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教員採用試験 著作権分野の過去問を解説します(令和2年度・3年度)

教員採用試験 著作権分野の過去問を解説します(令和2年度・3年度)学校著作権ナビ 動画
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今日は教員採用試験の中の知的財産権に関する問題をピックアップしてお話しします。
問題や解答・解説なども併せて行います。是非ご覧ください。

 

学習指導要領が改訂されました。
小学校は2020年度から/中学校は2021年度から/高校は2022年度から、新しい学習指導要領には知的財産権や著作権・著作物・著作者に関する記述があります。

 

どの校種・科目の学習指導要領で知的財産権について触れているのかを調べてみました。「【教員のための著作権解説】学習指導要領の中での著作権の扱い」で解説しています。

 

こちらは新しい学習指導要領の音楽・音楽科に関わるところです。

小学校では

表現したり鑑賞したりする多くの曲について、それらを創作した著作者がいることに気付き、学習した曲や自分たちのつくった曲を大切にする態度を養うようにするとともに、それらの著作者の創造性を尊重する意識を持てるようにすること。また、このことが、音楽文化の継承、発展、創造を支えていることについて理解する素地となるよう配慮すること。

とあります。

「自分たちが作った曲」というところがあるように、自分も創作者・著作者になるということが書いてあります。同じように中学校でも、自己や他者の著作物またそれらの著作者について考えていたり、高校でも同じような内容が入っています。

 

音楽の新学習指導要領のポイントについては「【音楽の新学習指導要領】音楽教員のための3つの改訂ポイント解説」の動画でも解説しています。音楽教員の方は是非参考になさってください。

 

こういった内容。中学校・高校では前回の学習指導要領10年前に改定されたものから入っていましたけれども、小学校では初めての掲載となります。また、中学校・高校でも前回のものよりもボリュームが増えて、またその意味づけ・位置づけがきちんと明確にされています。

学習指導要領の改訂により教員採用試験も変わりました。
出題傾向として著作権・知的財産権に関する内容が出てきているのです

今日は、東京都の第一次選考>専門教養>小中共通・中高共通の音楽これを見ていきます。
この中で知的財産権・著作権に関する記述が初めて載ったのが令和2年度に実施されたもの。そして今年度行われた令和3年度に実施されたもの、ここにも載りました。1問ずつではありますが大きな快挙だと思います。

 

令和4年度の教員採用試験でも著作権の問題が出題されています。「校歌・教員の校内研修・チャリティーコンサートの著作権で注意すべきこと(令和4年教採問題解説)」の動画で解説しています。

 

 

令和3年度教採試験(小中共通・中高共通の音楽)の著作権の問題

では早速内容を見ていきましょう。まず令和3年度の問題です。

 

Q 学習指導の内容や方法に関する次の各問に答えよ。

著作権の侵害に当たらない行為として、我が国の著作権に関する法律に照らして最も適切なものは、次の1~4のうちではどれか。ただし、著作者又は著作権の権利を有する者が著作物の権利を放棄しておらず、保護期限を超えていないものとする。

とあります。

少し考えてみましょう。
先に正解を示した後に、解説をします。

 

解答と解説

正解は3番。

著作権の侵害に当たらない行為は「3 教員が定期考査において、楽譜の一部を問題として使用するために複製して掲載し、出題した。」
他の1・2・4番は著作権の侵害に当たるということです。

ではどの点が問題なのでしょうか。また3番の正解もどうして侵害に当たらない行為なのでしょうか。

 

まず選択肢に入る前に問題文。この問題文の内容を理解していないといけません。「ただし、」の後です。
著作者又は著作権の権利を有する者が著作物の権利を放棄しておらず」とあります。

著作権は著作物が作られたその瞬間に発生します。
特許などの場合は出願が必要ですけれども、著作権は作った瞬間、その瞬間に権利が発生します。著作者(それを作った人)に著作物の権利があるのです。それを放棄していないということで、著作者が権利を持っている状態ということ。

