入学式・卒業式・日々の集会——校歌を歌い、演奏する機会は学校生活の中でたびたびあります。この身近な校歌ですが、著作権が関わっていることを意識したことはあるでしょうか。
この記事では、「校歌は誰のものか」「学校行事での利用はどこまで許されるか」「学校ホームページに掲載する場合の手続き」の3点を中心に、ついうっかり著作権を侵害してしまわないためのポイントを整理します。
校歌の著作権は誰にある?
校歌の著作権は作詞者・作曲者それぞれにある
まず、著作権の基本原則を確認しておきましょう。著作権は、作品が生み出された瞬間にその創作者に自動的に発生します。原則として、作品は作った人のものです。
校歌にも作った人がいます。歌詞は作詞者、曲は作曲者、それぞれが創作した著作物です。したがって、校歌の歌詞を書いた作詞者と、曲を作った作曲者それぞれに著作権があります。
学校が作詞・作曲を依頼した場合でも、契約で特に取り決めがなければ、権利は創作者である作詞者・作曲者に帰属するのが原則です。学校側に権利があると思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではない場合がほとんどです。
保護期間はいつまで?
著作権は著作者の死後70年間保護されます。比較的新しい校歌であれば、まだ著作権が保護されている可能性が高いといえます。一方で、明治・大正時代に作られた非常に古い校歌は、すでに保護期間が満了し「パブリックドメイン」となっている可能性もあります。ただしこれは個別に確認が必要です。
校歌に関わる権利の種類
校歌をめぐっては、以下のような権利が関係します。
| 権利の種類 | 内容 |
|---|---|
| 演奏権 | 校歌をみんなで歌ったり楽譜で演奏したりする権利 |
| 複製権 | 歌詞カードや楽譜をコピーする権利 |
| 公衆送信権 | 学校ホームページなどで校歌を配信する権利 |
| 同一性保持権 | 著作者の意に反して歌詞や曲を無断改変されない権利(著作者人格権) |
これらの権利を理解しておくことが第一歩です。
学校行事での校歌利用はどこまで許される?
結論からお伝えすると、学校の授業や行事における校歌の利用は、一定の範囲内で権利者の許諾なく行えるケースが法律で定められています。
著作権法第35条:授業の過程での利用
著作権法第35条(学校その他の教育機関における複製等に関する規定)は、教育を担当する先生や授業を受ける児童・生徒が、授業の過程で使うためであれば、必要と認められる範囲で著作物を複製したりインターネットを通じて提供できるというものです。ただし、著作権者の利益を不当に害する場合は認められません(例:市販のドリルを丸ごとコピーして配布するようなケース)。この「必要な範囲かどうか」は一律には決まらず、目的・分量・利用の仕方によって判断が変わる点に注意が必要です。
校歌の場合、音楽の授業で歌詞を示したり、歌唱指導をしたりすることは、この第35条に基づいて認められると考えられます。楽譜のコピー配布についても、授業の過程で必要と認められる範囲であれば同様に考えられますが、市販の楽譜を全曲コピーするような形は「著作権者の利益を不当に害する」とされる場合があるため、必要な範囲にとどめることがポイントです。
なお、入学式・卒業式といった学校行事も、教育活動の一環、つまり授業の過程と解釈されます。
▼インターネットを通じた提供=公衆送信については、同時双方向の遠隔授業を除き、学校の設置者がSARTRASへ補償金を支払うことが前提となります。詳しくは第35条の解説記事をご覧ください。
記事→https://maruc.work/20211119-youtube
著作権法第38条:非営利での利用
もう一つ重要な条文が著作権法第38条です。次の3つの条件をすべて満たす場合、公表された著作物を許諾なく上演・演奏・上映・口述できます。
- 営利を目的としないこと
- 聴衆から料金を受け取らないこと
- 出演者にも報酬が払われないこと
学校行事の多くはこれに該当します。入学式で新入生や保護者の前で校歌を斉唱したり、吹奏楽部が演奏したりする場合がこれにあたります。通常の入学式・卒業式・運動会などで校歌を歌ったり演奏したりする分には、多くの場合著作権者の許諾を得る必要はないと考えてよいでしょう。
ただし、これらの条文が適用されるのは「教育目的の範囲内」、かつ「非営利・無料・無報酬」の条件を満たす場合に限られる点は覚えておいてください。あくまで例外です。
▶ 動画では5:12〜で詳しく解説しています
