子供の作品の著作権について解説します。
学校現場での著作権の基本
著作権は知的財産権の一部であり、作品が作られた瞬間にその作者に権利が発生します。これは子どもたちや先生方も同様です。
著作権法の基本原則は「作品は作った人のもの」です。
そのため、著作物を「使用する時」「複製する時」「改変する時」には、必ず作成者から許諾を得る必要があります。
しかし、著作権法にはいくつかの例外規定が存在します。その中の一つが学校での使用です。
子供の作品と著作権
学校の日常的な教育活動において、子供たちの作品を使用する場面は多くあります。
例えば、校内行事として教室の中に子供が作った作品を掲示したり、絵を貼ったりする場面があると思います。
また、「学校だより」や「学級だより」「学年だより」などに「こんな風に子供たちが作品を作りました」「絵を描きました」と写真で紹介することもあるでしょう。
これらの「学校だより」が学校のウェブサイトに掲載されることもありますし、PTAの広報誌や自治体の広報誌に活用されることもあります。
さらに、次年度の授業では「去年の先輩たちはこんな作品を作った」と紹介したり、学校行事では「去年の合唱コンクールの金賞はこんな演奏でした」「去年の文化祭の看板はこんなものでした」「去年の体育祭で作ったTシャツはこんなものでした」といった形で子供たちの作品を使用することがあります。
また、校外の展示会や外部コンクールに作品を出品する場合もあります。
市町村や都道府県の展示会、一般企業が主催するコンクール、自治体が運営するコンクールなど、様々な場面で子供たちの作品が使用されます。このような場面でも、子供の作品には著作権が存在することを忘れてはいけません。
これらの場面では、子供の作品にも著作権があることを認識することが重要です。
著作権は作品が作られた瞬間に発生し、プロでなくても、上手でなくても、心を込めて作った作品には全て著作権が存在します。
以上のように、子供の作品を使用する際には、その著作権を尊重し、適切な対応を行うことが求められます。
子供の著作者人格権
公表権とは?
子供の著作物が持つ著作者人格権の一つが公表権です。
著作権法第十八条では、次のように定められています。
「著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。)を公衆に提供し、または提示する権利を有する。」
これは、著作物が公表される前に、著作者がその公表についての同意を与える権利を持っていることを意味します。
具体的に学校の例で示すと、教員が子供に対して「書いた作文を読んでいい?」「書いた絵を掲示していい?」「撮った写真を共有していい?」「コンクールに出していい?」と確認する必要があります。
子供はこれに対して「いいよ」「ダメだよ」「こういう条件ならいいよ」と答えることができます。例えば、「教室内だけで掲示するならいいよ」「校内だけならいいよ」「何ヶ月間だけ掲示するならいいよ」といった条件をつけることができます。
また、「学校だより」や「学級だより」に作品を載せる際にも、子供の同意を得る必要があります。
「校内で掲示されている作品をお便りに載せるならいいよ」という子もいれば、「お便りに載せないなら校内だけでいいよ」という子もいるかもしれません。
同様に、ウェブサイトに作品を載せる際も、子供の同意が必要です。
「ウェブサイトに載せてくれるなら喜んでどうぞ」という子もいれば、「ウェブサイトに載るのはちょっと恥ずかしい」という子もいるかもしれません。
子供の作品を公表する際には、個々の意見を尊重し、確認を取ることが大切です。
氏名表示権の重要性
氏名表示権は、著作権法第十九条に定められています。
「著作者は、その著作物の原作品に、またはその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名もしくは変名を著作者名として表示し、または著作者名を表示しないこととする権利を有する。」
これは、作品を公表する際に、実名や変名を表示するか、または著作者名を表示しないかを決定する権利です。
具体的には、「書いた作文を名前を出して読んでいい?」「書いた絵を名前を出して掲示していい?」「撮った写真を名前を出して共有していい?」といった確認が必要です。
作品に自分の名前が入ることを喜ぶ子もいれば、恥ずかしいと感じる子もいます。また、「●年●組●●」というような本名の表示が嫌な場合は、ペンネームやハンドルネームを使うこともできます。
どのように名前を表示するかについても、著作者である子供の意向を確認する必要があります。
同一性保持権の理解と実践
同一性保持権は、著作権法第二十条に定められています。
「著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。」
これは、著作物がそのままの形で保たれる権利であり、著作者の意に反して変更や改変を受けないことを保障しています。具体的には、以下のような学校の例があります。
作文のひらがな部分を漢字に直していいか?
