著作権教育の実践方法|教員が小学生に教える3ステップと授業アイデア

児童生徒・保護者向け(授業作り・指導案)
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「著作権を子供たちに教えたいけれど、どこから始めればいいかわからない」——そんな声を研修の場でよく耳にします。著作権教育は特別な教科がなく、どの教員でも担当し得るテーマです。
この記事では、著作権教育とは何か・なぜ学校で必要かという概説から、小学3年生への授業実践の具体的な手順、そして他の学年・教科に応用できる3ステップの流れまでを解説しています。動画では実際の授業の様子をもとにした解説が見られますので、ぜひ合わせてご覧ください。

 

 

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著作権教育とは何か——なぜ学校で必要なのか

著作権教育の定義

著作権教育とは、著作権の仕組みや考え方を理解し、著作物を適切に利用する力と、自分が著作者になる意識を育てる教育活動のことです。「著作物を使う側のルールを教える」だけではなく、「自分も著作者である」という意識を育てることが、著作権教育の核心にあります。

著作権は、絵でも作文でも鼻歌でも、創作した瞬間にその人に自動的に発生します。つまり子供たちはすでに著作者なのです。その立場から「使う人の気持ち・使われる人の気持ち」の両方を考えることが、著作権教育の出発点になります。

 

なぜ学校で著作権教育が必要なのか

学習指導要領に知的財産権(著作権)が明記されたのは、平成20年の告示からです。それ以前は学習指導要領に著作権の記載がなかったため、著作権を体系的に学んでいない世代の教員が多くいます。一方で、子供たちはインターネット・SNS・生成AIと日常的に接しており、著作物に触れる機会は以前と比べて格段に増えています。

著作権を「知らなかった」では済まされない場面が、学校現場でも増えているのです。

また、著作権教育には学校ならではの特別なルールを正しく理解させるという意味もあります。著作権法第35条(授業の過程での著作物利用を認める規定)により、学校では一定の範囲で許諾なしに著作物を利用できます。同じことをしても、学校ではOK・家ではNGという場合があります。この違いを理解させることも、著作権教育の重要な役割です。

 

▼著作権教育が必要な理由の参考記事です。

【教員のための著作権解説】学習指導要領の中での著作権の扱い
今日は学習指導要領の中にある著作権について、校種・教科をまたいでご紹介します。学習指導要領とは全国のどの地域で教育を受けても、一定の水準の教育を受けられるようにするために、文部科学省が学校教育法等に基づいて、各学校で教育課程(カリキュラム)...
【学校と著作権】なぜ教員は著作権を学ぶ必要があるのでしょうか?
今日は「教員が著作権を知るべき理由」についてお話しします。著作権については、「知っておいた方がいい」「興味がある人だけ知ればいい」ではなく、全員が知る必要があると思っています。このチャンネルの中にも著作権に関わる動画はありますが、姉妹チャン...

 

 

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子供に著作権を教える際の5つの注意点

▶ 動画では0:38〜で詳しく解説しています

 

① ダメを教えない

「これはダメ」「違法です」「罰金があります」という伝え方は、子供たちを萎縮させるだけで、著作権を自分ごととして考えさせることにはつながりません。「こう使えばいい」「こんな代替案がある」という提案をセットで示すことが大切です。

 

② ハードルを低く——身近な教材を使う

子供たちが大好きな漫画・アニメのキャラクター・音楽・アイドルなど、身近な著作物を教材にすることで、ぐっと理解が深まります。抽象的なルールより、自分の好きなものから考えさせることが著作権教育の入口として有効です。

 

③ 学校は例外であることを繰り返し伝える

著作権法第35条を扱う際は、「学校は例外である」ということを何度も伝えることが必要です。同じ行動でも、学校では認められ、家ではNGになる場合があります。場所によってルールが変わるという感覚は、子供にとって難しいからこそ、繰り返しの確認が欠かせません。

 

④ 使い手と作り手のバランスを意識する

著作権の話は「使う側のルール」に偏りがちです。しかし子供たち自身も著作者です。使う人の気持ちと作る人の気持ちの両方を考えさせるバランスが、著作権教育では特に重要です。

 

