学校での著作物の使用範囲とは?【令和6年度採用岐阜県中高音楽 教員採用試験問題】

学校著作権ナビ 動画
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今日は、教員採用試験で出題される知的財産権や著作権についてお話しします。

 

この記事は動画配信日時点の情報に基づいて作成しています。
実際に著作物を利用する際には、必ず最新の著作権法原文や運用指針などをご確認ください。

 

私が教員採用試験における著作権問題について取り上げる理由は、単に現職の教員の皆さんに勉強していただきたいからではありません。特に若手の教員は、知的財産権や著作権についてしっかりと学んで教員になっています。このことを、現職の教員の方々にも知っていただきたいのです。

 

 

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知的財産権と学校での著作権運用の基本

知的財産権とは?

まず、知的財産権についておさらいします。知的財産権には「産業財産権」と「著作権」が含まれます。著作権は、作品が生み出された瞬間にその創作者に自動的に発生します。
著作権法には「作品は作った人のものである」「作品を使用・複製・改変する場合には、作成者の許諾が必要である」と定められています。

 

ただし、著作権法の中には許諾を取らずに利用できる例外規定もあります。その一つが学校での使用です。

学校では教育活動の一環として、一定の条件下で著作物を許諾なしに使用することが認められています。ただし、これにも細かい条件があり、適切に運用するためには最新の法規やガイドラインを確認することが重要です。

 

 

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岐阜県中高音楽科の教採試験での出題を解説

今回紹介するのは、令和6年度採用の岐阜県中学校音楽科および高等学校音楽科で出題された著作権に関する問題です。両試験で同じ問題が出題されたため、合わせて解説します。

 

問題:
8 音楽の著作権について、(1)の問いに答えよ。
(1)次の文章ア~オについて、音楽を使用する際に許可が必要なものと不要なものの組合せを、①~⑤の中から1つ選べ。
ア 授業のために歌詞や楽譜をコピーする、または番組を録画する。
イ 学校行事で使うためにCDをコピーする。
ウ 演奏会のプログラムに歌詞を掲載する、または部活動で印刷する。
エ 入場料と演奏者への報酬がなく、営利目的ではない演奏会で曲を演奏する。
オ 学校のホームページで音楽を使用したり、行事の動画を公開する。

 

正解は③です。

これらの問題は、学校における音楽使用の場面で、どのような場合に著作権者の許可が必要かを問うものです。特に、ウやオのように、著作物を広く公表する際には許可が必要となります。詳細な解説は次のセクションで行います。

 

 

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許可が必要な著作権の使用例:プログラム掲載とホームページでの使用

それでは、著作権の使用において許可が必要な具体的な場面を見ていきましょう。

まず、ウの「演奏会のプログラムに歌詞を掲載する」または「部活動で印刷する」場合です。
これらは、著作物を複製し、さらに公衆に対して提供する行為とみなされるため、著作権者の許諾が必要となります。学校の中で行われる部活動や演奏会のプログラムに著作物を使用する場合でも、著作権の対象になる点に注意が必要です。

次に、オの「学校のホームページで音楽を使用する」または「行事の動画を公開する」場合も、許諾が必要です。
特にインターネット上で音楽を使用する場合、広く公衆に配信されるため、著作権者の権利を侵害しないようにする必要があります。学校行事であっても、許諾を得るべきケースがあるので、慎重な判断が求められます。

 

 

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学校での著作物使用に関する著作権法第35条の適用範囲

次に、学校で許可なく著作物を使用できる範囲について、著作権法第35条を確認しましょう。

著作権法第35条では、教育機関における著作物の利用に対して特例が設けられています。この特例は、以下の条件を満たす場合に適用されます。

  • 教育機関での利用
    著作物の使用が学校などの教育機関内で行われていることが前提です。
  • 教員から児童・生徒への使用
    教職員が教育活動の一環として、児童・生徒を対象に著作物を使用する場合に限られます。
  • 授業目的での使用
    著作物の利用が授業や教育目的で行われることが必要です。授業での利用には、教科の時間だけでなく、特別活動(学活・特活)や部活動も含まれます。
  • 最小限の利用
    使用する範囲は必要最低限であることが求められます。例えば、楽曲の一部分を使用する、または生徒の理解を助けるために資料を複製するなどが該当します。
  • 公表されている著作物の利用
    著作物は公表されているものに限られます。未発表の作品や、限られた範囲でしか公開されていない作品を無断で利用することはできません。

これらの条件を満たす場合、授業の中で複製や公衆送信が許されています。
たとえば、授業で歌詞や楽譜をコピーしたり、録画した番組を利用することが認められています。

ただし、問題文に出ていた部活動については注意が必要です。
特に、学校の外部で行うコンクールやコンサートでの利用には、別途許諾が必要となるケースが多いので、事前に確認を行うことが重要です。

 

教員の皆さんに特に知ってほしい著作権法の条文の中で最重要の条文は35条。動画「著作権法第35条をわかりやすく解説」で解説しています。
著作権法第35条をわかりやすく解説|学校での適用と注意点
著作権法第35条の基本をわかりやすく解説。学校での具体的な適用方法や注意点、改正点の影響について詳しく説明します。教員必見のガイドとして、授業や複製の定義も事例を交えて解説。学校現場での著作権法第35条の正しい理解と活用をサポートします。

 

この記事の内容は動画と同じです。
動画「【教員採用試験】学校での著作物使用範囲を解説!(令和6年岐阜県中高音楽)」も是非ご覧ください。

学校での著作権については研修・講習・授業などでお話をしています。(事例→先生向け研修生徒向け授業司書向け研修)国公立中学校での実践経験の中で培った現場目線を大切にしながら、各学校の実情やお悩みに沿って研修内容を考えます。ぜひお問い合わせください。

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この記事を書いた人
原口直

学校著作権ナビゲーター

東京学芸大学卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭。東京都公立中・東京学芸大学附属世田谷中に勤務。元東京学芸大こども未来研究所教育支援フェロー。

2020年より学校勤務経験を活かして机上の法律と学校現場をつなぐ「学校著作権ナビゲーター」としての活動を開始。教員・教育実習生・子どもに著作権への理解を深めてもらうための講演活動・情報発信・執筆活動を行っている。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)

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