2026年9月26日、熊本市学校図書館協議会司書部会の主催で、学校司書の先生方を対象とした研修「学校図書館で身に付けたいAIの基本」をオンラインで行いました。昨年度の著作権研修に続き2年連続でお声がけいただいた回です。今回は前回の著作権の学びを簡単に振り返ったうえで生成AIの基本を中心にお話ししました。
熊本市の学校司書研修で著作権に続けてAIを取り上げた背景
昨年度(2025年8月)、同じ司書部会の主催で「著作権を学ぼう」と題した研修を行いました。

今年度のご依頼では、部会の中で「今年度もぜひ」という声が多かったこと、そしてAIに関する説明も加えてほしいというご要望をいただきました。
ご依頼くださった先生は決め手を次のように書いてくださいました。
著作権の研修会時に、受講者の立場や環境に応じた内容でご講話いただき、やるべきことが明快になったから。今回は、ワンランクアップしたAIについて、疑問を解決する術を得たかったから。
学校著作権ナビゲーターとして各地で研修を重ねていますが、同じ部会から2年続けて呼んでいただけるのは大変ありがたいことです。前回の学びを土台に「一段深める回」として、著作権とAIをつなげて考える構成にしました。
研修の全体像:熊本の学校司書の先生方とAhaSlidesで双方向に
オンライン研修でしたので、双方向アプリのAhaSlidesを使い画面越しでも先生方の声を拾いながら進めました。
アイスブレイクは「熊本に来たら、これ食べて!買って!」です。いきなりだんご、辛子蓮根、馬刺し、陣太鼓、栗のお菓子、ラーメンなど、熊本ならではの名物が次々と並びました。画面の向こうの雰囲気が一気にやわらいだのを感じました。
前半は昨年度の研修の振り返りとして著作権の要点を確認しました。後半で生成AIを取り上げ、学校図書館の業務にどう関わるかを一緒に考えました。図書だより、本の紹介文、イベントのポスターなど、司書の先生方の日々の仕事は「作って発信する」ことの連続です。だからこそ、著作権とAIの両方が身近なテーマになるのです。
▼学校司書向けの著作権と生成AIについての研修事例

受講者の実態:当日ご参加の先生方に伺ったこと
研修中、AhaSlidesでいくつかの質問にお答えいただきました。以下は当日ご参加の先生方の回答です。
「著作権」からイメージする言葉では、「難しい」「大事」「大切」がひときわ多く挙がりました。ほかにも「めんどう」「怖い」「正しく知る」「図書だより」などの言葉が並び、大切だと分かっているからこそ難しく感じるという実感がうかがえました。
キーワードの認知度(1=知らない〜4=知っているの4段階、平均)は、いらすとやが3.8、著作権が3.5、知的財産権が3.3でした。一方、著作権法第35条は2.7で、昨年度に学んだ内容でも、時間がたつと記憶が薄れやすいことが分かります。今回、冒頭で振り返りの時間をとったのはこのためです。
生成AIを使ったことがあるかには、47名中32名が「ある」、15名が「ない」と答えました。使っている先生方の用途は、図書だよりの書き出しのヒント、読書イベントのポスターやチラシ、本の紹介文の参考、図書室のレイアウトの相談など、司書業務に直結するものが目立ちました。使っていない理由としては「使い方がよく分からない」「学校で使うのは少し怖い」といった声がありました。
生成AIのキーワードでは、ChatGPTが3.7、Geminiが3.4と高めでした。これに対して、文部科学省のガイドラインは2.2、ハルシネーション(AIがもっともらしい誤りを答える現象)は1.6と低めでした。サービス名はよく知られていても学校で使うための考え方はまだこれから、という状況です。
生成AIをどう思うかには、「便利」という言葉が多く見られました。同時に「便利だけど怖い」「頼りすぎると自分で考えなくなる」「どこから情報を引っ張ってきているのか不安」といった声も寄せられました。便利さと不安が同居しているというのが率直な受け止めだったのでしょう。
研修の主な内容
当日は次の内容を取り上げました。著作権の詳しい解説は、それぞれの解説記事をご覧ください。
1. 前回の振り返り(著作権の基礎):著作物を使うには原則として許諾が必要なこと、学校の授業では著作権法第35条(授業の過程での利用を認める規定)により一定の条件のもとで例外があること、SARTRAS(授業目的公衆送信補償金制度の管理団体)の役割などを確認しました


