今日はSARTRASという言葉について説明します。
オンライン授業やGIGAスクール構想には欠かせないSARTRAS。この言葉を教員向けに翻訳・解説していきます。
まずSARTRASとは著作権を管理する制度です。
知的財産権の中に著作権はあります。他には特許や意匠といった産業財産権、またその他の権利もあります。
著作権とは言語や音楽、映画といった著作物を守るもの。さらにそういったものを生み出す人たちを守るもの。これが著作権です。
産業財産権の特許・意匠などは申請する必要があります。「特許を出願する」なんていう言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、出願して認められて初めて特許がつきます。
しかし、著作権の場合はその作品(著作物)を生み出した瞬間からそこに権利が発生します。
著作権の基本原則と例外
だから、使うとき・増やすとき・変えるときには作品を作った人に許可を得る必要があるのです。
しかし許可を取らなくていい場合(例外)がいくつかあります。
その一部がこちらです。例えば、
自分だけで使う場合や家族が使う場合には私的利用として許諾が不要です。)
■著作権フリーのもの
例えばイラストや音楽などがあると思いますが、これは著作者(作った人)が「許諾を得る必要はありませんよ」と言っている場合です。こういった場合には許諾を得ずに使うことができます。ただし、条件などがありますので気をつけてください。
■保護期間切れ
著作権の保護期間は作った人が亡くなってから70年間です。70年経つと許諾が不要となり許可を取らずに使うことができます。
学校に関係のある例外は下の3つです。
こちらは引用の条件に合っていれば、著作物を許諾不要で使うことができるという内容です。引用の条件についてはきちんとご確認を下さい。
■試験問題
入試に著作物を使う場合に許諾は不要ということです。しかし入試を本にしたりする場合には許諾が必要になってきますので気を付けて下さい。
■学校
「作品は作った人のもの」作った人に許可を得る。これが原則で学校は例外なのです。「作品は作った人のもの」作った人に使うときには許可を得る必要がある。これが原則ですが学校は例外。
しかし、学校すべてが例外ではなく授業が例外です。
授業にあたるものは教科・特活・学活・児童生徒会・行事そしてクラブや部活動。こちらは学校の活動の中で授業に当たるので許諾が不要。作った人に許可が不要です。
同じ学校の活動の中でも、学校説明会の模擬授業や教職員会議・保護者会・セミナーや情報提供などは授業ではないという扱いですので、原則に従って許可を得る必要があります。学校だからと言ってなんでもいいわけではないのです。
まとめると、このような図になります。
学校は著作権の原則と例外の間にまたがっています。
原則(許諾が必要)に入れたうちのオレンジ色の文字。オンライン授業・行事配信・オンライン公開研、これらは例外や補償金を支払うことによって許諾が不要になります。
この補償金支払、ここにSARTRASが関わってきます。これについてお話をします。
サートラス(SARTRAS)と授業目的公衆送信補償金制度の概要
なぜオンライン授業や行事配信が許諾不要なのか?
では、なぜオンライン授業・行事配信が許諾不要でできているのでしょうか。
授業で使う場合は許諾はもともと不要です。作品を複製したり配布したりする場合、授業で使う分には許諾は不要。これは元からそうです。
右側オンラインで使う場合は許諾が必要でした。
しかし2021年度から授業目的公衆送信補償金制度というのが始まりました。授業目的の公衆送信のために補償金を支払うという制度、これがSARTRASです。
補償金を支払えば許諾不要で使うことができますよという制度。
2020年度は無償でしたけれども、2021年度から書いてある金額…小学生なら120円、中学生180円といった金額(補償金)が1人当たり、年額で必要になってきます。
「あれ集金なんかしていないよ」「支払いなんかしていないよ」と思った先生方、ご安心ください。
お金を支払うのは設置者です。公立学校の場合でしたら教育委員会などが支払うことになっています。
「自分の学校は大丈夫かしら?」と思った方は設置者(公立の場合でしたら教育委員会、大学附属などであれば大学)に確認をしましょう。また2021年12月ごろにはSARTRASのウェブサイトで、どの自治体・どの大学・どの学校が支払っているかというのを公表する予定です。
著作権法改正後の授業目的公衆送信補償金制度の詳細
この補償金を支払うことで、オンライン授業や行事配信ができているのです。
ここからはSARTRASのウェブサイトに出ている資料を使って説明していきます。
SARTRASを検索して「学校教育と著作権」というページに様々な資料が載っています。さらに「※こちらに掲載されております資料は、複製、公衆送信等その他、ご自由に利用ください。」といった著作権に関する注意書きも、さすが書かれています。
では中を見ていきましょう。
これまでも授業で複製をしたり、遠隔合同授業などのための公衆送信をする場合は無許諾・無償でできていました。
今回入ってきたのが右側の黄色い部分。許諾が必要となっていたところが無許諾で有償。公衆送信のための補償金を支払っていれば使えるというふうになりました。
黄色い部分の公衆送信…例えば、
対面授業で使用する資料を外部サーバ経由で送信する場合
またオンデマンド授業で講義映像や資料を送信する場合
スタジオ型のリアルタイム配信授業をする場合
こういった時には無許諾・有償。補償金を支払う必要があります。
右側のスタジオ型リアルタイム配信授業と左の遠隔合同事業のための公衆送信。どこに違いがあるんだ?と思うかもしれません。
左側の場合は、授業者の近くに子どもたちのイラストがありますね。
このように、その場に先生も子どももいてかつそれを同時中継する場合。これはこれまでも無許諾・無償でした。しかし右側の教室に先生しかいない場合、そしてそれを同時中継する場合は別の扱いになります。
SARTRASへの補償金支払いの仕組み
有償となっているオンライン授業。しかし使う資料ごとにいちいち著作者を割り出したり、著作物をどれくらい使うかというのを申請するのは、先生方にとっては困難です。
そのために補償金を支払って著作者に金額が分配できるようになる仕組み。これを代行してくれるのがSARTRAS(授業目的公衆送信補償金等管理協会)というところなのです。
SARTRASに補償金を支払うことによって、著作者にきちんとその金額が渡る、有償で使えるということなのです。
支払われた補償金の分配先は?
学校から預かった補償金。これを著作者に届けるためにSARTRASは指定管理団体に分配金を支払いをします。
例えば音楽でしたらわかりやすく日本音楽著作権協会(JASRAC) に支払いをしたり、他にも日本芸能実演家団体協議会や日本レコード協会、こういったところに支払いがされます。
音楽以外にも新聞や文学、そして写真、美術、漫画、雑誌、自然科学…いろんなジャンルのものがあるということがわかります。
こういった団体にSARTRASが教員の代わりに補償金を支払うということで、著作者にきちんと分配金が行くようになっているのです。
まとめ:SARTRAS(授業目的公衆送信補償金等管理協会)とは?
今日はSARTRASについてお話をしました。
本来であれば学校や教員がオンライン授業をする際に直接しなければいけない著作者の割り出しや支払い。これを代わりにおこなってくれるのがSARTRASなのです。オンライン授業を気兼ねなくするためには、SARTRASという団体は必要です。
このチャンネルではSARTRASのインタビューをアップしていますので、ぜひご興味がある方はご覧下さい。
著作権「作品は作った人のもの」使う・増やす・変えるには作った人に許諾が必要です。学校の授業で使えているのは例外なのです。
これを機にぜひ著作権、学校に関する著作権について関心を持ってください。
この記事の内容は動画と同じです。
動画「SARTRAS(授業目的公衆送信補償金等管理協会)とは?」も是非ご覧ください。
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