中学生への著作権授業の実践|いらすとや・SNS・肖像権など事例で学ぶ3ステップ

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「著作権の話をしても、中学生がなかなか自分ごととして聞いてくれない」——そんな経験はないでしょうか。

この記事では、実際に中学校で行った出前授業をもとに、50分1コマの授業構成と指導の3ステップを解説します。いらすとやの利用規約・引用・SNS・肖像権・音楽著作権など、中学生の生活に身近な事例を使いながら「作った人への意識」を育てる授業の進め方です。
教材・対象・教科を替えて応用できる3ステップも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

 

 

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中学生に著作権を教える際の5つの注意点

▶ 動画では0:49〜で詳しく解説しています

① ダメを教えない

「これは違法です」「罰金があります」という言い方は、子供たちを萎縮させるだけです。代わりに「こう使えばいい」「こんな代替案がある」という提案を必ずセットで示しましょう。

 

② ハードルを低く——身近な教材から入る

「著作権とは」「知的財産権とは」から始めると、中学生はすぐに顔を背けてしまいます。好きな音楽・アニメ・キャラクターなど、子供たちが大好きなものを教材にすることで、ぐっと関心が高まります。

 

③ 学校は例外であることを繰り返し伝える

著作権法第35条により学校は例外ですが、同じ行動でも学校ではOK・家ではNGになることがあります。この違いは中学生にとって混乱しやすいため、「学校は例外」と口を酸っぱく繰り返すことが大切です。

 

④ 作り手と使い手のバランスをとる

著作権の話は「使う側のルール」に偏りがちです。必ず作り手の視点も入れましょう。どうしても使い手寄りに話が流れてしまうと、「面倒くさい」「厳しい」という印象を植え付けてしまいます。その言葉は、今度は子供たち自身の著作物にも向けられるものだということを意識しておくことが大切です。

 

⑤ 心に届く問いを立てる

「タダで音楽を聴きたい」という気持ちはあって当然です。その気持ちを一度受け止めた上で、「もし違法ダウンロードが広まったら、好きなアーティストの新曲が出なくなるとしたらどう思う?」という問いを立てることで、作り手の立場を自分ごととして感じさせます。

 

 

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中学生への著作権授業——実践の手順(50分1コマ)

▶ 動画では4:11〜で実践の様子を詳しく解説しています

 

導入:音楽から入る——作った人に目を向けさせる

まず、好きな歌手を双方向型ツール(アハスライドなど)でアンケートします。「音楽を聴くとき、どんな手段で聴いていますか?」と問いかけることで、子供たちが著作物と日常的に関わっていることを可視化します。

次に、YouTubeの概要欄を使って「音楽1曲に関わっている人たちを探させる」作業を行います。作詞者・作曲者・演奏者だけでなく、録音・ミックス・ミュージックビデオの監督・照明・スタイリストまで、膨大な人数が関わっていることに気づかせます。

そこで次のクイズを出します。

「歌手(実演家)がCDの売上からもらえる割合は何%でしょうか?①1% ②5% ③10% ④50%」

正解は約1〜数%(作詞者も約2%)。「じゃあ残りの98〜99%はどこへ行くのか?」という問いにより、作った人たちの世界の広さと、違法ダウンロードがその多くの人たちを困らせることへの想像力を育てます。

 

展開:生活の中の著作物——著作権の基礎へ

「普段どんな著作物を使っていますか?」とアンケートを取り、次に「学校のレポートやスライドで使う著作物は?」と学校場面に絞ります。ここで初めて著作権の基礎を説明します。

  • 著作権は作り出した瞬間に自動的に発生する(プロ・アマチュア・上手・下手は関係ない)
  • 原則は「作った人に許可を取る」こと
  • 例外として、学校(第35条)と引用(第32条)がある

