授業プリントにネットの写真を貼り付けたり、学校ブログに行事の集合写真を掲載したり——学校現場では、写真を使う機会が日常的にあります。しかし、写真の利用は音楽やイラストと同様、著作権のルールに従う必要があります。さらに写真には、「撮った人」の著作権だけでなく、「撮られた人」のプライバシー権や肖像権への配慮という、もうひとつの視点が必要なのです。
この記事では、学校における写真利用の場面ごとの考え方と、「著作権フリー」写真を使う際の判断のポイントを整理します。
写真利用の前提として:著作権の基本的な考え方
まず、著作権の基本的な考え方を確認しておきましょう。
著作権は知的財産権の一種で、作品を作った瞬間に、作った人に自動的に発生します。子どもが描いた絵も、教員が撮影した写真も、同じです。
原則は「作った人のもの」——ですから、使う・増やす・変えるときには、作った人の許諾が必要です。ただし、学校の授業の場ではこの原則に一定の例外が認められています(著作権法第35条)。
著作権の基本的な仕組みについては、「学校における著作権入門(学校でコピーが許される理由とは)」の記事もあわせてご覧ください。
写真が使われる場面——教員と児童・生徒それぞれのケース
教員が写真を使う場面
学校での写真利用は、大きく次の場面に分けられます。
- 授業プリント・ワークシート:社会科の地形写真、理科の実験装置の写真など、教材として利用する場合
- 模造紙・スライド資料:授業で使う掲示物や発表用資料に写真を組み込む場合
- SNS・学校ホームページ・学年だより:学校の活動を外部に向けて発信する場合
なお、インターネットで公開する場合は、授業内での配付と比べて著作権・肖像権の両面でより慎重な対応が求められます。
児童・生徒が写真を使う場面
子どもたちも日常的に写真を扱っています。
- レポート・スライド:「恐竜 写真」などで検索してコピー&ペーストで貼り付けるケースがあります
- SNSでの共有:許可を取らずに友人や集合写真を共有すると、権利侵害のトラブルに発展する可能性があります
悪気なくやってしまいがちな行為であるからこそ、教員が日頃から意識づけをしておくことが大切です。
▼先生・子どもたちがやりがちな著作権違反について解説した記事・動画

写真には「撮った人」と「撮られた人」の権利がある
ここが、写真利用を考える上でとても重要なポイントです。
フリーイラストの著作権と似た論点ではありますが、写真には「撮られた人」のプライバシー権やパブリシティ権という、もうひとつの権利が関わってきます。
- プライバシー権:無断で撮影・公表されない人格的権利。一般の方にも広く認められます。学校での写真利用で特に関わるのはこちらです。
- パブリシティ権:芸能人・スポーツ選手などの著名人の氏名・肖像が持つ経済的価値を守る権利。学校の児童・生徒の写真では通常は発生しませんが、著名な来賓等が写っている場合には留意が必要です。
研修先でも「集合写真を学校ブログに載せていいか迷う」というご相談をよく耳にします。判断の基本は、写真に写っている人全員の許可を得ることです。許可が得られなかった場合は、顔をぼかすまたはスタンプで隠すなどの対応が考えられます。
また、保護者の中には「子どもの顔と学校名が結びつくことへの不安」をお持ちの方もいらっしゃいます。SNSや公共の場への掲載においては、この点への配慮も求められます。
児童・生徒がクラスメイトの写真をSNSにアップロードしたり、LINEグループで共有したりすることも、本人の意図とは無関係に相手の権利を侵害する可能性があります。「ただ撮るのではなく、相手の気持ちを考える」という姿勢を育てることが、著作権教育の本質のひとつでもあります。
写真の著作権が学校でどのように関わってくるかは、著作権法第35条の解説動画でもふれています。参考にしてみてください。
「著作権フリー」の写真を学校で使うときの確認ポイント
「フリー」と書いてあるから何でも使える——そう思っていたとしたら、少し立ち止まってみてください。
「著作権フリー」の写真であっても、利用規約は提供サイトごとに異なります。「フリー」の範囲をきちんと確認することが、トラブルを防ぐ第一歩です。
確認すべき4つのポイント