「心に届く問い」を意識する

「無料でアニメを見たい」「好きな音楽を広めたい」という気持ちは、子供たちにとって自然なものです。その気持ちをいったん受け止めた上で、「もし新しい曲が出なくなったらどう思う?」「漫画の続編が出なくなったら?」という問いを立てることで、作り手の立場を自分ごとして感じさせることができます。

 

 

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小学3年生への著作権授業——実践の手順

▶ 動画では3:49〜で実践の様子を詳しく解説しています

 

ステップ1:キャラクターを作る(著作者体験)

A4の白紙を横に置き、真ん中に丸を1つ描かせます。そこから「あったかくなるキャラクターを作ってみましょう。時間は5分です」とだけ伝えます。

ポイントはあえて条件を少なくすることです。「丸は顔に使うんですか?」「色を使っていいですか?」「名前をつけていいですか?」——さまざまな反応が出てきます。これが著作物を「生み出す過程」の体験になります。条件を最初から全部伝えてしまうと、子供たちの創造的な発想が出てこなくなるため、意図的に不親切にすることが重要なのです。

5分後、発表したい子を挙手制で募ります。指名や指示ではなく、自発的に手を挙げた子だけが前に出ます。これは著作権法上の「公表権」(自分の著作物をいつ・どこで・どのように公表するかを決める権利)の体験です。

発表した子には「このキャラクター、他の学年の子に見せていいですか?」「学校だよりや学校のウェブサイトに載せていいですか?」と聞いてみます。「3年生に見せるのはいいけど6年生はちょっと嫌」「市の広報誌に載るのは恥ずかしい」——子供によって答えが違います。著作者によって思いが違って当然であり、それを尊重することが大切だということを、ここで自然に体験させます。

 

ステップ2:作った人に目を向ける(著作物と著作者の関係)

「好きな漫画やアニメのキャラクターはありますか?」と問いかけ、「ワンピースを書いたのは誰ですか?」「どうやったら読めますか?」「誰が売っていますか?」と展開していきます。

作品には必ず「作った人」がいること、その作品には著作権という「その人のものですよ」というルールがあること——「作った人に許可を取ってから使う」という原則を、ここで伝えます。

次に「他の人の消しゴムを借りる時、何と言いますか?」という問いに移ります。貸してもらう側・貸す側の両方の立場から考えさせることで、著作物の「使う人・使われる人」の関係を身近な体験として理解させます。貸さない理由があることも含めて、それは意地悪ではなく著作者の権利であることを伝えます。

 

ステップ3:例外のルールを教える(引用と学校)

著作権の原則(許可を取ること)を伝えた後に、例外のルールを話します。原則の後に例外を話す順番が重要です。例外から先に教えることは、交通ルールで「赤信号の渡り方」を先に教えるようなものだからです。

今回の授業では例外として2つを紹介しました。

引用(著作権法第32条) 他の人の作品をスライドや資料に使う場合、「これはどこから取ってきたものか」という出所を近くに書く必要があります。条件を守れば許可なしに使えます。

学校での利用(著作権法第35条) 学校という場所・先生と子供のやり取り・授業の中(国語・算数・卒業式・合唱コンクール・クラブ・部活・委員会活動など)であれば、許可なしに使える場合があります。ただしオンラインでGoogleクラスルームやロイロノートにアップロードする場合は、授業目的公衆送信補償金(1人あたり年間約120円)が自治体から支払われる仕組みになっています。

 

まとめ:自分が著作者であることを実感させる

授業の最後に、最初に作ったキャラクターに戻ります。「みんなが作ったキャラクターには、みんなに著作権がある」ということを伝えます。

自分が思い入れを持って作ったキャラクターに対して感じること——それがすべての著作者が今ある著作物に感じていることです。「自分事として考える」というところに着地させることが、この授業の最大の目的です。


こうした著作権教育の実践は、出前授業としてもご依頼いただいています。児童・生徒向けの授業事例はこちらの事例ページもご参照ください。

校内研修として著作権教育を取り上げたい場合は、研修テーマの一覧もご覧ください。

 

 

