学校管理職のための著作権ガイド:基本から実践まで

学校著作権ナビ 動画
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今日は管理職の先生方に向けて、著作権についてお話しします。

私はさまざまな対象に向けて著作権について講演していますが、その中には管理職の方からのご依頼も含まれています。学校の授業や行事だけでなく、全体を見渡したときに管理職の先生が気をつけてほしい点を取り上げます。

 

初めにご案内です。この情報は動画配信日開始日時点の情報です。必ず最新の情報をご確認ください。また運用の際は必ず原文をお読みください。

 

復習ですが、著作権は知的財産権の一つで、作品が作られた瞬間にその人に権利が発生します。子どもたちも先生方も同様です。著作権法の原則は「作品は作った人のもの」です。したがって、著作物を「使う時」「増やす時」「変える時」には作った人の許諾が必要です。

一方で、著作権法には例外的に許諾が不要となる場合があります。その中の一つが学校です。

次に、管理職の先生方に向けて、「著作物を使う側」「著作物を作る側」「著作物を使わせる側」という三つの観点から著作権のお話をします。

 

学校は例外である」ということが著作権法35条に定められています。動画「教員必見!著作権法 第35条の基本と学校での適用」で解説しています。
著作権法第35条をわかりやすく解説|学校での適用と注意点
著作権法第35条の基本をわかりやすく解説。学校での具体的な適用方法や注意点、改正点の影響について詳しく説明します。教員必見のガイドとして、授業や複製の定義も事例を交えて解説。学校現場での著作権法第35条の正しい理解と活用をサポートします。

 

 

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著作物を使う際の注意点

まずは「ご自身が著作物を使う場合」の観点からです。著作物を最も使う場面は、学校のウェブサイトではないでしょうか。「実際に著作物が使われているか?」「どのように使われているか?」という視点で再度見直してみてください。

どういった点に注意すればいいのか、以下の3つのポイントを確認しましょう。

▶他人が描いたイラストや写真があるか?
学校のウェブサイトに他の人のイラストや写真がある場合は、「利用規約を読む」「著作権者の許可を得る」「子どもの著作物も同様に扱う」という3点に留意してください。

▶古い「●●だより」がそのまま掲載されていないか?
ウェブサイトに古い「学校だより」「給食だより」「保健だより」などがそのまま掲載されている場合、著作権の問題が生じる可能性があります。使用料を支払う場合、掲載期間全体が対象となることがありますので、不要なものは削除してください。

▶ウェブサイトが誰でも閲覧できる状態になっていないか?
公開範囲を考え、本当にそのコンテンツを誰でも閲覧できる状態にする必要があるのかを再考しましょう。例えば、「学校だより」や「給食だより」は在校生や保護者のみが閲覧できるように制限を設けることをおすすめします。

次に、各ポイントについて詳しく説明します。

 

他人のイラストや写真の使用

学校のウェブサイトに他人のイラストや写真がある場合、次の3つの点に留意してください。

利用規約を読む

他人の著作物を使用する際には、必ずその利用規約を読むことが重要です。イラストや写真、音楽、グラフなど、さまざまな著作物には利用規約が付随しています。利用規約には「このように使うならば無料」「ビジネス目的でなければ使用可能」などの条件が書かれています。

たとえば、著作物に©という表記を残すことで無料使用が認められる場合や、100部以内の印刷なら許諾不要といった具体的な指示があることがあります。逆に、「トリミングはしない」「暴力的な表現には使わない」「会員登録が必要」といった制限も書かれています。

異なるウェブサイトからイラストを使用する場合は、それぞれのサイトの利用規約を必ずチェックし、遵守するようにしましょう。

 

動画「安心して使える!学校での無料イラスト・写真素材の正しい使い方」で、ウェブ上の素材を安心して使うための簡単なコツを紹介しています。
学校で安心して使える!イラスト素材の著作権ルールと正しい利用法
学校や教育現場でイラストや著作権を正しく扱う方法を徹底解説!文化祭や授業でのトラブル回避のポイントや、具体例を交えた実践的なガイドです。著作権に詳しくない方でも安心して利用できる情報満載。

 

著作権者の許可を取る

他人の著作物を使用する場合、著作権者の許可を取ることが基本です。たとえば、「学校だよりにこのイラストを載せていいですか?」「何部印刷してもよいですか?」といった確認を必ず行いましょう。新聞社の著作物を使用する場合は、新聞社のウェブサイトに申請書の雛型や連絡先が掲載されていることが多いので、それを参考にして連絡を取り、許可を得てください。

