最近では、学校の図書の時間や国語の授業などで、図書館の本を使った「読み聞かせ」を録画し、あとで子どもたちと共有したり、離れた場所にいる児童とつなげて活用する場面が増えてきました。
しかし、この「読み聞かせ」の録画や共有には、著作権の問題が関わってきます。今回は、学校内での読み聞かせ動画の利用について、著作権の観点からわかりやすく解説します。
- Q本の読み聞かせを録画し、ウェブサイトにアップロードするなどの方法で学校内で共有するのは良いのでしょうか?
- A
学校の「授業」の範囲では可能です。
学校の授業の一環としての録画共有はOK
結論から言えば、学校の授業の一環として行われる読み聞かせの録画・共有は可能です。
著作権法第35条により、授業を目的として行われる場合には、教員と児童・生徒との間で著作物のやり取りが認められています。これは教員に限らず、教員の依頼を受けた学校司書や支援スタッフも含まれます。
ただし、以下の2点に注意が必要です。
注意点① 授業外での利用はできません
授業の枠を超えて、読み聞かせ動画を学校のウェブサイトに公開したり、広く配信することはできません。
これは「公衆送信権」の問題で、著作権者の許諾なしに不特定多数に公開することは著作権法違反となります。授業以外の目的で動画を使う場合は、著作権者の許可が必要です。
なお、著作権法第38条では、営利を目的としない上演や展示などについて一定の例外が設けられていますが、
・出演者などに報酬を支払わない
・営利を目的としない
という条件をすべて満たす必要があります。これらを満たさない場合は、やはり別途許諾が必要です。
注意点② 著作物の「全部利用」は原則NG
たとえば絵本をまるごと1冊読み聞かせて録画する、というような使い方は、原則として認められていません。
著作権法第35条第1項では、利用は「必要と認められる限度において」と定められており、教育上必要最小限の範囲で行うことが求められています。
一部の絵本など、特例的に全部利用が認められる場合もありますが、それでも利用にあたっては権利者の利益を不当に害しないよう配慮が必要です。
SARTRASの補償金制度も確認を
オンライン授業での活用においては、SARTRAS(授業目的公衆送信補償金等管理協会)への補償金制度を活用することで、著作物の配信が許諾不要となる場合があります。
これは著作権法第35条第2項に基づく制度で、補償金を支払っている学校において、オンラインで授業用動画を配信する際などに適用されます。
ただし、録画そのものは第1項の範囲で行われますが、「動画を公開」する行為にはこの補償制度の対象となる場合があるため、制度の内容をしっかり確認しましょう。

まとめ:正しい知識で著作権を尊重しよう
読み聞かせの録画や共有は、子どもたちにとっても大切な教育活動の一つです。しかし、著作物には著作権があることを忘れず、正しい手続きを踏むことが大切です。
録画の目的が「授業」であり、学校内の共有であれば基本的には可能ですが、それを授業外に利用したり、ウェブ公開する場合は注意が必要です。
不明点がある場合は、文化庁やSARTRASのウェブサイトを参照したり、専門家に相談することをおすすめします。
この記事は動画「【先生からの質問に回答】「読み聞かせ動画」の録画・配信はOK?学校現場で守るべき著作権ルール【教職員向け】」をもとに作成しました。