生成AIと著作権【第4回】子どもがAIを使うとき、先生が伝えたい3つのこと

生成AI活用(校務・授業)
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「生徒が自分でAIを使って作品を作っています。何と声をかければいいのでしょう」。学校著作権ナビゲーターとして研修に伺うと、こうした相談を受けることがあります。

この記事では、子どもがAIを使うときに先生が伝えたい3つのことを、著作権と声の権利から整理します。生成AIと著作権を読み解くシリーズの第4回です。

子どもがAIを使うときに先生が伝えたいことは3つです。人の作品を名指しで真似させないこと、人の声を勝手に真似させないこと、そしてAIの答えは間違うことがあるので確かめること。根っこにあるのは「他の人が作ったものを尊重する」という一点なのです。

 

 

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伝えたいこと① 人の作品を名指しで真似させない

AIで作った絵や文章が著作権侵害になり得るのは、2つの条件がそろったときです。1つめは、既存の作品と似ているかどうか。2つめは、その作品を元ネタにしたかどうか(専門的には「依拠性」と呼びます)です。似ていなければ問題にはなりません。

気をつけたいのは、指示に作品やキャラクターの名前を入れることです。文化審議会著作権分科会の法制度小委員会が2024年3月にまとめた『AIと著作権に関する考え方について』をもとに、著作権情報誌『さあとらす』の連載「生成AIと著作権の今」の中で今村先生は、有名なアニメキャラクターに似た絵をAIに出させる例を挙げます。この場合、似ていることも元ネタにしたことも認められる可能性が高いとされます。反対に「おばあさんの絵を描いて」のような単純な指示でたまたま似てしまっただけなら、元ネタにしたとは判断されにくいとされます。

ただし、名前を入れなければ安心というわけではありません。使う人がその作品を知らなくてもAIの学習データに含まれていれば、元ネタにしたと推し量られる可能性があります。こうした場合でも、開発者が侵害につながる生成物を出さない対策を取っていれば、使う側の責任が問われる可能性は低くなるとされています。

今村先生は、こうしたリスクを子どもにも理解してもらい、他者の著作物を尊重する意識を育てることが大切だとしています(著作権情報誌『さあとらす』の連載「生成AIと著作権の今」Vol.3)。なお、授業での利用など、一定の条件のもとで例外的に許される場合もあります。詳しくはAIで作った教材が侵害になる分かれ目を整理した以下の記事をご覧ください。

生成AIと著作権【第1回】AIで作った教材が著作権侵害になるのはどんなとき?
AIで作った教材が著作権侵害になるのは、既存の作品と「似ている」ことに加えて「元ネタにした」と判断される場合です。どんな指示が危ないのか、授業で使う場合と授業の外で使う場合で何が変わるのか。学校著作権ナビゲーターが判断の分かれ目を整理しました。

 

 

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伝えたいこと② 人の声を勝手に真似させない

AIを使えば誰でも他人の声に似た音声を作れます。動画サイトやSNSには、声優や歌手の声を無断でAIに覚えさせた「AIカバー」が多く投稿されています。

日本には人の声そのものを直接守る法律はありません。ただ、これまでの裁判所の判断を通じて、ある程度守られているという見方もあります。声が持つ商業的な価値はパブリシティ権で守られ得ます。精神的な価値は人格権に由来する権利(声の人格権)で守られ得る、という考え方です。

たとえば、有名人の声をAIで合成して本人に無断で朗読音声を作って売ったり、宣伝用のCMを作ったりすると、パブリシティ権の侵害になると考えられます。有名人でなくても、合成した声で本人が望まない発言をでっち上げて公開すれば、声の人格権の侵害にあたる可能性もあると考えられています。

ただし、こうした権利は法律に書かれたものではありません。著作権情報誌『さあとらす』に今村先生の原稿が載った2025年3月の時点では、どんな結論になるかは見通せないとされていました。声を真似ること自体が争われた裁判も未だないとされています。

その後、2026年8月に法務省が、生成AIによる声や肖像の無断利用について整理した報告書を解釈の指針として公表しました。報告書には、声も肖像と同じく権利保護の対象になると明記されています。新しい法律ではなく今ある法律と裁判所の判断をもとに、当てはめ方を整理したものです。

法律に直接の定めがないことは「何をしてもよい」という意味ではありません。有名人の声を勝手に売り物や宣伝に使うことや誰かの声で本人が言っていないことを言わせて公開することは、権利の侵害にあたり得ると指摘されています。声はその人を見分ける手がかりであり、人格の象徴とも捉えられているのです(同Vol.5)。

