先生から寄せられる質問で多いのが「YouTubeを授業で見せていいですか」というものです。
この記事ではその答えの根拠を整理したうえで、YouTube自身が著作権を守るために何をしているのかを、投稿する人・視聴する人・システムという3つの視点でご紹介します。ウェブフォーム、コピーライトマッチツール、コンテンツIDという3つのツールの違いや、2022年以降に変わった数字・機能も分かります。
2026年時点の情報で動画を新しく撮り直しましたので、あわせてご覧ください。
YouTubeの著作権対策とは、投稿する人に守ってもらうポリシー、視聴する人が使える報告の窓口、そして権利者を支える3つのツール(ウェブフォーム・コピーライトマッチツール・コンテンツID)を組み合わせた仕組みのことです。
2021年12月に初の「著作権透明性レポート」が公開されて以降、著作権に関する対応の大半が自動検出によるものだという状況は続いています。学校著作権ナビゲーターとしてよく聞かれる「YouTubeは危ないのでは」という不安は、この仕組みを知ることで整理しやすくなります。
前提の確認:授業で見せられる根拠は「YouTubeが安全だから」ではありません
授業で公開されているYouTube動画をその場で見せることは、一定の条件のもとで認められると考えられます。根拠は、YouTubeが安全な場所かどうかではなく、著作権法第35条第1項(学校などの教育機関で、授業の過程で著作物を利用できることを定めた規定)です。
この規定は、公表された著作物であって公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達すること、つまりネット上で配信されているものを教室のモニターなどで見せることを認めています。改正著作権法第35条運用指針でも、授業内容に関係するネット上の動画を授業中に受信し、教室に設置されたディスプレイ等で視聴させることが「公に伝達」の該当例として挙げられています。
▶ 動画では1:24〜で詳しく解説しています
満たす必要があるのは次のような条件です。
- すでに公表されている著作物であること
- 営利を目的として設置されたものではない教育機関であること
- 教育を担任する者、または授業を受ける者による利用であること
- 授業の過程での利用であること
- 必要と認められる限度であること
- 著作権者の利益を不当に害することとならないこと
あわせて、見せる相手は授業を受ける児童生徒であることも前提です(授業参観の保護者などは含まれますが、それ以外の人にも見せる場合は別の整理になります)。
なお、補償金の支払いが関係するのは公衆送信を行う場合です(第35条第2項)。教室で受信して見せる「公の伝達」は無許諾・無償でできるものとされています。ここで扱っているのは教室で受信してその場で見せる場合で、オンライン授業で配信する場合は別の整理が必要になります。
重要なのは、「YouTubeにあるものは全部大丈夫」という理解ではないということです。
YouTubeは投稿前に権利関係を審査しているわけではありません。アップロード時に投稿者が確認する画面はありますが、すべての投稿者が著作権をきちんと学んで判断できているかというと、そこは疑問が残ります。
ですから、明らかに違法にアップロードされたと分かる動画を授業で使うことは6つ目の条件(著作権者の利益を不当に害することとならない)の判断に影響する可能性があり、教育上の配慮という点からもおすすめしません。YouTubeだから使える、使えない、ではないのです。
▶ 動画では4:28〜で詳しく解説しています
授業での見せ方やダウンロードして使う場合の考え方は、別の記事で詳しく整理しています。


YouTubeの著作権対策は3つの視点で整理できます
ここからは、YouTubeが著作権のために行っている取り組みを見ていきましょう。3つの視点に分けると全体像がつかみやすくなります。
| 視点 | 誰が関わるか | 主な内容 |
|---|---|---|
| ①投稿する人 | 動画をアップロードするクリエイター | ポリシーの理解、YouTubeスタジオでの著作権管理 |
| ②視聴する人 | すべてのユーザー | 権利の侵害を報告する機能 |
| ③システム | YouTube・著作権者 | ウェブフォーム/コピーライトマッチツール/コンテンツID |
①投稿する人に求められていること
投稿する人には、アップロードの前に著作権の知識を身につけることが求められています。自分の動画に著作権の申し立てがついた場合の確認や自分の動画が他の人のところでアップされている場合の削除リクエストは、動画を管理するサイト「YouTubeスタジオ」の「コンテンツ検出」から行います。
