2026年9月11日、東京都立農業高等学校の校内研修会で講師を務めました。テーマは「教育活動における著作権の実務と最新動向」です。同校での校内研修は2023年に続いて2度目となり、再びお声がけいただけたことを大変ありがたく感じています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主催 | 東京都立農業高等学校 |
| 対象・人数 | 同校の教職員 約20名 |
| 形式・時間 | 対面・60分 |
| 研修の枠 | 校内研修会 |
| 依頼の経緯 | リピート(2023年の校内研修に続き2回目) |
なお、この研修はJASRAC(日本音楽著作権協会)主催「出張講座JASRAC ラーニングスクエア」の制度を使った研修でした。出前講座の制度や申込み方法については「学校で使える!「出張講座JASRACラーニングスクエア」の活用法と事例紹介」で詳しく解説しています。
東京都立農業高等学校が著作権を研修テーマにした背景
同校では2023年にも校内研修の一環として著作権の研修を実施しています。今回は、その研修をきっかけに再度ご依頼をいただきました。
ご依頼にあたっていただいたご要望は、文化祭の際に注意すべき著作権の事項について研修をしてほしい、というものでした。そこで、「教育活動における著作権の実務と最新動向」をテーマに、文化祭の場面を入口にした研修としました。
ご担当の先生は、YouTubeとウェブサイトで原口を知ってくださったそうです。依頼の決め手には「以前の講演が素晴らしかったため」と書いてくださいました。学校著作権ナビゲーターとして、一度きりで終わらず「もう一度」と呼んでいただけることは何よりの励みになります。
研修の全体像:農業高校ならではの文化祭から
研修は、AhaSlides(参加者がスマートフォンから回答できるアンケートツール)を使った対話型で進めました。
最初の問いは「文化祭の見どころは?」です。先生方からは、ファッションショー、食物科が開く食堂、生徒が育てた野菜や加工品の販売、卒業庭園、5つの学科それぞれの学習成果の展示などが挙がりました。全日制と定時制が一堂に会する機会、という声もありました。
農業高校の文化祭には、音楽を使うステージ、衣装やポスターのデザイン、生徒の作品や生産物の販売など、著作権とかかわりやすい場面が数多くあります。専門学科の学びが外に向けて発信される場だからこそ、今回のご要望に沿って、この身近な学校行事から考えていただきました。
なお、依頼者の先生が「(研修について)印象に残ったこと」に挙げてくださったのは「冒頭の美声」でした。音楽科教員だった者として、うれしい一言でした。
受講者の実態:当日のアンケートから
当日ご参加の先生方に、いくつかの質問に答えていただきました。
「著作権」から思い浮かぶ言葉
「音楽」「権利」「イラスト」「お金」「財産」といった言葉が多く挙がりました。その一方で、「難しい」「あいまい」「訴訟」といった言葉も見られます。大切なものだと感じつつ、どこか近寄りがたい。そんな受け止め方がうかがえました。
キーワードをどのくらい知っているか
4段階(1=知らない、4=知っている)で回答していただいた平均値(回答19件)です。
- 海賊版:3.8/著作権:3.7/知的財産権:3.6
- 著作権法第35条:1.5/SARTRAS:1.6
「著作権」という言葉はよく知られている一方で、学校での利用にかかわる第35条や、補償金制度を担うSARTRASはまだなじみが薄いようでした。
▼SARTRAS・授業目的公衆送信補償金制度についてはこちら

生成AIの利用
生成AIを使ったことがあるかを伺ったところ、17名中15名が「ある」と回答されました。使い道として、授業案の壁打ち、授業スライドやプリントの作成、ポスター作り、文字起こし、誤字脱字の添削、情報収集などが挙がっています。
関連するキーワードの認知度(回答17件)は、ChatGPTが4.0、CopilotとGeminiも3.7以上と高い値でした。これに対し、文部科学省のガイドラインは2.5、ハルシネーション(生成AIがもっともらしい誤りを出力すること)は2.2にとどまりました。
▼生成AIと著作権について、先生が判断を迫られる場面が多いのはどこかを整理

研修の具体的な内容
当日は、主に次の内容を扱いました。
- 著作権を知るべき理由:子どもが著作権侵害で摘発される事例や、生成AIの広がり
- 著作権の制限:著作権法第35条(授業の過程での利用を、一定の条件のもとで認める規定)を中心とした、学校の授業における例外
- 文化祭で気をつけたい著作権:ステージ・装飾・掲示物・販売など、文化祭の場面ごとの考え方
- 授業目的公衆送信補償金制度とSARTRAS:ICTを使った授業と制度の関係
- 生成AIと著作権:現在も整理が続いている論点のため、文化庁の最新の考え方を確認しながら判断することの大切さ
第35条は、授業であれば何でも使えるという規定ではありません。詳しい要件は、下記の解説記事で整理していますのであわせてご覧ください。

研修のポイント:いたずらに恐れず、原則と例外を知る
今回お伝えしたかったのは、著作権を「怖いもの」として避けるのではなく、原則と例外を知ったうえで判断するという姿勢です。
先生方の多くはすでに生成AIを授業準備に取り入れています。だからこそ「何に気をつければよいか」を知っていれば安心して活用の幅を広げられるのです。
主催者・参加者の声
研修主催者の声
ご担当の先生からは、特に役立った内容として「著作権を知るべき理由(子どもの逮捕者、生成AI)」と「著作権の制限(学校の授業は例外)」を挙げていただきました。また、この内容を勧めたい相手として、小・中・高校生、教員、管理職を選んでくださいました。
研修参加者の声
研修の最後に、ひとこと感想を書いていただきました。
ありがとうございました。安心して今後教材をつくることができそうです。
本日はありがとうございました。
ありがとうございました。気をつけていきます。
質問もたくさんいただきました。漫画研究部の部誌に二次創作イラストを載せて来校者に配る場合、文化祭の装飾にキャラクターを使う場合、文化祭で音楽を流す場合、自作の授業プリントや教科書の内容を生成AIに読み込ませた場合など、どれも学校現場の実感がこもった問いでした。
おわりに
東京都立農業高等学校の先生方、2度目の機会をいただき本当にありがとうございました。
文化祭や専門学科の学習成果の発表、生成AIを使った授業準備など、先生方の日々の教育活動は著作権と隣り合っています。今回の研修が、迷ったときに立ち止まって判断するためのヒントになれば幸いです。
研修のご相談について
学校単位の校内研修として著作権研修を検討されている先生方は、研修の形式・費用・補助制度をご案内ページでご確認いただけます。高等学校の専門学科ならではの場面に合わせた内容にも対応いたします。
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