「学校で生成AIをどう扱えばいいのか、判断に迷っている」という声を研修の場でよく耳にします。生成AIをめぐっては、活用を推進する意見もあれば、子供への影響を慎重に考えたいという声もあります。
この記事では、一般論ではなく「学校ではどうするか・文部科学省は何と言っているか」という実務的な観点から、指導の3つのポイントを整理しています。著作権を含む注意点、読書感想文やコンクールへの対応、チェックリストの活用方法まで、現場で使える情報をまとめました。
学校での生成AI利用——文部科学省の動向と著作権の前提
著作権と学校の例外ルールを先に確認しておく
生成AIの指導に入る前に、著作権の基本的な立場を確認しておきましょう。著作権は、何かを創り出した瞬間に自動的にその人に発生します。原則として、作品は作った人のもので、使う・増やす・変える際には許諾が必要です。ただし、学校はその例外にあたります。著作権法第35条(授業の過程での著作物利用を認める規定)により、授業の過程での利用には一定の範囲で例外が認められています。
この前提を踏まえた上で、生成AIの話に入ることが大切です。
文部科学省のガイドライン——暫定版からVer.2.0へ
学校での生成AI利用に関して、文部科学省はガイドラインを発出しています。

- 旧ガイドライン(暫定版):2023年7月4日発出。AIと著作権に関する法的整理がまだ進んでいない段階でのまとめ
- 新ガイドライン(Ver.2.0):2024年12月26日発出。「暫定的な」という文言が消え、教職員・教育委員会向けに具体的な指針を示した改訂版
新ガイドラインの改訂は、2024年7月に設置された「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関する検討会議」(教育・生成AI専門家・教育委員会関係者・現職教員など約20名)での議論を経て行われました。
▶ 新旧ガイドラインの違いを6つの観点で詳しく知りたい方は「文部科学省の生成AIガイドライン新旧比較【2025年最新】」をご覧ください。

学校で生成AIをどう教えるか——指導の3つのポイント
▶ 動画では5:13〜で3つのポイントを詳しく解説しています
ポイント① 生成AIの仕組みと限界を正しく理解させる
重要なのは、生成AIが「入力された情報をもとに文章や画像などを生成するツール」であることを、子供たちにわかりやすく伝えることです。
そして同時に、必ずしも正確ではないという限界も教えます。間違いや偏った情報が含まれる可能性があることを認識させ、情報を鵜呑みにせず、自分で確かめる習慣を身につけさせましょう。
また、生成AIの得意・不得意を理解させることも大切です。
| 生成AIが得意なこと | 生成AIが不得意なこと |
|---|---|
| 情報の検索・文章の生成 | 感情の理解 |
| アイデア出し | 想像・創造的な思考 |
| 文章の添削・要約 | 人間にしかできない判断 |
ポイント② 情報の信頼性と著作権について学ばせる
生成AIを使う前提として、著作権の考え方と例外ルールをきちんと理解させることが必要です。他人の著作物を無断で使用することが問題になり得ることを理解させ、適切な引用方法を学ばせます。
著作権の原則・例外・引用・学校の立場——こうした基礎を理解してから生成AIに向き合わせることが、現場での混乱を防ぐ第一歩です。
また、プライバシーの保護も重要な指導事項です。個人情報(名前・成績など)や機密情報をAIに入力しないよう、そもそも個人情報とは何かから子供たちに説明することが必要です。
ポイント③ 生成AI画像の著作権——授業や校内で使う場合の注意点
生成AIで画像や文章を作成する際に特に注意したいのが著作権の問題です。文部科学省の新ガイドライン(Ver.2.0)でも、「生成物が既存の著作物に対して類似性・依拠性がある場合には著作権侵害の可能性がある」と具体的に記述されています。
授業の過程での利用は著作権法第35条の範囲内で対応できる場合がありますが、生成した画像をそのまま校内掲示や印刷物に使う場合・外部に公開する場合は、別途確認が必要です。特定のキャラクターや作家の画風を指定してAIに生成させることは、依拠性が認められやすくなるため注意が必要です。

