学校行事のBGM・おたよりの著作権|第35条と38条の使い分け【超基礎解説③】

著作権の基礎(用語・考え方)
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学校の教員であれば、日々の授業だけでなく、行事の担当やおたよりの作成、ホームページの更新など、著作物を扱う機会が数多くあります。運動会のBGMに市販のCDを使いたい、学級だよりに素敵なイラストを載せたい——そんなとき、「これは著作権のルールに違反していないだろうか」とふと手が止まった経験はないでしょうか。

この記事では、学校行事・おたより・ネット公開の場面で教員が特に迷いやすい3つのポイントを、著作権法の条文とあわせて整理します。

 

この記事は、学校の著作権の超基礎を解説する記事シリーズ(計3本)の2本目です。1本目・2本目の記事は以下からご覧ください。
著作権とは?学校教育になぜ関係するのかをやさしく解説【超基礎解説①】
著作権とは何か、なぜ学校教育に関係するのかを、学校著作権ナビゲーターが現場目線で解説します。教材づくりで感じる「使っていいのか不安」を解消する超基礎シリーズの1本目です。
著作権法第35条の3つの条件とは|学校の授業でコピー・配信はどこまでOK?【超基礎解説②】
著作権法第35条は、授業のためなら一定の条件で著作物をコピー・配信できる特別ルールです。守るべき3つの条件と、オンライン授業を支える補償金制度(サートラス)まで、著作権をわかりやすく解説する超基礎シリーズの2本目です。

 

 

運動会や文化祭などの学校行事は、教育課程上の特別活動として著作権法第35条の『授業』に含まれると考えられていますが、この条文が認めているのは複製・公衆送信・公の伝達の3つの行為です。運動会や文化祭で音楽を流す「演奏」という行為は第35条の対象外であり、非営利・無料・無報酬という3つの条件を満たす場合に許諾が不要となる第38条を確認する必要があります。

同じように、おたよりの印刷物やホームページへの公開は「授業の過程」での利用とは見なされないため、原則として許諾の手続きが必要になると考えられます。

 

 

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学校行事は「授業」に含まれるが、演奏には第38条の確認が必要です

学校著作権ナビゲーターとして研修先でよく耳にするのが、「行事も授業のうちだから、著作権法第35条(学校その他の教育機関における授業の過程での複製・公衆送信を認める規定)でなんでも自由に使えるはず」という誤解です。

たしかに、運動会や文化祭、クラブ活動、委員会活動といった学校行事は、教育課程に位置づけられる活動として「授業の過程」に含まれると考えられています。しかし、ここに大きな落とし穴があります。第35条が認めているのは複製・公衆送信・公の伝達という3つの行為であり、音楽を流したり演奏したりする行為はそもそもこの条文の対象に含まれていません。

行事が授業に含まれているという理解と、行事だから第35条で何でも使えるという理解は、まったく別の話です。運動会や文化祭で市販の音楽をスピーカーから流す行為は、著作権法上の「演奏」にあたるため、第35条ではなく著作権法第38条(非営利目的の上演等に関する規定)を確認する必要があります。

第38条は、次の3つの条件をすべて満たす場合に、すでに公表されている著作物を許諾なく使うことができると考えられています。

条件内容
① 非営利営利を目的としないこと
② 無料聴衆・観衆から入場料などを取らないこと
③ 無報酬演奏する出演者に報酬を支払わないこと

 

なお、映像を見せる「上映」や朗読をする「口述」も、同じ第38条の考え方で確認することになります。「行事だから授業」「授業だから何でもOK」ではなく、「その行為は複製・公衆送信なのか、それとも演奏・上映なのか」を一呼吸置いて確認する習慣が、思わぬ法律違反を防ぐポイントです。

▶ 動画では1:46〜で、行事と授業/第35条と第38条の対象範囲の違いを詳しく解説しています

▼先生が知っておきたい著作権の基礎の解説記事

教員が知っておきたい著作権の基礎ー学校現場での「困った」をスッキリ解消
学校での著作権利用はどこまで認められるのでしょうか。著作権法第35条による教育目的の例外、私的利用(第30条)との違い、ドリルのコピーや運動会動画の配信など現場のQ&Aをわかりやすく解説します。
学校だよりへの引用はOK?著作権法第32条の5つの条件を教員向けに解説
学校だよりや研究紀要への「引用」は授業目的の第35条とは別のルールです。著作権法第32条に基づく引用の5つの条件・主従関係のNG例・新聞記事や調べ学習での具体的な判断基準を解説します。

 

 

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おたよりやホームページへの公開は、「授業の過程」とは別のルールで考えます

学校だより・学年だより・保健だより・給食だよりなど、学校には様々な「〇〇だより」があります。これらの印刷物は、保護者や地域の方々に学校の様子を伝えるための広報活動であり、特定の授業の中で子どもたちだけに配られる教材とは見なされないため、授業の過程とは別の扱いになると考えられています。