例えば、「おかあさん」を「お母さん」に直す場合、著作者である子供に確認が必要です。
描いたキャラクターの表情を変えていいか?
例えば、にっこりマークの犬のキャラクターをウインクしている表情に変える場合など、著作者である子供の同意が必要です。
撮った写真をトリミングしていいか?
写真の一部分だけを使う場合や、カラーから白黒に変更する場合、著作者である子供の同意が必要です。
作文の文字数を増やしたり減らしたりしていいか?
コンクールに応募する際に、文字数を調整する場合など、著作者である子供の同意が必要です。
教員は指導の一環として作品に手を加えることがありますが、同一性保持権の観点から、子供の作品を尊重し、確認を取ることが重要です。
子どもの著作物の長期的な管理
卒業前の確認事項
卒業生の著作物を使用する際には、特に注意が必要です。
次年度の授業や学校行事で、卒業生の作品を使いたい場合があります。また、委員会の掲示物や部活動で作成されたオリジナルキャラクターを代々使用することもあります。
このような場合、卒業生が在籍している間に著作物の使用許可を取ることが重要です。
例えば、展示会やコンクールに出品した作品を、次年度以降の生徒に紹介する場合があります。
このような場合、卒業前に「この作品を将来の展示会や授業で使用してもよいか?」という許可を取っておくとよいでしょう。
また、卒業後に連絡が取りにくくなることを考慮し、「作品の写真を使ってよいか?」などの具体的な許可を取ることも考えられます。
展示会やコンクールでの著作権の扱い
展示会やコンクールに出品する場合、その主催者が作品の著作権をどう扱うかを確認することが重要です。
応募要項には、著作権の取り扱いについての情報が記載されています。
例えば、青少年読書感想文全国コンクールの応募要項には「入賞・入選作品の著作権は、選出と同時に主催者に譲渡されます」と明記されています。
これは、入賞した作品の著作権が主催者に移ることを意味します。
一方、伊藤園短歌俳句大賞の募集要項には「入賞・入選作品の発表や出版に関する著作権は、二次利用を含め、伊藤園に帰属するものとします」とあります。
これも、入賞作品の著作権が主催者に移ることを意味します。応募する際には、このような要項をよく確認し、著作権の所在を明確にすることが重要です。
さらに、応募要項には「本人および在籍校の利用は妨げない」と記載されていることが多いです。これは、在籍校が「学校だより」に作品を掲載する場合など、著作権の譲渡後でも特定の利用は許可されていることを意味します。
展示会やコンクールへの応募時には、主催者の著作権に関するポリシーを理解し、どのように作品が使用されるのかを把握しておくことが重要です。また、応募する子供たちにも、これらの情報をしっかり伝え、納得してもらうことが大切です。
まとめ:子供の創作活動と著作権: 学校での適切な対応と管理法
本記事では、学校現場における著作権の基本、子供の著作物の扱い、そして実践的な著作権管理のポイントについて解説しました。
子供たちの作品には著作権が存在し、それを適切に扱うことは、教育活動の一環として非常に重要です。
日々の学校生活の中でたくさん生み出される子供の著作物。それらの作品が持つ価値や魅力を守るために著作者人格権は存在します。
教職員の皆さんも、ぜひ著作権に興味を持ち、調べ、実践してください。
Youtube動画「子供の創作活動と著作権: 学校現場での適切な対応法を徹底解説!」では図表を使ってわかりやすく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
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