ポイント④ 生成AIをツールとして活用する力を育む
生成AIは使い方を教えることで、子供たちの学びを支える有効なツールになります。課題のアイデア出し・調べ物の補助・文章の添削など、学習の効率化に役立てることができます。
一方で、批判的な思考力を養うこともセットです。生成AIの情報は全て正しいわけではないため、情報を鵜呑みにせず自分で考え判断する力を育てましょう。
また、倫理的な利用について考えさせることも必要です。生成AIを悪用しない・フェイクニュースを作らないといった倫理的な視点は、道徳の授業などと連携して扱うことが効果的です。
こうした生成AIと著作権に関する指導は、教職員研修のテーマとしても人気が高く、ご要望が増えています。校内研修で体系的に取り上げたい場合は、研修テーマの一覧もご覧ください。
生成AIの倫理的な利用と学校現場での実践——3つの共通点
動画を通じて共通して大切なことは次の3点です。
体験を通して学ぶ 実際に生成AIを使ってみることが一番です。無料版もありますので、まずは先生方から使ってみてください。どんなことができるのか、どんなリスクがあるのかを体感することが、指導の質を上げます。
親子で学び、家庭と連携する 保護者にも生成AIについて一緒に学んでもらうことが大切です。生成AIのサービスによっては保護者の承諾が必要なものがあります。学校と家庭でルールを連携させて指導することが重要です。
継続的な指導を行う 一度教えて終わりではありません。生成AIは進化し続けており、使い方も広がっています。定期的に見直し、新しい情報技術に対応できるよう指導を続けていきましょう。
読書感想文・コンクールへの生成AI利用——現場で押さえたい対応
文部科学省の暫定版ガイドラインには、長期休業中の課題や外部コンクールへの応募に関する具体的な留意点も記されています。
- 生成AIの利用を想定していないコンクールへの応募作品として、生成物をそのまま提出することは「不適切または不正」と明記されています
- この点を、子供だけでなく保護者にも周知・理解させることが求められています
- 課題の設定では「自分自身の経験を踏まえた記述になっているか」「前提となる学習活動を踏まえているか」が重要なポイントです
- 提出後も口頭発表の機会を設けるなど、課題をきっかけにさらに学ばせる工夫が求められています

生成AI利用時のチェックリストの活用方法
ガイドラインにはチェックリストも収録されています。現場での活用に向けて、主なチェック項目を整理します。
- 利用するサービスの年齢制限・保護者同意の確認
- 生成AIの性質・メリット・デメリット・真偽確認の習慣
- 教育活動の目的達成に効果的な使い方かどうか
- 個人情報・プライバシー・機密情報・著作権への配慮
- 最終的には自分の判断・考えが必要であることの理解
- AIが生成したものについては引用・使用した旨を明示すること(ツール名・プロンプト・日付)
- 読書感想文などの課題への適切な対応
重要なのは、生成AIを使った場合は出所(ツール名・プロンプト・日付)を明示することです。これは作者へのリスペクトと同じ考え方で、生成AI時代の新しい「出典明記」の習慣といえるでしょう。
まとめ:学校での生成AI指導、判断の基本軸
生成AIの指導に向き合う際、現場目線で押さえておきたいポイントを整理します。
- 著作権の基礎(原則・例外・学校の立場)を先に教えることが、生成AI指導の土台になります
- 文部科学省のガイドラインは「禁止も義務付けもしない」立場。使い方の判断は学校・教員に委ねられています
- 指導の核心は「生成AIを使いこなす力」と「鵜呑みにしない批判的思考」の両立です
- 生成AI画像を含む生成物には著作権上の注意が必要。授業の過程での利用は第35条の範囲内で、外部公開は別途確認が必要です
まずは先生方自身が生成AIを使ってみることが一番の近道です。面白さと怖さを感じながら、著作権のことも一緒に考えてみてください。いたずらに恐れるのではなく、正しく理解して教育活動に活かしていきましょう。
著作権研修・出前授業のご依頼を承っています。生成AIと著作権は研修テーマとしても特にご要望が多いテーマです。テーマ例や過去の事例は研修テーマ一覧をご覧ください。お問い合わせはこちらからどうぞ。
ツール名:ChatGPTおよびGoogle Gemini
プロンプト:「文部科学省が発表した「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的ガイドライン」(令和5年7月4日)をもとに、小中学生の子どもに生成AI利用をどう指導すれば良いかという観点での重要な項目を3つ挙げてください。」
日付:2024.8.2
参考資料 文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」(令和6年12月26日公表)/文化庁「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年4月)/文部科学省ウェブサイト https://www.mext.go.jp/a_menu/other/mext_02412.html
※本記事の情報は執筆時点のものです。ガイドラインは今後改訂される可能性がありますので、最新情報は文部科学省のウェブサイトでご確認ください。
この記事は、動画「学校で生成AIをどう教える?文部科学省ガイドラインに基づく指導の3つのポイント【2025年版】」をもとに作成しました。