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どの学年・教科にも応用できる3ステップの流れ

▶ 動画では20:48〜で応用の考え方を解説しています

今回の小学3年生への実践は、次の3ステップで構成されています。教材・対象・教科が変わっても、この流れを守ることで著作権教育を実践できます。

第1段階:著作者への意識を向ける すでにある著作物に対して、「それを作った人がいる」という意識を持たせることから始めます。

第2段階:原則と例外を順番に教える 著作権の原則(許可を取ること)を伝えた後、引用(第32条)・学校での利用(第35条)などの例外を教えます。余裕があれば私的利用・非営利の例外なども扱えます。

第3段階:自分も著作者であることを実感させる 子供たち自身が著作者であることを伝え、「作る人の気持ち」を自分ごととして考えさせます。自分が作ったものに対して感じることを、既存の著作者も感じているという視点へとつなげます。

この3ステップは、発達段階・教科・場面に応じてアレンジ可能です。著作権教育のチャンスは、学校の中のあらゆる場面に転がっています。ぜひご自身の教科・学年に合わせて取り組んでみてください。

 

▼中学生や教員への著作権の教え方、伝え方についてはこちら

校内で著作権を広めるコツ|「学校はコピーOK」の誤解と5つの伝え方
著作権研修で得た知識を職員室にどう広めるか。「立ち位置」「伝え方」「考え方」の3観点で、自分ごと化・個への寄り添いなど5つの工夫を解説します。「学校はコピーOK」という誤解への対応も含めた実践的な内容です。
中学生への著作権授業の実践|いらすとや・SNS・肖像権など事例で学ぶ3ステップ
中学生への著作権授業の実践手順を解説。いらすとやの利用規約・引用の条件・SNS・肖像権など身近な事例を使った50分1コマの授業構成と、著作者への意識を育てる3ステップを紹介します。

 

 

FAQ

Q. 著作権教育は何年生から始めればよいですか?

特定の学年という規定はありませんが、小学3年生程度から「作った人がいる」「使う時には許可が必要」という基本的な考え方を体験的に伝えることができます。発達段階に応じて内容をアレンジすることが大切です。

Q. 著作権教育はどの教科で行えますか?

特定の教科に限らず、どの教科でも扱えます。国語では「引用」として、社会・総合ではスライド作成の場面で、音楽では楽曲利用の場面で——それぞれの教科の文脈に合わせて著作権の話を組み込むことができます。

Q. 授業で引用と学校の例外、どちらから教えればよいですか?

どちらも「例外」ですので、まず著作権の原則(許可を取ること)を教えてから、例外として引用・学校を扱うことをお勧めします。例外から先に教えると、原則の理解が薄くなる可能性があります。

 

 

まとめ:著作権教育は「自分ごと」から始める

著作権教育は、難しい法律の話を覚えさせることが目的ではありません。「作った人を大切にする」「自分も作る人になれる」という気持ちを育てることが、出発点です。

  • 指導の注意点:ダメを教えない・身近な教材を使う・学校は例外を繰り返す・使い手と作り手のバランスを意識する
  • 授業の3ステップ:著作者体験→作った人への意識→原則と例外(引用・学校)→自分が著作者であることの実感
  • 応用の考え方:教材・対象・教科が変わっても、3ステップの流れを守れば著作権教育はどこでも実践できる

いたずらに恐れるのではなく、身近な題材から楽しく著作権教育を進めていきましょう。

著作権研修・出前授業のご依頼を承っています。著作権教育を校内研修のテーマとして取り上げたい場合も、ぜひお気軽にご相談ください。テーマ例や過去の事例は研修テーマ一覧をご覧ください。お問い合わせはこちらからどうぞ。

 


この記事は、動画「小学生に著作権をどう教える?キャラクター作り・消しゴムのたとえを使った授業実践」をもとに作成しました。

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この記事を書いた人
原口直

学校著作権ナビゲーター

東京学芸大学卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭に。東京都公立中学校および東京学芸大学附属世田谷中学校で勤務。元・東京学芸大学こども未来研究所 教育支援フェロー。

2020年より、学校現場での経験を活かし、机上の法律と教育現場をつなぐ「学校著作権ナビゲーター」として活動を開始。教員・教育実習生・子どもたちに向けて、著作権への理解を深める講演・情報発信・執筆活動を行っている。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)/東京学芸大学 附属学校図書館運営専門委員会 著作権アドバイザー(2025年〜)

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