著作権の知識や意識が広がり、情報の収集などもできるようになってきました。
研修などで著作権について触れる機会が広がってきていると思いますが、知った著作権を職員室や他の教職員など他の人たちに「どう伝えるか」ということが重要になってきます。
本記事では、教員への伝え方について「立ち位置」「伝え方」「考え方」の3つの観点からお話しします。
復習:知的財産権と著作権法の原則と例外
知的財産権の中に著作権があり、生み出した瞬間にその人に発生するのが著作権です。
著作権法の原則は、「作品は作った人のもの」だから「許諾をとってから使う」です。学校での著作物の利用は、例外的な使い方であり、著作権の制限を受けている使い方となります。

立ち位置:校内で1人の難しさと校内の立場
自治体などの教職員研修では、学校の代表者がそれぞれ選出されて受講することが多いです。
代表者は、管理職の先生、情報担当の先生、音楽科の先生、学校司書さんなど、それぞれ学校で役割を持っている方が集められます。
この「校内で1人」というのが、とても難しくしている部分です。
研修を受けた先生は、得た情報を学校に戻って広める役割があります。
しかし著作権の場合、今やっていることに対して「それダメですよ」「こういう方法をとらなければいけないですよ」と、他の人たちを指導したり、やり方を説明したりすることになります。
校内で1人だと、なかなか伝えるのが難しかったり、周知することが難しかったりします。
そのため、ぜひ校内全員で同じ情報を共有してほしいと思います。
特に「校内での立場」が影響します。
代表者が管理職の先生であれば、職員会議や朝礼などで「こういう情報を得てきたよ」と周知しやすいですが、そういった立場にない方もいます。
情報担当や音楽科の先生が「研修を開きましょう」と手を挙げて校長先生に具申して広げることもできますが、学校司書さんや非常勤の先生など、普段から校長先生と話す機会が少なく、改まって申し入れるのはハードルが高いという方もいます。
校内の立場を考えると、やはり校内全員で一緒に同じ情報を、同じタイミングで同じ講師から聞くことが重要です。

伝え方:こちらが正しいのに…と著作権法の誤解
1人だけ校内で著作権のことを知っていると、伝える際に気をつけなければいけないことがあります。
例えば、「ドリルのコピーをしてはいけないんですよ(著作権法違反です)」「オンラインでも紙でも同じです」「授業目的公衆送信補償金を払っていてもオンライン上にドリルやワークなどをアップすることはできない」という情報を聞き、「それ、良くない使い方ですね」「人数分買わなきゃいけないんですよ」と伝えます。
正しいことを伝えているのにもかかわらず、「いや、毎年こうだから」「いつもこうしてるから」「そんなお金ないよ」と反論されてしまうことがあります。
また、「じゃあこういう場合はどうなの?」「他の人はこうやってるよ」と質問されたり言い返されたりすることもあります。
質問されても、1〜2時間研修を聞いただけで反論できる知識や技術があるわけではないため、正しいことを伝えているのに言い淀んでしまったり、質問されるのが怖くてためらってしまったりします。

言いにくい原因:著作権法の誤解
言いにくい原因の一つに「著作権法の誤解」があります。
教員の中には、第35条の条文は知らなくても「学校はコピーOK」というざっくりした常識を持っている方がいます。
第35条には「教員から子供へ」「授業の範囲」「著作者の利益を不当に害してはいけない(ドリルやワークのコピーはダメ)」などといった範囲や前提があります。
しかし、少し前の知識を持っている方や、見聞きしたことを一部だけご存知の方は「学校は大丈夫」と言いがちです。
そういった方に「著作権法を学んできてこうですよ」と言っても、「いや学校は大丈夫でしょ」と言われてしまう怖さがあります。

授業目的の利用に関わる著作権法第35条と、関連する運用指針・ガイドラインの要点を紹介します。学校で確認すべき観点(対象・範囲・留意点)を一次情報をもとに整理します。
教員に教える時の5つの工夫
伝える際には、以下の5つの工夫に注意してみてください。
自分ごとにする
「著作権法は」「第35条は」「知的財産権って」「授業目的公衆送信って」という話をしても聞いてもらえないかもしれません。
伝える先生の「自分ごと」にしてあげることが良いです。
国語や社会の先生なら、「文章を引用する時に」「文章を複製する、またGoogleクラスルームなどにアップする時に、それって大丈夫ですか?」と、教員に身近なことにします。
個に寄り添う
目の前の個の事象に寄り添ってあげます。
「卒業式の式次第を作ります、プログラム係になりました」「合唱コンクールのプログラムに歌詞を載せる場合に、これって大丈夫でしょうか?」といった具体的な場面に対し、「仰げば尊しや蛍の光のように、作った方が亡くなって70年経って保護期間が切れているので大丈夫ですね」「保護期間がまだある方には許諾を取らなければいけないですね」と、対象が子供や保護者だった場合の注意点を伝えます。
今日から自分からできることから
教員は今までしてきてしまったことや、他校で見聞きしたことがあると思います。「著作権を知った今日から気をつけましょうね」と言ってあげてください。
教員は真面目な方が多く、「知ったことを正しく自分がしなければ」という気持ちがとても強いです。普段子供たちに「廊下は走るな」「前髪はここまで」と言っているため自分も守らなければと考えますが、すぐには守れない事項もあると理解してあげることが重要です。
専門家をつなぐ
どこを見ればわかるかを教えます。
研修で概要を理解するのは重要ですが、自分で調べる力をつけられるとさらに良いです。
例えば「運動会で音楽を使います」「合唱コンクールで音楽を使います」となった時に、自分で調べる力があった方が良いので、専門家との繋ぎ方を話すと良いです。著作権を知りたい・質問したい場合は、文化庁、CRIC、SARTRAS、音楽ならJASRAC、などの情報源があります(詳細は別の動画で紹介しています)。

