学校で生成AIを使うときの著作権|入力・出力・SNS公開と第35条の範囲

生成AI活用(校務・授業)
生成AI活用(校務・授業)
本サイトはアフィリエイトプログラム等による収益を得ています
PR
先生のための生成AI活用講座
授業や校務での実践的な生成AI活用法について、コピペしてすぐに使えるプロンプトやリスク対策も含めて、教職員に必要な情報を紹介しています。

生成AI活用
学校現場での生成AI活用をまとめたカテゴリ。授業準備、教材づくり、校務での使い方から、コピペして使えるプロンプトやリスク対策まで分かりやすく整理。安全に無理なく活用したい先生向けです。

生成AIは授業準備や校務に役立つツールとして学校現場への普及が進んでいます。一方で、「どこまで使っていいのか」「著作権的に問題はないのか」と悩む先生も多いのではないでしょうか。

この記事では、学校で生成AIを使う際に特に気をつけたい著作権のポイントを、入力・出力・公開という3つの場面に整理して解説します。プロンプトに入れないほうがよい言葉、出力結果の確かめ方、SNSやWebに公開するときの著作権法第35条の範囲、AI生成画像の著作権までがわかります。文部科学省が令和6年12月26日に公表した「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」の内容もふまえています。

学校で生成AIを使うときの著作権の基本は、既存の作品に似たものを作らないことと、作ったものを使う場面を見極めることです。授業の過程での利用は著作権法第35条により一定の条件のもとで許諾なく行えますが、SNSやWebなど誰でも見られる場所への公開は、その範囲を超えると考えられます。入力・出力・公開の3つの場面ごとに確認していきましょう。

 

 

PR

著作権研修の講師を承っています
本記事の内容を含め、学校現場に合わせた著作権研修を行っています。
→研修の特徴を紹介 / 研修テーマ一覧を見る / お申込み・ご相談

基本的な考え方

生成AIとは

生成AIとは、大量のデータを学習して新しい文章・画像・音楽などを生成する技術です。学校の中では、学校だよりの下書き、授業計画の案出し、テスト問題の作成補助など、校務・授業の両面での活用事例が増えています。

 

著作権の原則と学校における例外

著作権の基本は「他の人が作ったものを大切に守る」ことです。作品の著作権は原則として作った人(著作者)にあり、コピー(複製)や改変などをするには著作権者の許諾が必要です。

ただし著作権法第35条(授業の過程での利用を認める規定)により、学校の授業では一定の条件のもとで許諾なく著作物を利用できます。この例外は、授業を担当する教員や授業を受ける児童生徒が、授業の過程で利用する場合に限られます。SNSやWebへの一般公開には通常は及ばないと考えられます。

 

▼学校での著作権に関する記事まとめ

著作権の基礎(用語・考え方)

著作物・著作者・権利(財産権/人格権)・引用など、学校で特に押さえたい基本用語と考え方を整理します。条文や公的資料の読み方も含め、基礎から確認できるページです。

第35条・運用指針

授業目的の利用に関わる著作権法第35条と、関連する運用指針・ガイドラインの要点を紹介します。学校で確認すべき観点(対象・範囲・留意点)を一次情報をもとに整理します。

 

 

PR

生成AIと著作権が交わる点

生成AIは大量の既存データを学習して出力を生成しているため、出力結果が他の著作物に似る場合があります。そのような場合には著作権侵害のリスクが生じることがあります。

文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)では、生成物の著作権侵害は、人がAIを使わずに作った場合と同じく、既存の作品に似ているか(類似性)と、既存の作品をもとにしているか(依拠性)によって判断されるとされています。

▼生成AIと著作権の全体像は3つの段階で整理できます

生成AIと著作権を3つの段階で整理|先生が関わるのはどこ?【第0回】
生成AIと著作権の話は「作る」「使う」「できたもの」の3段階に分かれます。ニュースで大きく報じられるのはどこか、学校の先生が判断を迫られる場面が多いのはどこか。SARTRASの連載をもとに、学校著作権ナビゲーターが整理しました。

 

 

PR

注意すべき場面と対応

(1)入力(プロンプト)のとき

  • 有名なキャラクター名や作品名をプロンプトに含めない(既存の作品に似た出力が出やすく、似た場合には、その作品をもとにしたと判断されやすくなるため)
  • ロゴや商品名などの商標も避ける(著作権とは別に、商標権などが関係することがあるため)
  • 生成の過程(プロンプトのやりとり)を記録しておく
  • 求める出力が出てこずに何度も試行した場合も、その過程を後から確認できるよう残しておく

▶ 動画では4:49〜で詳しく解説しています

 

