いろいろな著作物で学校教育シリーズ。
今回は「イラスト」です。
使える場合・使えない場合・何をすれば使えるか?・どうすれば使えるか?も含めてお話しします。
知的財産権・著作権に出てくる著作物について、
2.各著作物を学ぶ方法
3.著作物に応じた教育
をシリーズで紹介します。
今回は「イラスト」を取り上げます。イラストが学校で使われる場面は、教員が作るものに使うはもちろん、子どもが作るものにも使われます。
まずは著作権の基礎から。
「イラスト」は知的財産権の中の著作権の一つです。様々な著作物の中の一つとなっています。
作った人に生み出した時に著作権は発生します
使う時・増やす時・変える時には作った人に許諾が必要。学校は例外です。
イラストを学校で使う場面とは?
著作権法は124条あり、その中に著作物と定められているものが第2章の中にあります。
「イラスト」は「四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物」にあたります。
まず、イラストを学校で使う場面を考えます。
教員がイラストを使う場面
最初に、教員が使う場面です。
プリントやワークシート。
作成した授業プリントに、漢字プリントなら漢字に関連するイラストや吹き出しがついているキャラクター、季節のイラストをつけることもあるかもしれません。
次に模造紙やパワーポイントといった「提示するもの」にも使うことがあるでしょう。
黒板やホワイトボードに貼ったりスクリーンに写したりして、全員が見られるようにする資料や板書などに関連する歴史上の人物の似顔絵、生物や植物などをつけることもあるかもしれません。
教科以外では、学年・学級だより・行事の案内などにも使います。
生徒がイラストを使う場面
次に、イラストを子どもが使う場面です。
発表で使う模造紙の場合は、自分で描いたり、すでにある物をプリントアウトして貼ったりします。端末を使ったスライドやレポート作成なら、もっと簡単にできてしまいます。理科のレポートなら「恐竜 イラスト」を検索して、コピー、ペースト、でできてしまいます。
このように、学校では様々な著作物にイラストが使われます。
イラストの著作権を知る
イラストは検索すればたくさん出てきます。無い分野はないというくらい、とても充実しています。
イラストの著作権を学ぶためには、イラストのサイトを見るのが1番勉強になります。
学校の授業でしたら著作権法第35条の範囲で使用できますが、誰でも見られるウェブサイトは著作権法35条の範囲ではありません。
また、「35条には、『著作者の利益を不当に害する』(つまり、作った人が損をする)使い方はできない」と書いてあります。学校で使える範囲がどの程度なのかも作った人が決めます。
「著作権フリー」の注意点
作品を作った人がルールを決めるので、イラストの「利用規約」の内容は人によって様々です。「著作権フリー」と書いてあっても、「フリーの範囲や条件」は作った人が決めます。
学校の授業であるないに関わらずイラストの「利用規約」(利用の仕方)について説明した文章を読みましょう。
著作権の原則「作品は作った人のもの。使う時には作った人に許諾が必要」ですから、使い方を作った人が決められるのは当然のことです。
「フリー イラスト」でGoogle検索した時に上位になったサイトをランダムに抜粋して、その「利用規約」を見てみました。そして、学校に関する部分を抽出して要約・再編集しました。
今回調べてみて、「著作権フリー」と言っても内容はサイトによって様々だったので驚きました。
▶イラストレイン:https://illustrain.com/
▶illust image:https://illustimage.com/
▶子供と動物のイラスト屋さん:https://www.fumira.jp/
▶いらすとや:https://www.irasutoya.com/
▶イラストAC:https://www.ac-illust.com/
なぜ見つけることができるのかを「無断掲載はすぐバレる!学校だより・学校HPでイラスト素材を正しく使う方法」の動画で紹介しています。
「著作権フリー」のイラストサイトの利用規約を比較してみた
このように、利用規約は作った人によって様々です。
学校で使う際は使い方に応じて使い分けをしましょう。
紙の場合・非公開のウェブサイトの場合・公開されたウェブサイトの場合・授業の場合など、見られる範囲や対象などによって、それぞれのフリーイラストサイトを使い分けましょう。
また、校内で児童生徒に配布する物に付けたイラストを再利用する際…例えば学校のウェブサイトに載せる・地域のウェブサイトに載せる・自治体の広報誌に載せる場合は利用規約を再確認しましょう。
教員がしてしまいがちな去年のおたよりの日付や文章は変えるけど、イラストはそのまま使う際は要注意です。
規約が変わっているかもしれません。もう一度利用規約を確認しましょう。
そして、同じことを子どもたちにも伝えてください。
「面倒くさいしよく分からないから使わない」
「面倒くさいしよく分からないから子どもに伝えない」
するととどうなるか?
