文科省の生成AIガイドライン、何が変わった?新旧比較と教育現場の実務ポイント【2025年版】

生成AI活用(校務・授業)
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文部科学省が生成AIに関するガイドラインを改訂したことをご存知でしょうか。

2023年7月の暫定版(旧ガイドライン)から、2024年12月26日公表のVer.2.0(新ガイドライン)へ——何がどう変わったのか、学校現場で押さえておくべき実務ポイントはどこなのかを、6つの観点で比較・整理しました。「新しいガイドラインが出たのは知っているけれど、旧版との違いがよくわからない」という方に向けた記事です。

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文部科学省の生成AIガイドライン——新旧2つの違いを知る前に

旧ガイドラインとは(2023年7月)

旧ガイドラインの正式名称は「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」です。タイトルに「暫定的な」という言葉がついているのがポイントで、2023年7月に発出されました。

この時点では、AIと著作権に関する法的整理がまだ進んでいない段階でした。文化庁内の著作権課小委員会でAIと著作権の関係について検討が続いていた時期であり、「現時点での知見に基づく暫定的なまとめ」という性格が前面に出ていました。内容は著作権・セキュリティ・個人情報保護などの留意点を広く示したものでしたが、具体的な事例は限定的でした。

 

新ガイドライン(Ver.2.0)とは(2024年12月)

新ガイドラインの正式名称は「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」です。タイトルから「暫定的な」という言葉が消え、「利用」から「利活用」へと表現が変わっています。

2024年7月に設置された「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関する検討会議」(座長:石川正俊・東京理科大学学長)での議論を経て、2024年12月26日に発出されました。検討会議には教育・生成AIの専門家、大学教員、教育委員会関係者、現職教員などが参加しています。本体33ページに加え、概要1枚版・概要資料2枚版も用意されており、文科省のウェブサイトでいつでも確認できます。

なお、本記事執筆時点(2025年)における最新版はVer.2.0です。文科省は「今後の技術の進展や学校現場での取り組みの状況を踏まえ、必要に応じて改訂を行う」としていますので、最新情報は文部科学省のウェブサイトでご確認ください。

生成AIの利用について:文部科学省

 

 

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文部科学省の生成AIガイドライン新旧比較——6つの変更点

▶ 動画では3:51〜で新旧の比較を詳しく解説しています

 

① 目的と位置付けの変化

旧ガイドラインでは「現時点での知見に基づく暫定的なまとめ」という性格が強調されていました。

新ガイドライン(Ver.2.0)では、教職員や教育委員会などを主な対象として、具体的な方針と実務的ポイントを提示することを目的としています。重要なのは、生成AIの利活用を「禁止も義務付けもしない」と明記された点です。使うかどうかは現場の判断に委ねつつ、適切に活用するための指針を示すという姿勢が明確になりました。

 

② 構成の変化

新ガイドラインでは、読み手に寄り添った構成に再編されています。主な追加セクションは次の3つです。

  • 教職員が校務で利活用する場面:校務での生成AI利用例と注意点の例示
  • 児童生徒が学習活動で利活用する場面:適切な活用例・不適切な活用例の具体的な整理
  • 教育委員会などが押さえておくべきポイント:行政の立場での注意事項の明確化

また、参考資料として生成AIパイロット校の実践事例や活用チェックリストが付属しています。

 

③ 基本的な考え方の明確化

旧ガイドラインでは生成AIの性質やメリット・デメリットについて広範に記述されていました。

新ガイドラインで新たに加わった視点が「人間中心の生成AI利活用」という考え方です。具体的には次の点が明記されています。

  • 生成AIは人間の能力を補助・拡張するツールであり、最適解ではなく参考の一つとして活用する
  • 最終的な判断は人間が行い、生成物に責任を持つ
  • AI時代における「学びに向かう力」の涵養を重視する

 

④ 教育現場における実践的な指針の追加

旧ガイドラインでは教育利用の方向性を広く示すにとどまり、具体的な事例は限定的でした。

新ガイドラインでは適切な活用例と不適切な活用例が明確に分類されています。

区分
適切な活用例英語教育における自然な表現の改善、プログラミング学習の高度化 など
不適切な活用例定期考査での利用、コンクール応募作品への生成AI使用 など

また、利用時に意識したい3つの実務ポイントとして「課題の設定・プロンプトの工夫・真偽の確認」が示されています。

 

