いろいろな著作物で学校教育シリーズ。
今回は「二次的著作物」です。
誰かの作品を真似て描く…子どもは必ずといっていいほどします。
描けるようになると、そのキャラクターを自分のしたいように動かしたくなります。2頭身のキャラクターにしたり、自分で考えたセリフを言わせてみたり、人間のアイドルを漫画風に描いたり。
こういった行動は、元となる作品が魅力的である証拠です。
知的財産権・著作権に出てくる著作物について、
2.各著作物を学ぶ方法
3.著作物に応じた教育
をシリーズで紹介します。
今回は「二次的著作物」を取り上げます。二次的著作物が学校で使われる場面は、
などです。
また、小学生に「アイコンでは他人の作品を勝手に使えないので、自分の作品にしましょう」と伝えた時に、「自分でキャラクターを真似して描いたら許可を取らなくていいですか?」と聞かれます。素直な質問です。
学校外では、既存の漫画のキャラクターを使って自分でポーズや構図を考えて描いて発表したり、ファンアートなど二次的著作物の話題になります。また、漫画原作のアニメ・映画・小説・舞台、またその逆もあり、これらも二次的著作物です。
いろいろな場面で使われる二次的著作物について考えてみましょう。
まずは著作権の基礎から。
著作権は知的財産権の中の一つです。著作権がある著作物の1つに写真があります。
著作権は作った人に生み出した瞬間に発生します。子どもの作品も同様です。
使う時・増やす時・変える時には作った人に許諾が必要。学校は例外です。
二次的著作物って何?
著作権法の中の二次的著作物
「二次的著作物」が著作権法のどこに登場するでしょうか?
著作権法の一部抜粋します。
「第一章 総則>第一節 通則>第二条(定義)>十一 二次的著作物」には、二次的著作の定義として
著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。
とあります。また、
「第二章 著作者の権利>第三節 権利の内容>第三款 著作権に含まれる権利の種類>第二十七条(翻訳権、翻案権等)」において
著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
とあります。
翻訳と翻案という似たような言葉がありますが、翻訳は「他の言語にすること」、翻案は「元の作品の特徴を活かしたり原作の一部を変えたりして別の作品を作ること」です。
続けて、第二十八条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)には、こうあります。
二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。
文中「この款」は第28条がある第三款のことです。
第三款には「著作権に含まれる権利の種類」として、複製、上演、演奏、上映、公衆送信、後述、展示、頒布、譲渡、貸与、翻訳、翻案といった色々な形態の著作物の使われ方が書かれています。
他にも「二次的著作物」という言葉は著作権法の中に何度も出てきます。

学校で二次的著作物に関わる場面とは?
学校で二次的著作物に触れる場合を考えます。
教員の場合は、ワークシートが手書きだった時代はキャラクターを真似て描いて、吹き出しを付けてコメントを書くなんてこともあったかもれません。
今のように、ワードで作成して紙に印刷する場合、またオンラインのワークシートを作成する場合は、自分で描くよりも既存のイラストを使うことの方が多いですね。
また「替え歌」。運動会や文化祭などの行事で、既存の曲の歌詞を行事の目的に合わせて替えて歌うという行為です。
専門家の何人かに質問をしたことがありましたが、とても理解が難しかったです。著作者でない私が判断できることではないと感じました。替え歌については、演歌やお笑いのネタなど報道になって一般の方が知ることもありました。
「二次的著作物のことを簡単に考えてはいけない」ということを学校の先生には知ってほしいと思います。
二次的著作物は権利関係が複雑になりやすいので注意!