文化庁、CRIC、JASRACなど、学校で著作権を確認する際に役立つ信頼性の高い一次情報へのリンク集です。必要な資料に早くたどり着くための探し方もあわせて紹介します。
背景をくみとる
先生方はとても忙しいです。
公務の中での優先順位は、子供の命の安全、保護者への連絡、授業の準備、校務、部活などがあり、著作権はどうしても下の方になってしまいます。
しかし、何かに歌詞を載せる、写真をどこかにアップするといった、順位が少しでも上になった時(著作権を気にしなければいけない時)にすかさず、「著作権法というのはこういうものですよ」「第35条はこういうものですよ」「こういう時には許諾を取るんですよ」と話してあげるのが良いです。
むやみやたらに上から言うのではなく、先生方が欲しているタイミングや情報を見極めるのが重要です。
考え方:権利者の気持ちと対価
教員への伝え方の3つ目は「考え方」です。
まずは、「権利者の気持ち」を考える癖をつけてほしいと思います。
子どもに教える時と同じで、「作り手と使い手のバランス」がとても重要です。学校では使う場合が多いので使い手に寄ってしまいがちですが、子供たちも教員も「作り手」になり得ます。
自治体や学校で講演を行うと、著作物の使い方について「いかにしてタダで使えるか」「無許諾・無償で使えるか、その範囲を知りたい」という質問がほとんどです。この考え方を見直してみていただきたいです。


教員には以下のような段階があります。
第1段階:タダで使うことに疑問がない
「学校だからいいんでしょ」「学校だから複製・公衆送信もタダで使える」「学校だから著作権のことは考えなくていい」と勘違いしている方がいます。
悪気なく「生徒のため」「授業のため」「教育のため」という枕言葉をつけて、タダで使うことに何の疑問も持たずに使っています。
第2段階:いかにしてタダで使えるか
著作権のことを少し知ると、「第35条の学校の著作権の制限」「引用の範囲」「非営利の範囲」など、許諾不要(例外)の中でタダで使うにはどうすればいいか、という発想になりがちです。もちろんその発想も大切です。
第3段階:価値ある著作物に対価を払わねば
その次の段階として、この考え方に行ってほしいと思います。
音楽を使う時、音楽を作った人たちに敬意を表すために許諾を取ったりお金を払ったりします。音楽だけでなく、写真、イラスト、新聞など全ての著作物には作った人がおり、努力や時間を費やしています。そういった価値あるものに対価を支払うことが当たり前になる必要があります。
たまたま学校での使い方(引用の使い方など)が制限を受けているから使えているだけです。このマインドにならないと著作権は理解されません。
自分たちも、子供たちも作り手になり得ます。
子供たちが作ったものや、先生方が時間をかけて苦労して作った授業の教材、学習指導案などを勝手にコピーされたり、勝手にコピーして「自分が作りました」と他の人が言っていたらどう思うでしょうか。
自分の作ったものに価値があるのと同様に、全ての著作物について価値があります。プロ・アマチュアは関係ありませんし、上手い・下手も著作権には関係ありません。
この「価値のあるものに対価を払う」という基本があると、著作権に対しての理解が深まり、理解のスピードが速くなると思います。ぜひこの考え方を見直してみてください。
まとめ:今日から、自分から、できることから
教員への伝え方のコツを3つ(立ち位置・伝え方・考え方)お話ししました。
おすすめは、学校全員で同じ知識を同じタイミングで同じ先生から同時に聞くことです。
もちろん研修で聞いたものを又聞きで広めるのも同じですが、全員が一緒に知った方が良いです。協力者がたくさんいた方が良いですし、「あの研修の講師が言っていた『これ第35条だよね』」といった共通の言語があった方が良いです。
ぜひ学校全体で同時に知るという機会を作ってみてください。
この記事は、動画「【学校の著作権】「学校はコピーOKでしょ?」先生たちの誤解を解く!教員への正しい伝え方3つのポイント」をもとに作成しました。



