研究授業で教材をコピーして配っても大丈夫?著作権ルールを実例で解説

【教員のための著作権解説】学校における研究授業の著作権(参観者に教材コピーを配布できるか?) 教育現場での著作権対応
教育現場での著作権対応
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学校現場で行われる研究授業において、資料や教材をどのように取り扱うべきか悩む教員は少なくありません。特に、著作権に関する正しい理解が求められる場面が増えています。

この記事では、学校の中または外で行われる研究授業における教材の利用、特に教科書の画像や資料のコピー配布に関する著作権のルールについて解説します。

 

 

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著作権の基本的な理解

著作権は知的財産権の一つであり、作品が創作された瞬間から自動的に作者に帰属します。そのため、作品を使用・複製・改変する際には、原則として著作者の許諾が必要です。

学校で無許諾使用が認められるのは例外的な場合であり、「著作権者の利益を不当に害さない」「通常の利用が妨げられない」範囲に限られます。

 

学校での著作権について基本から知りたい方は、まず「学校における著作権入門(学校でコピーが許される理由とは)」の動画をご覧ください。

 

 

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研究授業の形態と配布資料の扱い

研究授業には主に2つの形態があります。
一つは学校内の研究授業で、教員が授業を行い他の教員が参観する形式。もう一つは、学校外の教員や研究者を対象に授業を公開する形式です。

たとえば「赤とんぼ」の歌唱授業において、楽譜をコピーして参観者に配布することが許されるかどうかが問題になります。
著作権法第35条では、許諾不要での使用は「教員から児童生徒」への配布に限定されています。研究授業では、参観者である教員は「子どもとして学んでいる」わけではなく、「子どもの学び方」や「教員の教え方」を間接的に学んでいるため、対象外とされる可能性があります。

しかし、2020年12月に公表された改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版)では、「授業参観や研究授業の参観者に授業で配布する著作物と同一の著作物を配布することは、必要と認められる限度と考えられます」と明記されています。
つまり、授業中に児童へ配布する教材と同一であれば、参観者への配布も可能です。ただし、著作権者の利益を不当に害しないよう注意が必要です。

 

学校での著作権の取り扱いの原則を知るには「著作権法35条」を理解すれば足ります。「【教員のための著作権解説】著作権法 第35条って何?」で解説しています。

 

学校外で発信される研究授業では、参加費の徴収やオンライン公開などにより、より慎重な著作権対応が求められます。
授業目的公衆送信補償金制度(SARTRAS)は、教員から児童生徒への送信を補償するものであり、参観者は対象外です。特に営利目的の研究授業では、必ず著作権者への確認を行うことが推奨されます。

SARTRASや授業目的公衆送信保証金制度について「【教員のための著作権解説】SARTRAS(授業目的公衆送信補償金等管理協会)とは?」の動画で解説しています。

 

 

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研修・学会における教材利用の注意点

研修や学会などで教材を使用する場合も、著作権に注意が必要です。

たとえば、私が使用するパワーポイント資料に教科書の中身を掲載する場合、この著作権研修は著作権法第35条の適用外であるため、許諾が必要となります。

教科書の内容は著作物であり、その著作権は教科書会社に帰属します。
中には許諾を得られた会社もありますが、そうでない場合もあるため、私の研修資料では中身をすべてぼかして使用しています。著作物の使用に際しては、その使用場所や目的、対象によって、著作権者の確認が必要です。

なお、許諾を得ずに著作物を使用するためには、「引用」の条件を満たす必要があります。
引用とは、自らの主張を明確にするために他人の著作物の一部を取り込む行為であり、「主従関係」「出所の明示」「必要性」など、いくつかの要件を満たしている必要があります。これらの条件を満たさない使用は、引用とは認められず、著作権侵害となる可能性があります。

「引用」の条件については、「【教員の担当役割別】儀式的行事(入学式・卒業式)の著作権」の動画内の「卒業文集に歌詞を載せて良い?」の項目の中で解説しています。

 

 

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学習指導案の作成と著作権

研究授業で参観者に配布する資料として代表的なものに学習指導案があります。

学習指導要領との関連については、その文章に著作権はないため、自由に使用できます。ただし、「教材観」などの項目で赤とんぼの作詞者や時代背景を記述する場合は、参考にした資料の出典を明記することが望ましいです。

また、完成した学習指導案の著作権は、原則としてそれを作成した先生に帰属します。
ただし、学校が法人として先生に作成を指示した場合など、職務として作成された学習指導案については、著作権が学校(使用者)に帰属する場合があります。これは著作権法で定められた「職務著作」という概念に基づくものです。
他人がその学習指導案を使用する場合は、著作権の取り扱いに十分注意する必要があります。

先生に気にして欲しい著作権について「先生が陥りがちな著作権トラブル(授業と部活・職員会議・研究会の違いとは)」の動画でお話しています。

 

 

まとめ:【教員のための著作権解説】学校の研究授業での著作権の取り扱い

研究授業は通常の授業以上に準備が求められ、多忙な校務の中で著作権まで気を配るのは大変かもしれません。

しかし、特にオンラインでの発信が一般的になってきた現在、著作権の理解は学校の先生や保護者を含めたすべての関係者にとって重要です。

 

この記事の内容は、動画「【学校の著作権】研究授業で教材をコピーして配布してもいいの?法律的にOKな範囲を解説」をもとに作成しました。

学校における「著作権」の正しい理解と実践のために
著作権に関する研修・講習・授業を通じて、学校現場での対応についてお伝えしています。
これまでの研修例には、先生向け研修生徒向け授業司書向け研修などがあり、幅広いニーズに対応してきました。

国公立中学校での実践経験をもとに、現場に即した内容でご提案いたします。
学校ごとの課題やご要望に応じて柔軟に対応いたしますので、ぜひご相談ください。

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この記事を書いた人
原口直

学校著作権ナビゲーター

東京学芸大学卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭に。東京都公立中学校および東京学芸大学附属世田谷中学校で勤務。元・東京学芸大学こども未来研究所 教育支援フェロー。

2020年より、学校現場での経験を活かし、机上の法律と教育現場をつなぐ「学校著作権ナビゲーター」として活動を開始。教員・教育実習生・子どもたちに向けて、著作権への理解を深める講演・情報発信・執筆活動を行っている。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)/東京学芸大学 附属学校図書館運営専門委員会 著作権アドバイザー(2025年〜)

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