2026年5月、長野県内の音楽科教員による自主研修会「OTOBASE」からのご依頼で、「音楽授業における著作権」をテーマにオンラインで研修を行いました。参加してくださったのは、県内各地から集まった音楽科の先生方をはじめとする約30名です。
学校著作権ナビゲーターとしてさまざまな教科の先生方に研修を行うなかでも、音楽科の先生方からいただく質問は独特だと感じています。合唱コンクールの楽譜、卒業式のBGM、部活動の演奏会など、著作物そのものを日常的に扱う教科だからこそ、疑問の解像度も高くなるのでしょう。
なお、今回はJASRAC(日本音楽著作権協会)主催「出張講座JASRAC ラーニングスクエア」の制度を使った研修でした。出前講座の制度や申込み方法については「学校で使える!「出張講座JASRACラーニングスクエア」の活用法と事例紹介」で詳しく解説しています。
対象は音楽科教員。対話を重視した研修スタイル
今回の研修は、音楽科教員の自主研修会という位置づけらしく、参加者どうしの学び合いを大切にする雰囲気が印象的でした。参加者にはAhaSlidesのQRコードからスマートフォンで参加していただき、投票やワードクラウド、クイズを交えながら進行しました。
参加者の内訳を見ると、教員歴16年以上のベテラン層が多くを占める一方、1〜5年目の若手も参加しており、経験年数の異なる先生方が同じ場で著作権を学び直す機会になったようです。専攻もピアノ・声楽・音楽科教育とさまざまで、地域も北信・中信をはじめ県内各地から集まってくださいました。
音楽科ならではの「あるある」として、研修の冒頭では合唱コンクールでの歌詞・楽譜コピー、卒業式のBGM準備、部活動(吹奏楽部など)の演奏会運営といった、日々の業務で著作権が関わる場面を具体的に挙げながら導入しました。
研修で扱った内容(著作権の基礎からSARTRASまで)
アンケートで「役に立った」と挙げていただいた内容は、次のようなものでした。
- 著作権の基礎(知的財産権・許諾が必要という原則)
- 学習指導要領・教員採用試験・教科書の変化
- 授業目的公衆送信補償金制度(SARTRAS)
- 「今日から、自分から、できることから」始められる著作権との付き合い方
著作権法第35条(学校等の教育機関における、授業の過程での著作物利用を一定の条件のもとで認める規定)の解説をベースに、SARTRASの仕組みや制度上の位置づけについても触れました。第35条の詳しい解説は、下記の関連記事をご覧ください。
研修後半では、「教員採用試験にチャレンジ!許諾必要or不要」と題したクイズ形式のワークも行いました。吹奏楽部の定期演奏会での入場料徴収、演奏動画のホームページ公開、CDからコピーした楽曲のブログ掲載など、学校現場で実際に起こりうる場面を題材に回答を考えていただきました。
研修のポイント:許諾の有無は「判断の軸」で考える
今回の研修で特に伝えたかったのは、著作権を「知っているか・知らないか」で捉えるのではなく、「どう判断すればよいか」という軸を持っていただくことです。
印象に残った点として、依頼者の先生からは「許諾の有無に関するチャートが有効だった」というお声をいただきました。また、「出版会社によって許諾の可否が異なる」ことに驚いたという感想もいただいています。著作権のルールは一律ではなく、権利者や利用形態によって扱いが変わることもあるため、こうした個別の確認が必要になる場面がある、という現場感覚を共有できたのはよかったと感じています。
主催者・参加者の声
研修をご依頼くださった先生からは、依頼の決め手として「現場に寄り添いながら、わかりやすい講義を行ってくれる」点を挙げていただきました。現場で日々著作権と向き合う先生方の実感に近い言葉で伝えることを大切にしているので、大変ありがたく受け止めています。
参加者からいただいた感想の一部をご紹介します(AhaSlidesでの匿名回答)。
「劇団四季の話に驚いた。気をつけなければと思った」
「校名変更にともなって校歌の歌詞を変更するのは認められないという理解でよいか。新たに歌詞を作成する場合、作詞者・作曲者それぞれに著作権があるのではないか」という具体的な質問
「文化庁の資料では、授業用にプロ用楽譜を子ども用に簡単にすることは可能とあったが、どこまでがセーフなのか、かえってわからなくなった。音楽会の合奏譜づくりで悩みそう」
「原口先生の学校著作権ナビを学校現場や教育委員会の先生に紹介する機会が増えている。地域によっては、教育委員会と現場の先生とで著作権意識に差があると感じる」
「生徒に著作権を教える立場でありながら、自分自身の行動を振り返れていなかったことに気づいた。今日から、やれることをやっていきたい」
音楽会の合奏譜づくりや校歌の歌詞変更など、音楽科ならではの疑問が多く出たことが、今回の研修らしさだと感じています。
研修中アンケートから見えた、音楽科教員の著作権観
研修の冒頭で行った「『著作権』からイメージする言葉」のワードクラウドでは、「権利」「大切」「よくわからない」「難しい」「守る」「海賊版」といった言葉が多く挙がりました。守るべき大切なものだと感じつつも、実際の判断は難しいと感じている先生方の実感が表れていたように思います。
また、「著作権法第35条」「SARTRAS」といった制度名の認知度は、「いらすとや」「海賊版」といった一般的な言葉に比べて低い傾向が見られました。制度そのものよりも、日常的に接する固有名詞のほうが親しみやすいという、現場の感覚がうかがえる結果でした。
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おわりに
長野県内の音楽科の先生方と、著作権についてじっくり対話できた研修でした。合唱・楽譜・行事といった、音楽科ならではの場面に即した疑問を数多くいただき、私自身にとっても学びの多い時間になりました。
著作権は、いたずらに恐れるものではなく、正しく知って正しく使うためのものです。今回の研修が、日々の授業や行事の中で「これはどう考えればよいだろう」と立ち止まったときの、判断の手がかりになれば幸いです。
参加してくださった皆様、そして今回の機会をつくってくださったOTOBASEの運営の先生方に、あらためて感謝申し上げます。
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