⑤ 著作権と情報モラル教育の記述の変化

旧ガイドラインでは著作権や情報モラルに関する一般的な注意点が示されていました。

新ガイドラインでは次のように具体化されています。

著作権について 生成物が既存著作物に対して類似性・依拠性がある場合には侵害の可能性があると具体的に記述されています。また、学校の授業の過程での利用については著作権法第35条(授業の過程での著作物利用を認める規定)の権利制限規定により許可される範囲で可能と詳細に説明されています。

情報モラルについて ファクトチェックの重要性、偽情報のリスク、フィルターバブルへの対応など、具体的な学習活動が提案されています。

 

生成AIを利用する際に注意したい著作権について「生成AIと著作権の注意点!学校現場での正しい使い方とは?」で詳しく解説しています。
学校で生成AIを使うときの著作権──入力・出力・SNS公開まで先生が押さえるべき注意点
学校で生成AIを活用する際に知っておきたい著作権の基本をまとめます。プロンプト入力時の注意(キャラクター名・商標)、出力結果の確認方法、SNS・Web公開時の第35条の範囲、そしてAI生成画像の著作権リスクまで、授業・校務での実践に即して解説します。

 

⑥ 新たに追加された観点

新ガイドラインで追加された主な観点は次の3点です。

  • 情報セキュリティ:「教育情報セキュリティポリシー」を参考に生成AI利用時のセキュリティ確保を推奨
  • 公平性:生成AIの学習データに潜むバイアスを認識し、不当な偏見や差別を避けるために人間の介在が必要であるとの記述
  • 参考資料の充実:パイロット校の活用事例(授業ごと・校種ごと)、教職員・児童生徒向けチェックリスト、リスクと懸念の具体例

 

こうした生成AIと著作権の問題は、教職員研修のテーマとしても注目されています。校内研修で体系的に扱いたい場合は、研修テーマの一覧もご覧ください。

 

 

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まとめ:文部科学省の生成AIガイドライン、学校現場で押さえるべき3つのポイント

新旧比較を通じて見えてくる実務上のポイントを3点に整理します。

① 「利活用しない」も「利活用する」も、どちらも学校の判断 新ガイドラインは生成AIの利活用を禁止も義務付けもしていません。「人間中心の原則」に立ちながら、学校・教員・児童生徒それぞれの立場で適切に考えることが求められています。

② 著作権との関係は「第35条の範囲内」が判断の基本軸 授業の過程での生成AI活用については、著作権法第35条の権利制限規定の範囲内で判断することが新ガイドラインでも明示されています。生成物の著作権については類似性・依拠性の観点から慎重に扱うことが大切です。

③ まずは概要版から読んでみましょう 33ページの本体を読むのが難しければ、概要1枚版から始めることをお勧めします。文科省のウェブサイトから無料でダウンロードできます。職員室でひとつの話題として取り上げてみてください。

学校現場で生成AIと上手に向き合うために、まずはガイドラインの存在と大まかな内容を知ることが第一歩です。いたずらに恐れるのではなく、正しく理解して教育活動に活かしていきましょう。

著作権研修・出前授業のご依頼を承っています。生成AIと著作権を含む研修テーマの事例は研修テーマ一覧をご覧ください。お問い合わせはこちらからどうぞ。


参考資料 文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」(令和6年12月26日公表)/文部科学省ウェブサイトhttps://www.mext.go.jp/a_menu/other/mext_02412.html

※本記事の情報は執筆時点のものです。ガイドラインは今後改訂される可能性がありますので、最新情報は文部科学省のウェブサイトでご確認ください。

この記事は、動画「【2025年最新】文科省の生成AIガイドライン、何が変わった?新旧比較と実務ポイント」をもとに作成しました。

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この記事を書いた人
原口直

学校著作権ナビゲーター

東京学芸大学卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭に。東京都公立中学校および東京学芸大学附属世田谷中学校で勤務。元・東京学芸大学こども未来研究所 教育支援フェロー。

2020年より、学校現場での経験を活かし、机上の法律と教育現場をつなぐ「学校著作権ナビゲーター」として活動を開始。教員・教育実習生・子どもたちに向けて、著作権への理解を深める講演・情報発信・執筆活動を行っている。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)/東京学芸大学 附属学校図書館運営専門委員会 著作権アドバイザー(2025年〜)

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