今日は学習指導要領の中にある著作権について、校種・教科をまたいでご紹介します。
学習指導要領とは
全国のどの地域で教育を受けても、一定の水準の教育を受けられるようにするために、文部科学省が学校教育法等に基づいて、各学校で教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準を定めたもの
です。
何年生の、どの教科で、何を学ぶということを定めたものです。
この学習指導要領に「著作権」に関わる言葉や考え方は、何年生の、どの教科に入っているのでしょうか。
特に中学校・高校では自分の教科の学習指導要領は穴が開くほど読みますが、他の教科はほとんど読みません。また、私は中学校音楽科でしたので、小学校の音楽は読むことがあっても、他の校種を読むことはありません。
「著作権」という項目で、学年という縦と、教科という横でどのように触れられているか読み進めていきたいと思います。
そもそも「学習指導要領」に著作権はあるのか?
学習指導要領そのものに著作権はあるのでしょうか。
著作権は作った人のものが著作権の原則です。文章に著作権はあり、使う場合には作った人に許可を取る必要があります。
しかし、文章の中でも著作権がない文章として、著作権法では4つ掲げています。
②国、地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの
③裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの
④①から③までに掲げるものの翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が作成するもの
学習指導要領には著作権がありません。そのため、許可なしで使ったり増やしたりすることができます。
そして、「知的財産権」という言葉。
著作権は知的財産権の中の1つです。
学習指導要領では「著作権」という言葉ではなく、「知的財産」や「知的財産権」という言葉が使われている教科もありますので、それも取り上げます。
小学校の学習指導要領の中での著作権の扱い
音楽
表現したり鑑賞したりする多くの曲について、それらを創作した者がいることに気付き、学習した曲や自分たちのつくった曲を大切にする態度を養うようにするとともに、それらの著作者の創造性を尊重する意識をもてるようにすること。
また、このことが、音楽文化の継承、発展、創造を支えていることについて理解する素地となるよう配慮すること。
中学校の学習指導要領の中での著作権の扱い
音楽
自己や他者の著作物及びそれらの著作者の創造性を尊重する態度の形成を図るとともに、必要に応じて、音楽に関する知的財産権について触れるようにすること。
また、こうした態度の形成が、音楽文化の継承、発展、創造を支えていることへの理解につながるよう配慮すること。
美術
【誤】美術に関する知的財産権や肖像権などについて配慮し、自己や他者の創造物等を尊重する態度の形成を図るようにすること。
【正】創造することの価値を捉え,自己や他者の作品などに表れている創造性を尊重する態度の形成を図るとともに,必要に応じて,美術に関する知的財産権や肖像権などについて触れるようにすること。また,こうした態度の形成が,美術文化の継承,発展,創造を支えていることへの理解につながるよう配慮すること。
技術・家庭
知的財産を創造、保護及び活用しようとする態度、技術に関わる倫理観、並びに他者と協働して粘り強く物事を前に進める態度を養うことを目指すこと。
特に技術分野では
ア⑴については、情報のデジタル化の方法と情報の量、著作権を含めた知的財産権、発信した情報に対する責任、及び社会におけるサイバーセキュリティが重要であることについても扱うこと。
国語
「知的財産権」「著作権」という言葉ではありませんが、国語の中には引用について書かれています。
比較や分類、関係付けなどの情報の整理の仕方、引用の仕方や出典の示し方について理解を深め、それらを使うこと。
中学校では実技教科と国語。ここに知的財産権の考え方が入っています。
高校の学習指導要領の中での著作権の扱い
高校は芸術の中に、音楽・書道・美術・工芸があります。
音楽・書道
自己や他者の著作物及びそれらの著作者の創造性を尊重する態度の形成を図るとともに、必要に応じて、音楽に関する知的財産権について触れるようにする。また、こうした態度の形成が、音楽文化の継承、発展、創造を支えていることへの理解につながるよう配慮する。
(書道は、「音楽」を「書道」に置き換えて読んでください。)
美術・工芸
創造することの価値を捉え、自己や他者の作品などに表れている創造性を尊重する態度の形成を図るとともに、必要に応じて、美術に関する知的財産権や肖像権などについて触れるようにする。また、こうした態度の形成が、美術文化の継承、発展、創造を支えていることへの理解につながるよう配慮するものとする。
情報
1年生必修の内容です。
各科目の指導においては、情報の信頼性や信憑性を見極めたり確保したりする能力の育成を図るとともに、知的財産や個人情報の保護と活用をはじめ、科学的な理解に基づく情報モラルの育成を図ること。
「信頼性や信憑性を見極める」…大人でもなかなか難しい所です。
国語
引用の仕方や出典の示し方、それらの必要性について理解を深め使うこと。
まとめ:【教員のための著作権解説】学習指導要領の中での著作権の扱い
小中高すべてで「知的財産権」「著作権」に関わる内容が記載されていることがわかりました。学習指導要領に書かれているということは、教科書に載っているということです。
また、小中・中高、音楽科は東京都の教員採用試験で著作権に関する問題が出題されています。
意外だったのは知的財産権のうち、産業財産権・特許につながる数学や理科に記述がなかったことです。
私が所属している日本知財学会の教育分野には理系の先生が多いので、算数・数学、理科にも広がっていくことを期待します。何より、算数・数学、理科は音楽、美術、技術・家庭より圧倒的に授業コマ数が多いのです。
「著作権」「知的財産権」という言葉はない教科にも「創造」という言葉は「総則」や「特別の教科 道徳」に出てきました。我が国にとって大切な財産である「知的財産」を、校種や教科に関わらず教育の中に入れていくことは重要だと感じます。
ウェブサイトの記事の内容は動画と同じです。
動画「【教員のための著作権解説】学習指導要領の中での著作権の扱い」も是非ご覧ください。
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