学校で写真を使うときの著作権ルールを、「授業の中」「学校だよりやホームページなどの外部発信」「引用」という3つの場面に分けて整理します。
授業のプリントにネットで見つけた写真を載せてもいいのか、学校のホームページに児童生徒の活動写真を載せるのは問題ないのか。日々の業務で判断に迷いやすい場面を取り上げました。著作権法第35条・第32条の条件を確認しながら、現場で使える判断の順序を確かめていきましょう。
学校で写真を使うときの著作権は、「授業の中で使うのか、授業の外で使うのか」で適用されるルールが大きく変わります。授業の過程での利用は著作権法第35条(学校などの教育機関で、授業のために著作物をコピー(複製)したり、送信したり、受信装置を使って見せたりできることを定めた規定)により、一定の条件のもとで許諾を得ずに行える場合があります。
一方、学校だよりやホームページへの掲載は法律上の「授業の過程」には該当しないため、原則として著作権者の許諾が必要になると考えられます。
学校の写真の著作権は「どの場面で使うか」から考えます
インターネットで見つけた美しい風景の写真、市販の書籍に載っている分かりやすい図版。魅力的な教材や資料を作りたいとき、写真という著作物は欠かせない存在です。しかし、これらを学校で使うときに迷ってしまうことはありませんか。
重要なのは、同じ写真でも「使う場面」によって適用される法律が違うということです。学校著作権ナビゲーターとして研修に関わるなかで、先生方が実務で特に迷いやすいと感じてきたのが、次の3つの場面です。
| 場面 | 適用されるルール | 許諾は必要? |
|---|---|---|
| 授業の中で使う | 著作権法第35条 | 条件を満たせば無許諾で利用できる場合があります |
| 学校だより・ホームページに載せる | 原則どおりのルール | 原則として著作権者の許諾が必要と考えられます |
| 授業外の資料に「引用」として載せる | 著作権法第32条 | 条件をすべて満たせば無許諾で掲載できる場合があります |
この3つを意識するだけで、日々の判断がとてもスムーズになります。では、順番に見ていきましょう。
【場面1】授業で写真を使うとき——著作権法第35条の条件
▼授業で著作物はどこまで使える?著作権法第35条を先生向けにやさしく解説

学校の授業の中では、著作権法第35条という特別なルールを使うことができます。これは、学校の教育・授業において著作物を例外的に広く使えるように定められた、とても強力な特例です。
なお、第35条が認めているのは複製・公衆送信・公の伝達という3つの行為です。写真をプリントに印刷する、オンライン授業で送信する、配信されている写真を教室のモニターに映す、といった場面がここに含まれます。
ただし、「学校の授業であれば、どんな写真でも完全に自由に使える」という理解は、少し違います。この特例を正しく使うためには、法律で定められたいくつかの要件を満たす必要があります。いつでもどんな形でも自由に使える、というものではないのです。
使う場所・使う人・使う目的の条件
第35条を使うには、次の条件をすべて満たす必要があると考えられます。このほかに「著作権者の利益を不当に害しないこと」という条件もあり、これは後ほど詳しく取り上げます。
- 使う場所:学校教育法などの法令に基づいて設置された、非営利の教育機関でなければなりません(小中高のほか、公民館や教育センターなども含まれる場合があります)
- 使う主体:授業を担任する教員か、またはその授業を直接受ける児童生徒に限られます
- 使う目的:あくまでも授業の過程における利用であること
- 使う量・範囲:必要と認められる限度であること
塾やカルチャースクールなどでは、この第35条は使えないので注意が必要です。
例えば、授業で使うスライドやプリント、宿題の課題に他人の写真を載せるという行為は、これらの条件を満たしやすい典型的な例です。この場合、著作権を持っている人にわざわざ許可をもらわず、無許諾で写真を使うことができます。
▶ 動画では2:18〜で、第35条の要件を1つずつ解説しています
オンライン授業での配信とSARTRAS
オンライン授業での配信であっても、学校の設置者がSARTRAS(サートラス/授業目的公衆送信補償金等管理協会)に補償金を支払っていれば、個別に許可をもらわずに行うことができます。
なお、教室と教室を同時中継でつなぐような遠隔合同授業では、補償金を支払わなくてよいとされる場合もあります(第35条第3項)。また補償金を支払っている場合でも、「必要と認められる限度」であることなど、ほかの条件は同じように求められます。
ご自身の学校の設置者が補償金を支払っているかどうかは、教育委員会や事務担当に確認しておくと安心です。
▶ 動画では3:26〜で、オンライン配信とSARTRASについて触れています
「著作権者の利益を不当に害してはならない」という大前提
ここで最も注意していただきたいのが、著作権者の利益を不当に害してはならないという大前提です。
例えば、市販されているドリルや有名な写真家が作った写真集を、クラス全員分コピーして配るような行為は認められません。本来であれば学校や児童生徒が購入すべき教材をコピーで済ませてしまうと、購入の買い控えが起きてしまいます。これでは、写真を撮った人(クリエイター)や出版社の創作活動の意欲を奪うことになってしまいます。
授業内で写真を使うときは、法律の趣旨を理解し、必要最小限の範囲内で活用するのがおすすめです。
著作者名・出所の明示
また、一般的な慣行がある場合は、写真の著作者名と出所(でどころ)を、プリントの隅などに明示するようにしてください。正しい範囲を守ることで、クリエイターへの敬意を示しながら、質の高い授業を行うことができます。
こうした著作権の問題を校内研修で体系的に扱いたい場合は、研修テーマの一覧もご覧ください。
【場面2】学校だより・ホームページに写真を載せるとき
▼学校だよりと著作権|第35条が使えない理由と正しい素材の使い方