二次的著作物の権利は、原作とは別です。
わかりやすいのは洋書を翻訳した場合、「原作を書いた人」と「翻訳をした人」は別々の権利を持っているということです。作った人が2種類いると覚えておきましょう。
「メディアミックス」という言葉があります。
1つのメディアで表現された原作を、小説、漫画、アニメ、ゲーム、音楽、ドラマ、映画、トレーディングカード、プラモデル、舞台など、複数の表現に展開されるビジネスモデルです。
例えば、『ONE PIECE』でも『鬼滅の刃』でも『ポケットモンスター』でも。漫画、アニメ、ゲーム、映画、『ONE PIECE』は歌舞伎もありますね。小説の帯に「映画化」と書いてあったり、サブキャラクターが主人公になったりという派生もあります。
メディアミックスは海を越えて、『ライオンキング』『ハリーポッター』の映画や言語をミュージカルにしたものを日本で上演するのはもちろん、『となりのトトロ』がロンドンでミュージカルになって講評を博したという例もあります。
原作を書いた人の二次的著作物への考えは様々です。
歓迎する場合ももちろんあり、例えば小説や漫画を映画化した際に宣伝に加わる等、協力的な場合もあります。
一方で、映画化することを良く思わなかったり、内容や契約についてコメントしたりする場合もあるようです。「作品は作った人の物」ですから、どのような二次的著作物にするかは原作を作った人が力を持っています。
二次的著作物を使う時や作る時には、原作を作った人の考えや、その作品の権利者である出版社の方針などを十分に理解しましょう。
法律の専門家たちの見解も、ケースごとにまちまちで一概に言えません。
作った人が2種類いる二次的著作物には十分に気をつけましょう。
「子供が陥りがちな著作権トラブル(SNSのアイコン・授業で作った作品・BGM)」
「先生がやりがちな著作権違反(授業と部活・職員会議・研究会の違いとは)」
「保護者が陥りがちな著作権トラブル(オンライン授業・行事配信・子どもの作品)」



「面倒くさいしよく分からないから使わない」
「面倒くさいしよく分からないから子どもに伝えない」
するととどうなるか?
作った人も使う人も、双方にとって良くない結果になります。
作った人も自分の作品を広めたいはずです。使う人も作品を使いたいはずです。
使い方を知って、正しく使うことで作った人・使う人の両方がウィンウィンになります。使わない・子どもに伝えないことは、問題を先延ばしにしてしまいます。子どもはいつか、もしくはもう既に著作権について知らなければならない状況かもしれません。
「二次的著作物」を通して著作権を子供に教えよう
では「子どもたちにどう伝えるか?」を考えました。
二次的著作物は子どもの身近にたくさんあり、手に取ったり目に触れたりする機会が多いため教材にしやすそうです。
一番は実践の場で伝えることです。
レポートやスライドを作らせる授業や行事の過程で、二次的著作物の使い方について説明しましょう。
例えば『ポケットモンスター』と子どもに言った場合、子どもは何をイメージするでしょうか?
「アニメ」と答える人もいれば、「ゲーム」と答える人もいそうです。ゲームもゲーム機を使った物だけでなく、カードゲームもあります。映画やポケモンGO、グッズだってたくさんあります。
そもそも、一番初めは何の作品だったでしょうか?
調べてみると、1996年に発売されたゲームボーイ用ソフト『ポケットモンスター 赤・緑』だそうです。
こういったメディアミックスをしている作品はたくさんあります。また、幸いなことに日本の作品にも多くあります。
授業では、まずメディアミックスについて今ある作品を調べてみる。そのメリット・デメリットを考えさせる。そして、自分がメディアミックスをするならどうするか考えさせる。という展開が、身近なので興味を持って取り組みそうです。
現象だけとらえて終わりにならないよう、原作者の気持ちにきちんと寄り添える心を育てたいです。
映画や2.5次元ミュージカルへの展開は、キャスティングやストーリーなどに対して作品のファンがSNSなどでコメントすることもあります。
あの漫画の主人公は誰がするのかと話題になったり、発表後に賛否両論が飛び交ったりします。その作品が好きな子どもなら、一過言あるでしょう。
このように、二次的著作物を取り巻く様々な人々を多面的にとらえられるように、そして中心に原作者を置いて考えられるようにしましょう。
まとめ:【学校で著作権侵害をしないために】二次的著作物のことを簡単に考えないで!
二次的著作物は、著作物の基礎的な考えを持ったうえで更に一歩踏み込んだ内容です。しかし、子どもが身近に感じられる著作物です。
教員はもちろん、子どもも一緒に著作権の話をしませんか。表面上の法律やダメではなく、作り手と使い手の心を育てる教育をしましょう。
このウェブサイトの記事の内容は動画と同じです。
動画「【学校で著作権侵害をしないために】二次的著作物のことを簡単に考えないで!」も是非ご覧ください。
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