著作物を使用する際に許可を得るのは、著作権法に従った適切な手続きです。この際、場合によっては使用料が発生することもありますが、それも含めて適切に対応することが求められます。

子どもの著作物も同じ扱い

他人の著作物というとプロの作品を想像しがちですが、子どもの作品にも著作権が発生します。子どもが描いたイラストや撮った写真を使用する際にも、必ずその子どもから許可を取る必要があります。

著作権は作成者に自動的に発生するため、子どもの著作物も大人の著作物と同様に保護されます。特に卒業生の作品を使用する場合は、許可を得る手続きを怠らないように注意しましょう。

また、子どもの著作物に既存のキャラクターが含まれている場合、元のキャラクターの著作権者にも許可を取る必要がある場合があります。このように、子どもの作品を使用する際には、著作権法の基本原則をしっかりと守り、適切に対応することが大切です。

 

過去の「●●だより」の管理と公開範囲

次に、過去の「●●だより」がそのまま掲載されていないか確認しましょう。古い「●●だより」がウェブサイトに掲載されている場合、以下の理由から注意が必要です。

過去の「●●だより」がそのまま掲載されている場合の問題点

学校に勤務している方なら、ある年度のある月の「学校だより」はその当月しか読まれないことは理解していると思います。しかし、イラストなどの著作物を提供した著作者からすると、ウェブサイトに掲載されている期間中ずっと利用されていたと見なされる可能性があります。

したがって、使用料を請求される場合、掲載期間全体分の使用料を支払う必要が生じることがあります。不要なものはウェブサイトやサーバーから削除するようにしましょう。

学校は例外的に著作物を使用できる条件

学校が例外的に著作物を使用できる条件の一つに、「学校の授業であること」や「教員と子どものやり取りであること」、「利用が最小限であること」があります。

したがって、当該年度の当該月の「学校だより」だけを掲載し、必要最小限の範囲で利用することが求められます。これにより、古い「●●だより」は削除することが推奨されます。

ウェブサイトの公開範囲について

最後に、「ウェブサイトが誰もが閲覧できる状態」についてです。すべてのコンテンツを誰でも閲覧できる状態にする必要があるのか、再考することをおすすめします。

例えば、学校の案内や教育方針、運営方針といった情報は広く公開するのが適切ですが、「学校だより」や「給食だより」は在校生のみが閲覧できるようにするなど制限を設けると良いでしょう。このような制限を設けることで、著作物の不適切な利用を防ぐことができます。

 

 

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著作物を作る際のポイント

次に、「著作物を作る側」の観点についてお話しします。管理職の先生方が著作権者になる場合のポイントを確認しましょう。

 

自分で撮った写真について

写真の権利には、「写真を撮った側」と「写真に写っている側」の両方の権利があります。

肖像権という言葉がありますが、肖像権法は存在しません。
写真を撮った人には著作権があり、写っている人にはプライバシー権があります。例えば、校長先生が1年1組の写真を撮った場合、校長先生に著作権が発生します。そのため、その写真を「使う時」「変える時」「増やす時」には校長先生の許可が必要です。

一方で、写っている生徒には無断で撮影されない、勝手に公表されないというプライバシー権があります。写真を使用する際には、撮った人と写っている人の両方の権利を尊重してください。

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「●●だより」について

「●●だより」を作成し、ウェブサイトに掲載したり、紙で配布したり、データで配信したりする際には、その内容に注意を払うことが重要です。作成者には著作権があるため、他のサイトに無断で掲載されていないか、または配布範囲が適切であるかを確認してください。著作権の管理を徹底することで、無断使用を防ぎ、著作権者の権利を守ることができます。

管理職の先生方は、著作物の作成に関わる場面が多いです。自分が著作権者になる場合の基本的なルールを理解し、適切に対応することが求められます。また、教員や生徒が作成した著作物についても同様の配慮が必要です。著作権に対する正しい認識を持ち、学校全体で遵守するよう心掛けましょう。

 

 

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著作物の利用を許可する際の注意事項

最後に、「著作物を使わせる側」の観点についてお話しします。管理職の先生方は、教員や生徒に対して著作物の利用を許可する立場にあります。以下のポイントを押さえて、適切な指導を行いましょう。

 

「●●だより」の決裁

学校ではさまざまな「●●だより」が発行されます。その中には他人の著作物、イラストや本の表紙、写真、新聞記事などが使用されることが多いです。これらの決裁の際には、次の点に注意してください。

・著作物の利用規約を読んで確認する
・著作権者の許可を得る
・子どもの著作物にも同様に配慮する

 

