学校だよりと著作権|第35条が使えない理由と正しい素材の使い方

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学校だよりや学級だより、保健だよりを作るとき、「このイラスト、使っていいのかな?」と迷ったことはないでしょうか。授業の資料なら使えると聞いたことがある方も多いと思いますが、実は「授業の資料」と「学校だより」では、著作権のルールがまったく異なります。

この記事では、学校だよりにおける著作権の基本的な考え方と、素材を安心して使うための判断の手順を、現場目線でわかりやすく解説します。

2026年4月にSARTRASが発行した著作権情報誌「さあとらす」第8号(p.8)にも同テーマで執筆しましたので、あわせてご参照ください。

著作権情報誌『さあとらす』 | 一般社団法人 授業目的公衆送信補償金等管理協会
共通目的事業の自主事業として、初中等教育の教員の方に向けた著作権情報誌を発行しています。著作権に親しみを持ってもらい、授業で様々な著作物を適切にご利用いただくため、本誌を制作いたしました。全ての初中等教育機関へ本冊子を送付しておりますので、...
https://x.com/makiba_work/status/2042754760877707631?s=20

 

 

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学校だよりに著作権法第35条は使えません

結論から申し上げます。

 

授業で著作物を自由に使うことを認めている著作権法第35条は、学校だよりには通常は適用されません。

 

「学校なのに、なぜ?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。ポイントは、第35条が認める利用の主体です。

第35条が対象としているのは、「授業を担任する教員」と「その授業を受ける児童生徒」による利用に限られています。そして利用の目的も、「授業の過程」での使用に限られています。

学校だよりは、授業を行う教員が作るものであっても、利用目的は授業ではありません。配布先も保護者や地域の方々など、授業を受ける児童生徒以外の人たちが含まれます。したがって、第35条の適用条件を満たさず、原則に則って著作権者への許諾が必要となるのです。

場面第35条の適用
授業で使う教材・プリント適用される(条件あり)
学校だより(紙・PDF)適用されない
ウェブサイトへの学校だより掲載適用されない
学校だよりのメール配信適用されない

授業資料はカラフルなのに、学校だよりはモノクロで地味、と感じたことがある方もいらっしゃるかもしれません。しかしそれは、著作権の原則に則って丁寧に対応している結果かもしれないのです。

 

 

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学校だよりで使えるもの・確認が必要なもの

では、学校だよりには著作物をいっさい使えないのでしょうか。そうではありません。使えるものとそうでないものを整理しましょう。

許諾なしに使えるもの

  • 自分で撮影した写真(ただし写っている人の肖像権への配慮が必要)
  • 自分で作成したイラスト・デザイン
  • 著作権が消滅した著作物(原則として著作者の死後70年が経過したもの)
  • 利用規約で学校・教育機関への無償利用・無許諾利用が明示されているフリー素材

 

使用前に必ず確認が必要なもの

  • ウェブで見つけたイラスト・写真(「フリー素材」と書かれていても、利用規約を確認するまでは使用不可)
  • 校歌の歌詞(作詞者が著作権を持っている場合があります)
  • 新聞記事・雑誌の記事・書籍の文章
  • 市販のキャラクター
  • 子どもたちが作った作品(著作権は子どもたち自身にあります)

特にフリー素材については、「商用利用不可」「改変禁止」「クレジット表記必須」など、サイトや素材によって条件がさまざまです。使用のたびに利用規約の「利用条件」「著作物の利用について」といった項目を確認することが大切です。

 

 

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ウェブ掲載や地域配布は「さらに広い公開」になります

学校だよりを学校のウェブサイトに掲載したり、近隣の機関や教育委員会に配布したりするケースは、今では珍しくありません。しかし、これらはいずれも著作権法第35条の適用外であるだけでなく、より広い範囲への公開・配布となるため、許諾の必要性がさらに高まります。

たとえば、他人のイラストを使った学校だよりを学校のウェブサイトに掲載した場合、不特定多数の人がアクセスできる状態で著作物を公開することになります。これは複製(コピー)だけでなく、「公衆送信」にも該当する可能性があります。

地域の方々や学校外の施設への紙の配布も同様です。「授業の過程」での利用ではないため、第35条は根拠にはなりません。

学校だよりを広く読んでもらいたいという意図は、著作権者の方々が持つ「自分の作品を大切にしてほしい」という思いと、方向性は同じはずです。正しく許諾を得た上で使うことが、最終的には創作者への敬意につながります。

 

 

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許諾の取り方:難しく考えなくても大丈夫です

「許諾を取るのは面倒くさそう」「どこに連絡したらいいかわからない」という声は、研修先でもよく耳にします。しかし、多くの場合、確認の手順はそれほど複雑ではありません。

