学校だよりへの引用はOK?著作権法第32条の5つの条件を教員向けに解説

著作権の基礎(用語・考え方)
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学校だよりや研究紀要を作るとき、「この新聞記事、すごくいい内容だから保護者にも読んでもらいたい。でも、そのまま載せていいのかな?」と迷ったことはないでしょうか。こうした場面で必要になるのが、著作権法第32条に基づく「引用」のルールです。「出典を書けば使える」という誤解が多いテーマですが、実は満たすべき条件が複数あります。

この記事では、授業での利用(第35条)との違いから、引用が成立するための5つの条件、学校現場でよくある具体的な場面まで、順を追って整理します。

 

 

 

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「授業での利用(第35条)」と「引用(第32条)」は別のルール

まず、混同されやすいポイントから整理しておきましょう。

学校では「授業で使うならコピーしていい」という話を耳にすることがあります。これは著作権法第35条(授業目的での複製・公衆送信の特例)によるものです。授業で配布するプリントや、タブレットへの配信は、この第35条があるため、権利者の許可なく行うことができます。

しかし、以下の場面では第35条は使えません。

場面第35条の適用
授業で配布するプリント・ワークシート○(条件を満たす範囲で)
タブレットへの配信(授業目的)○(SARTRASへの補償金支払いが必要)
学校だより・学級だより×
保護者向け配布物×
研究紀要・論文×
学校のウェブサイト・ブログ×

学校だよりや研究紀要は「授業そのもの」ではなく、広く一般に公開されることも多いため、第35条の対象外となります。そこで登場するのが、今回の本題である著作権法第32条「引用」です。

 

 

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引用とは何か——「借りる理由」が問われる

引用とは、自分の主張や解説をするために、他の人の作品の一部分を借りることを指します。ここで大事なのは、「なぜ借りるか」という理由です。

  • 「スライドが寂しいからイラストを貼ろう」→ 引用ではありません
  • 「いい文章だから紹介しよう」→ 引用ではありません
  • 「私はこう考える。なぜなら、この文献にこう書かれているからだ」→ これが引用です

「自分の考えを補強するために、どうしても必要な部分だけを借りる」——これが引用の本質です。

 

 

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引用が成立するための5つの条件

法令・判例をもとに、学校現場で押さえておくべき実務的な判断ポイントを5つ整理しました。これらは引用の適法性を判断する際の重要な観点です。ただし、引用の成立は個別の状況を総合的に判断するものです。判断に迷う場合は権利者への確認または利用の自粛をおすすめします。

条件内容
① 公表済みの著作物すでに世に出ている作品であること
② 引用の必然性その部分を引用しないと話がつながらないなど、理由があること
③ 主従の関係自分の文章が「主」、引用部分が「従(サブ)」であること
④ 明確な区分カギ括弧や枠線などで、自分の文章と引用部分をはっきり分けること
⑤ 出所の明示誰の・どの作品かを明記すること(著作権法第48条)

 

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「主従の関係」を正しく理解する

5つの条件の中でも、特につまずきやすいのが③「主従の関係」です。

NGの例:他人の文章や画像を大きく載せて、コメントは「素晴らしいですね」の一言だけ。これでは読者は教員自身の意見ではなく、他の人の作品そのものを読むことになります。主従が逆転しており、「転載」と判断されるおそれがあります。転載には権利者の許可が必要です。

OKの例:自分が書いた意見や解説がしっかりとあり、その補強として他の作品の一部が少しだけ使われている状態。これが正しい引用のバランスです。

研修先でも「コメントをしっかり書けば大丈夫ですか?」とよく聞かれます。量のバランスだけでなく、自分の考えが記事の主体になっているかを確認することがポイントです。

 

 

学校でよくある場面のOK・NG

学校だよりに新聞記事を載せたい場合

新聞のコラムを切り抜いてそのまま貼り付けて配布する——これはNGとなる可能性が高いです。コラム全文がメインになってしまうため、主従の関係を満たしません。新聞社からすると、許可なく記事をコピーして配布されたことになり、権利侵害のおそれがあります。

正しい対応としては、次の方法が考えられます。

  • 引用として載せる場合:教員自身がそのニュースについての意見・見解をしっかり書いた上で、記事の一部を数行だけカギ括弧で抜粋し、出典(掲載紙名・見出し・発行年月日)を明記する
  • 全文を読ませたい場合:現物を回覧する、または新聞社に許諾を取る

