【先生向け】120円で授業が変わる!オンライン授業の著作権、もう迷わない「授業目的公衆送信補償金制度」とは

著作権の基礎知識
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「『このYouTube動画、授業で見せたいな』
『このサイトのイラスト、分かりやすいから資料に使いたい』

ICTを活用した授業が当たり前になった今、先生方がそう思う機会は増えているのではないでしょうか。しかし同時に、『これって著作権は大丈夫?』という不安を感じる場面も少なくないはずです。

この記事では、教職員の皆様が安心して著作物を利用できるよう、授業目的公衆送信補償金制度を中心に、学校での著作権の基本的な扱いについて分かりやすく解説します。

 

この情報は動画配信日開始日時点の情報です。必ず最新の情報をご確認ください。また運用の際は必ず原文をお読みください。

 

 

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授業目的公衆送信補償金制度とは?その背景と目的

まず、授業目的公衆送信補償金についてご説明します。

この補償金は、小学生の場合1人あたり1年間120円を支払うもので、授業目的の公衆送信のために使われます。この記事では、この120円を支払うことで何ができるのか、どれくらい集まっているのか、そしてどこに使われているのかについて解説します。

著作権の原則と学校における例外

著作権は知的財産権の一つで、作品が作られた瞬間にその作者に権利が発生します。これは子どもたちや先生方にも当てはまります。著作権法の原則は、「作品は作った人のもの」であり、使う時、増やす時、変える時には、作った人の許諾が必要です。

しかし、学校での使用は「例外的な使い方」として許諾不要で使える範囲が定められています。

 

 

オンライン授業と著作権制度改正の必要性

これまでの紙媒体での授業では、他人の著作物を授業で複製したり配布したりする場合、許諾は不要でした。

しかし、作品をオンラインで使う場合(例えばグラフ、写真、イラストなど)、いちいち作者全員に許諾を取っていては、子どもたちも教員も大変で、授業を行うことが困難になります。

このような状況に対応するため、2021年から「授業目的公衆送信補償金制度」がスタートしました。これは著作権法第35条に明記されており、サートラス(SARTRAS)という団体が管理しています。
この制度により、小学生は1人あたり120円、中学生180円、高校生420円を年に1回サートラスに支払うことで、許諾が不要でオンライン上で著作物を利用できるようになりました。

 

以上の著作権の基礎をもう少し詳しく解説した動画もあります。ぜひご覧ください。
【教員のための著作権解説】著作権法 第35条って何?
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授業で著作物はどこまで使える?著作権法第35条を先生向けにやさしく解説
授業での著作物の使用、どこまで許される?著作権法第35条の内容を、教員向けにわかりやすく解説します。SARTRAS制度や運用指針のポイントも丁寧に紹介。

 

 

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120円でできること:無許諾利用の範囲拡大

授業目的公衆送信補償金を支払うことで具体的に何ができるようになるのか、また、この制度の範囲内で何が無許諾・無償で利用できるのかを解説します。

 

無許諾・無償で可能な利用範囲

120円を支払わなくても、以下の利用は無許諾・無償で可能です。

  • 複製(対面授業資料として): 対面授業で使用する資料を印刷し、子どもたちに配布することは、学校の授業の範囲内であれば無許諾・無償で行えます。
  • 遠隔合同授業等のための公衆送信: 教員が教室で授業をしていて、その同時中継先に子どもたちがいるような遠隔合同授業の場合、第35条の学校の授業の範囲内であれば無許諾・無償で利用が可能です。

 

120円を支払うことで可能になる無許諾・有償の利用範囲

120円の補償金を支払うことで、本来許諾が必要だった行為が「無許諾・有償」で可能になりました。

  • 対面授業の予習復習用資料の送信:
    • 対面授業の予習復習用の資料をメールで子どもたちに送信する場合。
    • 対面授業で使用する資料を外部サーバー経由で送信する場合(例:Google Classroomのクラスに資料をアップロードする)。
  • オンデマンド授業での利用: オンデマンド授業で、講義映像や資料を送信する場合(例:1週間前の授業動画やワークシートを後から見られるように送信する)。
  • スタジオ型リアルタイム配信授業: 教員が教室にいて、遠隔地(子どもの自宅や図書館など)にいる子どもたちへリアルタイムで同時中継する授業において、資料をやり取りする場合も120円を支払っていれば可能です。

これらの便利な利用は、120円の補償金を支払っているからこそ可能になります。
ただし、この制度は万能ではありません。安心して活用するために、いくつか重要な注意点を確認しておきましょう。

 

授業目的公衆送信補償金制度の注意事項

ただし、120円を支払っているからといって何でもできるわけではありません。

  • ドリル・ワークブックの複製・公衆送信の禁止: ドリルやワークブックを無断で複製したり、公衆送信したりすることはできません。紙媒体でもオンラインでも同様に、複製には許諾が必要です。これらを授業で利用する際は、人数分購入するか、「複製可能」と明記されているドリルやワークブックを選びましょう。
  • 利用規約の確認: ウェブサイト上の素材を利用する場合も、必ずその利用規約を確認し、どのような利用が許可され、何が禁止されているかを把握してください。

 

