ダンスを使って学校で著作権教育をしよう-恋ダンス・恋チュンは無許諾で踊れる?-【体育・運動会・文化祭】

「舞踊の著作物」を使って学校で著作権教育をしてみよう! 学校著作権ナビ 動画
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知的財産権・著作権に出てくる著作物について、

1.著作物の種類
2.各著作物を学ぶ方法
3.著作物に応じた教育

をシリーズで紹介します。
今回は「舞踊」を取り上げます。

 

学校での著作権の取り扱いについてはこのサイト・YouTubeチャンネル「原口直の学校著作権ナビ」で解説しています。まずは「学校における著作権入門(学校でコピーが許される理由とは)」の動画をご覧ください。

 

舞踊というと学校には関係なさそうですが、振り付けやダンス。こういったものは学校でよく耳にするものだと思います。

例えばダンスの振り付けで言えば、文化祭での発表(部活動や個人での発表など)があったり、運動会の表現のダンスや応援団や応援合戦のダンスというのもあるでしょう。また、部活動…ダンスを主体とした部活動はもちろんのこと、吹奏楽部等ではドリルと呼ばれる振り付けをすることもあると思います。

 

学校の中にも舞踊の著作物はたくさん潜んでいます。
まず舞踊は、知的財産権の中の著作権の一つです。様々な著作物の中の一つとなっています。

 

原則…著作権のルールは「作品は作った人のもの」使う時・増やす時・帰る時には作った人に許諾が必要、学校は例外です。

 

著作権の基本について知りたい方は、まず「学校における著作権入門(学校でコピーが許される理由とは)」をご覧になってください。

 

 

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「舞踊又は無言劇の著作物」とは?

著作権法は全124条あり、その中に著作物と定められているものが第2章の中にあります。

 

(著作物の例示)
第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。

一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 映画の著作物
八 写真の著作物
九 プログラムの著作物

「舞踊又は無言劇の著作物」として3つ目に挙げられています。

学校で使う舞踊とはどのような場合があるでしょうか?

授業→保健体育の授業では、ダンスがあります。
運動会→学年の表現があったり、応援団のダンス、応援のダンスがあったりすることもあると思います。
文化祭→部活動の発表、また個人での発表などもあったりすると思います

ですので、学校の中にもダンス・舞踊があることがわかります。

今お話しした「授業」「運動会」「文化祭」は、すべて「授業」にあたりますので、著作権法第35条「学校の例外」にあたりますので、許諾不要で著作物を使うことができます。つまり、既存の振り付けを使うことができるということです。

 

「学校は例外」がどういうことか?については「【教員のための著作権解説】著作権法 第35条って何?」の動画で詳しく解説しています。

 

保健体育科>中学校>学習指導要領の中に位置づけられているダンスの内容です。

G ダンス
ダンスについて,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
⑴ 次の運動について,感じを込めて踊ったりみんなで踊ったりする楽しさや喜びを味わい,ダンスの特性や由来,表現の仕方,その運動に関連して高まる体力などを理解するとともに,イメージを捉えた表現や踊りを通した交流をすること。
ア 創作ダンスでは,多様なテーマから表したいイメージを捉え,動きに変化を付けて即興的に表現したり,変化のあるひとまとまりの表現にしたりして踊ること。
イ フォークダンスでは,日本の民踊や外国の踊りから,それらの踊り方の特徴を捉え,音楽に合わせて特徴的なステップや動きで踊ること。
ウ 現代的なリズムのダンスでは,リズムの特徴を捉え,変化のある動きを組み合わせて,リズムに乗って全身で踊ること。
⑵ 表現などの自己の課題を発見し,合理的な解決に向けて運動の取り組み方を工夫するとともに,自己や仲間の考えたことを他者に伝えること。
⑶ ダンスに積極的に取り組むとともに,仲間の学習を援助しようとすること,交流などの話合いに参加しようとすること,一人一人の違いに応じた表現や役割を認めようとすることなどや,健康・安全に気を配ること。