AIで声を扱うこと自体は悪くありません。声帯を摘出する方が自分の声を保存し、術後に使えたという例も報告されています。だからこそ子どもには、「声の持ち主がどう感じるか」から考えるよう伝えたいですね。

 

 

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伝えたいこと③ AIの答えは間違うことがあるので確かめる

3つめは、著作権とは角度が違います。生成AIは事実でないことを答えてしまうことがあります。不正確な要約が事実のように示される問題が指摘されています。ある新聞社が報じていない誤った内容を、その社の記事であるかのように答える問題もあります(同Vol.8)。

AI検索の答えの背後には、報道機関が手間と費用をかけて作った記事があります。AIは、記者のように事実に迫る取材をすることはできません。

だからこそ、AIの答えは元の記事や資料で確かめる。調べ学習の基本であり情報を生んだ人への敬意にもなります。

 

 

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3つは「尊重」の一言にまとめて伝える

伝えたいこと子どもへの声かけの例背景にある考え方
① 人の作品を名指しで真似させない「作品やキャラクターの名前を入れる前に、ちょっと待とう」似ている+元ネタにした、がそろうと侵害になり得る
② 人の声を勝手に真似させない「その声の持ち主が、どう感じるか考えよう」声は人格の象徴とも捉えられる。直接守る法律はないが、守られ得る
③ AIの答えを確かめる「AIの答えは、元の情報で確かめよう」AIは事実でないことを答えてしまうことがある

3つは別々のルールにせず「尊重する」の一点にまとめると、子どもに届きやすいかもしれません。作品にも、声にも、確かな情報にも、その向こうには人がいるのです。

▼子どもへの生成AIの使い方指導法

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よくある質問(FAQ)

Q. 家で個人的に楽しむだけならAIで人の声を真似しても大丈夫ですか?
A. 今村先生は2025年3月の時点で、声について、個人の楽しみとしての利用と権利侵害になる行為の線引きを明確にすることが急がれると述べていました(同Vol.5)。その後、法務省が解釈の指針を公表しています(本文②)。ただ、家での楽しみ方がどう扱われるかは、ここで「大丈夫」とも「だめ」とも言い切れません。まずは声の持ち主の気持ちから考えるよう伝えたいところです。

Q. 指示に作品名を入れなければ、似た絵ができても問題ありませんか?
A. 名前を入れなくても、学習データにその作品が含まれていれば、元ネタにしたと推し量られる可能性があります。できたものを見て確かめる習慣をつけたいですね。

 

 

まとめ

生成AIは教育を充実させ創作の幅を広げてくれる道具ですが、適切に使わなければトラブルを招くこともあります(同Vol.3)。いたずらに恐れるのではなく、「他の人が作ったものを尊重する」という一点を子どもたちと共有する。そこから始めてみましょう。

子どもたちに直接伝える機会をつくりたいときは、児童生徒向けの出前授業もご活用ください。学校の著作権を基本から確かめたい方は、学校著作権の基本をまとめたページもあわせてご覧ください。


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参考資料

  • 一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)著作権情報誌『さあとらす』連載「生成AIと著作権の今」(今村哲也・明治大学情報コミュニケーション学部教授)Vol.3・Vol.5・Vol.8/バックナンバー(PDF)
  • 文化審議会著作権分科会 法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(令和6〔2024〕年3月15日)
  • 法務省 報道発表資料「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会 取りまとめ報告書の公表について」(令和8〔2026〕年8月7日)
  • 法務省「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会取りまとめ報告書―生成AIによるパブリシティ権侵害等に関する解釈指針―」(令和8〔2026〕年8月)

生成AIと著作権、声の保護をめぐる整理は現在も続いています。最新の状況は文化庁・法務省の公式発表でご確認ください。

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この記事を書いた人
原口直

学校著作権ナビゲーター

東京学芸大学卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭に。東京都公立中学校および東京学芸大学附属世田谷中学校で勤務。元・東京学芸大学こども未来研究所 教育支援フェロー。

2020年より、学校現場での経験を活かし、机上の法律と教育現場をつなぐ「学校著作権ナビゲーター」として活動を開始。教員・教育実習生・子どもたちに向けて、著作権への理解を深める講演・情報発信・執筆活動を行っている。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)/東京学芸大学 附属学校図書館運営専門委員会 著作権アドバイザー(2025年〜)

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