学校の先生も、部活動の記録や学校紹介の動画を投稿する立場になることがあります。そのときは、この「投稿する人」側のルールが自分にも関わってくるのです。
▶ 動画では5:30〜で詳しく解説しています
ポリシーとガイドラインに書かれていること
クリエイター向けのサイト「YouTubeクリエイターズ」には、コンテンツ制作のヒントとして「ポリシーとガイドライン」というページがあります。著作権の項目では、クリエイターは自作の動画または使用許諾を得た動画のみをアップロードできると説明されています。つまり、許諾を受けずに自作ではない動画をアップロードすることや、他者が著作権を所有しているコンテンツを自分の動画で使用することはできない、という内容です。
正式かつ有効な削除通知によって著作権者からコンテンツが無許可で使用されていると通知があった場合には、YouTubeが著作権法に従ってその動画を削除するとも書かれています。ほかにも、不正使用を防ぐために権利者が使えるツールの案内や、著作権侵害についての説明が並んでいます。
「フェアユース」はアメリカの考え方です
ポリシーの中には「フェアユース」という説明も出てきます。一定の条件を満たしていれば著作権者から許可を得なくても著作物を再利用できる、とする法原理です。
ここで注意したいのは、これがアメリカの著作権法の考え方だということです。日本の著作権法には、アメリカのような包括的・一般的なフェアユースの規定がありません。日本では、引用(第32条)や授業での利用(第35条)といった個別の規定にあてはまるかどうかで判断します。YouTubeのポリシーページを読むときは、日本の学校にそのまま当てはまるわけではない点を意識しておくと安心です。
②視聴する人ができること
視聴する人にもできることがあります。すべての動画に「報告」の機能が付いているのです。
動画を報告(違反報告)する手順
- 画面の右上のメニュー(︙)を開く
- 「報告」を押す
- 表示された理由の中から「権利の侵害」を選ぶ
この手順で、著作権について問題があるということをYouTube側に報告できます。特別な権限は必要ありません。すべての人が、すべての動画に対して報告できる仕組みになっています。
「報告」と「削除依頼」の違い
ポイントは、「報告」は誰でもできますが「削除依頼」を出せるのは権利者だけだということです。どちらも「問題のある動画をYouTubeに伝える」点は同じですが、誰ができるのか、その後に何が起きるのかが違います。
| 報告(違反報告) | 著作権侵害による削除依頼 | |
|---|---|---|
| 誰ができるか | 誰でもできる | 権利者本人または代理人に限られる |
| 何をするものか | 問題がありそうな動画をYouTubeに知らせる | 自分の作品の削除を求める法的な手続き |
| 第三者の作品について | 報告できる | 削除を求めることはできない |
自分が著作権を持つ作品が無断で転載されているのを見つけた場合は、権利者として削除依頼を出すことができます。窓口は、後で紹介するウェブフォームやYouTubeスタジオです。
ここで注意したいのは、作品を作った人と著作権を持っている人が同じとは限らないことです。たとえば、学校の業務として作り学校の名義で公表した動画は、「職務著作」として学校の設置者(教育委員会や学校法人など)が権利者になる場合があります。学校の動画が転載されていた場合は、個人で判断せず、まず管理職に相談しましょう。
YouTubeのヘルプでは、削除依頼を出すとYouTubeや動画をアップロードしたユーザーから連絡が来る場合があるとされています。また、法律上、一部の情報がアップロードしたユーザーと共有されることも案内されています。手続きを始める前にヘルプの案内を一度確認しておくと安心です。
なお、転載された動画に児童生徒が映っている場合は、著作権ではなく肖像やプライバシーの問題としてYouTubeのプライバシー侵害の申し立ての窓口から対応することになります。(※任意)
この違いは子どもたちに説明するときにも役立ちます。「おかしいと思ったら報告できる。でも、消してくださいと言えるのは権利を持っている人だけ」。そう伝えると、権利の仕組みが伝わりやすくなるでしょう。
▶ 動画では6:22〜で詳しく解説しています
③YouTubeのシステム—著作権を守る3つのツール
YouTubeは、著作権侵害を防ぐために主に3つのツールを用意しています。誰が使うツールなのかが、それぞれ違います。
| ツール | 主な利用者 | 特徴 |
|---|---|---|
| ウェブフォーム | 著作権者であれば誰でも | 削除依頼を送る機会が多くない権利者が使う窓口として案内されている |
