今回は「学校司書」さんに向けた動画です。
学校での著作権のキーパーソンは「学校司書」であることを、著作権や著作権教育の専門家からよく耳にします。
研修や講演では、質問が一番多く集まるのは学校司書向けです。もともとの知識や意識が高いことや著作物の近くにいることから、疑問に感じることが多いのだと思います。
実際に資格を取るために著作権のことを学んでいて、学校の中で誰よりも著作権について詳しいです。
私の実践した音楽科の授業でも、学校司書さんの知識や能力と学校図書館という場はなくてはならないものでした。
今回は著作権教育になくてはならないキーパーソン「学校司書」の話をします。
この記事は、次のようなことを知りたい方に是非ご覧頂きたい内容です。
▶子ども・教員にできることが知りたいという学校司書の方
▶子ども・教員からの質問を受けた時にどうするか知りたいという学校司書の方
▶これは学校司書向け記事ではありますが、学級や教科の教員で「学校司書は何を知っているの?」「どんな時に聞けばいいの?」と疑問をお持ちの方
併せてご覧ください。
学校司書と司書教諭の違い
この動画では学校にある図書の部屋のことを、法律の通り「学校図書館」という呼び方をします。学校によっては「図書室」と呼ぶ場合もあると思いますが、ご承知おきください。
次に図書館で働く「司書」と名の付く3つの職業について、文部科学省サイトに説明が出ていたのでまとめます。司書教諭や学校司書の皆さんで「もう知っているわ」という方はスキップしてください。
「司書教諭」「学校司書」「司書」の3つについて比較する表が出ています。
こちらは抜粋なので、詳しく知りたい人は文部科学省サイトをご覧ください。この中で学校に深く関係する「司書教諭」「学校司書」の違いをピックアックします。
では本題、「学校司書」が教員や子どもにできることについて3つ紹介します。
学校司書の役割
著作物を使う手助け
著作権法第35条の概要
著作権法35条により、学校で必要と認められる限度で著作物の複製や伝達ができます。
教育を担任する者と授業を受ける者との間、授業内であることが条件です。
「教育を担任する者」は、教諭・教授・講師等のことで、名称・教員免許状の有無・常勤非常勤などの雇用形態は問わないとあります。
ですので、司書教諭や学校司書が授業を行う場合、「読書」の活動や、児童・生徒会活動の中の図書委員会等では可能です。
また、
教員等の指示を受けて、事務職員等の教育支援者及び補助者らが、学校内の設備を用いるなど学校の管理が及ぶ形で複製や公衆送信を行う場合は、教員等の行為とする。
とあります。同時に、子どもの求めに応じる場合も同じです。
実際の活用事例
「学校司書はどこまでできるの?」という質問をいただくことがありますが、教員や子どもの求めであれば複製や伝達ができます。例えば、GIGA端末で資料を準備したり、共有したり、プリントアウトしたりということは教員や子どもと同じようにできるということです。
学校司書は、学校図書館にどのような資料がどこにあるか?、ということや、子どもたち向けの書籍はもちろんのこと、広く書籍の情報を持っています。また、電子版も含む新聞や雑誌・協会が発行する冊子・専門サイト、そして学校外にある図書館の情報も持っています。
私の実践では「著作権」の他、「人形浄瑠璃文楽」について情報収集をお願いしました。
両方とも決してメジャーなジャンルでないのにもかかわらず、教材研究でたどりつかなかったような専門的な書籍や、そういう切り口もあったかというような新聞記事などを用意してくださって驚きました。
著作権の相談役
教員との協力
教員の中で著作権に特別詳しいという人はなかなかいません。今は研修などで広まりつつあったり、部活動のコンクール等で気にしたりという人がようやく増えてきました。
私のような音楽科の教員免許を持っている者でさえ「著作権」に出会ったのは大学を卒業した後でしたので、著作物を多く扱っている教科だからと言って詳しいわけではありません。