2. 最近の著作権に関わるニュース:身近な事例から著作権が日常の話題であることを実感していただきました
3. 著作権を知るべき理由:子どもが関わった事例や、生成AIの広がりから、学校で著作権を学ぶ意味を考えました
4. 生成AIの基本:主なサービス(ChatGPT・Gemini・Copilot)、プロンプト(AIへの指示文)の工夫、ハルシネーションへの注意、文部科学省のガイドラインの考え方を紹介しました
5. 教育版アカウントと一般版の違い:学校で使う場合は、入力した情報の扱いなどが一般版と異なる教育向けのアカウントがあることをお伝えしました
6. 今日から、自分から、できることから:学校図書館の業務で、無理なく始められる一歩を一緒に考えました
なお、生成AIと著作権の関係(AIが作ったものの扱いなど)は、現在も整理が続いている論点です。研修では断定を避け、文化庁の最新の見解を確認する大切さもお伝えしました。

研修のポイント:AIをいたずらに恐れず、自分で確かめて使う
今回いちばんお伝えしたかったのは、生成AIをいたずらに恐れるのではなく、正しく知って正しく使う、という姿勢です。
ご依頼くださった先生は、印象に残ったこととして次のように書いてくださいました。
AIの基本は、著作権と深い繋がりがあること。また、AIをむやみに恐れず人間中心の生成AI活用を自らが設定し、正しい情報であるかどうかの見極めは、自らがAIのみに頼らず確かめる必要があること。
大切なのは、AIの答えをそのまま受け取らず最後は人が確かめることです。資料の信頼性を見極めることは学校図書館がもともと大切にしてきた力でもあります。その意味で、司書の先生方はAI時代の情報活用の頼もしい担い手なのです。
熊本市学校図書館協議会司書部会の先生方の声
研修の最後に「ひとこと感想・質問」をお寄せいただきました。いくつかご紹介します。
教育版アカウントを知って
使用に躊躇していたが、「教育版アカウント」の存在を知り良かった
教育版アカウント、初めて知りそれを使用することができれば安心です。
図書室で利用しているPCで教育版かどうかを確認して使いこなしたいと思います。
コパイロット教育版を使って新刊案内を作ってみたいです。
著作権とAIのつながり
AI活用と著作権の関係がよく分かりました。まずは著作権法をしっかり学ぶ必要があると思いました。
やはり著作権は難しいですが、先生のお話で、著作権を知ることの大切さはわかりました。
著作権法第35条を知ることができてよかったです。教育版アカウントも知らなかったので勉強になりました。
不安から一歩へ
今まで使った事がありませんでした。怖いと思い躊躇していました。詳しく教えていただき、ありがとうございました.使ってみたいと思います。
感想 プロンプトの設定がそれほど重要と考えていなかったので、とても勉強になりました
ぼんやりしていたものがはっきり見えてきた気がしています。
ほかにも「教育版アカウントの確認方法を知りたい」「熊本市にも教育版はあるのか」といった、すぐに使うことを見据えた質問が寄せられました。「方言で質問すると、それに応じた回答をされるのか」という楽しい質問もあり、先生方の関心の広がりを感じました。
おわりに
熊本市学校図書館協議会司書部会の皆さま、2年続けての機会をいただきありがとうございました。オンラインでありながら、画面越しにたくさんの声を届けてくださったことに感謝しています。
今回の研修では、著作権の学びを土台に、生成AIと上手に付き合うための考え方をお渡しすることを目指しました。図書だよりや新刊案内づくりなど、日々の業務の中で「まず確かめてから使う」一歩のヒントになれば幸いです。
研修をご検討の方へ
学校司書・司書教諭の皆さまに向けて、著作権に加えて生成AIを取り上げる研修も行っています。部会や研究会の研修で同じようなテーマをご検討の方は、研修のご案内ページをご覧いただけるとうれしいです。
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