「生成AIと著作権」というニュースを見かけない日はありません。ただ、その多くは学校の先生が直接関わる場面の話ではないように思います。この記事では、生成AIと著作権の話が3つの段階に分かれること、そして先生が判断を迫られる場面が多いのはどこかを整理します。
生成AIと著作権は「3つの段階」に分けて整理できます
生成AIと著作権の問題は、大きく3つの段階に分けて整理できます。AIにデータを学習させてモデルを作る「学習・開発段階」、AIに指示を出して作らせたものを使う「生成・利用段階」、できあがったものが作品として保護されるのかという「生成物の著作物性」の3つです。
SARTRASの著作権情報誌『さあとらす』の連載「生成AIと著作権の今」で、今村哲也先生(明治大学情報コミュニケーション学部教授)がこの3段階で論点を整理しています。
| 段階 | 何をしている場面か | 主に問題になること |
|---|---|---|
| ①学習・開発段階 | AIに大量のデータを読み込ませてモデルを作る | 学習に既存の著作物を使ってよいか |
| ②生成・利用段階 | AIに指示を出して作らせ、出てきたものを使う | 出てきたものが他人の著作権を侵害しないか |
| ③生成物の著作物性 | できあがったものを作品として扱う | 生成物に著作権が生じるか |
学校著作権ナビゲーターとして研修に伺うと、「生成AIって著作権的にどうなんですか」と聞かれることがあります。一言で答えにくいのは、この3つが混ざったまま質問されているからかもしれません。
①AIを作る段階——大きなニュースの多くは、ここに関わる話です
生成AIは開発の過程で、人間には不可能な量のデータを学習します。その中には、著作権で保護されている既存の著作物が含まれていることがあります。日本の法律では、AIに分析させるだけの使い方——作品を味わうために使うのではない使い方——について、例外的に著作権が制限されています。この規定は機械学習にも幅広く適用されるとされています。
ただし、これで何でも自由になるわけではありません。著作権者の利益を不当に害することになる場合は、この例外の適用は受けられないとされています。条文にも、そう但し書きが置かれています。作品を味わう目的が混ざっている場合にも、許諾が必要と考えられています。例外がどこまで及ぶのかについては著作権者から深刻な懸念の声が上がり、範囲を明確にする議論が続いています。
『さあとらす』Vol.4では、Getty ImagesやThe New York Times、大手レコード会社などがAI企業を相次いで訴えた例が紹介されています。いずれも自分たちの作品が許可なくAIの学習に使われたことを問題にしたもので、新聞社やレコード会社は、出てきたものについても問題にしています。
ここで問われているのは、主にAIを開発する側の行為です。先生が当事者になる場面は、多くはないでしょう。ただし、この「AIに分析させるだけの使い方」という考え方そのものは、先生が自分で資料を読み込ませるときにも関わってきます。①の話がまったく無縁ではないのです。
②AIを使う段階——先生が判断を迫られる場面が多いのは、ここです
一方、AIに指示を出して何かを作らせ、それを使う②の段階は、先生自身が当事者になります。教材を作る、配布物を作る、児童生徒に使わせる——どれもこの段階です。
ここで中心的に議論されているのが「著作物を元ネタにしたかどうか」です。専門的には「依拠性」と呼ばれるもので、著作権侵害が成立する要件の一つとされています。議論は、AIを使う人が既存の著作物を知っていた場合と、知らなかったけれど学習用データに含まれていた場合とに分けて行われています。似たものが出てきても、どちらの経緯なのかで議論の立て方が変わってくるのです。
なお、AIを使うときの入力・出力・公開までの注意点は、「生成AI×著作権【学校版】入力・出力・SNS公開の注意点を先生向けに解説」でも解説しています。

③できたものに著作権はあるの?——学校で判断する場面は多くありません
AIが生成したものが著作物として保護されるには、創作しようとする意図と、人がどの程度その創作に関わったといえるかが必要とされています。日本では、文化庁「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月)をもとに、人の創作への関わりを総合的に考慮して判断されると理解されています。
現段階では学校で判断する場面は多くないと想定されるため、このシリーズでは深く立ち入りません。
このシリーズの記事で扱うこと
②の「使う段階」を中心に、次の場面を順に取り上げます。
- AIで作った教材が、著作権侵害になるのはどんなときか
- AIで作ったものを、授業以外(おたより、職員会議など)で使うとき
- 資料を読み込ませるタイプのAI(NotebookLMなど)の注意点
- 児童生徒がAIを使うときに、先生から伝えたいこと
学校での著作権の考え方全体は、「原口直の学校著作権ナビ」にまとめています。
よくある質問(FAQ)
Q. 「AIで作りました」と書かなければいけませんか?
A. 日本には、こうした表示を義務づける明確な法律はまだありません。2025年9月に全面施行されたいわゆるAI法も、国の推進体制や基本理念を定めるもので、AI生成物の表示義務は置かれていません。
連載でも、明確な法規制がない日本では、教育の現場ですべての場面でAIの使用を明示することは現実的でも必要でもないだろう、とされています。
ただし、表示したかどうかと、著作権侵害になるかどうかは別の話です。自分から「AIで作りました」と書き添えても、それだけで責任を免れるわけではない、とも指摘されています。どんなときに問題になるのかは、[学校で生成AIを使うときの著作権]をご覧ください。
Q. 日本でも訴訟は起きているのですか?
A. 起きています。Vol.4の原稿が書かれた2024年7月末の時点ではまだありませんでしたが、その後、生成AI検索サービスをめぐって国内の新聞社が相次いで法的措置に踏み切り、Vol.8でその状況が取り上げられています。動きの続く分野ですので、最新の状況は各社や裁判所の公式発表でご確認ください。
まとめ
ニュースで大きく報じられるのは①に関わるものが多く、先生が判断を迫られる場面が多いのは②です。ただし3つは切り離されているわけではありません。いたずらに恐れるのではなく、自分がいま3つのどの話をしているのかを見分けるところから始めてみましょう。
今村先生はVol.6で、教育現場での向き合い方について「便利だから使う」のではなく「使うからこそ注意する」意識が求められる、と書いています。この一文が、シリーズ全体の合言葉になりそうです。
著作権研修・出前授業のご依頼を承っています。研修の内容・形式・費用の考え方、よくある質問は研修のご案内にまとめています。
参考資料
- 一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)著作権情報誌『さあとらす』連載「生成AIと著作権の今」(今村哲也・明治大学情報コミュニケーション学部教授)Vol.2・Vol.4・Vol.6・Vol.8・Vol.9/バックナンバー(PDF)
- 文化庁 文化審議会著作権分科会「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月)
- 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(令和7年法律第53号/2025年6月4日公布、9月1日全面施行)

