「自分でキャラクターを真似して描いたら、許可を取らなくていいですか?」。子どもたちに著作権の話をすると、こんな質問をよく受けます。運動会の看板、文化祭のTシャツ、休み時間のお絵かきなど、学校には既存の作品をもとにした創作があふれています。
この記事では、二次的著作物の基本と原作者の権利、学校行事や授業でキャラクターを使うときの考え方を、著作権法の条文とともに整理します。
・二次的著作物とは何か(著作権法第2条第1項第11号)
・原作者がもつ権利(第27条・第28条)
・運動会の看板やワークシートにキャラクターを使うときの考え方
・替え歌やメディアミックスと、子どもたちへの伝え方
二次的著作物とは、原作を翻訳・編曲・変形・翻案(映画化など)して新たな創作を加えてつくった作品のことです(著作権法第2条第1項第11号)。二次的著作物には、つくった人の権利とは別に原作者の権利もはたらくため、原作の著作権が保護期間内であれば、利用するときは両方の権利に気をつける必要があります。
なおキャラクターをそのまま真似して描くことは、二次的著作物をつくることではなく「複製」にあたると考えられています。
※著作権法は改正されることがあるため、最新の情報もあわせてご確認ください。
二次的著作物とは?著作権法の定義と原作者の権利
著作権法第2条第1項第11号の定義
著作権法は、二次的著作物を「著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物」と定めています。洋書の翻訳、漫画のアニメ化、小説の映画化や舞台化などが、わかりやすい例です。
似た言葉に「翻訳」と「翻案」があります。翻訳は作品を他の言語にすること。翻案は元の作品の特徴を生かしたり、一部を変えたりして、別の作品をつくることです。
▶ 動画では2:57〜で詳しく解説しています
原作者がもつ2つの権利(第27条・第28条)
ポイントは、二次的著作物について原作者が2つの場面で権利をもっていることです。
| 条文 | 権利の内容 |
|---|---|
| 第27条(翻訳権・翻案権等) | 他の人が自分の作品を翻訳・翻案などして、二次的著作物をつくることについての権利 |
| 第28条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利) | できあがった二次的著作物が複製・上演・演奏・上映・公衆送信・展示・譲渡・貸与などされるときに、二次的著作物の著作者と同じ種類の権利 |
つまり、二次的著作物をつくるには原則として原作者の了解が必要で、できあがった後の使われ方にも原作者の権利がおよぶのです。
▶ 動画では3:35〜(第27条)、4:17〜(第28条)で詳しく解説しています
「作った人が2種類いる」と覚えましょう
二次的著作物の権利は、原作の権利とは別に生まれます。わかりやすいのは洋書を翻訳した場合です。原作を書いた人と翻訳をした人がそれぞれ別々に権利をもっています。
そのため、翻訳書をコピーするときは、原則として翻訳者と原作者の両方の了解が必要になります。ただし、原作の著作権が保護期間を過ぎて消滅している場合は二次的著作物の著作者の許可だけで利用できます。
▶ 動画では6:37〜で詳しく解説しています
運動会の看板にキャラクターを描くのはOK?
教育課程に位置づけられた運動会などで、行事のために児童生徒や教員が看板にキャラクターを描くことは、著作権法第35条により一定の条件のもとで許諾なくできる場合があります。一方で、行事が終わったあとの扱いや授業の外での利用には注意が必要です。
▼漫画を教材にした著作権教育の進め方

そのまま描くのは「複製」、アレンジを加えると「翻案」の可能性
既存のキャラクターを看板にそのまま描くことは、漫画などの「複製」にあたると考えられています(CRIC「ケーススタディ著作権1 学校教育と著作権」Q5)。画用紙に絵画を模写することも複製の例として挙げられています。
一方、2頭身にしたり、自分で考えたセリフを言わせたりして新たな創作性が加われば、二次的著作物をつくる(翻案する)ことになる可能性があります。
大切なのは、複製にあたる場合も翻案にあたる場合も、原則として著作権者の許諾が必要な点は同じということです。ただし、自分で楽しむために描く場合は私的使用のための複製(第30条)として許諾なく行えます。また、授業の過程での利用では、複製だけでなく翻案も第35条の条件のもとで許諾なくできる場合があります(次の見出しで説明します)。
「学校は例外」ではなく「授業の過程が例外」
著作権の原則は「作品は作った人のもの」。使うとき、増やすとき、変えるときには、作った人の許諾が必要です。
では、学校なら何でも例外になるのでしょうか。そうではありません。許諾なく使える例外は、授業の過程での利用(第35条)など条件つきで認められたものに限られます。第35条で許諾なく複製できるのは次の条件をすべて満たす場合です。
・公表された著作物であること
・学校などの教育機関(営利を目的として設置されているものを除く)であること
・授業を担任する教員や、授業を受ける児童生徒が複製すること
・授業の過程で利用すること
・必要と認められる限度であること
・著作権者の利益を不当に害しないこと
運動会・文化祭などの学校行事は、教育課程に位置づけられていれば「授業」にあたると考えられています。文化庁の資料でも、看板でのキャラクター使用は授業における複製(第35条)の例として示されています。
▶ 第35条について詳しくは以下の記事をご覧ください。

