「AIに作らせたプリント、そのまま使って大丈夫でしょうか」。研修先でよく受ける質問です。この記事は、生成AIと著作権を先生の目線で読み解くシリーズの第1回にあたります。AIで作った教材が著作権侵害になるのはどんなときか、その分かれ目を整理します。
▼シリーズ最初の記事(第0回)はこちら

AIで作った教材が著作権の問題になるのは、できあがったものが既存の作品と「似ている」ことに加えて、その作品を「元ネタにした」と判断される場合です。似ていなければ問題になりません。この2つがそろったときに、はじめて侵害の可能性が出てきます。そのうえで、授業での利用など例外的に許される場合にあたるかどうかを見ていきます。
分かれ目は「似ているか」と「元ネタにしたか」の2つ
文化庁の文化審議会著作権分科会(法制度小委員会)は2024年3月、『AIと著作権に関する考え方について』を公表しました。論点を①学習・開発段階、②生成・利用段階、③生成物の著作物性の3つに分けて整理したもので、教材作りで特に問題になるのは②の段階です。3つの段階の全体像は〈生成AIと著作権を3つの段階で整理した記事〉にまとめています。
学校著作権ナビゲーターとして研修に伺うと、「AIが作ったものなら大丈夫ですよね」と聞かれます。大切なのは、AIが作ったかどうかではなく、「似ているか」と「元ネタにしたか」の2つがそろっているかどうかなのです。
どんな指示なら注意が必要か
有名なアニメキャラクターの名前を挙げて、そのキャラクターに似た絵を出力させたり、著作権のある英語長文を自分で用意して翻訳させたりする場合は、似ていることも元ネタにしたことも認められる可能性が高いといえます。
一方、「おばあさんの絵を出力して」といった単純な指示で作らせた場合はどうでしょうか。偶然に既存の著作物と似ていたにすぎなければ、元ネタにしたとはいえないと判断される可能性が高いといえます。
| 指示の例 | どう判断されやすいか |
|---|---|
| 有名キャラクターの名前を挙げて「○○を描いてください」(似た絵が出てきた場合) | 似ていることも元ネタにしたことも認められる可能性が高い |
| 他人の文章を添付して「これを翻訳してください」 | 同上 |
| 「おばあさんの絵を出力して」 | 偶然似ただけなら、元ネタにしたとはいえない可能性が高い |
| 「学習年齢に合わせた英語長文を作って」 | 同上 |
ポイントは、指示の中に固有名詞や他人の作品が入っているかどうかです。ここを確認するだけでも、迷う場面はかなり減るのではないでしょうか。ただし、これで全部が片づくわけではありません。もう一つ、残っている場面があります。
「知らずに似てしまった」場合はどうなるのでしょう
では、元の作品を知らずに指示を出した場合はどうでしょうか。AIを使う人が既存の著作物を認識していなくても、①の学習・開発段階でAIの学習用データにその著作物が含まれていた場合には、元ネタにしたと推認される可能性があります。
ただし、この点については、生成AIの開発者が著作権侵害となるような生成物が作られないよう技術的な対策を取っている場合、利用者の責任が問われる可能性は低くなるとされています。信頼できる生成AIを選ぶことは、自分のリスクを減らすことにつながるのです。
授業の中で使うか、教室の外に出すかで変わります
似ていて、かつ元ネタにしたと判断される場合でも、そこで終わりではありません。授業目的での利用に関しては、著作権法第35条(学校などで授業の過程で著作物を利用することを、一定の条件のもとで認める規定)が適用される範囲で著作権が制限され、適法に利用できる場合があります。
例えば、授業で利用する英語長文を生成AIで翻訳し、正確性を確認したうえで生徒に配布したり、LMS(学習管理システム)にアップして提供したりすることは許容されるとされています。
なお、LMSにアップして児童生徒が取り出せる状態にすることは、著作権法でいう「ネットで配る・アップする」(公衆送信)にあたります。この場合は、学校の設置者が授業目的公衆送信補償金を支払っていることが前提になると考えられます。支払いは自治体や学校法人がまとめて行うもので、先生が個別に手続きをするものではありません。補償金のしくみは〈SARTRASの補償金について解説した動画〉で扱っています。

他方で、こうした生成物を授業以外で公開・配布する場合には、第35条は適用されません。生成物が掲載された「学校だより」をホームページで公開する、職員会議で配る——こうした場面では、著作権侵害のリスクが高まります。万一、生成物が著作権を侵害していた場合には、差止請求や損害賠償請求を受ける可能性があり、故意の場合は刑事責任を問われることもあります。
第35条そのものの条件は〈授業で著作物はどこまで使える?著作権法第35条の解説動画〉で扱っています。教室の外に出すときの考え方は、このシリーズの次回で改めて取り上げます。

迷ったときの3ステップ
- 似ているか——似ていなければ、問題になりません
- 元ネタにしたか——固有名詞や他人の作品を指示に入れていないか確認します
- 例外的に許される場合にあたるか——授業の中での利用など。あたらない場合は、侵害の可能性があります
よくある質問(FAQ)
Q. 生成AIに翻訳させた英文を、授業で配ってもいいですか?
A. 授業で利用する英語長文を生成AIで翻訳し、正確性を確認したうえで生徒に配布したり、LMSにアップして提供したりすることは、第35条が適用される範囲で許容されるとされています。ただし、LMSにアップする場合は、学校の設置者が授業目的公衆送信補償金を支払っていることが前提になると考えられます(詳しくは本文をご覧ください)。授業以外で公開・配布する場合には第35条は適用されません。
Q. 万一、生成物が他人の著作権を侵害していた場合はどうなりますか?
A. 差止請求や損害賠償請求を受ける可能性があり、故意の場合は刑事責任を問われることもあるとされています。だからこそ、疑わしい場合は利用を控えるという判断が大切になります。
まとめ
生成AIで作った教材が問題になるのは、「似ている」と「元ネタにした」の2つがそろったときです。信頼できる生成AIを選び、授業以外で利用する場合は既存の著作物に似ていないか慎重に確認して、疑わしい場合は利用を控える。この順番で考えれば、判断はぐっと楽になります。
子どもたちにも、生成AIによる創作にはこうしたリスクがあることを伝え、他者の著作物を尊重する意識を育てていきたいところです。生成AIは教育の充実や創作の幅を広げてくれる一方で、適切に利用しなければトラブルを招くこともあるのです。いたずらに恐れるのではなく、分かれ目を知って使っていきましょう。
▼子どもたちが生成AIを使うに当たり伝えたいこと


(補足)専門用語ではこう呼びます
この記事で「似ているかどうか」と書いたものを、著作権の議論では類似性と呼びます。
「元ネタにしたかどうか」は依拠性(既存の著作物をよりどころにしたかどうか)です。
資料でこの言葉に出会ったら、2つの分かれ目を思い出してみてください。
著作権研修・出前授業のご依頼を承っています。研修の内容・形式・費用の考え方、よくある質問は研修のご案内にまとめています。
参考資料
- 一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)著作権情報誌『さあとらす』連載「生成AIと著作権の今」(今村哲也・明治大学情報コミュニケーション学部教授)Vol.2・Vol.3/バックナンバー(PDF)
- 文化審議会著作権分科会 法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年〔2024年〕3月15日)
- 授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)「改正著作権法第35条運用指針(令和3〔2021〕年度版)」
生成AIと著作権をめぐる整理は現在も続いています。最新の状況は文化庁の公式発表でご確認ください。

