・「ダメ」と禁止するのではなく、代案を示し、子供たち自身も「著作者」であるという意識を持たせることが重要。
・小学3年生の実践事例を通して、キャラクター作りや消しゴムの例えを用いて著作権の原則・例外を学ぶ具体的な授業手順を紹介。
・「著作者への意識」「原則と例外」「自分事として考える」の3ステップを守れば、どんな教科や場面でも応用可能。
今日は、児童向け・小学生向けの著作権授業の実践と、誰にでもできる授業の手順やヒントについてお話しします。
これまで小学生から大学生まで様々な子供たちに著作権を教えてきた経験を踏まえ、以下の3つのステップで解説を進めていきます。
- 子供に教える際の注意点
- それを踏まえた実践(実際の授業の流れ)
- 実践の裏にある目的や意図の解説

子供に教える際の5つの注意点
子供たちに教える際、共通して気をつけていることが5つあります。
①「ダメ」を教えない
「こうやったらダメ」「罰金ですよ」「違法ですよ」「懲役何年ですよ」と脅すことはできます。
しかし、子供たちは著作物が大好きで、使いたい、好きなものを広めたいという気持ちを持っています。 そのため、単に「ダメ」と教えるのではなく、「このように使ったらいいですよ」「代わりにこんなことができますよ」といった代案を必ず示してあげることが大事です。
②ハードルを低くする(教材選び)
授業をする時の教材選びが重要です。
子供たちの身近なもの、例えば大好きな漫画やアニメのキャラクター、音楽、アイドル、ヒーローなどを教材にしてください。
③「学校は例外」であることを伝える
著作権法第35条を解説する時、「学校は例外だ」ということを口酸っぱく、何度も言わなければなりません。
同じことをしても学校だったら褒められるのに、家だったら怒られてしまう。場所が違うだけで反応や評価が違うというのは、子供にとってはとても難しいことです。
「あくまでも学校は例外である」ときちんと伝えてあげてください。
④使い手と作り手のバランス
私たちは「このように使いましょう」「使っちゃダメですよ」という「使い手側」の話ばかりしがちです。
しかし、著作物は生み出した瞬間にその人に権利が発生します。つまり、子供たちも著作者です。
子供たち自身も「著作物を生み出す側」であることを踏まえて、使い手の気持ちを考えたり、使い方を考えたりするバランスが重要です。
⑤心に届く問い
「無料で音楽を聴きたい」「無料でアニメや漫画を見たい」という気持ちがあるのは当然ですし、一度きちんと汲み取ってあげなければいけません。
「アニメや漫画大好きだよね」「応援したいよね」と気持ちを汲み取った上で、こう問いかけます。
- 「でもそれをしてしまうと、そのアイドルはどうなってしまうだろう?どう感じてしまうだろう?」
- 「新しい曲が出なくなってしまったらどう思う?」
- 「漫画やアニメの続編が出なくなったらどう思う?」 そういった「心に届く問い」を心がけるといいと思います。
【実践事例】小学3年生「著作権って何だろう?」
実際に小学3年生に行った授業を紹介します。
テーマは「著作権って何だろう?」です。
私自身が音楽科で歌うことが大好きなので、著作者(作詞者・作曲者)にお世話になっていることや、自分が歌うことで著作隣接権を持つこと、演奏した音源がまた著作物になることなどを踏まえ、「作った人に意識を向ける」という話をします。
ステップ1:キャラクター作り(5分間)
A4の真っ白い紙を用意し、真ん中に鉛筆でぐるーっと丸を描かせます。そして指示を出します。
「この丸を使って『あったかくなるキャラクター』を作ってみましょう。時間は5分です。どうぞ」
これだけ情報が少ないと、子供たちは様々な反応をします。
- 「丸は顔に使うんですか?体に使うんですか?」
- 「丸の中にキャラクターを描くんですか?」
- 「アイコンのように使うんですか?」
- 「色(ペン)を使ってもいいですか?赤を使っていいですか?」
- 「できたキャラクターに名前をつけていいですか?」
また、「あったかい」の意味についても、「体温があったかくなる」のか「心があったかくなる」のか悩みます。どんどん描く子もいれば、鉛筆が止まってしまう子もいます。小学生はとても正直です。
ステップ2:発表と「許可」
5分経ったら挙手を求め、発表してもらいます。 ここで、インタビューのように以下の手順を踏みます。
- 「ここにいる人に、今考えたキャラクターを見せていい?」と許可を取ってから見せる。
- 「工夫したところはどこですか?」「名前があるなら教えて」と聞く。
- 「よくできているので、他の学年の子に見せてもいいですか?」
- 「学校だよりや学校のウェブサイトに載せてもいいですか?」
と質問してみます(この意図は後述します)。
ステップ3:身近な作品(ワンピースなど)で考える
キャラクターは一旦置いておき、「好きな漫画やアニメのキャラクター」について聞きます。 例えば「ワンピース」を知っているか聞くと、みんな知っています。
- 「それは一体誰のものでしょうか?」(誰が描いたか)
- 「どうやったら読めますか?」(本を買う、図書館、公式アプリなど)
- 「誰が売っていますか?」(本屋、コンビニ、Amazon、出版社など)
作品には必ず「作った人」がいて、作ったものには「著作権(その人のものですよ)」という権利があることを伝えます。
そして、「作った人のものだから、使う時、増やす時、変える時には聞いてから使いましょうね」というルールがあることを話します。
ステップ4:消しゴムの貸し借り(ペアワーク)
「他の人の消しゴムを使う時、みんなは何と言いますか?」と問いかけます。
「貸して」「忘れたから貸して」と理由を言ったり、「恩返しするよ」と条件を出したりします。
【逆の立場(貸す側)だったら?】 隣の人に「貸して」と言われたらどうでしょう。
- 「いいよ(友達だから)」
- 「少しだったらいいよ」「1回だけならいいよ」(条件)
- 「あなただから貸してあげるよ」(先生や先輩だから、など)
- 「今回だけだったら貸してもいいよ」(毎回借りてくる子には条件をつける)
- 「貸さない」(新品だから、レアなものだから、意地悪ではなく理由がある)
作品(イラスト、写真、音楽)も同じです。
作った人に「使っていいですか?」と聞いた時、作った人は「いいよ」「ダメだよ」「少しだけ」「あなたなら」と条件をつけることがあります。 この決まりを「法律」と言い、作った人を守るためのものです。
ステップ5:聞かないで使える時(引用と学校)
原則は許可が必要ですが、「使った人に聞かないで使える時」が20個ぐらいあります。そのうちの2つを紹介します。
1. 引用 社会や総合でスライドを作る時など、他の人の作品(写真、グラフ、イラスト)を使う場合です。 条件として、近くに「これはどこから取ってきたものですよ」と書く必要があります。
2. 学校 学校で使う場合も、聞かないで使える時の条件の1つです。
- 「学校」という場所であること(塾や家は入りません)。
- 先生と子供とのやり取りだけであること。
- 授業の中だけであること(国語、算数、卒業式、合唱コンクール、クラブ、部活、委員会活動など)。
※ただし、Google Classroomやロイロノートなどでオンライン上にアップロードする場合は、1人1年間120円かかり、それは町が出してくれているという話をしました。
ステップ6:まとめ
作品は「作った人のもの」というのが原則です。
最初はただの丸(著作物ではない)でしたが、みんなが工夫してキャラクターを考えたことで、皆さん自身に著作権がある、皆さんが「作った人」になったわけです。 使う時や使ってもらう時には、色々な条件を出すこともできるんですよ、と話して授業を終えます。