作った人も使う人も、双方にとってよくない結果になります。
作った人も自分の作品を広めたいはずです。使う人も作品を使いたいはずです。
使い方を知って正しく使うことで、作った人・使う人の両方がウィンウィンになります。使わない・子どもに伝えないことは、問題を先延ばしにしてしまいます。子どもはいつか、もしくはもう既に著作権について知らなければならない状況かもしれません。
「フリーイラスト」を通して著作権を子供に教えよう
では「子どもたちにどう伝えるか?」を考えました。
一番は実践の場で伝えることです。
レポートやスライドを作らせる授業や行事の過程で、イラストの使い方について説明しましょう。
その時に「ダメ」を教えるのではなく、「こうすれば使える」という前向きな話にしましょう。
利用規約を探して、文章が難しければ発達段階に応じて翻訳をして示します。
時間が取れれば、「なぜこのような利用規約にしたのか」「AサイトとBサイトの違いは何か。どうして違いがあるか」と、作った人の気持ちに切り込みましょう。小学生だって著作者になりうる時代です。
著作権教育の授業例「イラスト・利用規約を作ろう」
また今回調べてみて考えたのは、「子どもにイラストを考えさせて、校長先生の学校だよりや担任の先生の学級だよりで使ってもらう」という授業はいかがでしょうか。
「上手に描けたから、さっそく『学校だより』で使います」としてしまいそうですが、それは落とし穴。
小学校低中学年まではいいかもしれません。しかし、子ども自身の自覚なく著作権を子どもに放棄させてタダで使うのは、大人にとって都合が良すぎます。作った人へのリスペクトが育ちません。
小学校高学年以上なら「利用規約も考えさせる」のもおもしろいです。使っていい条件=利用規約を著作者である子どもに考えさせましょう。たとえば、
・金銭のやり取りは難しいでしょうからそれに代わる対価
・クレジットをどう入れてもらう
・学校を卒業したらどうする?
これらを子どもに決めさせます。
イラストの内容や規約によっては、校長先生から「いらない」と言われるかもしれませんね。
・他の人と差別化する工夫は?
・学校だより特有のイラストの選ばれ方は?
・もしくは、規約を見直す?
・とにかく使って欲しいから著作権を放棄する?
予想される発言として、「ポケモンのキャラクターを使って、描いてもいいですか?」というのもありそうな話です。これはチャンス!二次創作の話へとふくらみそうです。実際に、いらすとやさんには『ONE PIECE』コラボのイラストがあります。
このように使う人だけでなく、作った人の気持ちを考えられる授業になると良いと思います。
まとめ:【学校で著作権侵害をしないために】無料イラスト素材の利用規約を比較解説します
学校でのイラストの使い方について、報道が出ていること・文科省が注意喚起をしていることはご承知の通りです。
子どもや教員の違反者を出したくないという気持ちで教育委員会・教員・子ども向けの活動を続けている私にとっては、最も見たくない報道です。自分のせいだとさえ思って心臓がぎゅっとなります。
教員はもちろん、子どもも一緒に著作権の話をしませんか。表面上の法律やダメではなく、作り手と使い手の心を育てる教育をしましょう。
このウェブサイトの記事の内容は動画と同じです。
動画「【学校で著作権侵害をしないために】無料イラスト素材の利用規約を比較解説します」も是非ご覧ください。
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