 

このようにダンスは保健体育の授業の一つとして位置付けられています。

 

 

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「舞踊」を学ぶ方法

舞踊を学ぶ方法として3つ提案します。
公式の舞踊・ダンスの動画、運動会用の舞踊の動画、そして舞踊につきものの音楽の著作権についてです。

 

公式の舞踊・ダンスの動画

YouTubeなどで検索すると、歌手・アーティスト本人の舞踊の動画がいろいろ出てきます。

現在では、ミュージックビデオと別に定点カメラで振り付けを撮った動画や、それを反転して踊りを踊りやすくするため/覚えやすくするために、鏡となって踊ってる動画があがっていたりします。また、タイトルの中に「Choreography」「Dance Practice」「Dance ver」といった文言が入っていて、振り付けを覚えるために、またダンスだけを見るために作られた動画があります。

公式の証はどのように見極めればいいかというと、チャンネル名の右側にチェックマーク(丸にチェックマークが入っているもの)が公式のチャンネルです。

この公式のチャンネルの場合、ほとんどは本人の演奏している(歌ったり演奏したりしている)音楽になっていますし、この振り付けダンス動画を見ることによって、本人にJASRACを通じて収益が入ることになっていますので、本人の公式チャンネルを見る、それでダンスを学ぶ・振り付けを学ぶというのはとても良い方法だと思います。

 

運動会用の舞踊の動画

現在では、YouTubeの中で歌手自らが運動会用や子ども用に紹介している動画があります。
また、教育系の企業でも「ダンス 運動会に最適」と書いてあるような運動会用の動画を紹介したりしています。
また、ダンサーの中にもそういった動画を紹介していたり、いろいろな学校が過去の学校の動画としてあげているものもあります。こちらは個人的な公開が多いかなというふうに思います。なかなか公式の学校の動画というのはないとは思います。

このように様々な人たちが運動会用の舞踊動画をアップしています。
それぞれが著作者となっていて、例えば使用について料金を払う必要があるというような動画があったり、YouTube上でしたら見ることができる、一見無料のように見える動画があったりします。

こういったものを活用することもいいと思います。

 

YouTubeは積極的に著作権保護に取り組んでおり、原則として安心して授業に使うことが可能です。「YouTubeの著作権保護への取り組み【学校でYouTubeを使えます。ただし…】」で解説しました。

 

 

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ダンスを踊るための音楽を使った著作権教育のやり方

まず、授業や行事の一環の中で、制作の過程として著作権のことを学ぶというのは一つの方法です。

授業の過程で練習動画を共有しようという話に必ずなると思います。その際に公式の歌手のものを使うのか、ダンスが上手なクラスメートの動画を共有するのか、また教員が踊っている様子を子どもたちに動画で見せるということもあるかもしれません。

そういった時に「あれ?著作権、大丈夫かな?」とか「音楽の著作権は大丈夫かな?」というふうに視野を広げられると思います。

また、振り付けやダンスに関する子どもたちに身近な話題をここで3つ紹介します。

 

恋ダンスから考える著作権

星野源さん作詞作曲の《恋》という音楽にのせて、星野源さんや新垣結衣さん、他にも様々な出演者が踊りを踊っていて、それが非常に話題となりました。ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』のプロモーションの一つです。
このドラマが放映されている間はYouTubeにたくさんの恋ダンスが上がりました。ご本人たちはもちろんのこと、YouTuberや芸能人、ダンサーやいろいろな人がYouTube動画をアップしました。

この対応について、放映中(ドラマが放送されている間)はアップを推奨されていて、恋ダンスの音源もご本人が歌っている曲を使っているという例が多かったです。
しかし、放映後・放送が終了してからは、自主的な削除が求められました。

こんなときに「何でだろう?」「どうしてそういう対応したのかな?」ということを考えさせると、非常に面白いと思います。

 

