今日は部活動の著作権について話します。
音楽科の教員は音楽に関する部活動の顧問を持つことが多いです。
今日は部活動での著作権を知り、実際の音楽に関するコンクール(規定や開催要項)から内容を理解するという内容です。実際にNコンを例にとって、著作権を考えてみましょう。
部活動で演奏における基本的な著作権ルール
音楽に関する部活動が演奏する場は2つ。「校内での演奏」「校外での演奏」です。
「校内での演奏」とは、
・日々の練習
・校内行事(文化祭での発表、運動会、入学式や卒業式などの儀式的行事など)
・校外行事(学校が主催する地域の行事、自治体の発表会)
「校外での演奏」とは、
・各種コンクール
・演奏会
まず基本的な考えです。
この著作権の原則がありながら、「学校は例外」です。「学校」の指す範囲は授業・校内の部活動です。使ったり・増やしたり・変える場合には許可が要らないとなります。
具体的に「校内での演奏」「校外での演奏」に分けて、著作権が出てくるシーンで考えてみましょう。
例えば「ホルンパートがいない」となった時、代わりにテナーサックスで代用したり。「演奏時間が長い」となった時、リピートなしで演奏する。
こういうことに関して、許可が要らないということです。
学校内で使う場合とルールが異なります。許可が必要なのです。
2021年度の情報ですので、最新の情報はきちんと公式のホームページをご覧ください。
NHK全国学校音楽コンクールにおける著作権ルール
今年度より申し込みの段階で、自由曲として歌う楽曲の著作権の管理状況を予めご確認いただくよう、お願い致します。くわしくは、こちらのページをご覧ください。
という注意書きが加わりました。
「自由曲の著作権の状況確認のお願い」著作権に関するページがとても増えました。
では実際に「Nコン2021NHK全国学校音楽コンクール」のホームページから著作権に関する記述を紹介します。
自由曲の著作権状況確認についての解説
はじめに
演奏を様々な配信サービスで行っているということ。
コンクールでの演奏を公開するにあたって、正しく権利処理を行うことが必須であること。
著作権の情報によってはやむを得ず放送配信を見合わせたケースがあるということ。
が載っています。
今年からは自由曲を選ぶ時点で管理状況を確認してくださいということです。
著作権管理状況確認の手順
丁寧に解説されています。
代表的な音楽著作権管理団体はJASRACとNexToneです。まずは、自由曲に選曲しようとしている曲がこの2団体に管理されているかどうかお調べください。
JASRACの場合は「ステップ①」、NexToneは「ステップ②」を確認します。
内容は同じで「放送」「配信」の欄がどちらも〇になっているか確認するよう手引きが書いてあります。
許可になっていない場合は管理外の可能性があるので「権利処理ができない可能性があることをご了承いただいた上で自由曲にお選びください」とあります。
つまり、配信(ラジオなど)の場合にできない可能性がありますよということを言っているのです。
参照いただくデータベースのご案内
いずれのサイトでも、作品タイトル、著作者名などの情報で、楽曲を検索することができます。
「放送」「配信」両方の欄をご確認ください。JASRACでは「〇」と表記のある曲は、JASRACが管理していることを表します。表記が「×」、または検索しても見つからない曲は、JASRACでは管理していないこと(管理外)になります。
NexToneでも同じように管理状況が色で示されています。青色は管理されているということです。
楽曲には作品コードがついていて、JASRACやNexToneのデータベースでコードを確認できるとありますので、参加申込書にコードを書いてください(任意)とあります。
JASRAC・NexTone管理外の曲を自由曲に選んだ場合
この場合の対応も書いてあります。
「放送」「配信」には作詞者、作曲者、編曲者など、著作権者全員の許諾が必要です。原則として許諾申請を行うのはNHKですが、時間的な制約や様々な諸条件があり、必ず許諾を得られるとは限りません。許諾が得られない可能性があることを、予めご了承ください。
とあります。
つまり、演奏したものを放送したり・配信したりすることができないかもしれませんと言っています。
許諾を得られた場合は、「楽譜の許諾に関する報告書」を提出してください。
つまり許諾を得られた証明を出してくださいとあります。
Q&A