| 確認項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 利用範囲 | 教育用途はOKでもウェブ公開は不可、など用途・媒体ごとの制限がある |
| 利用制限 | ダウンロード枚数の上限、会員登録の要否、商業利用の有料オプションなど |
| クレジット表示 | 出典元のリンクや著作者名の記載が義務付けられている場合がある |
| 加工・編集 | 人物写真や文化財の写真では編集が制限されているケースがある |
特に、人物が写っている写真や有名な観光地・文化財が含まれる写真には、意匠権や肖像権が関わることがあり、商業利用には別途の許可が必要なケースもあります。
写真素材を利用する際は、必ずその時点の最新の利用規約の原文を確認してください。
写真を使った著作権教育のすすめ
写真は、子どもたちに著作権を「自分ごと」として考えさせるのに最適な教材です。スマートフォンやSNSが日常の一部になっている今、実践的な学びの機会として取り入れてみましょう。
この記事で扱った「著作権と肖像権」「フリー素材の使い方」のテーマは、学校向け著作権研修でも取り上げています。研修でのご活用をご検討の方は、研修テーマ一覧もあわせてご覧ください。
授業例:「写真を撮って、利用規約を考えよう」
子どもたち自身に写真を撮らせ、それを学級だよりや学校だよりに使う際のルールを考えさせる活動です。
子どもたちに設定を考えさせる主な項目として、次のようなものが挙げられます。
- 使用許可の範囲:どこで・どんな目的で使っていいか(例:学内限定、学年配布のみ)
- 加工の可否:写真を編集・加工することを認めるかどうか
- クレジットの表示:撮影者として自分の名前をどう記載するか
- 対価についての考え方:金銭のやり取りは難しくても、使われることへのリスペクトをどう表すか
こうした話し合いを通じて、著作権は「難しい法律の話」ではなく、「自分の作品と他者の作品を大切にするための仕組み」であることを体感させることができます。
「ダメ」ではなく「こうすれば使える」を伝える
著作権を教えるとき、つい「〜はダメ」という説明になりがちです。しかし、それだけでは子どもたちの中に「著作権=制限」という印象だけが残ってしまいます。
「利用規約を確認すれば使える」「許可を取れば使える」という前向きな判断のプロセスを教えることが、著作権教育の大切な側面です。利用規約を子どもの発達段階に合わせてかみ砕いて説明することで、分かりやすく意義を伝えることもできます。
「写り込み」と肖像権への意識づけ
キャラクターのぬいぐるみや有名な建造物を背景に写真を撮るとき——そこにも著作権や肖像権が関わる可能性があります。こうした「写り込み」の問題を授業で取り上げることで、無意識に他者の権利を侵害しないための感覚を育てることができます。
よくある質問(FAQ)
Q. 行事で撮った集合写真を学校のSNSに載せる場合、全員に許可を取る必要がありますか?
A. 写真に写っているすべての人の肖像権が関わるため、事前に許可を得ることが望ましいと考えられます。入学時や年度始めに保護者へ写真掲載の運用ルールを説明し、承諾を得ておく対応が実務的です。許可が得られない方については、顔をぼかすなどの配慮も検討しましょう。
Q. 「著作権フリー」の写真なら、学校のホームページやSNSに自由に使えますか?
A. 「著作権フリー」の範囲はサイトごとに異なります。授業での配付はOKでもウェブ公開は制限されている場合や、クレジット表示が必要な場合もあります。利用前に各サイトの利用規約を必ず確認してください。
Q. 子どもが撮った写真の著作権は誰にありますか?
A. 著作権は作品を作った人に自動的に発生しますので、子どもが撮影した写真の著作権は原則としてその子どもにあります。学校が学校だよりや掲示物などに使用する場合も、本来は著作者(子ども・保護者)への確認が丁寧な対応です。
Q. 業者に依頼した卒業アルバムの写真を学校ホームページに使ってもいいですか?
A. 業者が撮影した写真の著作権は、原則としてその業者にあります。ホームページへの掲載など、撮影目的以外の使用には事前の契約・許諾が必要と考えられます。依頼時にあわせて確認しておくと安心です。なお、いずれにしても、写真に写っている方のプライバシー権(肖像権)への配慮は別途必要です。