次に「保護期限を超えていないものとする」この文章が意味するところです。
著作権には保護期間があります。保護期間は日本の場合、その著作者が亡くなってから70年間が保護期間です。70年を超えたものは、著作権の保護外となりますので自由に使うことができるということです。

この問題文では著作者が権利を持っていて、かつ死後70年以内であるということを先に言っているのです。
この問題文を理解するところからがスタートです。

 

学校での著作権の取り扱いの基本と例外について「学校における著作権入門(学校でコピーが許される理由とは)」で解説しています。

 

では選択肢を見ていきます。

1は著作権の侵害に当たる行為です。
「観客から入場料を取っている吹奏楽部の定期演奏会で、著作権者の許諾を得ないまま楽曲を演奏した」

問題となってくるところは「入場料を取っている」というところと「許諾を得ないまま」というところです。

入場料を取っている場合は許諾を得る必要があります。
逆に、「入場料を取っていない場合」で、「演奏者に報酬がない」、また「営利目的ではない」といった3つの条件が重なっている場合は、著作者の許諾を得ずに演奏してよいということになります。

 

2番も著作権の侵害に当たる行為です。
「教員が授業で撮影したに生徒がリコーダーを演奏する場面の動画を、学校の webサイト上で配信し、保護者が常に見られるようにした」

ポイントは「学校のウェブサイト上」と「保護者が常に見られるようにする」この2つです

学校の web サイト上で配信することに関しては JASRACのサイトをご覧下さい。
そして「保護者が常に見られるようにする」というのは良くないことです。リコーダーの映像について、保護者が『常に』見られるようにしている状態は良くないことです。
例えば対処方法としては見られる人を制限したり、また見られる期間を制限する、こういったことでアップロードすることができるようになります。

 

 

そして正解の3番、著作権の侵害に当たらない行為が3番です。
「教員が定期考査において楽譜の一部を問題として使用するために、複製して掲載し、出題した」

この侵害に当たらない行為のポイントは「定期考査」というところと「楽譜の一部を複製した」というところです
定期考査は学校の授業の一つですので複製においては許可は必要ありません。また楽譜の一部を複製するのも、もともと許諾は不要です。

 

そして4番こちらも著作権侵害に当たる行為です。
「生徒が授業で創作した作品を、教員が本人の同意を得ないまま、タイトルを改変して授業研究会で公表した。」

これが問題になる点は「本人の同意を得ないまま」と「タイトルを改変する」というところです

生徒の作品にも著作権はあります。それを生み出した時点で権利が発生しますので、生徒の作品はもちろんワークシートなども著作物に当たりますので、教員が本人の同意を得ないまま改変してはいけません。
これを侵害に当たらない行為にするためには、教員が本人の同意を得ることが重要です。

 

授業と部活・職員会議・研究会で著作権の取り扱いが異なることがあります。詳しくは「先生が陥りがちな著作権トラブル」の動画をご覧ください。

 

以上が令和3年度に行われた東京都の教員採用試験の中の知的財産権に関する問題でした。

 

 

令和2年度教採試験(小中共通・中高共通の音楽)の著作権の問題

続いて令和2年度に行われた同じく東京都の第一次選考>専門教養>小中共通・中高共通の音楽科の試験です。

 

Q 学習指導の内容や方法に関する次の各問に答えよ。

著作権の権利の侵害に当たらない行為に関する記述として、我が国の著作権に関する法律に照らして最も適切なものは、次の1~4のうちではどれか。ただし、楽譜は著作権の権利を有する著作者がその権利を放棄していないものとし、我が国の国内法の適用範囲とする。

とあります。
少し考えてみましょう。

 

解答と解説

こちらも正解から。

著作権の権利の侵害に当たらない行為は、1番の「購入した本人及びその家族の範囲内で使用するために、許諾を取らずにCDを複製した。」こちらが侵害に当たらない行為です。
他の3つは著作権の侵害に当たる行為です。

 