| コピーライトマッチツール | 再投稿されることが多いクリエイター | 一致する動画を自動的に検出。200万を超えるチャンネルが利用(2021年上半期時点) |
| コンテンツID(Content ID) | 映画や音楽など複雑な権利管理環境にある著作権者 | 提出されたファイルのデータベースと照合してスキャンする |
※このほか、企業向けに「エンタープライズ コピーライト マッチ ツール」があります。2025年初頭に、それまでのコンテンツ検証ツールに代わるものとしてリリースされました。
▶ 動画では7:22〜で詳しく解説しています
ウェブフォーム
ウェブフォームは著作権者であれば誰でも使える窓口です。著作権で保護されている自分の作品が無断でYouTubeに掲載された場合に、著作権侵害による削除依頼を提出できます。YouTubeのヘルプセンターでは、削除依頼を提出すると法的手続きが開始されると案内されています。
自分の作品を無断で投稿されたときに削除を求められる入り口がここにある、と考えていただくと分かりやすいでしょう。
コピーライトマッチツール
コピーライトマッチツールは、自分の動画を第三者に再投稿されるなど削除依頼を送る場面が繰り返し生じるクリエイター向けのツールとして案内されています。
YouTube上の他の動画と一致する動画、また一致する可能性がある動画を自動的に検出します。一致が検出された動画はYouTubeスタジオで確認し、どのように対応するかを選べます。
コンテンツID
YouTubeにアップロードされた動画は、コンテンツ所有者が提出したファイルのデータベースと照合されスキャンされます。ヘルプセンターには説明の動画も用意されています。英語ですが日本語の字幕が付いていますので、仕組みを知りたい方はご覧ください。
ポイントは、YouTubeの著作権対応の大半がこの自動検出によるものだという点です。人が1つ1つ見つけているわけではないのですね。
レポートが示す数字(2021年上半期)
2021年12月、YouTubeの日本版公式ブログで初の「著作権透明性レポート」の公開が発表されました。2021年上半期の結果は、次のように示されています。
- コンテンツIDを通じた申し立ては7億2200万件以上で、YouTubeのすべての著作権アクションの99%以上にあたります
- コピーライトマッチツールによる削除依頼の数は160万件以上に達しています
- 削除依頼を受けたアップロード者が異議申し立てをした件数も計測されています
ここで補足しておきたいのが、「99%」の意味です。これは照合の精度が99%という意味ではなく、著作権に関する対応全体に占めるコンテンツIDの割合を指しています。
その後、数字はどうなったか
透明性レポートはその後も更新されています。直近の状況は次のとおりです。
- コンテンツIDを通じた申し立ては2025年に約25億件でした。2021年上半期の7億2200万件と比べると規模が大きく変わっています
- コンテンツIDが著作権に関する対応の99%以上を占めるという構図は現在も続いています
- 一方で、コンテンツIDを実際に使っている権利者は4,500者ほどで、やや減る傾向にあります
- 申し立てを受けた側が異議を申し立て、それが認められる例も一定数あります
注目したいのは、権利者の選択が「削除」より「収益化」に傾いていることです。近年では、コンテンツIDの申し立てのうち9割以上で削除ではなく収益化が選ばれています。
無断で使われた場合に必ず動画が消えるわけではなく、広告収入が権利者に渡る形で決着することも多い、ということです。もっとも、これは権利者が選んだ対応であって、無断で使ってよいということではありません。
数値は更新されますので、最新のものはGoogle透明性レポート(YouTube著作権)でご確認ください。
▶ 動画では8:23〜で詳しく解説しています
2022年以降に変わった画面と仕組み
YouTubeスタジオの画面も変わっています。以前は左側のメニューにあった「著作権」は現在「コンテンツ検出」という名称になり、その中に「著作権」と「類似性」のタブがある形です。一致した動画は「一致する動画」タブで確認します。新しい機能は段階的に提供されるため、アカウントの状況によって表示が異なる場合があります。
あわせて、学校の先生に関係しそうな機能を2つご紹介します。
▶ 動画では9:48〜で詳しく解説しています
曲だけをミュートする機能 動画のBGMにコンテンツIDの申し立てがあった場合、その楽曲部分だけを消し、会話や効果音は残せる機能が2024年に追加されました。YouTubeスタジオの編集オプションから選べます。学校行事の記録動画を公開したところ、会場で流れていた音楽が拾われてしまった、というような場面での対処に使えます。ただし、公開してよいかどうかは別に確認が必要です(次の項目で整理します)。