消しゴムのたとえで「許可を取る」を理解させる

「他の人の消しゴムを借りるとき、何と言いますか?」という問いかけで、貸す側・借りる側の両方の気持ちを考えさせます。「少しだけならいいよ」「あなただから貸してあげる」「もう今回限りだよ」「貸さない」——消しゴムの貸し借りで起きるやり取りが、そのまま著作物の使い方の考え方と重なります。

「自分が許可なしに著作物を使えているのはなぜか」という問いへの答えとして、第35条(学校での例外)と第32条(引用)を教えます。

第35条:学校での例外
  • 場所:学校であること(塾・家は含まない)
  • 対象:先生と子供のやり取りの中であること
  • 目的:授業(教科の授業・行事・委員会・クラブ・総合・探究など)であること
  • 量:著作物は最小限であること、公表済みのものであること
  • オンライン利用:中学生1人あたり年間180円の補償金(設置者・自治体が支払い)により、許諾なしに使える

「180円を支払ってくれているのは、みなさんが通う学校の自治体です」と伝えることで、身近な仕組みとして理解させます。

第32条:引用

スライドに他人の写真・グラフ・イラストを使う場合、近くに出所(誰が作ったか・どこから取ってきたか)を明記することが条件です。「引用は例外の使い方」であり、原則(許可を取る)を先に教えてから例外として扱うことが大切です。

 

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中学生向けの著作権事例——身近な場面での注意点

いらすとやの著作権と利用規約

授業では「フリーのイラスト素材を使う場合、どこを確認すればよいか」という実践的な指導も行います。いらすとやは無料素材の代名詞ですが、次の点を押さえておく必要があります。

  • 著作権は放棄されておらず、制作者(みふねたかし氏)に帰属する
  • 利用規約に「無料でない使い方」の条件が明記されている
  • 学校での利用については利用規約を確認した上で使用すること

授業では実際のウェブサイトの利用規約ページを見せながら、「どこを確認すればよいか」「何が使えて何が使えないか」を一緒に読んでいきます。「フリー素材=何でもOK」ではないことを、具体的なページで体感させることが重要です。

 

スタジオジブリの「常識の範囲でご自由にお使いください」

スタジオジブリの静止画の利用規約は、シンプルに「常識の範囲でご自由にお使いください」とあります。これを中学1年生に「常識の範囲ってどこまでだと思う?」と考えさせます。

  • となりのトトロのトトロに吹き出しをつけるのはOK?
  • 吹き出しの中に何と書いたら「非常識」になる?

こうした問いかけに対し、子供たちからさまざまな意見が出ます。ボーダーラインは人によって違うこと、だからこそそれぞれの利用規約が存在することへの理解につながります。

 

引用する際の事例——レポート・スライドでよくある場面

レポートや授業スライドで他人の写真・グラフ・イラストを貼り付ける場面は中学生に身近です。条件を守れば許可なく使える(第32条の引用)が、「必然性があること」「主従関係があること」「出所を明記すること」などの条件があります。特に出所の明記は最もシンプルに実践できる条件であり、すぐに習慣化できます。

 

SNSと著作権——音楽・画像の無断使用

SNSへの投稿で起きやすい著作権問題として次の事例が挙げられます。

  • 好きなアーティストの曲をBGMに使って動画を投稿する
  • 他人が撮影した写真をそのまま自分のSNSに転載する
  • 漫画やアニメの一場面をスクリーンショットして投稿する

これらは「みんなやっている」からといって許諾なしに使えるわけではありません。「学校の授業でならOKな行為が、SNSへの投稿ではNGになる理由」を考えさせることで、第35条の例外の範囲を体感的に理解させます。

 

肖像権と写真の著作権

中学生が特に注意したい事例として、写真の著作権と肖像権があります。

  • 写真の著作権:シャッターを切った人(撮影者)に発生する
  • 肖像権:撮られた人にも「無断で撮影・公表されない権利」がある

グループLINEやSNSへの写真投稿で生活指導上の問題が起きやすい中学生の実態に照らして、「撮る権利」「撮られる権利」の両面から考えさせます。

 

