学校行事の動画をSNSに投稿するのはNG?保護者への声かけと著作権の基本

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「行事の動画、SNSにあげてもいいですか?」——運動会や学芸会の後、保護者からこう聞かれた経験をお持ちの先生は多いのではないでしょうか。スマートフォンの普及で動画の撮影・発信が身近になった分、こうした質問への対応に迷うことも増えています。

この記事では、保護者のSNS投稿と著作権法の関係、そして保護者への具体的な声かけと学校全体での周知のポイントを整理します。

 

 

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学校行事のSNS投稿はなぜ問題になるのか

著作権法には、権利者の許可を得なくても著作物を利用できる「制限規定」があります。学校の授業に特に関係するのは、第30条(私的使用のための複製)・第32条(引用)・第35条(学校教育での利用)の3つです。

▶ 動画では1:04〜で3つの制限規定についてわかりやすく解説しています。

保護者の方の中には、「自分の子どもが映っている動画だから個人アカウントに載せるのは自由だ」と考える方もいます。ただし、著作権法第30条の私的使用として認められる範囲は、あくまで家庭内などの閉ざされた範囲での利用です。SNSに動画を投稿するということは、不特定多数が視聴できる状態にする行為、つまり法律上「公衆送信」にあたります。個人アカウントであっても、インターネット上に公開した時点で私的使用の範囲を超えると考えられます。

▼「引用」については以下の記事をご覧ください。

学校だよりへの引用はOK?著作権法第32条の5つの条件を教員向けに解説
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ポイント① SNS投稿は私的使用の範囲を超える

著作権法第30条が認める「私的使用のための複製」とは、自分自身や家族など限られた範囲で楽しむためのコピーを指します。SNSへの投稿は、その「閉ざされた範囲」を超えた公衆送信にあたるため、法律の例外規定の枠外になると考えられます。

動画の中に子どもの姿だけでなく学校で流れている音楽が含まれる場合、音楽の著作権や他の子どもの肖像権・プライバシー権の問題も生じる可能性があります。「自分の子どもしか映っていない」という場合でも、背景に音楽が流れていれば音楽著作物の問題は残ります。

▶ 動画では3:22〜でこのポイントをくわしく説明しています。

▼写真利用・動画利用で注意したい著作権についての解説はこちら

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ポイント② 行事の動画には複数の著作物が含まれる

学校の行事では、さまざまな著作物が使われています。運動会のダンスで流れる市販の楽曲、文化祭の劇の脚本、音楽の時間に練習した合唱曲の歌詞——これらはすべて、作曲家・作詞家・脚本家などの著作物です。

学校が教育活動としてこれらを使うことは、著作権法第35条とその運用指針(改正著作権法第35条運用指針・令和3(2021)年度版)によって認められています。ただし、その範囲はあくまで学校が行う教育活動内に限られます。保護者がその様子を撮影した動画をSNSに投稿することまでは、法律・運用指針のいずれも対象としていません。

たとえば、市販の楽曲がBGMとしてそのまま流れている動画をSNSに投稿すると、音楽の著作権を侵害する可能性があります。学校行事は多くの権利の上に成り立っていることを、保護者と共有しておくことが大切です。

▶ 動画では4:48〜でこのポイントを解説しています。

▼著作権法第35条については、以下の別記事もご確認ください。

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ポイント③ 保護者への声かけは共感と理由をセットで

保護者から「SNSに動画をあげていいですか?」と聞かれたとき、「ダメです」とだけ伝えるとトラブルになることがあります。理由が伝わらないと保護者も納得しにくく、せっかく築いてきた信頼関係が傷ついてしまうかもしれません。

著作権アドバイザーとしてお伝えしたいのは、「共感を先に、理由はセットで」という伝え方です。たとえば次のような流れが参考になるでしょう。

「お子さんの頑張る姿をみんなに見せたいというお気持ち、よく分かります。ただ、行事の中で流れている音楽の著作権と、他のお子さんのプライバシーを守る必要があるため、インターネット・SNSへの投稿は一律でお断りしています。」

法律や制度の目的をやさしく説明することで、保護者にも理解していただきやすくなります。

▶ 動画では6:13〜で具体的な声かけの言葉を紹介しています。

 

 

学校全体での文書通知が担任を守る

個別の声かけに加えて、学校全体で文書として方針を周知しておくことも大切です。たとえば「行事における動画・写真撮影及びSNSへの投稿についてのお願い」という件名で通知文を配布し、以下の内容を明記しておくと効果的です。

  • 撮影は家庭内で楽しむ私的使用の範囲に限られること
  • 市販の音楽の著作権や他のお子さんの肖像権を守るため、SNS・ブログ等への動画・写真の投稿はご遠慮いただきたいこと

あらかじめ全体に書面で周知しておくことで、担任が個別対応に苦慮する場面が減ります。学校全体で方針を統一し、同じ言葉で伝えることが、保護者との信頼関係を維持するうえでも重要です。

 

 

よくある質問

Q. 保護者が「個人のアカウントだから大丈夫」と主張したらどう対応すればよいですか?
A. 個人のアカウントであっても、インターネット上に公開した時点で「不特定多数が見られる状態」になります。著作権法上の私的使用の範囲は「家庭内などの閉ざされた範囲」に限られるため、個人アカウントへの投稿も私的使用の範囲外になると考えられます。

Q. 子どもしか映っていない動画なら著作権の問題はありませんか?
A. 動画の映像に子どもしか映っていない場合でも、BGMとして市販の楽曲が流れている場合は音楽の著作権が関係します。また、他の子どもの肖像権・プライバシー権の問題も別途生じる可能性があります。

Q. 第35条の運用指針では保護者へのSNS投稿はどのように扱われていますか?
A. 改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版)および特別活動追補版は、学校が行う教育活動(特別活動のオンデマンド配信など)の条件を定めたものです。保護者が個人として行うSNSへの投稿については、この指針の対象ではありません。

Q. 通知文を出したあとでも保護者から個別に聞かれた場合はどうしますか?
A. 通知文を根拠として「学校全体でお断りしているご案内をお配りしています」と伝えることができます。学校として統一した方針であることを示すことで、担任個人への圧力を和らげる効果があります。

 


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この記事は、動画「行事の動画をSNSに投稿していい?保護者への正しい説明と声かけ」をもとに作成しました。

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この記事を書いた人
原口直

学校著作権ナビゲーター

東京学芸大学卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭に。東京都公立中学校および東京学芸大学附属世田谷中学校で勤務。元・東京学芸大学こども未来研究所 教育支援フェロー。

2020年より、学校現場での経験を活かし、机上の法律と教育現場をつなぐ「学校著作権ナビゲーター」として活動を開始。教員・教育実習生・子どもたちに向けて、著作権への理解を深める講演・情報発信・執筆活動を行っている。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)/東京学芸大学 附属学校図書館運営専門委員会 著作権アドバイザー(2025年〜)

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