行事が終わったあとの扱いに注意
第35条は授業の過程で使うための例外です。そのため、運動会が終わったあとも看板を常設で飾るような場合は条件を満たさない可能性があるとされています(CRIC Q5)。
また、学校のホームページにイラストを載せることは、授業の過程での利用にはあたらないとされています(文化庁「学校における教育活動と著作権」Q&A)。看板を写した写真をホームページに載せる場合も改めて確認しておくと安心です。
さらに、許諾なく使える場合でも、キャラクターの姿を大きく変えるような加工には配慮が必要とされています。著作権(財産権)が制限されても、作者の意に反する改変をされない権利(同一性保持権)まで制限されるとは限らないためです。
文化祭のクラスTシャツは?
文化祭のTシャツにキャラクターを使う場合も、そのまま写すなら複製、アレンジを加えるなら翻案の可能性がある点は看板と同じです。ただし、業者への発注や、行事が終わったあとの着用も関わるため、看板と同じように考えてよいかは判断が分かれる可能性があります。つくる前に、学校や教育委員会で確認しておくと安心です。
| 場面 | 考え方 |
|---|---|
| 教育課程上の運動会で、行事のために看板にキャラクターを描く | 第35条の条件を満たせば、許諾なくできる場合がある |
| 行事が終わったあとも看板を常設で飾る | 第35条の条件を満たさない可能性がある |
| 看板の写真を学校のホームページに載せる | 授業の過程にあたらないため、改めて確認が必要 |
| 文化祭のクラスTシャツにキャラクターを使う | 発注や行事後の着用も関わるため、事前の確認がおすすめ |
| 休み時間に自分で楽しむために描く | 私的使用のための複製(第30条)として許諾なくできる |
▼キャラクターの公式サイトに書かれていること

ワークシートや教材にキャラクターを使うときは?
ワークシートが手書きだった時代は、キャラクターを真似て描き、吹き出しをつけてコメントを書くこともあったかもしれません。今はWordで作成したりオンラインのワークシートを使ったりと、既存のイラストをコピー&ペーストする場面のほうが多いでしょう。
授業の過程で使うワークシートであれば第35条の条件のもとで利用できる場合があります。一方、学級通信や学校のホームページなど授業の外で使う場合は第35条の対象外です。使う場面が授業の過程から離れるときは、許諾や利用規約を確認しましょう。
▶ 動画では5:24〜で詳しく解説しています
▼イラストの利用規約の確認ポイント

替え歌は自由にできる?
運動会や文化祭などの行事で既存の曲の歌詞を行事の目的に合わせて変えて歌う替え歌。これも原作に手を加えるという点で二次的著作物の話題につながります。
実は、替え歌について複数の専門家に質問したことがありますが、とても理解が難しく著作者でない私が判断できることではないと感じました。演歌やお笑いのネタなどで替え歌が報道になったこともあります。
歌詞を変えることは、翻案にあたる可能性に加えて、作者の意に反する改変をされない権利(同一性保持権)にも関わります。授業で使える場合でも、歌詞の変更には配慮が必要とされています(改正著作権法第35条運用指針 特別活動追補版)。少なくとも、替え歌を簡単に考えてはいけないことはぜひ知っておいていただきたいと思います。
文化祭や作品展の準備が始まる前に、子どもたち自身がこうした考え方を知っておくと、後から作り直す事態を防げるかもしれません。行事の前の時間を使った児童生徒向けの授業もお受けしています。