詳しくQ&Aも出ています。
すべての学校が歌う自由曲。この処理をすべて今まではNHKさんがしてくださっていたということですね。
これを参加の段階で、参加者=顧問の先生がきちんと確認をしましょうということです。
最後に「自由曲の著作権管理状況の事前確認にご協力をお願いいたします」とあります。NHK事務局が書くのは初めてです。これまでの許諾の手続などがいかに大変だったかということが、ここににじみ出ていると思います。
自由曲を選曲する際には、もちろん演奏する児童生徒のことを考えますが、それ以外に著作権のことを考える必要があるのです。
Nコン2021参加の選曲・楽譜に関する解説
もう一か所、著作権に書いてあることを確認しましょう。(公式サイト内のこちらのページ)
自由曲について
「自由曲について」の項目内に「★著作権について★」の記載があります。
「詳細については「自由曲の著作権の状況確認のお願い」を必ずお読みください。」の内容は先ほど解説した通りです。
「★差別的表現などについて★」の下にも著作権について書いてあります。
「★事前提出物について★」
<楽譜>「・楽譜にあわせて楽譜提出チェックシートもご提出ください。」とあります。
「楽譜提出チェックシート」は楽譜を審査員のために提出する必要がありますが、ここに自由曲の管理団体・作品コードを書く欄があります。
チェックシート内の「★次の項目の□にチェックを入れてください。」の著作権に関する部分です。
改変・出版譜・コピー譜について書いてあります。
<ダウンロード楽譜の場合>
必要部数を購入の上、購入を証明する書類(購入完了メールや領収書の写しなど)を楽譜に添付してください。ダウンロード楽譜のコピーは著作権法で禁じられています。
部員全員と先生の分の購入をします。1部ダウンロードしてコピーすることは、著作権法で禁じられているからです。
楽譜の改変について
改変と言われると何かな?と思いますが、
改変とは、部分省略(小節・音符・繰り返し・ディビジ等)、移調、楽器の追加や変更、手拍子・足踏みの追加変更などを指します。
とあります。
人数が足りないからと言って、音符やディビジを省略したり、演奏時間内に収まらないからと言ってくり返しを失くすということも改変にあたるので、許諾を得る必要があります。
「無断で改変を行った団体は審査対象外となります。」と太字で強く書かれています。気をつけましょう。知らなかったでは済まされません。
全日本合唱コンクールにおける著作権ルール
ここでは東京都合唱連盟のページを紹介します。こちらも2021年度の情報です。
著作権に関する情報は
「3,演奏曲目および演奏時間」
自由曲については著作権を尊重する観点から、練習においても著作権法などで認められた正規の楽譜を使ってください。
「4,自由曲楽譜の確認」
(1)参加合唱団は自由曲として演奏する作品の楽譜が正規のものであることを次のいずれかの方法で証明する。
とあり、出版譜・コピー譜・著作権フリーの場合、それぞれの証明が必要です。
(2)正規の楽譜を使用せずコンクールに参加しようとしたことが明らかになった場合は、出演停止、審査対象外あるいは受賞取消とする。
という厳しい項目もあります。
まとめ:部活動と校外合唱コンクールの著作権ルール
著作権について、部活動・学校での著作権について知りたい場合は2つのサイトをおすすめします。
JASRAC PARK
子ども用に作られたサイトですが私も愛用しているほど、大人にもわかりやすく勉強になることがたくさんあります。部活動以外にも、学校内での行事、楽譜のコピーなど授業のことも書いてありますので、ぜひご活用ください。
著作権情報センター(CRIC)
「学校教育と著作権」というページがあります。実際のシーンを想定した問答集がありますので、こちらもぜひご参照ください。
部活動の成果を発表するコンクールやコンサート。この場で著作権に関する違反や勘違い、申請漏れなどがあって子どもたちの思い出・努力を無駄にしてしまっては元も子もありません。
部活動の顧問として責任をもって著作権を知り、コンクールやコンサートが児童生徒はもちろん、顧問の先生にとっても充実した発表の場になるようにしましょう。
この記事の内容は動画と同じです。
動画「【部活動の著作権】校外の合唱コンクール(Nコン・合唱コン)に出場する時」も是非ご覧ください。
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