こちらもまずは問題文の理解から。「ただし、」の後が肝です。
「楽譜は著作権の権利を有する…」というのは先ほど解説した通りです。著作者が権利を放棄していない、つまり所有しているということ。
その後の「我が国の国内法の適用範囲とする」というところ。著作権の法律は国によって違います。我が国=日本の国内法でということが書かれています。

 

まず1番。こちらは著作権の侵害に当たらない行為。正解の行為です。
「購入した本人及びその家族の範囲内で使用するために許諾を取らずにCDを複製した」

ポイントは「本人と家族」というところです
本人と家族であれば私的利用という範囲になりますので、許諾を取らずに複製することは可能です。反対に本人家族以外にCDを複製する場合には許可が必要となります。気をつけましょう。

 

続いて2番。こちらは著作権の侵害に当たる行為です。
「部活動の演奏で観客から料金を徴収し、許諾を取らずに楽曲を演奏した」

部活動であっても観客から料金を徴収する場合は、許諾をとって演奏する必要があります
許諾を取らずに済むのは、料金を取らない・演奏した人に報酬がないなどといった条件3つをクリアしていることが条件になります。

 

部活動における著作権で注意すべきは外部のコンクールに出演するときの著作権の取り扱いです。「【部活動の著作権】校外の合唱コンクール(Nコン・合唱コン)に出場する時」「【部活動の著作権】校外の吹奏楽コンクール(吹コン)に出場する時」の動画で詳しく解説しています。

 

続いて3番。こちらも著作権の侵害に当たる行為です。
「死後50年経過している著作者の作品を複写して、全校生徒に配付した。」

このポイントになってくるのは「死後50年」というところです
これまで日本では保護期間は死後50年でした。しかし、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に加入したことで死後70年になったのです。これは最近変わったことですので、近年の著作権ニュースをきちんとチェックしていないといけないところです。
侵害に当たらない行為にするためには死後70年経過している作品。それを配付するのはOKです。逆に50年しかたっていない場合は許諾を得る必要があります。

 

4番も著作権の権利を侵害する侵害に当たる行為です。
「合唱祭で録音した生徒の演奏をCDにし、許諾を取らずに生徒に配付した。」

ポイントは「CDに複製すること」またそれを「許可を取らずに配付したこと」にあります
CDにして配付するためには許可を取るということ。また YouTube などにアップするという方法もあります。

YouTube はなぜOKかというと、YouTube がJASRAC(音楽を管理する団体)にきちんと使用料を支払っているからなのです。
CDをコピーして配るのとYouTubeにアップロードするのではその流れが違います。YouTube の方は YouTube・JASRAC を通じて、著作者にきちんとお金が分配されているということです。

 

授業・学級経営でYouTubeを使うための使い方のコツを「【授業目的公衆送信補償金制度とは?】学校でYouTubeを活用するコツ」の動画で解説しました。

 

 

まとめ:教員採用試験 著作権分野の過去問を解説します(令和2年度・3年度)

今日は教員採用試験の中に出てくる知的財産権に関する問題についてお話をしました。

現職の先生方もうすでに先生になっている方にこれを勉強しろとは言いません。
しかし、これから入ってくる新しい先生方は著作権のことを知って入ってきます。そういった意識を持って、著作権・知的財産権に向き合っていただきたいものです。

 

このサイトの記事の内容は動画と同じです。
動画「教員採用試験 著作権分野の過去問を解説します(令和2年度・3年度)」も是非ご覧ください。

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この記事を書いた人
原口直

学校著作権ナビゲーター

東京学芸大学卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭。東京都公立中・東京学芸大学附属世田谷中に勤務。

2020年より学校勤務経験を活かして机上の法律と学校現場をつなぐ「学校著作権ナビゲーター」として活動を始め、YouTube・ウェブサイトにおいて教員・教育実習生が著作権を学ぶためのコンテンツを発信している。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)/東京学芸大こども未来研究所教育支援フェロー

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