(2)出力結果の確認

  • 他の著作物に似ていないか確認する
  • 「何かに似ているな」と思ったら、そのまま使用しない
  • 学習教材や配布物として使う場合は特に慎重に確認する

▶ 動画では5:36〜で詳しく解説しています

こうした著作権の問題を校内研修で体系的に扱いたい場合は、研修テーマの一覧もご覧ください。

▼AIで作った教材が侵害になる分かれ目を整理した記事

生成AIと著作権【第1回】AIで作った教材が著作権侵害になるのはどんなとき?
AIで作った教材が著作権侵害になるのは、既存の作品と「似ている」ことに加えて「元ネタにした」と判断される場合です。どんな指示が危ないのか、授業で使う場合と授業の外で使う場合で何が変わるのか。学校著作権ナビゲーターが判断の分かれ目を整理しました。

 

(3)SNS・Webへの公開

著作権法第35条で許諾なく利用できるのは、教員や児童生徒が授業の過程で利用する場合で、一定の条件を満たすときです。SNSやWebは誰でも閲覧できるため第35条の範囲外になると考えられます。授業の中で使えた生成物でも、公開する段階ではあらためて判断が必要になるのです。

生成AIで作成したコンテンツをSNSや学校ウェブサイトに掲載する場合は、既存の作品に似ていないかなど著作権上の問題がないかを確認してから公開してください。学級通信(クラスだより)も授業の過程での利用ではないため同様です。

▶ 動画では5:47〜で詳しく解説しています

▼文部科学省の生成AIガイドラインとは?学校での利用ポイントを解説

文部科学省の生成AIガイドラインとは?学校での利用ポイントを解説
文部科学省(文科省)が示す生成AIガイドラインの要点を、学校現場の視点で解説します。授業でのAI利用で押さえるべき考え方、著作権との関係、改訂の経緯まで、判断に必要なポイントを整理しました。

 

 

PR

生成AI画像の著作権

文章だけでなく、画像生成AIを授業や校務で活用するケースも増えてきました。ここでは「学校で生成AI画像を使う場合」に絞って整理します。

 

AI生成画像に著作権はある?

「AIと著作権に関する考え方について」では、AIへの指示が表現に至らないアイデアにとどまる場合は、生成された画像に著作物性は認められないと考えられています。一方で、創作的表現を具体的に示す詳細な指示をしたり、生成物を確かめながら指示を修正して試行を重ねたりした場合は、創作的な関与がどの程度積み重なっているかによって著作物と判断される場合もあるとされています。

なお、いくつかの生成物から選ぶだけの行為は、それ自体では創作的な関与とは評価されないと考えられています。人間が生成物に創作的な加筆・修正を加えた部分については、通常、著作物性が認められると考えられます。

 

学校で使う際のリスク

場面リスクの内容
有名キャラクターに似た画像を出力させた授業の過程以外で使うと著作権侵害のリスクあり
授業の印刷物に貼付(教室内のみ)第35条の範囲内の可能性あり
学校サイト・SNSに掲載第35条の範囲外と考えられる。既存の作品に似ていないか要確認
特定のイラストレーターの作品に酷似した表現が出力されるよう誘導するプロンプト出力が似た場合は作品をもとにしたと判断されやすく、授業の過程以外で使うと著作権侵害のリスクが高い

▼音楽の授業で生成AIを使う時の注意点

生成AIでクラスソングを作るときの注意点|授業で使う前に確認したい3つのこと
生成AIでクラスソングを作りたい先生へ。一般の音楽生成ツールの年齢制限や個人アカウントのリスク、子供の歌詞が学習に使われる問題、生成した曲の権利の扱いなど、授業で使う前に知っておきたい3つの注意点と慎重な進め方を元中学校音楽科教員が解説しま...

 

特に注意したいこと

画風や作風そのものはアイデアにあたり、著作権では保護されないと考えられています。ただし、「有名キャラクターっぽい絵を出してほしい」「〇〇先生(実在のイラストレーター)風に描いて」といった指示で出力が既存の作品の具体的な表現に似た場合は、その作品をもとにしたと判断されやすくなりリスクが高まります。

また、指示に作品名を入れていなくても出力したAI画像が既存のイラストに似てしまった場合は、学習データを通じて依拠性があると推認される可能性があります。

学校での画像生成AI活用はこうした点を確認したうえで進めましょう。

35条の範囲を超えた著作物の違法な利用について「教員がやりがちな著作権のNG例3選|授業・職員会議・部活動の境界線」で、よくあるケースをお話ししています。

教員がやりがちな著作権違反とは?授業・職員会議・部活動の境界線
教員が著作権を意識しにくいのには理由があります。SNSアイコン・職員会議の資料・部活動の楽譜コピーなど、授業では許される著作物利用が、授業以外では違反になるケースを具体例で解説します。

 

 

授業での活用と第35条の実践

ガイドラインには、テスト問題の下書き作成や教材の案出しなどの授業での具体的な活用例が掲載されています。パイロット校(研究校)の実践事例も文部科学省のサイトで紹介されています。

授業内で生成AIを活用する際は、著作権法第35条の「その必要と認められる限度において」という条件を念頭に置いてください。その範囲は限られています。

学校の外に出す場合(公開・配布など)、出力に既存の著作物が含まれていたり似ていたりするときは原則どおり許諾が必要になると考えられます。ただし、引用の要件を満たす場合や素材サイトなどの利用規約であらかじめ認められている場合は、個別に許諾を取らずに使えることもあります。既存の著作物に似ていない生成物であれば、他の人の著作物の許諾が問題になることは通常ないと考えられます。