学校だよりや学校のホームページは、保護者や地域の方々に向けて学校の魅力を発信するための大事な道具です。ただし、ここで他人の写真を使用する場合には、先ほどの授業の中とは全く異なるルールが適用されます。
実は、教員が最も著作権のトラブルを起こしやすいのが、この学校のホームページや広報誌など、授業ではない外部発信の場面なのです。
なぜ第35条が使えないのでしょうか
学校のホームページや広報誌への掲載、あるいは学級だより・学年だよりを保護者に配布するという行為は、法律上の「授業の過程」には該当しません。教育的な目的がある場合でも、多くの人に送信や配布を行うため、第35条の特例は使うことができなくなります。
そうすると、原則どおりに著作権者の許諾が必要になります。
インターネット上のフリー素材のサイトを使う場合でも、事前に利用規約の確認をすることが大切です。「フリー」「無料」と書かれていても、商用利用の可否・改変の可否・クレジット表記の要否など、条件はサイトや素材ごとに異なります。使うたびに利用規約の「利用条件」の項目を確認しておくと安心です。
▼学校で安心して使えるイラスト素材の著作権ルール

児童生徒が撮影した写真にも著作権があります
児童生徒が撮影した写真を使用する場合にも注意が必要です。子供が自分で撮影した写真であっても、法律上の著作権は撮影したその子供自身に生じます。
そして、その写真を学校が使わせてもらうことは「利用の許可をもらう」という法律上のやりとりにあたるため、学校の広報誌やホームページなどに載せる場合は、撮影した児童生徒本人に加えて、保護者(法定代理人)の同意もあわせて事前に得ておくことが必要になると考えられます。
肖像権・プライバシーへの配慮
さらに、写真に他の子供の顔がはっきり映り込んでいる場合は、肖像権やプライバシーへの配慮も欠かせません。肖像権は著作権法に定められた権利ではなく、写っている人自身を守るための別の権利です。撮影者から著作権の許可をもらっていても、写っている人への配慮は別に必要になると考えられます。
個人が特定できる状態のまま無断でインターネット上に公開してしまうと、トラブルに発展することがあります。
外部へ発信をするときは、授業の中のルールとは全く別であるということを意識してみてください。事前の許諾の確認や、関係する方々への丁寧な同意取得を徹底して、安全な情報発信を心がけるのがおすすめです。
▶ 動画では6:47〜で、肖像権への配慮について解説しています
【場面3】授業外で写真を載せる「引用」(第32条)の条件
第35条が使えない学校だより・学年だよりなどの場面では、他人の写真を絶対に載せられないのだろうか、と困ってしまうこともあると思います。
そうではありません。研究発表の資料や学校だよりといった授業外の場面でも、著作権法第32条に定められた「引用」というルールを使えば、著作権者の許可をもらわずに他人の写真を掲載することができます。
ただし、この引用を法律上正しく成立させるためには、条件をすべて満たさなければなりません。動画では、特に迷いやすい5つを取り上げました。
| # | 条件 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 公表されていること | 引用する写真が、すでに世の中に公表されているものであること |
| 2 | 必然性があること | 報道・批評・研究などの目的上、その写真を掲載する必然性があること |
| 3 | 主従の関係があること | 自分の文章が「主」、引用する写真はそれを補強する「従」の関係であること |
| 4 | 出所を明示すること | 著作権法第48条に基づき、著作者の名前や写真の出所を明確に記載すること |
| 5 | 改変をしないこと(第20条・同一性保持権) | トリミングをしたり色を変えたりせず、そのままの形で使うこと |
なお、法律上の引用としては、このほかに引用のしかたが公正な慣行に合致していること、そして引用部分が本文と明確に区別されていることも求められると考えられます。写真の場合は、枠で囲む・キャプションを付けるなどして、自分の文章と借りてきた写真の境目がはっきり分かるようにしておくと安心です。
▼先生が知っておくべき正しい「引用」5つの条件