類似性検出 自分の顔がAIによって無断で使われた動画を検出し、削除を求められる機能が2025年から段階的に提供されています。コンテンツIDと同じ仕組みを人物に応用したもので、利用には身分証明書などによる本人確認が必要です。こちらは著作権ではなく肖像やプライバシーの話ですが、生成AIの普及にともなってプラットフォーム側の保護対象が「作品」から「人物」へ広がってきたことを示しています。
学校行事の動画を公開する前に確認したいこと
ミュート機能について、前提を一つ確認しておきましょう。学校行事の記録動画を誰でも見られる形でインターネットに公開することは授業の過程での利用にあたらないため、第35条の範囲外です(学校行事そのものは授業に含まれます)。複製と公衆送信にあたり、原則として権利者の許諾が必要になります。
確認したいのは次の3点です。
- 演奏の主体:自分たちの演奏を録画したのか市販の音源を使ったのかで、必要な手続きが変わります
- 掲載先:動画共有サービスに投稿するか、学校のホームページに直接載せるかで扱いが異なります。掲載先の規約もあわせて確認しましょう
- 公開の範囲:誰でも見られる形なのか限定的な公開なのかを確認します。参観が認められた保護者などに限って配信する場合は第35条で対応できることもありますが、その場合も公衆送信にあたるため、学校の設置者による補償金の支払いが前提になると考えられます
ミュート機能は、あくまで申し立てを受けたあとの対処です。公開してよいかどうかの判断とは別の話なので、これがあるから大丈夫とはならないのです。
▶ 動画では11:00〜で詳しく解説しています
▼学校行事の動画を公開するときの手続きは、こちらで詳しく解説しています

こうした著作権の問題を校内研修で体系的に扱いたい場合は、研修テーマの一覧もご覧ください。
まとめ:仕組みを知ると、いたずらに恐れずにすみます
YouTubeは、投稿する人に知識を求め、視聴する人に報告の窓口を用意し、権利者には3つのツールを提供しています。著作権を守るための方策が、いくつもの層で用意されているのです。この枠組みは2021年から変わっていませんが、扱う件数や画面の名称、AIへの対応は年々更新されています。仕組みそのものを知っておけば、細かな変更があっても慌てずにすみます。
そのうえで、授業で見せられる根拠は著作権法第35条第1項にあり、明らかに違法にアップロードされたと分かる動画は避けるという判断軸を持っておくと迷いが減ります。いたずらに恐れるのではなく原則に則って考える。身近なYouTubeは、そのための良い教材にもなってくれるはずです。
よくある質問(FAQ)
Q. 違法アップロードされた動画を授業で見せてもいいですか?
A. 明らかに違法にアップロードされたと分かる動画は、第35条の6つ目の条件(著作権者の利益を不当に害することとならない)の判断に影響する可能性がありおすすめしません。授業で見せられるかどうかの基本はこちらの記事で整理しています
Q. YouTubeは著作権を守るためにどんなツールを使っていますか?
A. 3つあります。著作権者であれば誰でも使えるウェブフォーム、再投稿されることが多いクリエイターが使うコピーライトマッチツール、そして映画や音楽など複雑な権利管理が必要な著作権者を支えるコンテンツIDです。
Q. 著作権を侵害していると思う動画を見つけたらどうすればいいですか?
A. 動画のメニュー(︙)から「報告」を選び「権利の侵害」を選ぶことで、YouTubeに報告できます。この機能はすべての動画に付いており、誰でも利用できます。ただし、著作権侵害による削除依頼を出せるのは権利者本人または代理人に限られます。
Q. 自分の作品が無断で投稿されていたら?
A. 著作権侵害による削除依頼を提出できます。YouTubeのヘルプでは、削除依頼を提出すると法的な手続きが始まると案内されています。頻繁に依頼を送る必要がある場合は、コピーライトマッチツールが用意されています。
Q. 学校行事の動画をYouTubeで公開するのは第35条でできますか?
A. 学校行事そのものは授業に含まれますが、記録動画を誰でも見られる形でインターネットに公開することは授業の過程での利用にあたらないため第35条の範囲外です。原則として権利者の許諾が必要で、演奏の主体・掲載先・公開範囲を確認して判断します。
著作権研修・出前授業のご依頼を承っています。研修の内容・形式・費用の考え方、よくある質問は研修のご案内にまとめています。
この記事は、動画「授業でYouTubeを見せるのはOK?著作権法35条の条件と注意点」をもとに作成しました。