SARTRASとは?オンライン授業と著作権の例外を支える制度
「SARTRAS(サートラス)」は、オンライン授業における著作物の利用を支える補償金制度です。学校教育における著作権の原則と例外を、教員向けにわかりやすく解説します。

 

 

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集まった補償金の行方:どこに、どのように使われているのか

次に、集まった補償金がどのように使われているのかについて説明します。

 

集まった補償金の総額

サートラスの資料によると、2024年3月31日現在で、約48億7000万円の補償金が集まっています。

 

補償金の流れと分配

先生方や児童生徒が支払った補償金は、学校設置者・教育委員会などを通じて一旦サートラスに集められます。そこから、現在のクリエイターへの「感謝」と、未来のクリエイターへの「投資」という、二つの大きな目的のために分配・活用されていきます。

  • 作った人への分配(分配基金:8割):
    • 集まった補償金の8割(約34億円)は、「作った人」、つまり著作物の権利者(絵を描いた人、音楽を作った人、グラフを作った人、写真を撮った人など)に分配されます。
    • 分配額は、いくつかの学校が利用した著作物を報告するサンプル調査に基づいて決められます。
  • これから作る人への活用(共通目的基金:2割):
    • 集まった補償金の2割(約9億円)は、「これから作る人」のために使われる「共通目的事業」に活用されます。
    • これまでに、著作権の研修や教材資料作り、コンクールやコンテストの運営、データベースの作成などに利用されています。
    • 例えば、「本屋大賞」の運営の一部や、東京イラストレーターズソサエティの公募、新日本フィルハーモニー交響楽団のアウトリーチ(学校の鑑賞教室での著作権に関する話など)、新聞社などが行う文学賞や音楽賞などにも活用されています。
    • 2022年度には、委託事業1件と助成事業38件が実施されています。

 

みなさんの学校に利用報告提出の依頼が届いたら、この「【補償金の行方】SARTRASの利用報告の意義とその役割の紹介」の動画を参考にして記入提出のご協力お願いします。
【補償金の行方】SARTRASの利用報告の意義とその役割の紹介
2021年度から始まった授業目的公衆送信補償金制度。オンライン授業の著作物使用料を子ども全員分、支払うという仕組みです。支払った補償金を管理する団体を授業目的公衆送信補償金等管理協会SARTRAS(サートラス)と言います。この動画の中でも...

 

このように、補償金は現在の著作権者だけでなく、未来のクリエイターを支援するためにも使われています。

私が行っている著作権研修の一部もSARTRASの共通目的事業の助成金を頂いて実施しています。その場合、研修のスライド表紙に双葉ようなロゴマークをつけていますが、これは共通目的事業の助成金を受けて実施されていることを示しています。著作権の知識が広がり、意識が高まることで、創造と活用の良い循環が生まれることが期待されます。

 

 

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まとめ:著作権への意識を高め、教育現場での創造的な活用を

この記事では、授業目的公衆送信補償金制度を中心に、学校における著作権の基本と具体的な活用方法について解説しました。

この制度については、情報担当者や管理職、学校司書や学校事務など、学校の著作権やお金に関わる方々の間でも、まだ認知度が低いのが現状です。先生方が制度を理解していなければ、子どもたちに著作物を大切にする気持ちを伝えることも難しくなります。

 

著作権法35条がなかったら教員の仕事がどれだけ大変になるのか動画「【教員向け】知らないとヤバい!あなたの授業を支える『著作権法第35条』がなくなったら…?【著作権解説】」で解説しています。
知らないと怖い著作権の「もしも」の話。あなたの授業は『第35条』で守られている
授業での教材コピー、当たり前だと思っていませんか?実は学校での著作物利用は「著作権法第35条」で特別に守られています。もしこの法律がなくなったら…?教育現場が崩壊しかねない「もしも」の話を通じて、先生が知るべき著作権の重要性を解説します。

 

私たちは、自分たちがきちんと使用料や補償金を支払っているという事実を知ることで、オンラインで著作物を胸を張って使うことができるようになります。そのことにより、自分たちの作る著作物はもちろん、他人の著作物を尊重する気持ちを育む第一歩となるでしょう。

 

この記事は、動画「【10分でわかる】オンライン授業の著作権|年間120円の授業目的公衆送信補償金制度とは?」をもとに作成しました。

学校における「著作権」の正しい理解と実践のために
著作権に関する研修・講習・授業を通じて、学校現場での対応についてお伝えしています。
これまでの研修例には、先生向け研修生徒向け授業司書向け研修などがあり、幅広いニーズに対応しています。

国公立中学校での実践経験をもとに、現場に即した内容でご提案いたします。
学校ごとの課題やご要望に応じて柔軟に対応いたしますので、ぜひご相談ください。

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この記事を書いた人
原口直

学校著作権ナビゲーター

東京学芸大学卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭に。東京都公立中学校および東京学芸大学附属世田谷中学校で勤務。元・東京学芸大学こども未来研究所 教育支援フェロー。

2020年より、学校現場での経験を活かし、机上の法律と教育現場をつなぐ「学校著作権ナビゲーター」として活動を開始。教員・教育実習生・子どもたちに向けて、著作権への理解を深める講演・情報発信・執筆活動を行っている。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)/東京学芸大学 附属学校図書館運営専門委員会 著作権アドバイザー(2025年〜)

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