著作権侵害の事例——中学生・高校生が逮捕されたケース

授業の最後には、実際に中学生・高校生が著作権侵害で逮捕されているケースがあることを伝えます。「著作権は自分には関係ない遠い話ではなく、今すぐ関係するもの」という実感につなげます。ただし、「ダメを教えない」原則のもと、怖がらせることが目的ではなく、「だからこそ正しく知っておくことが大切」という前向きな着地点を意識します。


この記事の内容を授業で使いたい場合は、出前授業としてご依頼いただくことも可能です。実際の授業実践の事例は出前授業・授業実践事例ページでご確認いただけます。

校内研修として著作権教育を体系的に取り上げたい場合は、研修テーマの一覧もご覧ください。

 

 

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授業の締め——著作者の気持ちを考える

授業の最後は「著作者の気持ちを考える」パートです。双方向型ツールでアンケートを取ります。

  • 「国語で書いた作文、誰に見せていいですか?」
  • 「自分が歌っている動画、誰に見せていいですか?」

二つ目の質問では「見せたくない」という回答が大半になります。このリアクションを使って、「自分の著作物をどこまで公開するかは自分で決められる。それはジブリもポケモンも同じ」という話へつなげます。

利用規約がそれぞれ異なるのは当然で、それは「誰に・どこまで・どのように使ってよいか」という著作者ごとの思いが違うからです。自分が感じることと同じことを、すべての著作者が感じているのです。

 

 

どの学年・教科にも応用できる授業の3ステップ

▶ 動画では22:58〜で解説しています

今回の実践は、次の3ステップで構成されています。教材・対象・教科が変わっても、この流れを守ることで著作権教育を実践できます。

第1ステップ:著作者への意識を向ける 作品には必ず作った人がいることを、子供たちの好きな著作物を通じて伝えます。

第2ステップ:原則と例外を順番に教える 「作った人に許可を取る」という原則を先に伝えた後、学校(第35条)・引用(第32条)という例外を教えます。例外から先に教えることは、赤信号の渡り方を先に教えることになるため、順番が重要です。

第3ステップ:自分も著作者であることを実感させる 子供たち自身が著作者であることを伝え、「作られた側の気持ち」を自分ごととして考えさせます。

この3ステップは発達段階・教科・場面を問わず応用できます。

▼小学生への指導法、他の教員への伝え方について

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まとめ:中学生への著作権授業、判断の基本軸

  • 「ダメを教えない」——代案・代替案をセットで提示する
  • 身近な著作物(音楽・いらすとや・SNS・スタジオジブリ)を教材にする
  • 原則(許可を取る)→例外(学校・引用)の順番で教える
  • 作り手と使い手のバランスをとり、最後は「自分も著作者」に着地させる

著作権は「べからず集」ではなく、素晴らしい作品を作ってくれた人たちへの感謝のルールです。いたずらに恐れるのではなく、正しく理解して教育活動に活かしていきましょう。

著作権研修・出前授業のご依頼を承っています。中学生向けの授業実践事例はこちらでご覧いただけます。研修テーマの事例は研修テーマ一覧をご覧ください。お問い合わせはこちらからどうぞ。


この記事は、動画「中学生への著作権授業の実践|いらすとや・SNS・肖像権など事例で学ぶ3ステップ」をもとに作成しました。

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この記事を書いた人
原口直

学校著作権ナビゲーター

東京学芸大学卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭に。東京都公立中学校および東京学芸大学附属世田谷中学校で勤務。元・東京学芸大学こども未来研究所 教育支援フェロー。

2020年より、学校現場での経験を活かし、机上の法律と教育現場をつなぐ「学校著作権ナビゲーター」として活動を開始。教員・教育実習生・子どもたちに向けて、著作権への理解を深める講演・情報発信・執筆活動を行っている。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)/東京学芸大学 附属学校図書館運営専門委員会 著作権アドバイザー(2025年〜)

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