「学校だより」作成時の著作権ルール:知らずに侵害していませんか?

教育現場での著作権対応
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先生方は、学級だよりや保健だより、図書館だよりなど、日々多忙な業務の合間を縫って「●●だより」の作成に取り組まれていることと思います。

子供たちや保護者に情報を伝える大切な手段であるこのお便りには、実は著作権という見落としがちなリスクが潜んでいます。
「このイラストは使って大丈夫?」「新聞記事を載せていいのかな?」と不安を感じたことのある先生もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、「●●だより」を発行する際に注意すべき著作権のポイントを、現場で直ちに活用できるよう丁寧に解説していきます。

 

 

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著作物とは何か?~お便りに使われがちな素材の再確認~

「●●だより」で使用する可能性のある著作物としては、かわいらしいイラストやカット、子供たちの活動写真、行事で歌う歌の歌詞の一部、新聞記事などが挙げられます。これらは、誰かが創作したものであれば、すべて著作物に該当します。

著作物とは、法律上「思想または感情を創作的に表現したもので、文芸・学術・美術・音楽の範囲に属するもの」を指します。つまり、人の手によって創られたオリジナリティのある表現全般が該当します。

知的財産権とは?

 

これらの著作物には、創作した瞬間から自動的に著作権が発生します。そして重要なのは、著作権者の許可なしにこれらを利用すると、原則として著作権侵害となる可能性があるという点です。

確かに、教育機関においては複製が認められる特例もありますが、これは授業の過程での使用が前提です。「●●だより」のように、授業とは異なる性質を持ち、不特定多数に配布されるものは、その対象外となる場合が多くあります。

 

学校等の教育機関では一定の条件の下で著作物の許諾なしで利用することができる旨定めている、という法律の条文が35条です。「【教員のための著作権解説】著作権法 第35条って何?」で解説しました。
授業で著作物はどこまで使える?著作権法第35条を先生向けにやさしく解説
授業での著作物の使用、どこまで許される?著作権法第35条の内容を、教員向けにわかりやすく解説します。SARTRAS制度や運用指針のポイントも丁寧に紹介。

 

「保護者にわかりやすく伝えたい」という思いから、さまざまな素材を使いたくなる気持ちは理解できますが、その際は著作権の基本を理解し、適切に対応することが大切です。

 

 

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正しく引用できていますか?~適法な引用の条件とは~

著作物を使う場合、必ずしもすべてのケースで許諾が必要というわけではありません。著作権法では、一定の条件を満たせば、著作権者の許諾なしに利用できるケースも定められています。その代表例が「引用」です。

例えば、「●●だより」で特定のテーマを解説するために書籍や新聞記事の一部を紹介するようなケースがこれに該当します。ただし、引用が適法と認められるためには、以下の条件すべてを満たす必要があります。

  • 公表された著作物であること
  • 公正な慣行に則り、引用の必要性が認められること
  • 自著が主であり、引用部分が従の関係にあること
  • 引用部分が明確に区別されていること
  • 出所(出典)が明示されていること

これらの条件のいずれか1つでも欠けていれば、無断転載と見なされ著作権侵害となる恐れがあります。「少しだけなら大丈夫」「出典を書いておけばOK」といった軽い判断は禁物です。

特に紙面が限られる「●●だより」では、つい長文をそのまま引用したくなることもありますが、本当に主従の「従」であるかをよく検討し、必要に応じて引用量を減らしたり、自分の言葉で要約するなどの工夫が求められます。

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著作権を守るための3つの対策

著作権侵害を避けるために、以下の3つの実践的な対策を取り入れましょう。

 

著作権フリー素材や条件付き使用可能な素材の活用

無料で使用できるイラストや写真を提供するサイトは多数ありますが、「教育目的はOK」「商用利用は不可」「改変禁止」「クレジット表記が必要」など、サイトや素材ごとに利用条件が異なります。必ず利用規約を丁寧に読み込みましょう。

 

不正使用したイラストは簡単に見つかってしまいます。その仕組み、また、利用規約の確認方法について「学校で安心して使えるイラスト素材|著作権ルールを徹底解説!」でお話しています。
学校で安心して使える!イラスト素材の著作権ルールと正しい利用法
学校や教育現場でイラストや著作権を正しく扱う方法を徹底解説!文化祭や授業でのトラブル回避のポイントや、具体例を交えた実践的なガイドです。著作権に詳しくない方でも安心して利用できる情報満載。

 

自作または許諾取得という原則に立ち返る

イラストが得意な先生であれば自作する、写真は自分で撮るのが最も安心・確実です。
どうしても使用したい著作物があり、フリー素材でもなく引用の範囲も超えそうな場合には、著作権者に連絡して使用許諾を得るのが原則です。

 

学校や教育委員会の方針確認を忘れずに

自治体や学校法人、個々の学校には、著作物の利用に関するルールや推奨対応策が存在する場合があります。推奨フリー素材のリストや許諾申請の窓口が整備されていることもあります。判断に迷った際は、管理職や担当の先生に相談し、学校全体での方針を確認することが大切です。

相談される立場の管理職の先生が知っておくべき著作権のこととは?「【学校管理職必見】著作権の基本と実践!トラブルを防ぐ3つのポイント」で整理して解説しています。
学校管理職が知るべき著作権の基本と実践:トラブルを防ぐためのポイント
学校運営に欠かせない著作権の基本ルールを解説!学校ウェブサイトや授業資料での著作物利用時の注意点から、教員や生徒への指導方法、授業目的公衆送信補償金制度の理解まで、実践に役立つ具体例を交えて詳しく解説します。

 

近年では、PTA広報誌などでキャラクターの無断使用が問題となるケースもあります。
学校から発信されるお便りは、保護者や地域の方々との信頼関係を築く重要な役割を果たしています。著作権への配慮を怠ることで、学校全体の信用を損なうリスクもあるのです。

 

 

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まとめ:子どもたちの創作を守る第一歩として

「●●だより」の作成には、日々の忙しさの中で頭を悩ませることも多いと思います。しかし、著作権について少し知識を持つだけで、より安心して、そして自信をもって情報発信ができるようになります。

著作物を尊重するという姿勢は、子どもたちへの教育そのものにもつながる大切な視点です。ぜひこの機会に、「●●だより」における著作権について改めて考えてみてください。

 

この記事は動画「【要注意】学校だよりで著作権侵害!? 知らずに違反しないための3つのポイント」をもとに作成しました。

学校における「著作権」の正しい理解と実践のために
著作権に関する研修・講習・授業を通じて、学校現場での対応についてお伝えしています。
これまでの研修例には、先生向け研修生徒向け授業司書向け研修などがあり、幅広いニーズに対応してきました。

国公立中学校での実践経験をもとに、現場に即した内容でご提案いたします。
学校ごとの課題やご要望に応じて柔軟に対応いたしますので、ぜひご相談ください。

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この記事を書いた人
原口直

学校著作権ナビゲーター

東京学芸大学卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭に。東京都公立中学校および東京学芸大学附属世田谷中学校で勤務。元・東京学芸大学こども未来研究所 教育支援フェロー。

2020年より、学校現場での経験を活かし、机上の法律と教育現場をつなぐ「学校著作権ナビゲーター」として活動を開始。教員・教育実習生・子どもたちに向けて、著作権への理解を深める講演・情報発信・執筆活動を行っている。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)/東京学芸大学 附属学校図書館運営専門委員会 著作権アドバイザー(2025年〜)

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