授業の意図と解説
キャラクター作り:著作物が生まれる瞬間の体験
ただの丸や記号には著作権はありませんが、そこからキャラクターを生み出すことで著作物になります。この工程を体験させることが重要です。
あえて不親切な指示(条件を言わない)にすることで、子供たちの創造的な発言を引き出します。
発表時の「許可」:公表権の理解
自発的に手を挙げさせ、指名や指示にならないようにします。
「見せてもいいですか?」「他の学年に見せていいですか?」と聞くのは、著作権法にある「公表権(公表していいかどうかは作った本人が決められる)」を体験させるためです。
実際に、「3年生には見せてもいいけど6年生は嫌だ」「市の広報誌は恥ずかしいから嫌です」という子もいます。著作者によって思いは違っていいし、それを尊重しなければいけないという気持ちを育てます。
「ワンピース」の例:メディア展開の理解
ワンピースは漫画だけでなく、アニメ、映画、グッズ、ミュージカルなど色々な展開がされているため、教材として用いやすいです。
「消しゴム」の例え:貸さない権利
消しゴムを「貸さない」ことを、いたずらに「ダメだ」と言ってはいけません。「貸さない理由」があるからです。
著作物も同じで、音楽を使いたいと言われた時に「嫌です」と言うこともできます。それは使い方や相手との関係性によります。 使う人が決められるということを、身近な貸し借りで考えさせました。
原則と例外(引用・学校)の教える順番
先生方から「引用の話をしてください」と依頼されることがよくあります(学習指導要領にあるため)。 しかし、引用や学校(第35条)はあくまで「例外(権利制限)」です。
私は、「原則」を話してから「制限(例外)」の話をするという順番がいいと思っています。
【交通ルールの例え】
- 原則: 赤信号は止まる。
- 例外: 救急車両などは行っていい。
先に例外(引用)を教えてしまうのは、先に赤信号の渡り方を教えてしまうことになると考えています。まずは原則、その後に例外を話すべきです。
自分事として考えさせる
最後に「あなたたちが著作権者なんですよ」と伝えます。
自分が作った思い入れのあるキャラクターをどのように使っていいか、使われたくないか。その気持ちは、全てのプロの著作者(イラストレーター、音楽家、写真家)も同じように思っているんだよ、と伝えます。 自分事として考えさせるところが重要です。

まとめ:どんな場面でも使える3つのステップ
この授業の流れは、以下の3ステップさえ守れば、どんな教科や発達段階でもアレンジ可能です。
- 著作者へ意識を向ける(元々ある著作物には作った人がいる、という第1段階)
- 法律の原則と例外を知る(原則は許可が必要。例外として学校や引用がある)
- あなたたちも著作権者である(自分たちの思いと同様に、既存の著作物にも作った人の思いがある)
著作権教育のチャンスは学校の中にたくさん転がっています。
ぜひ、この3ステップを活用して、身近なところから進めてみてください。
この記事は、動画「【模擬授業】小3に著作権をどう教える?「ダメ」と言わない授業の進め方」をもとに作成しました。




