今日は、教員採用試験で出題される知的財産権や著作権についてお話しします。
私が教員採用試験における著作権問題について取り上げる理由は、単に現職の教員の皆さんに勉強していただきたいからではありません。特に若手の教員は、知的財産権や著作権についてしっかりと学んで教員になっています。このことを、現職の教員の方々にも知っていただきたいのです。
知的財産権と学校での著作権運用の基本
まず、知的財産権についておさらいします。
知的財産権には「産業財産権」と「著作権」が含まれます。著作権は、作品が生み出された瞬間にその創作者に自動的に発生します。著作権法には
「作品は作った人のものである」
「作品を使用・複製・改変する場合には、作成者の許諾が必要である」
と定められています。
ただし、著作権法の中には許諾を取らずに利用できる例外規定もあります。その一つが学校での使用です。
学校では教育活動の一環として、一定の条件下で著作物を許諾なしに使用することが認められています。ただし、これにも細かい条件があり、適切に運用するためには最新の法規やガイドラインを確認することが重要です。
神戸市教員採用試験での著作権出題例と解説
今日取り上げるのは、25年度教員採用選考試験の神戸市中高の音楽科で出題された問題です。
問題:
「『高等学校学習指導要領』(平成30年3月文部科学省)における『第2章 第7節 芸術 第1 音楽I 3 内容の取扱い』に関する記述の一部である。( )に当てはまる適切なものを①~⑤から選び、番号で答えよ。
『(11) 自己や他者の著作物及びそれらの著作者の( )を尊重する態度の形成を図るとともに、必要に応じて、音楽に関する知的財産権について触れるようにする。また、こうした態度の形成が、音楽文化の継承、発展、創造を支えていることへの理解につながるよう配慮する。』
①権利 ②著作権 ③利益 ④財産 ⑤創造性」
この問題の正解は「⑤創造性」です。
では、この問題を解説していきます。
この問題は、高等学校の学習指導要領に記載された内容に基づくもので、著作物や著作権に関する理解が問われています。特に「創造性を尊重する態度の形成」という点は、教育現場での著作権教育の重要なテーマの一つです。著作物の価値や創作者の努力を理解し、それを生徒にも伝えることが求められています。
また、この問題の内容は中学校や小学校の学習指導要領にも共通している部分が多く、教育段階に応じて知的財産権の理解が深められていくことが期待されています。教員採用試験では、このような基本的な概念の理解が必要とされるため、著作権に関する知識をしっかり身につけておくことが大切です。
小学校・中学校・高等学校における知的財産権の扱いの違い
次に、小学校、中学校、高等学校の音楽(芸術)における知的財産権に関する扱いの違いを見ていきましょう。まずは、中学校と高等学校の学習指導要領に記載された内容を比較してみます。
中学校の学習指導要領:
「自己や他者の著作物及びそれらの著作者の創造性を尊重する態度の形成を図るとともに,必要に応じて,音楽に関する知的財産権について触れるようにすること。また,こうした態度の形成が,音楽文化の継承,発展,創造を支えていることへの理解につながるよう配慮すること。」(第2章 第5節 音楽 3 内容の取扱い 2(1)カ)
高等学校の記述も基本的には同様で、「自己や他者の著作物及びそれらの著作者の創造性を尊重する態度の形成」と「知的財産権に関する理解」を求めています。
中学校と高等学校では、基本的な理念は同じですが、より高度な内容を扱うため、高校では知的財産権に関する理解がさらに深まることが期待されます。
小学校の学習指導要領:
「表現したり鑑賞したりする多くの曲について,それらを創作した著作者がいることに気付き,学習した曲や自分たちのつくった曲を大切にする態度を養うようにするとともに,それらの著作者の創造性を尊重する意識をもてるようにすること。」(第2章 第6節 音楽 3 内容の取扱い 2(1)オ)
小学校の学習指導要領では、言葉遣いがやや優しくなり、発達段階に応じて、基本的な著作権や創作者への尊敬を育てることが重視されています。
この記事の内容は動画と同じです。
動画「【教員採用試験】学習指導要領の中の著作権(25年度神戸市中高音楽)」も是非ご覧ください。
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