校歌をはじめとする学校行事での著作権は、研修でも先生方から多く質問をいただくテーマです。授業・行事・ホームページ掲載それぞれの場面での考え方など、研修でどのような内容を扱っているかは、研修テーマ一覧ページでご確認いただけます。
入学式・卒業式など儀式的行事での著作権については、担当別に整理した「学校行事での著作権ルール解説|卒業式の歌詞・BGMから動画配信まで」もあわせてご覧ください。
動画→学校行事での著作権ルール解説|卒業式の歌詞・BGMから動画配信まで
記事→https://maruc.work/20220225-youtube
校歌ならではの特例——学校ホームページへの掲載
学校行事では比較的自由に使える校歌ですが、学校ホームページへの掲載については別途確認が必要です。
JASRACによる使用料免除の特例措置
JASRACが著作権を管理する校歌を学校のウェブサイトで掲載する場合、著作者からの特段の申し出がない限り、所定の申込書を提出することで当分の間、使用料が免除される特例措置があります。
ただし、免除されるのは「その学校のホームページで、その学校の校歌を掲載する場合」に限られます。他校の校歌や、自校の校歌でも別の目的での利用は対象外です。
手続きの手順
JASRACの公式サイト(「利用者の皆さま」内「学校など教育機関での音楽利用」のページ)に、校歌掲載の手続き方法が記載されています。
手順は以下の通りです。
- 自校の校歌がJASRACの管理作品かどうかをデータベースで検索する
- 申込書を作成しメールで送信する
- 手続き完了後に届く許諾マークを学校のホームページに掲載する
これにより、使用料を免除される形で校歌を掲載できます。ぜひ手続きをしてみてください。

▶ 動画では7:01〜で手続き画面を実際に見ながら解説しています
まとめ:校歌の著作権、3つの視点で整理する
| 場面 | 関係する条文・制度 | 許諾の要否 |
|---|---|---|
| 音楽の授業で歌詞・楽譜をコピー | 著作権法第35条 | 条件を満たせば不要 |
| 入学式・卒業式・運動会での斉唱・演奏 | 著作権法第38条 | 非営利等の条件を満たせば不要 |
| 学校ホームページへの掲載(JASRAC管理曲) | JASRAC特例措置 | 申込書提出で使用料免除 |
校歌は学校のシンボルであり、子どもたちや教職員、卒業生の心にも深く刻み込まれる大切なものです。だからこそ、その背景にある作詞者・作曲者の権利にも敬意を払い、適切に利用していく姿勢が求められます。
「これは大丈夫かな?」と迷ったときは自己判断せず、まずは教育委員会や著作権に詳しい専門家に相談することをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q. 校歌の著作権は学校にありますか?
A. 原則として、校歌の著作権は歌詞を書いた作詞者と曲を作った作曲者それぞれに帰属します。学校が依頼して作られた場合でも、契約で特に取り決めがなければ権利は創作者側にあります。
Q. 卒業式で校歌を演奏することは著作権上問題ありませんか?
A. 営利を目的とせず、聴衆から料金を受け取らず、演奏者に報酬が払われない場合には、著作権法第38条第1項により、許諾なく演奏・斉唱できると考えられます。
Q. 学校ホームページに校歌を掲載するには許諾が必要ですか?
A. JASRACが管理する校歌の場合、所定の申込書を提出することで当分の間使用料が免除される特例措置があります。まず自校の校歌がJASRACの管理作品かどうかをデータベースで確認し、手続きを行ってください。
Q. 明治・大正時代に作られた古い校歌も著作権が保護されていますか?
A. 著作者の死後70年を経過した著作物はパブリックドメインとなり、著作権の保護期間が満了します。非常に古い校歌はすでに満了している可能性もありますが、個別に確認が必要です。なお、校歌そのものの著作権が消滅していても、近年つくられた編曲版(伴奏譜など)には編曲者の著作権が生じている場合があります。使う楽譜のバージョンにも目を向けておくと安心です。
関連記事・動画
- 著作権法第35条とは:https://maruc.work/20211119-youtube
- 入学式・卒業式の著作権(担当別):https://maruc.work/20220225-youtube
この記事は、動画「校歌の著作権|授業・行事・ホームページ掲載のポイント」をもとに作成しました。