恋チュンから考える著作権

AKB48の《恋するフォーチュンクッキー》のダンスについて。秋元康作詞、伊藤心太郎作曲の曲です。こちらも社会現象となるくらい恋するフォーチュンクッキーの振り付けを、いろいろな団体や企業そして官庁までもが踊ってYouTube動画をアップするという現象が起こりました。

しかし、この恋チュン動画。誰のチャンネルに上がってるか、ちょっと見てみてください。
AKB48の公式のYouTubeチャンネルで上がっているのです。

YouTubeの公式動画であがっているということは、利益はJASRAC を通じてAKB48に入るということです。
それぞれの個人のチャンネルや個々の団体のチャンネルではなく、公式のAKB48のチャンネルでアップするというところが面白いところです。

こんなことを話題にして教材にしてみても、面白いかもしれません。最後には踊ってもいいかもしれませんね。

 

私は音楽の授業でAKB48の曲を入り口とした知的財産権の授業を行っていました。「【音楽の新学習指導要領】音楽科で教える知的財産権の指導方法の実践例」で内容を紹介していますのでご覧ください。

 

踊ってみた動画から考える著作権

これもたくさんあります。アーティスト歌手本人ではない人が、振り付けのみを踊っているという動画です。特に最近ではBTSやNiziUといった特徴的なダンスをしている人たちや簡単に真似ができるようなダンスも様々に出てきています。

この「踊ってみた」動画。舞踊・ダンス・振り付けという意味では原則としては許諾は不要です。
営利を目的としない、ただみんなに見てほしいという目的でYouTube 動画にアップするというのは違法ではありません。

しかし、そのダンス踊るための音楽に要注意です。
音楽には当然著作権があり 、YouTubeにアップロードすることは認められていません。この音楽にも著作権があるということを忘れてはいけません。

YouTube に音楽をアップする際、自分で演奏したものをあげるのは可能です。なぜなら、作った人にYouTube・JASRACを通じてきちんとお金が行くようになっているからです。YouTube は使用した分をJASRACに支払い、JASRACから著作者にお金が行くような流れになっています。

しかし、演奏そのもの(本人が演奏したもの)をアップロードするのは許されていません。ダンスをアップロードするときに「何を音源にするのか」ということは、音楽と舞踊の両方の著作物を意識しなければいけないということです。

 

【授業目的公衆送信補償金制度とは?】学校でYouTubeを活用するコツ」の動画では、学校でYouTubeを活用する際に便利な機能などを紹介しています。

 

 

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まとめ:ダンスを使って学校で著作権教育をしよう-恋ダンス・恋チュンは無許諾で踊れる?-【体育・運動会・文化祭】

今日は著作権「舞踊」ダンスや振り付けについてお話ししました。

学校の中や習い事などで関心があるダンス。
学校のルールと習い事のルールではまた違ってきますので、そういった点に注目して子どもたちに教えてもいいかもしれません。

また、著作権教育と同時に著作者や著作物そして文化を守る心を育てる教育も同じくらい重要です。ぜひ考えてみてください。

 

ウェブサイトの記事の内容は動画と同じです。
動画「ダンスを使って学校で著作権教育をしよう-恋ダンス・恋チュンは無許諾で踊れる?-【体育・運動会・文化祭】」も是非ご覧ください。

学校での著作権については研修・講習・授業などでお話をしています。(事例→先生向け研修生徒向け授業司書向け研修)国公立中学校での実践経験の中で培った現場目線を大切にしながら、各学校の実情やお悩みに沿って研修内容を考えます。ぜひお問い合わせください。

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この記事を書いた人
原口直

学校著作権ナビゲーター

東京学芸大学卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭。東京都公立中・東京学芸大学附属世田谷中に勤務。元東京学芸大こども未来研究所教育支援フェロー。

2020年より学校勤務経験を活かして机上の法律と学校現場をつなぐ「学校著作権ナビゲーター」としての活動を開始。教員・教育実習生・子どもに著作権への理解を深めてもらうための講演活動・情報発信・執筆活動を行っている。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)

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