「学校だよりにAIで作ったイラストを載せたいのですが、大丈夫でしょうか」。研修先で受ける質問です。この記事は、生成AIと著作権を先生の目線で読み解くシリーズの第2回にあたります。授業で使う場合と、授業の外で使う場合とで、何が変わるのかを整理します。

AIで作った教材を授業以外の場面——学校のホームページに載せる「学校だより」や、職員会議で配る資料——で使う場合、著作権法第35条(学校などで授業の過程にあたる利用について、コピーやネットで配る・アップすることなどを、一定の条件のもとで認める規定)は適用されません。
授業の中では例外的に許される使い方でも、授業の場面を離れれば、その例外は働かなくなります。だからこそ、外に出す前に、できあがったものが既存の作品に似ていないかを自分で確かめておく必要があるのです。
第35条が働くのは「授業の過程」の中だけです
先生や児童生徒が、学校などで「授業の過程」にあたる形で使うのであれば、第35条の出番です。必要と認められる限度であれば、コピーをとることや、ネットで配る・アップすること(公衆送信)が、許諾なしで認められます。
著作権情報誌『さあとらす』の連載「生成AIと著作権の今」の中で今村先生は、授業で扱う英語の長文をAIに訳させ、内容が正しいかを教員が確かめたうえで生徒に渡す場面を、この範囲に入る例として挙げています。紙で配っても、LMS(学習管理システム)に置いても同じです。
ただし、「授業ならなんでも許される」という規定ではありません。
必要と認められる限度であること、著作権者の利益を不当に害さないこと——この2つは第35条の条件そのもので、どちらかが欠ければ第35条は使えません。あわせて、出所を明示する慣行があるときは、出所も示す必要があります(こちらは第48条の定めです)。第35条の条件はほかにもあり、〈授業で著作物はどこまで使える?著作権法第35条の解説〉の動画で詳しく扱っています。

なお、LMSにアップして児童生徒が取り出せる状態にすることは、ネットで配る・アップすること(公衆送信)にあたります。この場合は、学校の設置者が授業目的公衆送信補償金を支払っていることが前提になると考えられます。支払いは自治体や学校法人がまとめて行うもので、先生が個別に手続きをするものではありません。しくみはSARTRASの補償金について解説した動画にまとめています。

授業の外に出た瞬間、判断主体は自分に戻ってきます
ここでいう「外」は、場所のことではなく、授業の過程から外れることを指します。
学校著作権ナビゲーターとして研修に伺うと、「授業で配れたのだから、学校だよりにも載せられますよね」と聞かれることがあります。ここは、分けて考える必要があります。
できあがったものを、授業の場面を離れて公開したり配ったりするときには、第35条は使えません。AIのイラストを載せた「学校だより」をホームページで公開する場面や、職員会議で配る場面がこれにあたります。
例外が使えない以上、判断は原則に戻ります。つまり、第1回で見た「似ているかどうか」と「元ネタにしたかどうか」を、自分で確かめることになるのです。

| 場面 | 第35条 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 授業の中で生徒に配る・LMSで提供する | 適用される場合がある | 必要と認められる限度か(LMSは補償金の支払いが前提) |
| 「学校だより」に載せてホームページで公開する | 適用されない | 既存の作品に似ていないか・元ネタにしていないか |
| 職員会議で配る | 適用されない | 同上 |
同じイラスト、同じ翻訳文でも、どこで使うかによって見るべきものが変わります。作った時点ではなく、出す時点で考える——この順番を覚えておくと、迷いにくくなります。
万一のときには何が起こるのでしょう
もし生成物が誰かの著作権を侵害していたら、使うのをやめるよう求められたり、賠償を請求されたりすることがあります。分かっていてやった場合には、刑事の責任を問われる可能性もあります。
学校だよりやホームページは、保護者や地域の方の目に触れるものです。教室の中で完結する教材とは、届く範囲が違うのですね。
こうした著作権の問題を校内研修で体系的に扱いたい場合は、研修テーマの一覧もご覧ください。
授業の外に出す前の3つの確認
- 信頼できる生成AIを選ぶ——第1回で見た「元ネタにしたかどうか」が問題になる場面で、侵害にあたる生成物が出てこないよう開発する側が技術面の手当てをしていれば、使った先生の責任は問われにくくなると整理されています
- 既存の作品に似ていないか、丁寧に見る——授業の外で使うときは、ここが自分の仕事になります
- 判断がつかないものは、あえて出さない——疑わしいときは見送るという選択肢を持っておきましょう
よくある質問(FAQ)
Q. 授業で使ったプリントを、そのまま学校のホームページに載せてもいいですか?
A. 授業の外で公開したり配ったりするときには第35条は使えませんので、授業で使えたことは、ホームページに載せてよい理由にはなりません。載せる前に、既存の作品と似ていないかを見直し、判断がつかないときは見送るという考え方が大切になります。
Q. 職員会議で配る資料にAIのイラストを使うのは、授業の一部ではないのですか?
A. 職員会議での配付は、第35条が適用されない例として挙げられています。学校の中で配るかどうかではなく、「授業の過程」での利用かどうかが分かれ目になります。
Q. AIで作ったものなら、そもそも著作権の問題は起きないのではないですか?
A. AIが作ったかどうかで決まるものではありません。できあがったものが既存の作品と似ていて、かつその作品を元ネタにして作られたと判断される場合には、著作権侵害となり得ます。詳しくは第1回で扱っています。
まとめ
第35条は、授業の過程にあたる利用について、コピーやネットで配る・アップすることなどを、一定の条件のもとで認める規定です。授業の場面を離れれば、この例外は使えなくなります。学校だより、ホームページ、職員会議——出す先が変われば、確認することも変わるのです。
とはいえ、これは「授業以外では生成AIを使えない」という話ではありません。信頼できるAIを選び、外に出す前にひと呼吸おいて確認する。この習慣さえあれば、生成AIは学校の発信を助けてくれる道具になります。いたずらに恐れるのではなく、出す場所を意識して使っていきましょう。
著作権研修・出前授業のご依頼を承っています。研修の内容・形式・費用の考え方、よくある質問は研修のご案内にまとめています。
参考資料
- 一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)著作権情報誌『さあとらす』連載「生成AIと著作権の今」(今村哲也・明治大学情報コミュニケーション学部教授)Vol.3・Vol.9/バックナンバー(PDF)
- 文化審議会著作権分科会 法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年〔2024年〕3月15日)
- 授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)「改正著作権法第35条運用指針(令和3〔2021〕年度版)」
生成AIと著作権をめぐる整理は現在も続いています。最新の状況は文化庁の公式発表でご確認ください。