▶ 動画では7:13〜で詳しく解説しています

▼児童生徒への著作権指導のポイント、他の教員へ著作権について指摘する際のコツを紹介します。

著作権教育の実践方法|教員が小学生に教える3ステップと授業アイデア
「著作権をどう教えればいいか分からない」とお悩みの先生へ。法律の話よりも先に伝えるべきこととは?「学校は例外」の正しい教え方や、子供自身を著作者にするワークショップ形式の授業事例を紹介します。全教科に応用可能な3ステップ。
中学生への著作権授業の実践|いらすとや・SNS・肖像権など事例で学ぶ3ステップ
中学生への著作権授業の実践手順を解説。いらすとやの利用規約・引用の条件・SNS・肖像権など身近な事例を使った50分1コマの授業構成と、著作者への意識を育てる3ステップを紹介します。
校内で著作権を広めるコツ|「学校はコピーOK」の誤解と5つの伝え方
著作権研修で得た知識を職員室にどう広めるか。「立ち位置」「伝え方」「考え方」の3観点で、自分ごと化・個への寄り添いなど5つの工夫を解説します。「学校はコピーOK」という誤解への対応も含めた実践的な内容です。

 

 

よくある質問(FAQ)

Q. 生成AIの出力結果を授業で使ってもいいですか?
A. 授業の過程で使う場合は、著作権法第35条により一定の条件のもとで許諾なく利用できる場合があります。ただし、必要と認められる限度などの条件があるため、使う前に出力が既存の作品に似ていないかを確認しておくと安心です。

Q. 生成AIで作った画像を学校のウェブサイトに載せてもいいですか?
A. 誰でも見られるウェブサイトへの掲載は、第35条の範囲を超えると考えられます。既存の作品に似ていないかを確認し、似ている場合は使わないか権利者の許諾などを検討しましょう。

Q. 「〇〇風に描いて」と指示するのは問題ですか?
A. 画風そのものは著作権で保護されないと考えられていますが、出力が既存の作品の具体的な表現に似た場合は侵害のリスクが高まります。特定の作家名や作品名を使った指示は避けておくと安心です。

 

 

まとめ

学校での生成AI活用は、入力・出力・公開という3つの場面それぞれに著作権上のポイントがあります。特に第35条の範囲(授業の過程での利用)を意識することと、キャラクター名や画風の指定などリスクの高いプロンプトを避けることが基本です。

文部科学省のガイドラインは改定に向けた検討が進められており、文化庁の考え方も今後見直される可能性があります。一次情報を定期的に確認しながら、いたずらに恐れず安心して生成AIを活用していきましょう。

 


生成AIの著作権対応や活用ルールについて、校内研修・出前授業のご依頼を承っています。「生成AIを使う前に知っておくべき著作権」など実践的なテーマも対応可能です。テーマ例や実施事例は研修テーマ一覧をご覧ください。お問い合わせはこちらからどうぞ。

 

▼関連する記事

学校で生成AIをどう教える?文部科学省ガイドラインに基づく指導の3つのポイント【2025年版】
学校で生成AIをどう教えるか——文部科学省ガイドラインをもとに、仕組みの理解・著作権・情報モラル・倫理的利用など指導の3つのポイントを解説。生成AI画像の著作権注意点や、読書感想文・コンクールへの不適切利用への対応もまとめています。
文科省ガイドラインVer.2.0はどうやって作られたか──検討会議7回の論点と変遷を解説
文部科学省「生成AIガイドラインVer.2.0」(令和6年12月公表)の策定プロセスを解説。全7回の検討会議でどのような論点が議論され、どう変化したか──会議の変遷・ポジティブ/ネガティブな意見・最終方針の転換点を、教育現場の先生向けにまとめます。

 


参考資料

「もっと体系的に学びたい」「校内で共有したい」という方へ
本記事の内容を含め、学校現場での著作権対応を体系的にお伝えする研修を行っています。
教育委員会・学校単位・研究会単位でのご依頼も受け付けています。これまでの研修例については、先生向け研修・生徒向け授業・司書向け研修をご覧ください。

研修のご依頼・ご相談は
▶こちらの専用ページで受け付けています。
その他のご相談などは
▶こちらの問い合わせページから受け付けています。

この記事を書いた人
原口直

学校著作権ナビゲーター

東京学芸大学卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭に。東京都公立中学校および東京学芸大学附属世田谷中学校で勤務。元・東京学芸大学こども未来研究所 教育支援フェロー。

2020年より、学校現場での経験を活かし、机上の法律と教育現場をつなぐ「学校著作権ナビゲーター」として活動を開始。教員・教育実習生・子どもたちに向けて、著作権への理解を深める講演・情報発信・執筆活動を行っている。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)/東京学芸大学 附属学校図書館運営専門委員会 著作権アドバイザー(2025年〜)

原口直をフォローする
PR