今回は新たな試みとして、中学校の図書委員会に所属する生徒に対して著作権の話をしました。
学校単位や教科単位で話すのは時間や制度でハードルが上がりますが、委員会活動の一環としてならば話すことができないかなと思いました。また、話す相手として、本という著作物に触れる機会が多く、本が好きな生徒が集まる図書委員会がふさわしいのではないかと考えました。
前職の東京学芸大学附属世田谷中学校では「図書委員会」は人気で名誉職でした。自覚と自信を持って委員会活動に取り組んでいることを知っていました。
また、学校図書館が学校と著作権を結ぶ要であることを実感していましたので、図書委員会に話すことは私の念願でした。
2023年6月、東京学芸大学附属世田谷中学校の図書委員会の活動の中で話をしました。
講演時間は50分間、オンライン会議ツールZoomでPowerPointを共有したり、双方向コミュニケーションツールAhaSlides(アハスライド)を用いたりしながら進めていきました。
内容は、著作権の基礎・学校での著作権・オンライン授業や行事配信の留意点・質疑応答でした。
対象者は東京学芸大学附属世田谷中学校の図書委員会に所属する生徒24名です。場所は学校図書館で、手元に1人1冊の本を用意してもらってからスタートしました。
本題に入る前にアイスブレイク。
アハスライドのアンケート機能や言葉の入力・スケールの機能を体験していただきました。ワードクラウドでは、回答が重なると文字が大きく表示されます。
身近にある著作物を題材に研修を進めます
「最近読んだ本は?」という質問に続けて、その本の筆者と出版社を質問しました。筆者はすぐに思いついても、出版社も答えられる生徒の数は減りました。
漫画などの海賊版の問題を取り上げ、その被害額や規模を新聞記事や数字を用いて話します。もちろん、我々は手をこまねいているだけではなく、様々な対策を取っているということも話しました。
また、知的財産権等の使用料は2022年の貿易収支で2.5兆円の黒字と、日本にとって大きな財産であることも話しました。
次に、手元に要してもらった本の奥付を見て、様々な人や会社名が書いてあることに気づかせ、著者の印税についても話しました。
さらに、「本が読者の手元に渡るまでに必要で、かつ、奥付に書いていない職業は何か?」と質問しました。
次に『SPY×FAMILY』を例にとりメディアミックスについて考えさせて、紙の漫画以外に作品が広がっていくことで生まれる新たな職業も考えさせました。
研修に参加した生徒の感想
誰に、どのような場面で、働きかけができるだろう
「友人がネットから持ってきた画像を投稿したり、アイコンにしたりしていたら注意をする。」
「日常でも著作権違反していないか考え、しないように心がける。」
「無料で見られるからと言って海賊版の映画やアニメを検索したりしない。」
「海賊版に気付かせない。気付いて検索しても、何か脅しのようなものを表示させる。」
図書委員会顧問(学校司書)の感想
コロナ禍以降、外部の方のお話をオンラインで聴くことが気軽にできるようになったこと。そして、生徒が一人一台の端末を持つようになったことで、今回の企画が実現しました。
啓蒙活動としては図書委員対象のこういう企画はとてもいいと思います。学校司書としては、伝えたいことが沢山ある著作権、何を切り口にしてどこをどう絞るかも悩みどころです。
原口先生からの依頼を受けて、図書委員会+生徒会役員、+関心のある生徒にも呼びかけたかったのですが、委員会の時間での実施だったため、諦めました。図書館では、日頃さまざまなイベントを行なっているので、時間が合えば、可能な取り組みだと思います。
まとめ
今回、図書委員会を対象にしたことで扱う著作物が限られて、話がしやすいと感じました。
また、特に多く著作物を扱い、著作物を好んだり生み出したりしている生徒の小集団が、他にもいると考えました。
例えば委員会活動ならば、文化祭の実行委員会や生徒会など。
部活動ならば、吹奏楽部・合唱部・美術部などです。
こういった特定の生徒のニーズに合わせて話をすることで、生徒は身をもって著作物に向き合ったり、生徒同士の学び合いにつながったりするのではないかと可能性を感じました。
児童生徒の委員会・部活動向けにもお話しします。
研修の依頼をお待ちしております。
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