著作権について話せるのは、学習指導要領に「知的財産権」「著作権」の内容が入っている小では音楽、中では音楽・美術・技術、高校では芸術と情報の教員です。
しかし、中学校音楽科で言えば「知的財産権」が初めて載ったのは2012年度実施版からで、2021年度からはようやく内容が濃くなった程度です。教員採用試験に著作権が出題されたのも最近です。
具体的な対応方法
それ以前に教員になった人は著作権について、大学では学べていないということです。
研修等で学び続けている教員や、管理職等で研修を受けている教員は触れている可能性が高いです。
先ほど述べた教科を含めて教員は決して著作権について詳しくありませんので、学校司書の皆さんにはぜひ相談役になってほしいと思います。
私は、教員から著作権に関する質問をいただくことがありますが、これは学校内で「誰にも相談できない」「誰に相談していいかわからない」という結果であり、たいていの質問は学校司書の知識で対応できる範囲です。
頭を悩ませてしまう質問があった時は、著作権関連の団体が作るサイトや「原口 直の学校著作権ナビ」を参考にしてください。
学校司書が著作権について詳しいということを、教員が知らないのはお互いにとって不幸です。教員は毎日の校務の中で、早く・かんたんに・〇か×かの判断が欲しいのです。
ぜひ「知ってますよ」「相談してください」とアピールしてください。
最新の著作権法の情報収集
新しい法律とその影響
とは言え、学校司書自身の著作権の知識も更新していかなければなりません。
著作権法はほとんど毎年変わっていって、たとえば
・TPPによって保護期間が50年から70年になったこと
・漫画などの海賊版のダウンロード違法化
・国会図書館のデータを個人に送信できる
・テレビとネットの配信について
など、学校や子どもたちに関する内容も多いです。
特に学校の公衆送信に関わることは、オンライン授業や行事のオンライン配信、GIGA端末の導入により、「知らない」では済まない状況になっています。授業目的公衆送信補償金制度・SARTRASという言葉を耳にする機会も増えたことでしょう。
学校における具体的な適用例
法律の改正やその内容、SARTRASの制度など、本当の本当は教員全員が知ってほしいところですが、教員がいかに忙しいかということはよくよくわかっています。
学校の誰か最低限数名には知ってほしい考えた時、管理職と学校司書であってほしいのです。
例えば行事配信をするという時に、情報担当の教員や記録・配信担当の教員が困った時に「学校司書さんに聞こう」となるのが理想です。学校のこと・教員のこと・子どもたちのことをよく知っているからです。
学校には文化があります。同じ運動会でも学校によって様々です。学校の文化の中心にいるのは、学校司書なのです。
もともと持っている著作権の知識や意識に加え、新たな情報をアップデートして学校に関する著作権の窓口になってほしいと思います。
まとめ:【学校司書さんへ】学校著作権のキーパーソンにお願いしたい3つの役割
学校での著作権や著作権教育に関わる人は、情報担当や音楽科・美術科の教員等がいますが、キーパーソンは学校司書の皆さんで間違いありません。また、このことは学校の外にいる人が気づき始めています。
学校の中にいる教員は、気づくことが難しく余裕がないかもしれません。
そもそも、学校司書が著作権の知識があることを知らなければ活用もできません。
学校司書さん側からぜひ働きかけをして、学校での著作権への意識づけを拡げていってほしいと思います。
最後に宣伝です。
学校司書向けの研修を行っています。学校図書館問題研究会さんはじめ、自治体の教育委員会さんからのご依頼で学校司書向け研修も行っています。
著作権の基礎から学校に関する著作権、学校図書館ならではの著作権の知識もお話ししていますので、問い合わせフォームからご依頼ください。
この記事の内容は動画と同じです。
動画「【学校司書さんへ】学校著作権のキーパーソンにお願いしたい3つの役割」も是非ご覧ください。
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