同じように、学校のホームページやSNSに子どもたちの活動の様子を公開する場合も注意が必要です。インターネットへの公開は不特定多数への送信、つまり著作権法でいう「公衆送信」にあたり、どれだけ教育的な意図があっても、非常に厳格な管理が求められる行為です。誰でも見られる形の公開は第35条の範囲を超えるため、原則として事前に作った人・撮った人の許可を得るか、利用の申請を行う必要があると考えられます。

なお、行事の参観に同意いただいた保護者や協力者などに限定した配信であれば、条件を満たせば第35条の範囲で対応できるケースもあります。ただしこの場合も公衆送信にあたるため、学校の設置者(自治体や学校法人)が授業目的公衆送信補償金を支払っていることが前提になると考えられます。後から視聴できるオンデマンド型で配信する場合は、視聴できる期間をあらかじめ決めておき、期間終了後にデータを消しておくことも必要とされています。

おたよりに使うイラストや新聞記事の具体的な注意点については、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。

学校だよりの著作権|イラスト・新聞記事・引用で注意すべき3つのポイント
学級だより・保健だよりなど「●●だより」に使うイラスト・新聞記事・歌詞の著作権について解説。適法な引用の条件、著作権フリー素材の注意点、著作権侵害を防ぐ3つの対策を現場ですぐに活かせる形で整理します。

 

 

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迷ったときの相談先を知っておきましょう

著作権のルールは細かく、判断に迷う場面がとても多いものです。自分一人で考えていると、何が正しくて何がダメなのか分からなくなり、結果として教材作成に萎縮してしまうこともあります。判断に迷ったときは、各権利者の利用規約やよくある質問を確認したうえで、信頼できる公式の相談窓口を活用するのがおすすめです。インターネット上の個人ブログなどの情報を鵜呑みにするのではなく、法律に基づいた正確な情報を発信している専門機関を頼ることが、トラブルを防ぐための確実な方法といえます。

主な相談先・情報源は次の3つです。

  • 文化庁のウェブサイト(著作権課):学校教育と著作権に関する特設ページ、教員向け・子ども向けの解説資料や動画、よくある質問(Q&A)が掲載されています
  • 著作権情報センター(CRIC):電話での相談窓口があり、具体的な事例を伝えて専門家から客観的なアドバイスを受けられます
  • 授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS):学校用のガイドラインである「改正著作権法第35条運用指針」を公開しており、自分の学校や自治体が補償金を支払っているかも確認できます

これらの信用できる公式窓口をブックマークしておき、困ったときにすぐ調べる癖をつけておくと安心です。著作権を過度に恐れるのではなく、正しい知識を持って正しく使えるようになることが目指すところです。

▶ 動画では8:06〜で、それぞれの相談窓口の使い方を詳しく解説しています

▼著作権に悩んだ時の調べ方や相談窓口を解説する記事です

学校の著作権、迷った時はどうする?教員が使える3つの解決策
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著作権をもっと詳しく学びたい教員へ|文化庁・CRIC・SARTRASの使い方
教員が著作権を学ぶための3つのルートを整理しました。文化庁・CRIC・SARTRASの役立つページ、JASRACの学校向けリソース、無料で使える外部研修の申し込み方法まで、「もっと詳しく知りたい」に答えます。

 

 

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よくある質問(FAQ)

Q. 運動会でCDの音楽を流すのは著作権法違反になりますか?
A. 非営利・無料・無報酬という第38条の3つの条件を満たせば、許諾なく演奏として使うことができると考えられます。ただし録音や配信を行う場合は、別途確認が必要です。

Q. 学年だよりに他人のイラストを載せてホームページに公開する場合は?
A. インターネットへの公開は不特定多数への公衆送信にあたり第35条の対象外となるため、原則として作者の許諾が必要と考えられます。

Q. 参観者を限定した動画配信も公衆送信になりますか?
A. 限定した配信であっても、行為としては公衆送信にあたると考えられます。そのうえで、参観に同意いただいた保護者や協力者などに限定するなど条件を満たせば、第35条の範囲で対応できるケースもあります。この場合、設置者による補償金の支払いが前提になると考えられます。

Q. 著作権の判断に迷ったら、まずどこに相談すればいいですか?
A. 文化庁のウェブサイト、著作権情報センター(CRIC)の相談窓口、SARTRASのウェブサイトなど、公式の情報源を確認するのがおすすめです。

 


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参考:本記事は著作権法(最終改正 令和5年法律第33号)、文化庁『著作権テキスト』(令和6年度版)、原口直「著作権超基礎③」動画(YouTube)などをもとに構成しています。

 

 

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この記事を書いた人
原口直

学校著作権ナビゲーター

東京学芸大学卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭に。東京都公立中学校および東京学芸大学附属世田谷中学校で勤務。元・東京学芸大学こども未来研究所 教育支援フェロー。

2020年より、学校現場での経験を活かし、机上の法律と教育現場をつなぐ「学校著作権ナビゲーター」として活動を開始。教員・教育実習生・子どもたちに向けて、著作権への理解を深める講演・情報発信・執筆活動を行っている。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)/東京学芸大学 附属学校図書館運営専門委員会 著作権アドバイザー(2025年〜)

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