特に間違えやすいのは「飾り」としての掲載です
条件2について補足します。余白が空いているからなんとなく、というような飾り・差し絵としてではなく、その写真を載せなければ説明が成り立たないという必要性が求められます。単に見栄えを良くするために写真を掲載してしまうことは、引用にはあたりません。ここは特に気をつけたいポイントです。
▶ 動画では8:03〜で、迷いやすい5つの条件を1つずつ解説しています
▼本の表紙(書影)を学校で使う際の著作権

まとめ|正しく知って正しく使う
学校の教員にとって、写真は非常に強力な教育のツールです。しかし、使う場面と、そこに適用される法律がキーとなります。授業の中で使うときと、学校だより・ホームページなど外部へ発信するときではルールが違うということを、意識してみてください。
正しいルールを知ることは、日々の教育活動をより豊かなものにしてくれます。また、教員自身が著作権を尊重する姿勢を見せるということは、子供たちへの最良の教育となります。
法律の趣旨である「著作権者の利益を守りつつ、公正な利用を図る」という目的を、ぜひ頭の片隅に置いてみてください。迷ったときは、今日の3つのポイントを振り返って判断していただければと思います。正しく知って、正しく使う。ぜひ気をつけてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. インターネットで見つけた写真を、授業のプリントに載せてもいいですか?
A. 授業を担任する教員が、授業の過程で必要と認められる限度で使う場合には、著作権法第35条により無許諾で利用できる場合があります。ただし、著作権者の利益を不当に害する使い方(市販の写真集をクラス全員分コピーするなど)は認められません。一般的な慣行がある場合は、著作者名と出所を明示してください。
Q. 授業で使った写真を、そのまま学校のホームページに載せてもいいですか?
A. 学校のホームページへの掲載は法律上の「授業の過程」に該当しないため、第35条の特例は使えないと考えられます。原則として著作権者の許諾が必要になりますので、授業内での利用とは分けて判断してください。
Q. 児童生徒が撮った写真を学校だよりに載せる場合、許可はいりますか?
A. 子供が自分で撮影した写真であっても、法律上の著作権は撮影したその子供自身に生じます。学校の広報誌やホームページに載せる場合は、撮影した児童生徒本人に加えて、保護者(法定代理人)の同意もあわせて事前に得ておくことが必要になると考えられます。
Q. 学校だよりに他人の写真を載せる方法はまったくないのでしょうか?
A. 著作権法第32条の「引用」の条件(公表済み・必然性・主従の関係・出所の明示・無改変など)をすべて満たせば、許諾を得ずに掲載できる場合があります。ただし、飾りとして載せる場合は引用にあたらないと考えられますので注意してください。
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この記事は、動画「学校の写真の著作権|授業・学校だより・引用で変わる3つのルール」をもとに作成しました。