メディアミックスと原作者の考え方
メディアミックスとは
メディアミックスとは、一つのメディアで表現された原作を、小説・漫画・アニメ・ゲーム・音楽・ドラマ・映画・トレーディングカード・プラモデル・舞台など複数の表現に展開するビジネスモデルです。『ONE PIECE』には歌舞伎版もあります。『ライオン・キング』や『ハリー・ポッター』のように海を越える展開もあり、『となりのトトロ』はロンドンで舞台化されて好評を博しました。
▶ 動画では7:00〜で詳しく解説しています
どう展開するかを決めるのは原作者の側
原作者の二次的著作物への考え方はさまざまです。映画化に際して宣伝に加わるなど協力的な場面もあります。一方で、映画化をよく思わなかったり、内容や契約についてコメントしたりする場面もあるようです。
重要なのは、作品は作った人のものだということです。どのような展開を認めるかは原則として原作者(著作権者)の側が決める立場にあります。
二次的著作物を使うときやつくるときは、原作者の考え方や、その作品の利用を扱う出版社などの方針を十分に理解しましょう。作品の著作権は原則として著作者がもっていますが、出版社が出版に関する権利をもっていたり、利用の窓口を担っていたりする場合があります。法律の専門家の見解もケースごとにまちまちで一概には言えません。作った人が2種類いる二次的著作物には十分に気をつけましょう。
▶ 動画では8:01〜で詳しく解説しています
子どもたちにどう伝える?メディアミックスで考える授業例
「面倒くさいから」「よくわからないから」と使わない、子どもたちに伝えない。すると、どうなるでしょうか。作った人も使う人も、双方にとって良くない結果になります。作った人は自分の作品を広めたいはずですし、使う人も作品を使いたいはずです。使い方を知って正しく使うことで両方がwin-winになるのです。子どもたちはいつか、あるいはもうすでに、著作権について知らなければならない状況にあるかもしれません。
では、どう伝えるか。学校著作権ナビゲーターとしておすすめしているのは、実践の場で伝えることです。レポートやスライドをつくる授業、行事の準備の過程で、二次的著作物の使い方を説明しましょう。
二次的著作物は子どもの身近にたくさんあります。たとえば「ポケットモンスター」と聞いて、アニメを思い浮かべる子もいれば、ゲームやカードゲーム、映画、ポケモンGO、グッズを思い浮かべる子もいるでしょう。調べてみると、最初の作品は1996年に発売されたゲームボーイ用ソフト『ポケットモンスター 赤・緑』だそうです。
授業では、次のような展開が身近で取り組みやすいでしょう。
- 今あるメディアミックス作品を調べる
- そのメリット・デメリットを考える
- 自分がメディアミックスをするならどうするかを考える
映画化や2.5次元ミュージカル化では、キャスティングやストーリーについて作品のファンがSNSでコメントし賛否両論が飛び交うこともあります。その作品が好きな子どもなら一家言あるでしょう。現象だけを捉えて終わりにせず、二次的著作物を取り巻くさまざまな人を多面的に捉えられるように。そしてその中心に原作者を置いて考えられるようにしたいですね。
冒頭の「真似して描いたら許可はいらない?」という質問には、こう伝えられます。自分で楽しむために描くことは許諾なくできます。しかし、SNSのアイコンにするなど描いた絵を公開する場合は、原則として元の作品の著作権者の了解が必要とされています(CRIC「ケーススタディ著作権1 学校教育と著作権」Q17)。
▶ 動画では9:51〜で詳しく解説しています
▶子どもが興味ありそうなSNSアイコンの著作権についての解説記事です


よくある質問(FAQ)
Q. 休み時間にキャラクターを真似して描くのは著作権違反ですか?
A. 自分で楽しむために描くことは、私的使用のための複製(著作権法第30条)として許諾なく行えると考えられます。ただし、描いた絵をSNSに載せたり配ったりすると私的使用の範囲を超える可能性があります。
Q. 運動会の看板にキャラクターを描いてもいいですか?
A. 教育課程に位置づけられた運動会で行事のために児童生徒や教員が描く場合は、第35条の条件を満たせば許諾なくできる場合があります。行事のあとも常設で飾ったり、写真をホームページに載せたりする場合は、改めて確認が必要です。
Q. 二次的著作物を使うときは誰の許可が必要ですか?
A. 許諾が必要な利用の場合は、原則として二次的著作物の著作者と原作の著作者の両方です(第28条)。授業の過程での利用(第35条)や私的使用など許諾なく使える場合もあります。原作の著作権が保護期間を過ぎている場合は、二次的著作物の著作者の許可だけで利用できます。
Q. 学校なら著作物は自由に使えますか?
A. 許諾なく使える例外は、授業の過程での利用(第35条)など条件つきで認められたものに限られます。学級通信や学校のホームページなど、授業の外での利用には第35条は適用されません。
まとめ
二次的著作物は、著作物の基礎的な考え方を身につけたうえで、一歩踏み込んだ内容です。しかし、子どもたちが身近に感じられる著作物でもあります。「作った人が2種類いる」こと、そして学校での例外は授業の過程などに限られることを押さえておけば、多くの場面で判断の糸口が見えてきます。
表面上の法律や「ダメ」だけで終わらせず、作り手と使い手の心を育てる教育を。教員も子どもも一緒に著作権の話をしてみませんか。
著作権研修・出前授業のご依頼を承っています。研修の内容・形式・費用の考え方、よくある質問は研修のご案内にまとめています。
この記事は、動画「子どもに二次的著作物をどう伝える?メディアミックスで考える著作権の授業」をもとに作成しました。

