生成AIを教育現場で活用する際の留意点について、文部科学省はガイドラインを発表しています。
今回の記事では、「旧ガイドライン」と「新ガイドライン」を比較し、それぞれの違いとポイントを分かりやすく整理します。
これから学校で生成AIを活用したいと考えている方や、既に取り組みを始めている方にとって、非常に参考になる内容です。ぜひご一読ください。
ガイドラインの背景と位置付け
旧ガイドライン:暫定的な性格が強調
旧ガイドラインは「初等中等教育段階における生成AI利用に関する暫定的なガイドライン」として、2023年7月に発表されました。
この時点では、著作権や法的整理がまだ進んでおらず、「暫定的」であることが明確に示されていました。
また、文部科学省文化庁内の著作権課に設けられた小委員会において、AIと著作権に関する検討が進められていた段階でもありました。
新ガイドライン:現場に寄り添った実践的方針
一方、新ガイドラインは2024年12月に発表され、タイトルからも「暫定的」という文言が削除されています。これは、より現場での実践を意識したものであり、教職員や教育委員会などを対象に、具体的な方針や実務的ポイントが示されています。禁止や義務付けではなく、柔軟な活用を前提としている点も特徴です。
新ガイドライン策定にあたっては、「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関する検討会議」が設置され、教育・生成AIの専門家、大学の教員、教育委員会の関係者、現場の教員など、多様な立場の専門家が議論に参加しました。このような検討を経て、2024年夏から冬にかけて改訂が進められました。

構成の違いと追加されたセクション
新ガイドラインでは構成が一新され、読み手に配慮した内容となっています。特に以下の3つの場面での利用が具体的に示されています。
- 教職員による校務での利活用
- 児童生徒による学習活動での利活用
- 教育委員会などによる行政的観点での配慮点
また、生成AIパイロット校の事例やチェックリストなど、実務に役立つ参考資料も加えられています。
なお、ガイドラインは複数ページにわたる詳細な資料ですが、「概要1枚版」「概要資料2枚版」など、時間がない方でも把握しやすい形式の資料も用意されています。

基本的な考え方の明確化
旧ガイドラインでは生成AIの性質やメリット・デメリットが広く説明されていましたが、新ガイドラインでは「人間中心の生成AI利活用」が新たに明示されました。
- 生成AIは補助・拡張ツール
- 最終判断は人間が行い、生成物には責任を持つ
- AI時代における「学びに向かう力」の涵養を重視
このように、教育的視点からの明確な立場が示されています。
実践的な活用例と注意点
新ガイドラインでは、具体的な活用例と不適切な利用例が明示されています。
適切な活用例:
- 英語教育における自然な表現の改善
- プログラミング学習の高度化
不適切な活用例:
- 定期考査での利用
- コンクール応募作品の生成AI使用
さらに、活用時には以下の3項目が重要とされています:
- 課題の設定
- プロンプトの工夫
- 真偽の確認
著作権と情報モラルの明確化
旧ガイドラインでは一般的な注意点にとどまっていましたが、新ガイドラインではより具体的な記述が追加されています。
- 生成物が既存著作物に類似・依拠している場合、著作権侵害の可能性あり
- 授業課程での利用は、著作権法第35条により一定範囲で許可される
情報モラル教育では、ファクトチェックや偽情報リスク、フィルターバブルへの対応など、具体的な学習活動も提案されています。これらの点も、教育現場での実践を考える上で大切な要素です。

追加された新たな観点
新ガイドラインでは、以下の新しい視点が追加されています:
- 情報セキュリティ:「教育情報セキュリティポリシー」に基づく対応の推奨
- 公平性:生成AIの学習データに含まれるバイアスの認識と、人間の介在の必要性
- 参考資料:パイロット校の活用事例やチェックリスト、リスクと懸念の具体例
まとめ:まずはガイドラインをチェックしよう
以上、「1. 目的と位置付け」「2. 構成の変更」「3. 基本的な考え方の明確化」「4. 実践的な指針」「5. 著作権と情報モラル教育」「6. 新たな観点の追加」という6つの観点で新旧ガイドラインを比較しました。
文部科学省の新ガイドラインは、教育現場で生成AIを活用する際の指針として非常に有用です。まずは文科省のウェブサイトにある概要版を確認し、現場での活用に備えましょう。
動画「【最新版】文科省の生成AIガイドラインを徹底比較!教育現場の実務ポイントも解説」では、さらに詳しく解説しています。
あわせて是非ご覧ください。