「出典を書けば使える」は誤解です。出所の明示は必要条件のひとつに過ぎず、主従の関係など他の条件もあわせて満たす必要があります。

このテーマは、学校向け著作権研修でもよくご質問をいただく場面のひとつです。研修でのご活用をお考えの方は、研修テーマ一覧もあわせてご覧ください。

 

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子どもの調べ学習・発表スライドへの指導

子どもたちが発表スライドを作るとき、ネットの画像をたくさん貼り付けることがあります。「ネットで出てきたから使っていい」ではなく、「自分の発表に必要だから借りる」という意識を持たせることが大切です。

指導のポイントをまとめます。

  • 「自分の意見」と「借りてきた情報」を混ぜない構成にさせる
  • 画像のすぐ下にウェブサイト名やURLを書く習慣をつける
  • 「なぜこの画像が必要か」を説明できるようにさせる

教員が正しい引用のルールを実践していることが、子どもへの著作権教育の説得力につながります。子どもたちのスライドに「出所を書きなさい」と指導しておきながら、教員が作った学校だよりでそれができていなかったら、説明がつきませんよね。

 

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教員自身の研究活動・ウェブサイトでの利用

研究紀要や学校のウェブサイトは、場合によっては世界中に公開されます。「授業目的だからちょっとくらい大丈夫」という感覚は通用しません。

特に注意したいのが、記事の内容と直接関係のないイメージ画像の使用です。記事の彩りとしてネット検索した画像を貼り付ける行為は、引用の必然性も主従の関係も満たさないため、引用とは言えません。

こうした場合は次のいずれかを選びましょう。

  • 自分で撮影した写真を使う
  • 利用規約を確認した上でフリー素材を使う

 

【学校の著作権】研究授業で教材をコピーして配布してもいいの?法律的にOKな範囲を解説」では、学校内外の研究授業における教材や資料の配布ルールを実例とともにわかりやすく解説しています。
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まとめ:正しい引用のルールを教育活動に活かす

「引用は、自分の考えを伝えるために、他の人の作品の力を少しだけ借りる行為です」——そう捉えると、5つの条件の意味もすっと腑に落ちるのではないでしょうか。学校だよりや研究紀要を作る際に「主従の関係かな?」「出所を書いたかな?」と一度立ち止まる習慣が、トラブルを防ぐだけでなく、子どもたちへの著作権教育そのものになります。

 

 

よくある質問(FAQ)

Q. 出典を書けば、何でも引用として使えますか?

A. 出所の明示は引用の条件のひとつですが、それだけでは不十分です。「主従の関係」「引用の必然性」などの条件を満たす必要があります。出典を書いても主従が逆転していれば転載とみなされ、権利者の許可が必要になります。

Q. 引用できるのは文章だけですか?写真や図も引用できますか?

A. 写真や図版は1点で著作物として完結しているため、文章の一部を抜粋する場合と比べて「主従の関係」を満たすことが構造的に難しく、実務上は慎重な判断が求められます。特にイメージ目的での画像使用は引用の必然性も満たさないため、フリー素材や自作素材の使用をおすすめします。

Q. 引用かどうか判断に迷ったときはどうすればいいですか?

A. 「自分の意見がメインになっているか」「この引用がないと話がつながらないか」を自問してみてください。それでもグレーだと感じる場合は、無理に利用せず権利者に許可を取るか、利用を控えることが学校としての安全策です。文化庁のウェブサイトやSARTRASのQ&Aも参考になります。

Q. 第35条と第32条は、どちらを使えばいいですか?

A. 用途によって使い分けます。授業で配布・配信する教材には第35条が使える場合があります(公衆送信にはSARTRASへの補償金支払いが必要です)。学校だより・研究紀要・ウェブサイトなどは第35条の対象外のため、引用(第32条)のルールに従う必要があります。


この記事は、動画「その引用、本当に大丈夫?学校だより・研究紀要で使える著作権法第32条の条件」をもとに作成しました。

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この記事を書いた人
原口直

学校著作権ナビゲーター

東京学芸大学卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭に。東京都公立中学校および東京学芸大学附属世田谷中学校で勤務。元・東京学芸大学こども未来研究所 教育支援フェロー。

2020年より、学校現場での経験を活かし、机上の法律と教育現場をつなぐ「学校著作権ナビゲーター」として活動を開始。教員・教育実習生・子どもたちに向けて、著作権への理解を深める講演・情報発信・執筆活動を行っている。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)/東京学芸大学 附属学校図書館運営専門委員会 著作権アドバイザー(2025年〜)

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