事務職員が配信作業をする場合も著作権法第35条の対象になりますか?

A. 教員から指示を受けた事務職員等の教育支援者・補助者が、学校内の設備を使って複製や公衆送信を行う場合は、教員の行為として扱われます。同様に、児童生徒の求めに応じて学校の管理が及ぶ形で行う場合は、児童生徒の行為として扱われます。

Q. 授業参観に来た保護者に資料を配布・配信してもよいですか?

A. 授業参観の保護者については、授業で児童生徒に配布・配信した著作物と同じものを、実際に参観できる保護者の人数の範囲内で配布・配信することは「必要と認められる限度内」と考えられています。なお、これは授業参観の際の話であり、行事のオンデマンド配信とは根拠と条件が異なります。

 


著作権研修・出前授業のご相談はこちら

この記事のテーマについて、教職員向けの研修や児童生徒向けの出前授業も承っています。
JASRAC有識者委員・SARTRAS専門委員として、現場に即した内容でお届けします。

▶ 研修・出前授業のご依頼はこちら → https://maruc.work/seminar-request


参考資料:

  • 著作物の教育利用に関する関係者フォーラム「改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版)特別活動追補版」(2021年11月9日公表)
  • SARTRAS公式サイト:https://sartras.or.jp/

 

この記事は、動画「運動会・文化祭の配信と著作権法第35条|保護者へのオンデマンド配信の条件」をもとに作成しました。

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この記事を書いた人
原口直

学校著作権ナビゲーター

東京学芸大学卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭に。東京都公立中学校および東京学芸大学附属世田谷中学校で勤務。元・東京学芸大学こども未来研究所 教育支援フェロー。

2020年より、学校現場での経験を活かし、机上の法律と教育現場をつなぐ「学校著作権ナビゲーター」として活動を開始。教員・教育実習生・子どもたちに向けて、著作権への理解を深める講演・情報発信・執筆活動を行っている。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)/東京学芸大学 附属学校図書館運営専門委員会 著作権アドバイザー(2025年〜)

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