発信物の決裁

学校のウェブサイトに掲載するブログやSNSの投稿、公式のYouTubeチャンネルでの発信物なども同様に注意が必要です。また、研究会などで学校のことを発信する場合も、著作物の利用に対する注意が求められます。特に他人の著作物を含む場合は、必ず許可を取るか、使用条件を確認してください。

 

授業で作成するスライドやレポート

教員や生徒が日々の授業で作成するスライドやレポートにも、他人の著作物が含まれることがあります。これらの場合も、利用規約を確認し、必要に応じて許可を得るように指導してください。具体的には、以下のような手順が必要です。

・使用する著作物の利用規約を確認する
・著作権者に許可を求める
・著作物の適切な引用を指導する

 

SARTRASを知る

授業で他人の著作物を使用する際、特にオンラインでの使用については、授業目的公衆送信補償金制度を活用することが有効です。

SARTRAS(授業目的公衆送信補償金等管理協会)に対して、小学生1人あたり年額120円、中学生180円、高校生420円を支払うことで、授業の範囲内において許諾不要で他人の著作物を使用できます。
資料をメールで送信したり、Google Classroomなど外部サーバー経由で配信したり、オンデマンド授業やリアルタイムの配信授業が可能になります。

SARTRASへの支払い状況は自治体や学校名で検索できるため、実際に利用していることを確認し、教員や生徒に制度を説明してください。

補償金を支払うことで何ができるようになるかを「学校教職員必見:120円の補償金で広がる授業の可能性」で具体的に解説しています。
授業目的公衆送信補償金で変わる授業!120円で広がる教育の可能性
授業目的公衆送信補償金制度を活用して、わずか120円を支払うことでで授業の可能性を広げる方法を解説します。著作権に関する重要なポイントを押さえ、教育現場での新たな指導方法を提案します。現職教員必見の情報です!

 

これらのポイントを守ることで、教員や生徒が著作物を適切に利用できるようになります。管理職の先生方は、著作権に対する正しい理解を持ち、適切な指導を行うことで、学校全体での円滑な運営をサポートしてください。

 

 

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管理職としての著作権への対応まとめ

今日は管理職の先生方へ向けて、3つの観点から著作権についてお話ししました。

著作物を使う側

管理職の先生方は、学校のウェブサイトや「●●だより」などで他人の著作物を使用する際、利用規約の確認や著作権者の許可取得に注意を払う必要があります。特に古い「●●だより」がそのまま掲載されていないかを定期的にチェックし、不要なものは削除することが大切です。また、公開範囲の設定も再考し、必要に応じて閲覧制限を設けることで、著作物の不適切な利用を防ぎます。

 

著作物を作る側

管理職の先生方自身が著作物を作成する場合、または教員や生徒が作成した著作物に対しても、著作権を尊重することが求められます。自分で撮った写真や作成した「●●だより」などに対しても、適切な権利の管理を行いましょう。著作権は作品が作られた瞬間に発生しますので、教員や生徒の作品についても同様に配慮する必要があります。

 

著作物を使わせる側

管理職の先生方は、教員や生徒が日々の授業や行事で他人の著作物を適切に利用できるように指導する立場にあります。著作物の利用規約を確認し、必要な場合は許可を得るように指導してください。また、授業目的公衆送信補償金等制度を有効活用することで、授業におけるオンラインでの著作物利用を円滑に行うことができます。

 

重なる部分もありましたが、管理職の先生方は「著作物を使う側」「作る側」「使わせる側」という3つの役割を持っています。これらの役割を理解し、正しい著作権の知識を持って対応することが、円滑な学校運営に繋がります。

管理職の先生方が著作権に関する知識を持ち、根拠を持って説明できるようにすることで、教員や生徒も安心して著作物を利用できる環境を整えることができます。

学校での著作権については研修・講習・授業などでお話をしています。(事例→先生向け研修生徒向け授業司書向け研修)国公立中学校での実践経験の中で培った現場目線を大切にしながら、各学校の実情やお悩みに沿って研修内容を考えます。ぜひお問い合わせください。

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この記事を書いた人
原口直

学校著作権ナビゲーター

東京学芸大学卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭。東京都公立中・東京学芸大学附属世田谷中に勤務。元東京学芸大こども未来研究所教育支援フェロー。

2020年より学校勤務経験を活かして机上の法律と学校現場をつなぐ「学校著作権ナビゲーター」としての活動を開始。教員・教育実習生・子どもに著作権への理解を深めてもらうための講演活動・情報発信・執筆活動を行っている。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)

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