ステップ1:利用規約・規定を確認する まずはその素材の配布元(ウェブサイト)の「利用規約」「ご利用について」「よくある質問」等を確認します。学校・教育機関への利用が明示的に認められている場合は、その範囲内で使用できます。

ステップ2:問い合わせ窓口へ連絡する 利用規約に明記されていない場合、または判断に迷う場合は、著作権者や管理事業者(JASRACなど)の問い合わせ窓口に連絡します。「学校だよりに使用したい」「配布先は〇〇」「使用期間は〇〇」という情報を伝えると、スムーズに確認できます。

ステップ3:許諾を記録しておく 許諾を得た場合は、許諾日・許諾の範囲・許諾者を記録しておくことをお勧めします。次年度以降も参考にできますし、学校内で共有することで、担当が替わった際にも安心です。

また、利用規約は変更されることがあります。毎年度、使用前に改めて確認する習慣をつけておきましょう。

 

 

よくある質問(FAQ)

Q:子どもが撮った写真を学校だよりに使う場合、著作権はどうなりますか?

A:写真を撮った子どもが著作者となり、著作権は原則としてその子ども本人に帰属します。学校だよりへの掲載にあたっては、未成年者の作品であるため、保護者にも確認しておくと実務上安心です。学校だよりへの掲載にあたっては、子どもや保護者への許諾確認が望ましいと考えられます。また、写真に他の人が写っている場合は肖像権への配慮も必要です。

Q:「引用」であれば許諾なしに使えるのではないですか?

A:引用が適法と認められるためには、「公表された著作物であること」「引用部分と自分の文章の主従関係が明確であること」「出典を明示すること」など複数の条件をすべて満たす必要があります。イラストや写真をレイアウトに使う場合は、引用の要件を満たすことが難しいケースがほとんどです。記事やコラムの一部を紹介する際も、条件の確認が必要です。

Q:フリー素材のサイトで「教育利用OK」と書いてあれば、学校だよりに使えますか?

A:「教育利用OK」の具体的な意味は、サイトや素材によって異なります。「授業での使用のみ」を指す場合と、「学校が発行する印刷物への使用も可」を指す場合があり、両者は別物です。利用規約で「学校だよりへの掲載」「PDF化してのウェブ公開」が認められているかを個別に確認することが大切です。

Q:校歌を学校だよりに掲載したいのですが、許諾は必要ですか?

A:校歌の著作権(歌詞・楽曲)は、作詞者・作曲者またはその相続人が保有している場合があります。著作権保護期間(著作者の死後70年)内であれば、許諾が必要です。校歌の著作権については、学校を設置した教育委員会や自治体が把握していることがありますので、まずはそちらに確認することをお勧めします。

 

 

参考情報

  • 著作権法第35条(授業目的公衆送信補償金等管理協会・SARTRAS)
  • SARTRAS「著作権情報誌『さあとらす』第8号」(2026年4月発行)p.8「学校だよりと著作権」
  • 著作物の教育利用に関する関係者フォーラム「改正著作権法第35条運用指針」(令和3(2021)年度版)
  • 文化庁『著作権テキスト』

学校だよりの著作権については、こちらの関連記事や動画もあわせてご覧ください。

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学校だよりをめぐる著作権の不安は、「知らないから怖い」という部分が大きいと思います。いたずらに恐れるのではなく、原則を正しく知った上で、使えるものを使い、必要なところで許諾を取る。その積み重ねが、著作権を大切にする学校文化をつくっていきます。

著作権に関する校内研修・出前授業のご相談は、こちらの専用ページからどうぞ。


本記事は、SARTRAS「著作権情報誌『さあとらす』第8号」(2026年4月発行)p.8「学校だよりと著作権」の内容をもとに、maruc.work向けに加筆・再構成したものです。

学校における「著作権」の正しい理解と実践のために
著作権に関する研修・講習・授業を通じて、学校現場での対応についてお伝えしています。
これまでの研修例には、先生向け研修生徒向け授業司書向け研修などがあり、幅広いニーズに対応しています。

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この記事を書いた人
原口直

学校著作権ナビゲーター

東京学芸大学卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭に。東京都公立中学校および東京学芸大学附属世田谷中学校で勤務。元・東京学芸大学こども未来研究所 教育支援フェロー。

2020年より、学校現場での経験を活かし、机上の法律と教育現場をつなぐ「学校著作権ナビゲーター」として活動を開始。教員・教育実習生・子どもたちに向けて、著作権への理解を深める講演・情報発信・執筆活動を行っている。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)/東京学芸大学 附属学校図書館運営専門委員会 著作権アドバイザー(2025年〜)

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